【完結】大嫌いな同僚が俺のこと大好きなヤンデレだった

夜刀神さつき

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「はっ。お前もさっきの下品な男みたいな真似をしたいわけ?」

「ああ、くそっ」

 アンジェロは、イライラした様子でヨヅキの顔面の横にある壁をドンと叩く。壁の一部が破壊されたのか、パラパラとした破片がヨヅキの横を舞っていく。

 あまりの威力にビビり、全身をブルリと震わすと、アンジェロから冷たい目で見下ろされた。

「ヨヅキ。お前、ハンターに向いていないって」

「はあ?」

「だいたいハンターがこんな風にすぐ死ぬことくらいわかっていただろう。知り合いの死でこんなに引きずられる奴は、危機的状況で冷静な判断ができない。お前みたいな奴は、ハンターをやめた方がいい」

 雨がザーザーと降っていて身体の熱を奪っていくのに、アンジェロに対しての怒りが収まる気はしなかった。

「お前……俺に悲しむなとでも言いたいのか?」

 そう殺意を込めて睨みつけるが、アンジェロは、淡々とした声で諭すように話し続ける。

「そうじゃない。お前の適性について話しているんだ。隊長の命令に背いて、1人で出歩く奴がハンターになったところで、すぐに殺されるだろう。他の奴らの足手まといになるだけだって」

「うっせぇな。お前に何がわかる?何もできない奴でいるなら、死んだ方がましだ。俺が死んでも何かの手がかりになればそれでいいだろう」

「……ちっ。この自殺志願者が」

「ああん?何だと?」

 それを聞いたヨヅキは、自分の血管が怒りのあまりブちぎれた気がした。

(こいつ、ちょっと強いからって俺のことをバカにしやがって。俺が、どんな思いで努力してきたかも知らずに、自殺志願者呼ばわりかよ!本当に大嫌いだ)

「だから、実力を考えろって言ってんだろう!お前みたいな奴、吸血を見つけても、すぐ殺されるだけだ。仇なんてうてるわけねぇ。ハンターなんて辞めてしまえ。家で引きこもって、好きなことでもしていろよ」

 彼は、へらへらとした薄っぺらな仮面をはがして、荒々しい声で殴りつけるように激しく怒鳴りつけた。

「そんなのやってみないとわからないだろう。それに俺だってこれから努力して、もっと強くなるつもりだ。だいたい、お前がいなければ、もっとハンターとして活躍することだってできていた。俺がテオの傍にいたら、あいつは殺されなかったかもしれない」

「はっ。弱いくせによくそこまで言えるな」

「うるさい。自分が弱いことくらい自分が一番よくわかっているよ。どうせお前みたいな奴には、俺の気持ちなんてわからないだろう!」

 そこまで聞いた彼は、言い過ぎたと気がついたのか、青ざめた顔でハッとしたように今にも泣きそうな顔をしているヨヅキをうろたえたように見た。

「ヨヅキ……違うんだ……」

 アンジェロは、震える声で小さくそう呟いたが、火山が爆発したようなヨヅキの怒りは、おさまらなかった。

「もういい。さっさと消えろよ。お前の顔なんて見たくない」
「……」
「アンジェロは、いつも俺のことをバカにして、悪口ばかり言っている。お前のそういうところが、嫌いだ。いや、それだけじゃない。お前の全部が嫌い。お前なんて、大嫌いだ!」

 それを聞いたアンジェロは、胸にナイフが突き刺されたように傷ついた顔をした。

(お前だって、俺のことなんて嫌いなはずなのにどうしてそんな顔する?)

「……わかった。今日はもう時間切れだ。お前は、1人で早く帰れ」

 そう言うと、アンジェロは、ヨヅキに言い返すことなくぼんやりとした様子で歩き出した。

(時間切れって何だ?何か用事があったってこと?それなのに、俺を心配して駆けつけてくれたのか?)

 残されたヨヅキは、寂しそうに立ち去るアンジェロの姿を見ながら罪悪感が沸き上がった。

「くそっ……」

(アンジェロが俺を助けてくれたのは、事実だ。……俺は、言い過ぎた)

 初めてアンジェロが戦う姿を見た時、何て美しいのだろうと見とれたことを昨日のことのように覚えている。彼は、誰よりも強くかっこよかった。

 そんなアンジェロからバカにされてばかりで悔しかった。本当は、ずっとあいつから認められたかった。肩を並べて戦いたかった。

 けれども、アンジェロから蔑む発現ばかりされて、ヨヅキの中で憎悪と嫉妬がとぐろを巻き続けたのだ。さっきは、素直に感謝できなかった自分が悪かった……。

 ハンターをやめろとか、向いていないとか言われて、ショックだった。けれども、自分は言い過ぎてしまった。


 アンジェロに謝りに行こう。助けてもらった感謝もちゃんと伝えよう。

 そう思いアンジェロの後を追いはじめたが、彼が寮とは逆向きに歩いていることに気がついた。激しい雨音はヨヅキの足音をかき消し、アンジェロは自分がつけられていることに気がつく様子はなさそうだ。

(こんな夜中に何をするつもりだろう?)

 やがてアンジェロは、あたりをきょろきょろ見渡しながら、1台の馬車へと近づいて行った。馬車の従者は、顔を隠すように大きなフードを被っている。

 フードを被った男は、アンジェロの姿を確認すると、馬車の中から手足を縛られ、頭に袋が被せられた人間を降ろし、アンジェロに渡した。アンジェロは、渡された男を肩に担ぐと、フードを被った男に小袋を渡した。

(あいつは、何をしている?まるで人身売買の現場みたいだ……)

 フードを被った男は、逃げるように馬車をひき、すぐにその場から去っていった。

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