【完結】大嫌いな同僚が俺のこと大好きなヤンデレだった

夜刀神さつき

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 ヨヅキは、モートン地区の端に中央にあるマシュー・ローレンスの家を訪れた。彼は、ヨヅキの死んだ父親マックの兄であり、ヨヅキの保護者でもある。

 ヨヅキの両親は、吸血鬼に殺されて死んだ。その後、マシューがヨヅキを引き取ってくれたのだ。彼は独身であり、ヨヅキの存在を歓迎してくれて、翻訳の仕事をしながら大事に育ててくれた。
長いことマシューの家で暮らしていたが、16歳になってからは吸血鬼ハンターとして寮で暮らし始めた。

 吸血鬼ハンターは、基本的に寮で生活している。吸血鬼に家まで尾行されると、家族に危害を加えられる可能性があるからだ。

 しかし、月に一度、実家に帰ることが許される。今日と明日は、ヨヅキが帰省する許可をもらっていた日であった。

 マシューの家にたどり着き、ドアをノックすると「おかえり、ヨヅキ」とマシューが現れた。
マシューは、艶のある黒髪をしていて、髭はそるのがめんどうくさいのかいつも伸ばしている。目は、ヨヅキと同じ黒曜石みたいな黒目をしている。彼は、おしゃれすることを好まず、いつもと同じような茶色の服を着ていた。

「ただいま、叔父さん。一か月ぶりだね」
「そうだな。時がたつのは早いな」

 家の中に入ると、暖炉の中からパチパチと火花が弾ける心地のよい音がした。実家に帰ると、いつも落ち着く。

「ホットチョコレートでも飲むか」

 ホットチョコレートはヨヅキの大好物で、マシューはしょっちゅう作ってくれた。

「うん。でも、自分で作るよ」
「たまには、俺に何かさせてくれ。ヨヅキは、座って待っていろ」
「ありがとう」

 マシューは、暖炉の炎を利用して牛乳を温め、チョコレートを溶かした。辺りには、ほんのりと甘い香りが漂い始めた。
 渡されたホットチョコレートを飲むと、口の中に程よい甘みの液体が解けていった。

「すごくおいしい」

 今度は、味わうように目を軽くつぶってもう一口飲んだ。

「そうよかった」

 マシューも自分の分のホットチョコレートを飲みながら、満足そうに微笑んだ。

「今日は、いつもより遅かったな」

「ごめん。ちょっと用事があって……」

 叔父さんは、観察するようにヨヅキの頭から足の下までジロジロと見つめた。

「わかった。ヨヅキ……。今日は、デートだったんだろう」

「はあああああああああ?」

 ヨヅキの口から、空気が抜けたような声が漏れた。

「何言っているんだよ!デデデデートなんかじゃないし」

 突然変なことを言われたせいで、パニック状態になりそうだった。

「でも、そんなにおしゃれをしているヨヅキなんて初めて見た。食事も食べてきて、プレゼントも、もらったんだろう」

 マシューは、ヨヅキが持っているラッピングされて小箱を見逃さなかった。

「これは……」

 このプレゼントは、誰かの代わりにもらっただけだ。しかし、美容院に連れて行ってもらって、服は買ってもらったと説明すると、ますます誤解されるだろう。

 何て言ったら誤解が解けるんだろう……そう頭を抱えたが、いい案が浮かばない。

「照れるなって。だって、今日は、誕生日だろう」
「あ……」

 そうだ。今日は、6月24日だ。

(俺の誕生日じゃないか。たまたまこの日にアンジェロからご飯に誘われるなんて、こんな偶然もあるんだな……)

「どんな子と一緒にデートをしたんだ?」
「……綺麗な人だよ」

 もう誤解を解くのが面倒くさくなり、アンジェロの容姿について説明した。

「そうか。ヨヅキは、面食いだったのか」
「はああああああああああああ。違うって!そういうわけじゃないから」

 確かにアンジェロは、国一番かっこいいとか言われているが、付き合っているわけでも、デートしたわけでもない。

「それで、もう結婚するのか」

(そんなことあってたまるか!)

 ヨヅキは、顔から火を噴きだしそうな羞恥心に襲われた。

「ないないない!そんなんじゃないって!」

 必死で両手を振り否定するが、マシューは、そんなヨヅキを照れていると誤解したのか、目を細めて何度もうなずいていた。

(くそぉ……。アンジェロのせいだ。アンジェロが変なことばかりするから、叔父さんに誤解されてしまった……)

「でも、綺麗だと思っているんだろう」
「それは、客観的な事実だし、その子は……俺のことを好きなんじゃない」
「ヨヅキ。好きなら、全力でアタックしろ。お前は、俺みたいになるな。叔父さんなんて、チャンスを逃して一生独身だ。人生は、短い。ヨヅキには、好きな人と結婚して幸せになって欲しいんだ」

 マシューは、今年55歳になるが、未だに独身だった。そのせいか、しょっちゅうヨヅキにお節介を焼いてくるのだ。

「俺は、結婚しないって前にも言っただろう」

 ヨヅキの所属する特殊部隊課は、吸血鬼と対戦するため死亡率が高い。入社初日に部署でしたことは、家族へ向けた遺言を残すことだ。

 吸血鬼は、人間に比べ力も強く、早く動ける。ヨヅキも多くの仲間を失ってきた。アンジェロという天才が現れたことにより、ヨヅキの部署は死亡率が激減したが、自分もいつ死ぬかわからないと思っている。そんな自分が誰かと恋をしたり、結婚したりしたいと望むことは、身勝手なことだ。だから、ヨヅキは誰とも結婚しないと決めていた。

「ヨヅキも変わるかもしれない。その子のために、転職したらどうだ?俺は、ヨヅキには、長生きして欲しい」

「……叔父さん。俺は、変わらないよ」

 両親を殺され、シリウスに助けられた日から、自分は、変わってしまった。もう平凡な人生を送りたいと願っていた少年は、自分の中で死んでしまったのだ。自分の中では、どす黒い蛇のような感情がとぐろを巻いている。吸血鬼を殺し、自分のような人間を助けたかった。そして……両親を殺した吸血鬼を自らの手で殺したかった。

 その黒く歪んだ思いに突き動かされ、ここまできた。今さら、違う道を選ぶ気はない。

「そっか……。でも、危険なことはしないでくれ」
「うん。そんなことしないよ」

 叔父さんを心配させたくなくて、堂々と嘘をついた。
 再びココアを呑んだが、嘘をついて胸が痛むせいか、先ほどよりも苦く感じられた。
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