【完結】大嫌いな同僚が俺のこと大好きなヤンデレだった

夜刀神さつき

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秘密

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 残されたアンジェロは、受け取った人間を抱えながら、すぐ近くにあった古い洋館みたいな建物の門を開けて入っていった。

(何で……こんなところに入る?)

 アンジェロも、ハンターであるため規定により普段も寮で暮らしているが、ここは、あいつの実家なのだろうか。
 随分、古そうな建物だ。こんなところで、普通に生活できるのだろうか。それに、アンジェロは、家族がいないという噂は聞いたことある。家族がいないのに、こんなに大きな屋敷を保有し続けるものだろうか。
 彼は、ここで一体何をするつもりだろうか。
 ヨヅキは、門を見つめ続ける。

 普通に考えたら、ここから先は不法侵入になる。だけど、中に入っていったアンジェロがどうしても気になる。

「……」

(大丈夫。少し中を見るだけだ。あのアンジェロが連れて行った人間がどうなったのか確認したら、帰ろう。アンジェロには、絶対にばれないようにしよう)

 ヨヅキは、できる限り音をたてないようにゆっくりと門を開き、中に入っていった。


 入口のドアには鍵がかかっておらず、簡単に入ることができた。奥の方にある部屋から明かりが漏れている。不思議なことに、ほんのりと血の匂いも漂ってきた。

 ヨヅキは、明かりのある部屋にそっと近づいて、ドアの隙間から中を見た。そこから見えたのは、机の上に置いてある人間の頭蓋骨だった。

「……⁉」

 驚きのあまり声をあげそうになり、右手で必死に自分の口を押さえつけた。

(1つだけじゃない。1、2、3……20個近くある!どうしてこんなにたくさんの頭蓋骨がここにあるのだろう?)

 ドクリ、ドクリ、ドクリ、ドクリ……。
 心臓が早鐘のように鳴り響く。全身から、びっしょりと汗が流れる。
 嫌な予感がして皿に中を見ると、縛られた人間の首筋に牙を突き立て血をすするアンジェロの姿が見えた。彼の唇から深紅の血が流れ落ちて、喉仏は血を飲み込むように上下に動いている。

(アンジェロは、吸血鬼だったのか‼ここにある頭蓋骨は、全部、あいつが食べた人間なのか)

 ヨヅキに頭を殴られたような衝撃が訪れた。
 しかし、アンジェロが吸血鬼として納得したことも多い。

(だから、あれほど動きも早かったし、吸血鬼相手にも互角で戦えていたのか。そういえば、異様に怪我の治りが早かったな)

 ヨヅキは、震える自分の肩を抱きしめた。
 アンジェロの正体がわかると、先ほどまで描いていた彼の像が、風に吹かれた砂のように崩壊していくようだった。

 どうしてアンジェロがヨヅキを心配しにきたというバカな勘違いをしたのだろうか。
 彼がこんな時間にヨヅキを探していたのは、自分の正体がバレてしまうのを恐れたからだったのだろう。だから、心配する振りをして、テオの捜査を邪魔しようとしたのだ。

 あの時……アンジェロがヨヅキを部屋に誘った理由がわからなかった。
 もしかしたら、アンジェロは、自分に気があるかもしれないと考えたこともある。けれども、自分はそんなに美しいわけでもないし、彼に対して優しかったわけでもなかった。そんなわけないと否定した。じゃあ、アンジェロは自分と仲良くなりたかったのだろうかと考えた。
 だけど、そんな人間に、あんなムカつく態度をとるなんておかしいと疑問に思っていた。

 今、ようやくその疑問の答えがわかった。

 あの時、アンジェロは、ヨヅキを殺そうとしていたに違いない。

 二人きりになるチャンスを得て、ヨヅキの血を吸おうとしていたのだ。

 落雷に打たれるような激しい衝撃が、自分の中を駆け巡った。

 でも、どうして吸血鬼が、一番危険な場所であるハンターの組織に勤めていたのだろうか。普通に考えたら、頭のおかしいことをしているとしか思えない。どう考えても危険すぎる。バレたら周囲が敵となり殺されてしまうのだ。
アンジェロは、積極的に吸血鬼の討伐する仕事を引き受け、出世したがっていた。しかし、お金に困っている様子はなさそうだった。よくヨヅキをバカにしていたが、そのために出世したがるわけではないだろう。

 アンジェロは、吸血鬼のスパイとして潜入していたのだろうか。
その考えが一番しっくりきた。スパイとして潜入して、出世してハンターの情報を吸血鬼に渡すつもりだったのだ。

 じゃあ、そのアンジェロをどうするか。

 見なかった振りをするか。報告するか。それとも……自らの手で殺すか。

(俺が……アンジェロを殺せるのか……)

 剣の柄を握りしめる。その手がブルブルと震えた。

 アンジェロは、出会ったときから、嫌な奴だった。
 ヨヅキを目の敵にするようにバカにしてきて、仕事の邪魔もされた。しょっちゅう嫌がらせもしてきた。だけど、自分が見てきたのは、嫌いな側面だけではなかった。
気遣いもできて、話もうまく、一緒にいて心地よいと感じた瞬間もある。ヨヅキの誕生日に出かけた日も、驚くほど楽しい時間を過ごせたのだ。

 だけど、彼は吸血鬼だ。この大量の頭蓋骨が、彼の罪を証明している。このまま彼を殺さなければ、多くの人間が死んでいくだろう。人間の血の味を覚えた吸血鬼を野放しにはできない。
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