【完結】大嫌いな同僚が俺のこと大好きなヤンデレだった

夜刀神さつき

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訓練

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 吸血鬼ハンターといっても、常に吸血鬼が街で発生するわけではない。吸血鬼がいないときは、訓練をしたり、騎士団からの雑用が回されてきたりしている。

 次の日は、シリウスの判断で一日中、訓練をすることになった。

 午前中は筋トレ、ランニング、素振りなどの体力づくり、午後は模擬戦の時間となった。

 模擬戦では、ヨヅキは、同期のジョンとペアになることが多く、この日も一緒に練習していたが、ジョンは「ふー。俺の負けだ」といって座り込んでしまった。

「ジョン。もっと本気になれよ。お前、もっと強いだろう」

 そう声を変えるが、ジョンは、いつもみたいに死んだ魚の目みたいに生気がない目をしながら、全身をだらりとさせた。

「こんな練習で、どんなに頑張っても給料は上がらないだろう」
「ジョン……」

(ダメだ、こいつ……。もう手遅れだ……)

 遠い目をしながら、顔を覆った。すると、1人の坊主頭の青年が近づいてきた。

「ヨヅキさん。僕の相手をしてください」
「イーゴリか」

 彼は、イーゴリ・マルロス。坊主頭に黒い目をしたヨヅキの後輩で、練習だと腕はいいが、実践だといまいち実力が出し切れないタイプである。

 彼が坊主になったのは、テオとの賭けがきっかけである。

 数日前、騎士団と特殊任務課が喧嘩をした。特殊任務課が騎士団から雑用ばかり押し付けられてぶちぎれたのである。その結果、醜いののしり合いに発達し、騎士団長マークと特殊任務課隊長であるシリウスが決闘をすることになったのである。

 イーゴリと仲が良かったテオと賭けをして、イーゴリは騎士団長に、テオはシリウスに賭けた。その結果、シリウスが勝利し、イーゴリはテオとの約束通り坊主になったのだ。

 彼は、ヨヅキよりも実力が劣るが、ジョンがやる気がないし、手合わせするのはいいだろう。

 しかし、ヨヅキの上から「次は、俺が、特殊部隊のエース様と手合わせ願いたい」というベルベットのように滑らかで、蛇のように陰湿そうな声が振ってきた。

 顔を見なくても、誰だかわかる。

「……アンジェロ」

 ギロリと殺意を込めてアンジェロを睨みつける。いつもは、だらりと伸びている髪の毛も、訓練中は後ろで1本に縛っている。

「失礼。元エースだったか。エースの座は、俺に取られてしまったもんなぁ、ヨヅキ」

 アンジェロは、白い歯を見せながら、ニタニタとした性犯罪者のような気持ち悪い笑みを張り付けながら、ヨヅキを見落とした。

(ちくしょう!こいつをミンチにしてやりたい!)

 怒りを抑えるように握りしめた右手が、ブルブルと震えた。

 かつてのヨヅキは、吸血鬼ハンターとして誰よりも努力して成果をあげて、特殊部隊のエースとしてもてはやされていた。実力も隊長、副隊長に次ぐ、ナンバー3だと言われていた。

 しかし、2年前、アンジェロが入ってくると、あっさりと敗北して、エースの座はとられてしまった。アンジェロは、出世のために、吸血鬼に関するほとんどの仕事を自分のものにして、今では、ナンバーワンの実力と言われている。すでに隊長のシリウスよりも強い。アンジェロがもう少し年齢を重ねれば、隊長に指名されることは間違いないだろうと言われている。

 そして、練習のたびに、ヨヅキを煽るようにバカにしてくるのだ。悔しくて、さらに練習を重ねたが、アンジェロに勝てたことは一度もない。おかげでヨヅキの戦闘能力は向上したが、彼に対するイライラは、今にも爆発しそうだった。

「俺は、イーゴリの相手をするから、向こうに行っていろ」

「もしかして、最初から俺に負けるのがわかっているから、戦いたくないの?」

 ねっとりとした耳に残る声をしながら、煽るように囁かれる。それを聞いた瞬間、自分の血管が怒りのあまりぶちぎれる音が聞こえた。

「アンジェロ!ぶっ殺してやる。さっさ構えろ。イーゴリは、アンジェロの後だ」

「そうこなくちゃ」

 アンジェロが木刀を構えると、まずアンジェロの腹部を狙った。彼は、そんなのお見通しだと言わんばかりに、ヨヅキの剣を振り払い、ニヤニヤと笑いながら、ヨヅキに攻撃をしかけてくる。

(こいつ……余裕こきやがって。今日こそ、こいつに勝ってやる)

 ヨヅキは、アンジェロの攻撃を押し返すと、テンポの速い攻撃を打ち込むが、どれもアンジェロに遊ぶようにかわされてしまう。そして、息が少し上がってきた頃、ヨヅキの首元に、木刀をひゅっと突きつけた。

「……」

 無言で睨みつけるヨヅキの頭を、アンジェロはポンポンと慰めるように軽く触ってきた。

「少しは、早くなったかもな。まるで、蟻が歩行するようなノロノロした成長だけど」
「俺に触るな!」

 ヨヅキは、アンジェロの手を払いのけ歩き出したが、はらわたが煮えくり返るような怒りでいっぱいだった。
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