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ロタン
カオス
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エリュシオンが鉄鋼狼に切り付けるが、カンっという音を立てて剣が跳ね返された。
「あらら。エリュシオンでも切れないか」
ギャレットは足を組みながら余裕そうに場内を見ている。
「どうしてこんなことに……」
「恐らく主催者とウォルフはグルだったのさ。部外者エリュシオンが勝ってしまったから、殺そうとしているんだろう」
「なんてこった」
このままじゃエリュシオンがやられてしまうかもしれない。けれども、ギャレットはニヤニヤと笑っている。
「ふふふふ。かわいい親友だ。助けてあげよう」
ギャレットは、銃を持ったかと思うと、対して構えもせずにスッと自然な動作で2発、撃った。銃弾は真っ直ぐに進み、鉄鋼狼の目を正確に貫通した。
こいつ……天才だ……。才能がある……。
目を撃たれた狼は、狂ったように暴れた。エリュシオンは、もう一度首に向かって切り付けると、首に傷がついた。そして、もう一度、闇の魔術を剣にまとわせながら攻撃すると、狼の首が切り落とされた。
よほど硬かったのか、エリュシオンは肩で息をしている。
「はあ、はあ……」
あいつがあんな風に疲れるなんて珍しいな。
残り2体の狼も狙いを定めたようにエリュシオンに群がっている。
「あらら。ウォルフは負けちゃったわ」
不意に甘い蜂蜜みたいに滑らかで、色気のある声が響き渡った。
観客席からスポットライトを浴びた女優みたいに優雅に歩いている金髪の女と、黒髪の男が見えた。
女は、ゆるく巻かれた金髪に、海のような青い瞳をしていた。青い瞳は長く巻かれた睫毛で縁取られでいる。ぽってりとした紅い唇、雪のように白く滑らかな肌、スッとした鼻立ち、それらはまるで聖母アリアのように完璧であった。おそらく年齢は20代だろう。
サテンの真っ赤なドレス、ルビーのイヤリングは、陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。まるで、モデルみたいに完璧なスタイルをしていて、このコロシアムで彼女が主役みたいな気がした。
「おおおおお。なんていう美女だ!!スタイル抜群っ!!!今すぐ口説きたいっ!!」
ギャレットは、目をハートマークにした。
「だから、俺が出ればよかったんだ」
彼女の隣にいた黒髪に青い目をした男はそう言った。さらりとしたこぼれるような絹みたいな黒髪に、青い目をした王子様みたいな高貴そうなオーラのある人である。
「そうね。あなたなら優勝できたはずだわ」
「ユリア様。危ないです」
吞気に会話をしている2人に向かって、鉄鋼狼が近づいた。
黒髪の男は、絨毯からふわっと狼に向かって飛び降りてくるりと回転しながら剣で切り付けた。
ザシュっ。
そんな空気を切り裂くような音がした後、鉄鋼狼の首はスパッと切り離されていた。
エリュシオンですら切れなかったのに、何が起きたんだ?
彼が一人であの鉄鋼狼を倒したのか。よほど切るのが上手だったせいか、返り血を浴びていない。
「アイゼア・フォーサイシス……」
エリュシオンは、まるで飢えた子供みたいにジッと彼を見つめていた。どうして彼がそんな顔をするのかわからなかったが、その横顔はひどく寂しげに見えた。
アイゼアは、ゆっくりとエリュシオンに近づいていきながら、話しかけた。
「君は師匠にそっくりだね……。ハデスはどこにいる?」
師匠?どういうことだ?アイゼアの師匠は、シオン・リジルだったとでもいうのか?
