【完結】大嫌いな同僚が俺のこと大好きなヤンデレだった

夜刀神さつき

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ハンターの仕事

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 オリバーは、唇が血を塗られたように真っ赤に染まっていた。彼の近くには、首元が噛み千切られた男の死体が転がっている。

「観念しろ。お前にもう逃げ場はない」

 剣を構えたシリウスがそう告げるが、オリバーは焦った様子はなさそうだった。

「たかが人間が吸血鬼に勝てるわけない」

 次の瞬間、オリバーは、猛スピードでシリウスに殴り込んだ。ギリギリのところでシリウスが男の拳を躱して、彼の腕に傷をつけるが、傷が浅い。すぐにオリバーの傷は、塞がれていく。

 吸血鬼の弱点は、心臓だ。心臓を銀の成分が入ったもので刺せば殺せるが、それ以外の傷は、再生してしまう。

 そのままシリウスが攻撃を重ねるが、オリバーが避けるスピードの方が速かった。けれども、数の有利はこちらにある。オリバーの背後からジョンも心臓を狙い、剣を振るった。

 それをかろうじて避けたオリバーは「ちっ」と大きな舌打ちをした。

 3対1じゃ分が悪いと思ったのか、オリバーが逃走しようとするが、それを読んでいたかのように、テオが横にずれたオリバーの心臓を剣でぶっ刺した。

「あがっ……」

 オリバーと名乗っていた吸血鬼は、その場に崩れ落ちた。彼の周囲は、血だらけになっていった。

「よくやった、テオ」

 シリウスがテオをそう褒めると、彼は照れくさそうに「えへへへ。それほどでも」と髪をかいてデレデレとした顔をした。

 普段のテオは、美人を口説いてばかりのクソ野郎だが、戦闘能力は高く吸血鬼を何体も殺した実績もある。

 ヨヅキも、テオ達の方に近づこうとした時、ハチミツのような明るく長い金髪にヘーゼルの瞳をした美女がこちらに近づいてきた。
 女は、30代くらいで非常にスタイルがよく、上品な顔立ちをしていた。着ている紺色のドレスは上品で宝石がついているものであり、貴族のような高貴な雰囲気がするが、こんな夜に従者もつけずに歩いているのはおかしい気がする。

「何があったのかしら。血の匂いがするわ」 

 彼女は、怯えたようにヨヅキたちに話しかけてきた。

 吸血鬼のことを話すと、シリウス、テオ、ジョンがハンターだとバレてしまうかもしれない。ハンターは、吸血鬼から嫌われているため、正体が周囲にバレることで殺されるリスクが高まる場合がある。そのため、吸血鬼のハンターであることは、家族以外の人間には秘密にするものだという規則がある。

(どうやって答えよう)

 ちらりとアンジェロの方を見ると、彼は「さあ。俺達にもわかりません。ここを通りかかっただけですから」と愛想よく説明した。

「そう……。最近、物騒な事件ばかり起きて怖いわね」
「そうですね」 

 女が不安そうに路地を見ていると、こちらを振り返ったテオが猛スピードでやってきた。

「ななななななななななんて美しい人だ。まるで、翼を失った女神のようだ。僕と一緒に食事でもどうですか!」
「「……」」

 ヨヅキとアンジェロは言葉を失い、テオをゴミくずのように見た。

(こいつ……。今朝、リアに振られたばかりなのに、違う女をナンパするのかよ。節操なさすぎだろう)

「こら、テオ。仕事中に何をやっている。早くこっちに来い」

 大きなため息をついたシリウスが、テオの首根っこを引っ張り向こう側へと連れていく。

「……」
「じゃあ、俺たちはそろそろ行きます。お姉さんも気をつけて」
「ええ。あなた達も」

 そう挨拶をすると、ヨヅキとアンジェロは、寮の方へと歩いて行った。
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