記憶喪失になったら、帝国一のイケメンが彼氏になってしました

夜刀神さつき

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イケメンの幼馴染

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 ヴィルヘルムの家を訪れると、すぐに応接間に通された。執事から紅茶を出され、それを飲みながら待っていると、ヴィルヘルムがやってきた。彼はルカを見つけると、花が咲くような眩しい笑顔を浮かべた。

「ルカ!!!」

 彼は、くしゃりとした柔らかそうな黒髪に赤い目をしたイケメンである。街でも評判の好青年であり、剣術も勉強も得得意で、自慢の親友だ。彼は、ルカを見つけるたびに、いつもご主人様を見つけた犬のように近寄ってくる。

「ヴィルヘルム」
「逢いたかった。ルカも、俺に逢いに来てくれたんだな」

 そう笑顔で近づいてきたが、急に彼は真顔になり「それで返事は決まったのか?」とまっすぐとした口調で尋ねてきた。

「え?」

(返事?一体何のことだろうか。記憶喪失の間に、彼と遊びに行く約束でもしていたのだろうか)

 ルカは、こめかみに手を当てながら必死に考えるが、答えが出てこない。だから、正直に打ち明けることにした。 

「実は……俺、記憶喪失で……」

 そう恐る恐る打ち明けるが、ヴィルヘルムの顔は険しかった。

「もしかして、俺、遠回しに振られた?あのことをなかったことにしたいの?」
「は?」

(俺は、ヴィルヘルムとも何かあったのか。俺は、何かやらかしたのだろうか。ダメだ。ちっとも思い出せない)

「違うんだ。俺、本当に記憶喪失なんだ。どうやら頭を強く打ち付けたようで、半年間の記憶を失っているみたいだ
「最後に俺と話した記憶は?」
「えっと……6月頃、定食屋でご飯を食べた時かな。二人ともハンバーグを食べた」
「……そうか」

 ヴィルヘルムは、なぜか悲しそうな顔をしながら、深い溜息をついた。

「それで、俺に相談に来たのか」
「あの……その……相談の内容は、それだけじゃなくて……」
「何かあったのか」

「どうやら、記憶喪失の間に彼氏ができていたみたいなんだ。そいつから、付き合っているって言われた」

「は?何だって?」

 怒りをはらんだような低い声が響き渡る。
 ヴィルヘルムは、ルカの肩をガシッと掴み正気を失ったように、呆然とした。
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