「知らない」
「じゃあ、用はない」
アイゼアは、雷みたいな速度でエリュシオンに切り込んだが、エリュシオンは何とかそれを防いだ。アイゼアの威力がよほど凄かったのか、エリュシオンの手が衝撃のあまり震えている。
「早いっ」
驚きのあまり息をのんでいると、ギャレットが得意げに解説しだした。
「ああ。アイゼアは帝国最大の剣士ともいわれているからね。別名、裏切りの黒騎士」
「どういう意味だ?」
「彼は、堕ちた剣士だ。彼は、とある任務の時に味方を全員殺した。そして、オルトロス家を裏切り、ルキフェルに忠誠を誓っている」
「アイゼアはどうしてルキフェル側についたんだ?」
「さあ。おそらく、あの美貌のユリアにでも惚れたんだろう。わかる。あの美しさは罪だ」
「お前じゃないんだし、そんな不純な理由で仲間を殺すわけない。もっと複雑な事情でもあるかもしれない」
「どんな理由だろうな。あーあ。あいつ、シオン・リジルの後継者とまで言われていたのに……」
「待って。シオンの後継者はエリュシオンじゃなかったのか。彼は、息子だし、才能がある」
そう反論すると、ギャレットは気まずそうな顔をした。
「エリュシオンは父親から愛されなかったんだ」
「え……。でも、息子じゃないか」
「そうだ。実の息子だ。だけど……彼は、アイゼアの方をかわいがっていた」
エリュシオン……。確かにお前かわいげないけれど、かわいそうに……。じゃなくて、何かがおかしい。実はエリュシオンは、母親が浮気してできた子供とか?でも、エリュシオンに会う人間はシオンに似ているとよく言う。そして、あの天才的な強さなら、シオンの血が流れていることは間違えないと思う。
おそらくギャレットは、エリュシオンが愛されなかった理由がわかっているのだろう。
それを聞くことは、他人の家に土足で入り込むくらい無神経なことに思えた。
アイゼアがエリュシオンに何回か切り付けるが、彼はそれを必死に凌いでいた。
「くっ」
よけきれなくなりエリュシオンの服には傷がつくが、アイゼアは汚れ一つない余裕そうな表情で戦っている。
エリュシオンが肩で息をして呼吸を整えている間も、アイゼアは呼吸一つ乱さないまま彼に話しかけた。
「君は師匠と戦い方がよく似ている」
「はあ、はあ……。お前の方が似ているんじゃないか」
「そうかもしれないね」
エリュシオンが片手をあげると、大量の氷の刀が生まれた。そして、それらが一斉にアイゼアに襲いかけるが、アイゼアは、それら全てを完璧な剣裁きで足元を動かすことなく流れを返させた。
今度は、黒い霧のような塊がアイゼアに襲いかかったが、アイゼアが剣を軽く振るうと霧はフッと空気に溶けて消えてしまった。
「この剣は、ちょっと特殊で魔力を吸収するんだ」
そうなると、エリュシオンは剣で彼を倒すしかない。けれども、実力差は明らかにアイゼアの方が上だろう。
「危ないっ」
そうギャレットに押されたかと思うと、先ほどいた場所が派手に爆発した。
「ひっ」
尻餅をつきながら、近くに倒れた。
「あら。よけるなんてさすがじゃない」
何かが飛んできた方向を見てみると、先ほどアイゼアと一緒にいた金髪の女が立っていた。
「だけど、まだまだよ」
「お嬢様。こんなところで、殺し合うより俺と結婚しませんか」
ギャレットは目をハートマークにしながら、いきなりぶっ飛んだことを言った。
お前、こんな状況で何を考えているんだよ!!!
「私、好きな人がいるのよ」
「それは、あの青い目をしている男のこと?」
「彼じゃないわ。彼は……この世界で一番偉い人よ」
この世界で一番偉い男?
そんなの皇帝とか、王様になってしまうんじゃないか。一番権力のある皇帝といえば、ルジアにいる皇帝だけど、まさか彼のはずないよな……。
「そんな男よりも、俺の方があなたを幸せにできます」
「さあ、どうかしら」
次々と爆弾が投げられてきた。必死で逃げるが、どんどん足場が悪くなってくる。僕も火の玉を投げるが、見えない壁にシュウウと吸収されてしまった。
「どういうことだ?」
「恐らく、あの女がつけているのは、女神の祝福がかかった指輪だ。魔力を吸収する」
「それはやばい」
次々と爆弾が投げられる。ひたすら防戦一方になっていると、コロシアムの観客席から一人の男が現れた。
「2体1とは卑怯じゃないか。弱いものいじめはやめてもらおうか」
ドクリ、ドクリ、ドクリ……。
心臓が早鐘のように早く鳴り響く。
どうして彼がこんなところにいるんだ?
男は、オールバックのダークブロンドに焦げ茶色の瞳をしている。ギラギラとした鷹のように鋭い目をしながら、偉そうに世界を見ている。
忘れもしない。僕のたいせつなナサニエルを誘拐した男だ。
男はくいっと中指を動かした。それだけで、30メートル以上ある巨大なコロシアムの実況席が持ち上がった。
「えええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
え?どういうこと?
え?え?え?
石の魔力ってこんなに強力なの?
な、な、な、な、なにこれ!?意味わからない!!!
