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プレゼント
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「そ、そういえば、吸血鬼の話って何だよ」
フォークとナイフを置いて、アンジェロに尋ねた。
「ボルテ国で、吸血鬼ハンターが3人襲われて死亡したらしい」
「3人も!同時に?」
ヨヅキは、思わず大声を出してしまい、口を押えた。
「そうだ。そして、とある生き残った子供の証言によると、襲ったのは6人の吸血鬼だったらしい」
「6人……」
吸血鬼は、単独行動することが多い。おそらくバレるリスクを減らすためと、同類にあうことが難しいからだ。
6人の吸血鬼の集団は、軍隊並みの強さを誇るだろう。そんな奴らが、ノクザンに来たら、大変な事件が起きるに違いない。
「どんな奴らだ?」
「金髪の女や、赤茶色の髪の男がいたらしい。隠れていたせいで、暗くてよく見えなかったと彼は言っていた」
「それだけじゃ、見つけるのは難しいな」
「不思議なことに、その中にいた男は、一番年上の吸血鬼に向かい『お父さん』と呼びかけていたらしい」
「吸血鬼の家族か!そんなものが存在するなんて……」
ヨヅキが知る限り前例はない。家族全員が吸血鬼になったということだろうか。吸血鬼を作ることができると言われている始祖の吸血鬼は、なぜそんなことをしたのだろうか……。何か実験でもしているのか。それとも、吸血鬼たちがたまたま集まったのか。そもそも、始祖の吸血鬼の目的も未だにわかっていないんだよな……。
頭の中に疑問ばかり浮かんでくるが、答えはわからない。
「だから、ヨヅキが吸血鬼の集団を見つけても、絶対に近づかないように。そいつらに近づいたら、命はない」
「わかった」
おそらく、吸血鬼ハンター全員でそいつらと戦っても、何人生き残るかわからないだろう。
(もしも、吸血鬼の家族をみつけたら、どう戦えばいいのか……。特殊任務課のハンター全員合わせても厳しいかもしれない)
そう考えていると、メイド姿の女がデザートを運んできた。
「デザートの盛り合わせです」
目の前に、宝石みたいに色とりどりのデザートが置かれた。
「紅茶のプリン、フロマージュ、苺のタルト、ブルーベリーのアイス、パンナコッタです」
「あ、ありがとうございます」
「お飲み物は、紅茶とコーヒーどちらになさいますか」
「俺は、紅茶で」
ヨヅキは、苦いものが嫌いなため紅茶を選択した。
「俺はコーヒーだ」
それぞれ紅茶とコーヒーが目の前に置かれた。
さっそくフロマージュ、口の中で甘いデザートがとろけていった。
「これも、美味しい」
ゆっくりと味わうように食べているヨヅキを、なぜかアンジェロが優しい目で見つめている気がした。
二人がデザートを食べ終えた頃、アンジェロは、鞄の中から、青いリボンでラッピングされたプレゼントみたいな箱をテーブルの上に置いた。
「……これもやる」
アンジェロは、ヨヅキから目を反らし、頬をほんのりと染めながらそう言ってきた。
「何だよ、これ。今日、一緒に食事をする予定だった奴にあげるつもりだったのか」
「ああ……。そんな感じだ」
彼は、頭をかきながらぶっきらぼうにそう言った。
「だったら、後からその人にあげればいいんじゃないか」
「とにかく、それはお前のものだ」
(やっぱりアンジェロは、振られてしまったんだ。だから、このプレゼントも捨てるか、適当にあげるかしか使い道がないのだろう)
リボンをほどき、箱を開けてみると、中から出てきたのは、コンパクトミラーだった。ミラーは、金属でできていて、蓋には、観光名所であるサンクルーグ広間が描かれている。縁には、宝石がたくさんついてキラキラしていた。
「うわああ……綺麗だ……」
思わずヨヅキは、感嘆のため息を漏らした。
(こんなにセンスのいいプレゼントをするのに、振られたのか……)
「ありがとう、大切にする」
そう言うと、「そうしてくれ」とアンジェロは、満足そうに微笑んだ。
