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混乱
しおりを挟む「ほら、食べさせてやろう」
そう言われながら、スプーンがルカの口の前に差し出された。
ルカは、混乱のあまり頭が真っ白になりそうだった。
「な、な、ななななななな何を言っているのですか。自分で食べられます」
(どうして自分が帝国の死神から、あーんして食べさせてもらわないといけないのだ?これが悪い夢なら早く覚めて欲しい)
ルカは、そう強く祈るように念じるが、現実は何も変わらない。
「でも、お前は怪我をしたばかりだろう」
「これくらい大丈夫です!ご飯ありがとうございます。いただきます」
そう言って皿を受け取り、自分で一口スープを食べてみる。
「お、美味しい!」
クリームシチューのような味わいが口の中いっぱいに広がった。
もしかして、これは彼の手作りなのだろうか。こんなに美味しいスープは久しぶりに飲んだ。
「すごく美味しいです。ありがとうございます」
アルカイドは、ルカが食べている様子をジッと眺めてくる。その監視するようなネットリとした視線が気になり過ぎて、早く食事を終わらせたくなり急いで食べる。
「ごちそうさまでした。すごく美味しかったです」
「ちょっと動くな」
「へ?」
いきなり美しいアルカイドの顔が近づいてきたかと思うと、ルカの下唇をペロリとざらついた舌で舐められた。
「っ!!!」
驚きのあまり真っ赤になっていると、満足したように「唇にパンがついていた」とチョコレートみたいに甘い声で告げられた。
(やっぱり俺たちは、付き合っていたのか!?アルカイドの冗談ではなかったのか)
ルカは、恥ずかしさのあまり穴でも掘って消えてしまいたかった。
食事を食べ終わると、アルカイドに病院に連れていかれた。ムートン医師いわく、何かの衝撃やショックで記憶を失っているが、いつ記憶が戻るかわからないとのことだった。
診察が終わると、一緒に家に戻りたがるアルカイドに別れを告げて、自宅へと帰宅した。
ルカは、両親と暮らしているが、彼らは商売のためよく出かけることもあり、家には誰もいなかった。
ルカの自室は、大して変わっていなかったが、いつの間にか夏服がしまわれ、温かいコートやセーターなどがクローゼットの目立つ場所に置かれていた。
(俺がアルカイドと付き合っている?一体何が起きた?)
部屋で頭を抱えながら悩んでも、何も思い出せない。わかったのは、ここがルカの知る世界の半年後であり、いつの間にかアルカイドと付き合っていることだけだ。
「そうだ。ヴィルヘルムに相談しに行こう!」
ルカは、幼馴染の顔を思い浮かべた。ヴィルヘルム・ガトロンは、ルカの小さい頃からの幼馴染だ。彼は、平民のルカとは違い、貴族であるが、家が近く年も近いルカに対等に接してくれ、二人でよく遊んでいた。
彼にだったら、何でも相談できる。
ルカはそう思い、服を整えるとヴィルヘルムの家へと向かった。
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