そして、持ち上げられた巨大な実況席は、ボールのように投げられ向かってきた。
「うわああああああああああああああ!!!」
「あらら。エリュシオンでも切れないか」
ギャレットは足を組みながら余裕そうに場内を見ている。
「どうしてこんなことに……」
「恐らく主催者とウォルフはグルだったのさ。部外者エリュシオンが勝ってしまったから、殺そうとしているんだろう」
「なんてこった」
このままじゃエリュシオンがやられてしまうかもしれない。けれども、ギャレットはニヤニヤと笑っている。
「ふふふふ。かわいい親友だ。助けてあげよう」
ギャレットは、銃を持ったかと思うと、対して構えもせずにスッと自然な動作で2発、撃った。銃弾は真っ直ぐに進み、鉄鋼狼の目を正確に貫通した。
こいつ……天才だ……。才能がある……。
目を撃たれた狼は、狂ったように暴れた。エリュシオンは、もう一度首に向かって切り付けると、首に傷がついた。そして、もう一度、闇の魔術を剣にまとわせながら攻撃すると、狼の首が切り落とされた。
よほど硬かったのか、エリュシオンは肩で息をしている。
「はあ、はあ……」
あいつがあんな風に疲れるなんて珍しいな。
残り2体の狼も狙いを定めたようにエリュシオンに群がっている。
「あらら。ウォルフは負けちゃったわ」
不意に甘い蜂蜜みたいに滑らかで、色気のある声が響き渡った。
観客席からスポットライトを浴びた女優みたいに優雅に歩いている金髪の女と、黒髪の男が見えた。
女は、ゆるく巻かれた金髪に、海のような青い瞳をしていた。青い瞳は長く巻かれた睫毛で縁取られでいる。ぽってりとした紅い唇、雪のように白く滑らかな肌、スッとした鼻立ち、それらはまるで聖母アリアのように完璧であった。おそらく年齢は20代だろう。
サテンの真っ赤なドレス、ルビーのイヤリングは、陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。まるで、モデルみたいに完璧なスタイルをしていて、このコロシアムで彼女が主役みたいな気がした。
「おおおおお。なんていう美女だ!!スタイル抜群っ!!!今すぐ口説きたいっ!!」
ギャレットは、目をハートマークにした。
「だから、俺が出ればよかったんだ」
彼女の隣にいた黒髪に青い目をした男はそう言った。さらりとしたこぼれるような絹みたいな黒髪に、青い目をした王子様みたいな高貴そうなオーラのある人である。
「そうね。あなたなら優勝できたはずだわ」
「ユリア様。危ないです」
吞気に会話をしている2人に向かって、鉄鋼狼が近づいた。
黒髪の男は、絨毯からふわっと狼に向かって飛び降りてくるりと回転しながら剣で切り付けた。
ザシュっ。
そんな空気を切り裂くような音がした後、鉄鋼狼の首はスパッと切り離されていた。
エリュシオンですら切れなかったのに、何が起きたんだ?
彼が一人であの鉄鋼狼を倒したのか。よほど切るのが上手だったせいか、返り血を浴びていない。
「アイゼア・フォーサイシス……」
エリュシオンは、まるで飢えた子供みたいにジッと彼を見つめていた。どうして彼がそんな顔をするのかわからなかったが、その横顔はひどく寂しげに見えた。
アイゼアは、ゆっくりとエリュシオンに近づいていきながら、話しかけた。
「君は師匠にそっくりだね……。ハデスはどこにいる?」
師匠?どういうことだ?アイゼアの師匠は、シオン・リジルだったとでもいうのか?