店から出ると、アンジェロは「この後、俺の部屋で飲みなおさないか」と声をかけてきた。
「え……」
アンジェロとヨヅキは、寮にいて部屋は隣にある。もともと、ヨヅキの隣の部屋にはジョンがいたが、なぜかジョンがアンジェロと交換したのだ。
「ちょうど、ヨヅキでも、飲めるような度数の低いワインを用意している」
アンジェロの声が、わずかにかすれている気がするのは、気のせいだろうか。
ずっとアンジェロの嫌なところばかり意識してきた。だけど、今日、こいつは気遣いができる意外といい奴であることがわかった。
もしかしたら、こいつのことを誤解していたのかもしれない。それとも、彼は、失恋のショックで落ち込んでいるだけなのだろうか。でも、これは、アンジェロと仲良くなるいい機会かもしれない……。
そう思いかけたが、ヨヅキは、予定があったことを思い出した。
「悪い。これから、叔父さんの家に行くところなんだ」
「……そうか」
アンジェロは、やけに寂しそうに微笑んだ。やっぱり、好きな人に振られた日は、誰かに傍にいて欲しかったのかもしれない。
「送っていく」
やっぱり今日のアンジェロは、いつもと違う。失恋のショックで、人間はここまで変わるものなのか。
「大丈夫だ。寮とは反対だし。今日は、ありがとう」
「……ああ」
そう返事するアンジェロの声は、先ほどよりも力がない気がした。
「じゃあ、またな」
そう別れを告げると、ヨヅキは、叔父さんの家を目掛けて歩き出した。
歩きながらも、素敵な時間を過ごしたせいか、魔法にかけられたようにフワフワとした気分がした。
実家の近くを歩いていると、黒いドレスを着た赤毛の美女と歩いているテオの姿を見かけた。テオは、彼女に見とれているようでぼうっとしたような様子だった。
(また他の女をナンパしたのか。相変わらず節操がないな……)
だけど、デート中なら、邪魔したら悪いと思い、声をかけることはしなかった。
(いい雰囲気だし、テオに、彼女ができたのかもしれない。今度会ったら、聞いてみよう)
歩きながら、先ほどもらって胸下にしまったコンパクトミラーを撫でると、胸がじんわりと温かくなるような気がした。
フォークとナイフを置いて、アンジェロに尋ねた。
「ボルテ国で、吸血鬼ハンターが3人襲われて死亡したらしい」
「3人も!同時に?」
ヨヅキは、思わず大声を出してしまい、口を押えた。
「そうだ。そして、とある生き残った子供の証言によると、襲ったのは6人の吸血鬼だったらしい」
「6人……」
吸血鬼は、単独行動することが多い。おそらくバレるリスクを減らすためと、同類にあうことが難しいからだ。
6人の吸血鬼の集団は、軍隊並みの強さを誇るだろう。そんな奴らが、ノクザンに来たら、大変な事件が起きるに違いない。
「どんな奴らだ?」
「金髪の女や、赤茶色の髪の男がいたらしい。隠れていたせいで、暗くてよく見えなかったと彼は言っていた」
「それだけじゃ、見つけるのは難しいな」
「不思議なことに、その中にいた男は、一番年上の吸血鬼に向かい『お父さん』と呼びかけていたらしい」
「吸血鬼の家族か!そんなものが存在するなんて……」
ヨヅキが知る限り前例はない。家族全員が吸血鬼になったということだろうか。吸血鬼を作ることができると言われている始祖の吸血鬼は、なぜそんなことをしたのだろうか……。何か実験でもしているのか。それとも、吸血鬼たちがたまたま集まったのか。そもそも、始祖の吸血鬼の目的も未だにわかっていないんだよな……。
頭の中に疑問ばかり浮かんでくるが、答えはわからない。
「だから、ヨヅキが吸血鬼の集団を見つけても、絶対に近づかないように。そいつらに近づいたら、命はない」
「わかった」
おそらく、吸血鬼ハンター全員でそいつらと戦っても、何人生き残るかわからないだろう。
(もしも、吸血鬼の家族をみつけたら、どう戦えばいいのか……。特殊任務課のハンター全員合わせても厳しいかもしれない)
そう考えていると、メイド姿の女がデザートを運んできた。
「デザートの盛り合わせです」
目の前に、宝石みたいに色とりどりのデザートが置かれた。
