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驚き
しおりを挟む「んんっ」
アンジェロにキスをされたヨヅキは、頭が真っ白になる。視界には、アンジェロの美しい髪が広がっている。
(な、何をしているんだ?早く離せ!いや、今のは、俺のミスだった。アンジェロは、俺が変なことを言わないようにキスで誤魔化してくれたんだろう。でも……)
アンジェロの唇が、ヨヅキの唇の中に入っていく。そして、ヨヅキの歯茎と歯をざらりとした舌で舐めまわしていく。
(いくらなんでも、キスが長すぎるだろうが!早く離せよ!)
アンジェロは、ヨヅキを虐めるように長いキスを終わらせたりしない。
次に、ヨヅキの舌にターゲットを絞り、戸惑うヨヅキの舌を蛇のように執着して追いかける。そして、触れたアンジェロの舌から、先ほど彼が飲んでいたテキーラの味もほんのりと伝わりクラクラした。やがて、舌をリズミカルに吸われ始めた。
(あれ?なんか気持ちいい?いや、そんなバカな。こんな奴のキスで気持ちよくなるはずがないだろう。俺は、絶対に気持ちよくなんからならない!)
「ぁ……っああ……。はあっ……」
だけど、自分の口から、娼婦のような甘い吐息が漏れて、恥ずかしさのあまり真っ赤になる。
(恥ずかしすぎる。死んでしまいたい)
後ろに下がろうとするが、アンジェロはヨヅキの頭部を鉄のように固い右腕で固定した。そして、舌の付け根や、口蓋まで弄びように舐めていく。ヨヅキの唇の端から、唾液が零れ落ちてズボンに垂れていく。そのことが、躾のなっていない犬みたいで恥ずかしい気分にさせた。
「はあ、はあ……っぁ……」
頭が真っ白になりそうなほど、気持ちいい。
だけど、自分を気持ちよくさせているのが、大嫌いなアンジェロだと思うと、今すぐ彼の首を絞めて殺してしまいたくなる。
(このキスやけに長くないか!早く離れろよ、気持ち悪いな。こんな奴とファーストキスだなんて最悪だ。ちくしょう。死んでしまいたい)
そう言ってやりたいのに、恋人の振りがバレるわけにはいかない。
涙目になっていると、アンジェロは、ヨヅキの唇や舌を軽く噛んできた。
「あっ。んん……っぁ…………」
全身の力が抜けていく。身体に電流が流れていくように快楽で支配されそうになる。もっと欲しいと浅ましく求めてしまいそうになる自分がいる。
ダメだ。このままじゃ、自分の下半身が反応してしまう。だけど、抵抗すると恋人の振りがバレてしまう可能性がある。
(どうすればいいんだ?誰か助けて……)
そう願っていると、ようやくアンジェロから唇が離された。ヨヅキとアンジェロの唇の間には、唾液の糸が一瞬見えて、そのことにドキッとしてしまった。
「はあ、はあ、はあ……」
ヨヅキは、涙目になりながらアンジェロを睨みつける。できることなら、アンジェロを世の中に存在するありとあらゆる暴言で罵りたかったが、潜入捜査であるためできない。
アンジェロは、そんな爆発寸前のヨヅキを落ち着かせるように頭をポンポンと触った後、「恋人じゃなくて、もうすぐ結婚する予定の婚約者だ」とヨヅキの肩を抱きながら、親密そうにバーテンダーに告げた。
そして、彼は、自然な動作でヨヅキの肩を組んで、自分の方へぐっと寄せたのだ。
ヨヅキは、そんなアンジェロをぶん殴りたかったが、先ほど酔って失言しかけたことは自分のミスであることに気がついていたため「そ、そうなんだよ」と愛想笑いをして耐えるしかなかった。
そんな下手くそな笑顔を浮かべるヨヅキを、アンジェロは愛おしそうに目を細めながら見つめ、つむじにスタンプを押すような優しいキスを降らせた。
しばらく2人で酒を飲んでいたが、バーには怪しい人はいなかった。
バーから出ると、ようやくヨヅキは、アンジェロの腕を離すことができた。
「よくも俺にキスなんてしやがって。気持ち悪いんだよ」
ヨヅキは、ごしごしと汚れを取るように、自分の唇を服の袖で拭い始めた。
「はっ。さっきは、気持ちよさそうに発情期の猫みたいになっていたくせに」
「ああん?誰が発情期の猫だって?てめぇのキスなんて、ド下手くそだし、全然気持ちよくなんかなってねぇよ」
ヨヅキは、嘘をつきながらアンジェロを射殺すように睨みつけるが、彼は、機嫌良さそうにニタニタとした笑みを浮かべながら、ヨヅキの顔をじっと見てきた。
「照れ隠しかよ、ヨヅキ。素直になれないお子ちゃまなんだな」
(こいつ!いちいち煽るようなことばかり言いやがって)
頭が沸騰しそうなくらい激しい怒りがこみあげてくる。
「そんなわけないだろう!だいたい、俺が失言しかけたのは悪かったけれど、あんなに長いキスをするのは、ひどいだろう」
それをアンジェロは鼻で笑って、両手を広げ、肩をすくめた。
「ひどい?気持ちよさすぎて、どうにかなりそうの間違いじゃないか。あれは、お前が物欲しそうな目をするから大人のキスをしてやったんだ。光栄に思え」
「はあああああ?誰が物欲しそうだって!」
アンジェロを殴りたい気持ちを抑えて、親指を突き立てた右手をひっくり返す。
「この仕事が終わったら、もう二度と俺に近づくな」
「同じ職場にいるんだからそんなわけできるはずないだろう。それとも、俺とのキスで俺のことを意識しちゃったわけ?」
「そんなわけないだろう」
「それより、ちょっとこっちこい」
アンジェロは、ヨヅキの肩を強引にグイッと引き寄せた。
「離せよ!」
「いいから、こっちだ」
彼は、強引にヨヅキの手を引っ張っていく。
そして、現れた光景を見て、驚きのあまりヨヅキの身体が石のように凍り付いた。
「え?」
そこで見たのは、先ほどアンジェロに声をかけたオリバーという茶色の髪の男が、シリウス、テオ、ジョンの3人の吸血鬼ハンターに取り囲まれている様子だった。
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