「知らない」
「じゃあ、用はない」
アイゼアは、雷みたいな速度でエリュシオンに切り込んだが、エリュシオンは何とかそれを防いだ。アイゼアの威力がよほど凄かったのか、エリュシオンの手が衝撃のあまり震えている。
「早いっ」
驚きのあまり息をのんでいると、ギャレットが得意げに解説しだした。
「ああ。アイゼアは帝国最大の剣士ともいわれているからね。別名、裏切りの黒騎士」
「どういう意味だ?」
「彼は、堕ちた剣士だ。彼は、とある任務の時に味方を全員殺した。そして、オルトロス家を裏切り、ルキフェルに忠誠を誓っている」
「アイゼアはどうしてルキフェル側についたんだ?」
「さあ。おそらく、あの美貌のユリアにでも惚れたんだろう。わかる。あの美しさは罪だ」
「お前じゃないんだし、そんな不純な理由で仲間を殺すわけない。もっと複雑な事情でもあるかもしれない」
「どんな理由だろうな。あーあ。あいつ、シオン・リジルの後継者とまで言われていたのに……」
「待って。シオンの後継者はエリュシオンじゃなかったのか。彼は、息子だし、才能がある」
そう反論すると、ギャレットは気まずそうな顔をした。
「エリュシオンは父親から愛されなかったんだ」
「え……。でも、息子じゃないか」
「そうだ。実の息子だ。だけど……彼は、アイゼアの方をかわいがっていた」
エリュシオン……。確かにお前かわいげないけれど、かわいそうに……。じゃなくて、何かがおかしい。実はエリュシオンは、母親が浮気してできた子供とか?でも、エリュシオンに会う人間はシオンに似ているとよく言う。そして、あの天才的な強さなら、シオンの血が流れていることは間違えないと思う。
おそらくギャレットは、エリュシオンが愛されなかった理由がわかっているのだろう。
それを聞くことは、他人の家に土足で入り込むくらい無神経なことに思えた。
アイゼアがエリュシオンに何回か切り付けるが、彼はそれを必死に凌いでいた。
「くっ」
よけきれなくなりエリュシオンの服には傷がつくが、アイゼアは汚れ一つない余裕そうな表情で戦っている。
エリュシオンが肩で息をして呼吸を整えている間も、アイゼアは呼吸一つ乱さないまま彼に話しかけた。
「君は師匠と戦い方がよく似ている」
「はあ、はあ……。お前の方が似ているんじゃないか」
「そうかもしれないね」
エリュシオンが片手をあげると、大量の氷の刀が生まれた。そして、それらが一斉にアイゼアに襲いかけるが、アイゼアは、それら全てを完璧な剣裁きで足元を動かすことなく流れを返させた。
今度は、黒い霧のような塊がアイゼアに襲いかかったが、アイゼアが剣を軽く振るうと霧はフッと空気に溶けて消えてしまった。
「この剣は、ちょっと特殊で魔力を吸収するんだ」
そうなると、エリュシオンは剣で彼を倒すしかない。けれども、実力差は明らかにアイゼアの方が上だろう。
「危ないっ」
そうギャレットに押されたかと思うと、先ほどいた場所が派手に爆発した。
「ひっ」
尻餅をつきながら、近くに倒れた。
「あら。よけるなんてさすがじゃない」
何かが飛んできた方向を見てみると、先ほどアイゼアと一緒にいた金髪の女が立っていた。
「だけど、まだまだよ」
「お嬢様。こんなところで、殺し合うより俺と結婚しませんか」
ギャレットは目をハートマークにしながら、いきなりぶっ飛んだことを言った。
お前、こんな状況で何を考えているんだよ!!!
「私、好きな人がいるのよ」
「それは、あの青い目をしている男のこと?」
「彼じゃないわ。彼は……この世界で一番偉い人よ」
この世界で一番偉い男?
そんなの皇帝とか、王様になってしまうんじゃないか。一番権力のある皇帝といえば、ルジアにいる皇帝だけど、まさか彼のはずないよな……。
「そんな男よりも、俺の方があなたを幸せにできます」
「さあ、どうかしら」
次々と爆弾が投げられてきた。必死で逃げるが、どんどん足場が悪くなってくる。僕も火の玉を投げるが、見えない壁にシュウウと吸収されてしまった。
「どういうことだ?」
「恐らく、あの女がつけているのは、女神の祝福がかかった指輪だ。魔力を吸収する」
「それはやばい」
次々と爆弾が投げられる。ひたすら防戦一方になっていると、コロシアムの観客席から一人の男が現れた。
「2体1とは卑怯じゃないか。弱いものいじめはやめてもらおうか」
ドクリ、ドクリ、ドクリ……。
心臓が早鐘のように早く鳴り響く。
どうして彼がこんなところにいるんだ?
男は、オールバックのダークブロンドに焦げ茶色の瞳をしている。ギラギラとした鷹のように鋭い目をしながら、偉そうに世界を見ている。
忘れもしない。僕のたいせつなナサニエルを誘拐した男だ。
男はくいっと中指を動かした。それだけで、30メートル以上ある巨大なコロシアムの実況席が持ち上がった。
「えええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
え?どういうこと?
え?え?え?
石の魔力ってこんなに強力なの?
な、な、な、な、なにこれ!?意味わからない!!!
そして、持ち上げられた巨大な実況席は、ボールのように投げられ向かってきた。
「うわああああああああああああああ!!!」
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