「紅茶のプリン、フロマージュ、苺のタルト、ブルーベリーのアイス、パンナコッタです」
「あ、ありがとうございます」
「お飲み物は、紅茶とコーヒーどちらになさいますか」
「俺は、紅茶で」
ヨヅキは、苦いものが嫌いなため紅茶を選択した。
「俺はコーヒーだ」
それぞれ紅茶とコーヒーが目の前に置かれた。
さっそくフロマージュ、口の中で甘いデザートがとろけていった。
「これも、美味しい」
ゆっくりと味わうように食べているヨヅキを、なぜかアンジェロが優しい目で見つめている気がした。
二人がデザートを食べ終えた頃、アンジェロは、鞄の中から、青いリボンでラッピングされたプレゼントみたいな箱をテーブルの上に置いた。
「……これもやる」
アンジェロは、ヨヅキから目を反らし、頬をほんのりと染めながらそう言ってきた。
「何だよ、これ。今日、一緒に食事をする予定だった奴にあげるつもりだったのか」
「ああ……。そんな感じだ」
彼は、頭をかきながらぶっきらぼうにそう言った。
「だったら、後からその人にあげればいいんじゃないか」
「とにかく、それはお前のものだ」
(やっぱりアンジェロは、振られてしまったんだ。だから、このプレゼントも捨てるか、適当にあげるかしか使い道がないのだろう)
リボンをほどき、箱を開けてみると、中から出てきたのは、コンパクトミラーだった。ミラーは、金属でできていて、蓋には、観光名所であるサンクルーグ広間が描かれている。縁には、宝石がたくさんついてキラキラしていた。
「うわああ……綺麗だ……」
思わずヨヅキは、感嘆のため息を漏らした。
(こんなにセンスのいいプレゼントをするのに、振られたのか……)
「ありがとう、大切にする」
そう言うと、「そうしてくれ」とアンジェロは、満足そうに微笑んだ。
店から出ると、アンジェロは「この後、俺の部屋で飲みなおさないか」と声をかけてきた。
「え……」
アンジェロとヨヅキは、寮にいて部屋は隣にある。もともと、ヨヅキの隣の部屋にはジョンがいたが、なぜかジョンがアンジェロと交換したのだ。
「ちょうど、ヨヅキでも、飲めるような度数の低いワインを用意している」
アンジェロの声が、わずかにかすれている気がするのは、気のせいだろうか。
ずっとアンジェロの嫌なところばかり意識してきた。だけど、今日、こいつは気遣いができる意外といい奴であることがわかった。
もしかしたら、こいつのことを誤解していたのかもしれない。それとも、彼は、失恋のショックで落ち込んでいるだけなのだろうか。でも、これは、アンジェロと仲良くなるいい機会かもしれない……。
そう思いかけたが、ヨヅキは、予定があったことを思い出した。
「悪い。これから、叔父さんの家に行くところなんだ」
「……そうか」
アンジェロは、やけに寂しそうに微笑んだ。やっぱり、好きな人に振られた日は、誰かに傍にいて欲しかったのかもしれない。
「送っていく」
やっぱり今日のアンジェロは、いつもと違う。失恋のショックで、人間はここまで変わるものなのか。
「大丈夫だ。寮とは反対だし。今日は、ありがとう」
「……ああ」
そう返事するアンジェロの声は、先ほどよりも力がない気がした。
「じゃあ、またな」
そう別れを告げると、ヨヅキは、叔父さんの家を目掛けて歩き出した。
歩きながらも、素敵な時間を過ごしたせいか、魔法にかけられたようにフワフワとした気分がした。
実家の近くを歩いていると、黒いドレスを着た赤毛の美女と歩いているテオの姿を見かけた。テオは、彼女に見とれているようでぼうっとしたような様子だった。
(また他の女をナンパしたのか。相変わらず節操がないな……)
だけど、デート中なら、邪魔したら悪いと思い、声をかけることはしなかった。
(いい雰囲気だし、テオに、彼女ができたのかもしれない。今度会ったら、聞いてみよう)
歩きながら、先ほどもらって胸下にしまったコンパクトミラーを撫でると、胸がじんわりと温かくなるような気がした。
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