【完結】大嫌いな同僚が俺のこと大好きなヤンデレだった

夜刀神さつき

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 その時、ドサっという派手な音がして男が突き飛ばされた。

「え?」

 顔をあげると、今にも血管がぶちぎれそうなほど怒りに満ちた顔をしたアンジェロがいた。

「俺の連れが失礼。この駄犬の面倒は、俺が見るんで」

 そう言って、アンジェロはヨヅキのことを荷袋みたいに肩に担ぎあげた。

「お、降ろせよ」

 どうしてアンジェロがこんなところにいるのだろうか。
 頭がぼうっとして上手く考えられない。逃げたかったのも事実だ。だけど、アンジェロに助けられるなんて、生涯にわたり残り続けるような恥だ。

「アンジェ……俺は……」
「いいから、黙っていろ」

 その低い声があまりにも怒りに満ちていたため、それ以上何かを言うことができなくなった。こんなアンジェロ、初めて見た。

(一体、どうして彼は、こんなに怒っているんだ?俺が暴言吐いたときも、ヘラヘラと笑っているのに……)

 そう疑問に思ったが、高熱が出たように頭がぼうっとしていたため、それ以上考えることができなかった。
 バーから出た後も、アンジェロは、ヨヅキを担ぐ手を降ろさない。
 いつの間にか、外ではバケツをひっくり返したような激しい雨が降っていた。雨は、矢のように二人の身体を打ち付けていく。服も髪もぐちゃぐちゃになるが、アンジェロは気にせず歩き続けた。

 激しい雨に打たれていくと、先ほど生まれた熱やアルコールが引いて行くのを感じた。

「もういいから降ろせよ!」
「いいから、大人しくしていろ」

 脅すように低い声で言われると、それ以上、何かを言えなくなった。

 しばらくすると、アンジェロは、ヨヅキを裏路地に押し込み、逃がさないと言わんばかりに、右手をヨルドの顔の横にドンと置いた。いわゆる壁ドンの姿勢であるが、怒りに燃えるアンジェロの赤い瞳を見ていると、ときめきよりも恐怖の方が湧いてくる。

「お前は、シリウスから1人で行動するなって言われていたよな。だけど、何で約束を破った?」

 アンジェロの声は、いつもよりも低く、ヨヅキを殺そうとしているかのように怒りに満ちているのが伝わってきた。

(どうしてアンジェロは、俺がシリウスに言われたことを知っているんだ?シリウスがアンジェロに話したのか?結局……アンジェロは、シリウスから信頼されているんだ。だから、そんなことまで話してもらえたんだ。でも、俺は簡単な調査することすら許されなかった……)

 そう思うと、目の前の男に、炎みたいに激しい嫉妬が渦巻いた。

 いつもだったら、嫉妬も醜い感情も押し殺していたのかもしれない。だけど、今日はダメだった。もしかしたら、先ほど飲んだ酒のせいもあるかもしれない。アンジェロを見れば見るほど、火に油を注ぐように激しい怒りのような感情が燃え上がっていく。自分で自分を制御することができないようだった。

「そんなのテオに関することを知りたかったからに決まっているだろう。お前は、いいよな……。隊長から信頼されて、仕事を任されて……。だけど、俺は……そんなこと許してもらえない」

 薔薇の蔓みたいに刺々しい言葉が溢れ出た。

「ヨヅキだって……役に立っているじゃないか」

 アンジェロは、いつものへらへらした胡散臭い笑顔を封印して、真剣そうな顔でそう慰めるように言うが、そのことがヨヅキを余計に惨めにさせた。

「嘘ばっかり……。お前は、俺にやめろ、向いていないって言うだけで、ハンターとして全然、認めてくれないだろう」

 そう真実を突きつけてやると、彼は、濡れた髪の毛をかき上げた後、開き直ったように語りだした。

「ああ、そうかもな。俺は、ヨヅキを弱いと思っている。だけど、それは事実だろう。さっきだって、俺が助けないとお前がどんな目にあっていたと思う?」

 そんな上から目線のような態度に、どうしよもなくイライラして目の前の男をナイフで突き刺すように傷つけてやりたくなった。

「助けてくれなんて頼んでいない。俺は、あいつの正体を知るチャンスだったんだ」

 嘘だった。
 だけど、こんな見下してくるアンジェロ相手に、どうしてもお礼を言いたくなかった。素直にお礼を言えばいいのに、プライドが鎖のように絡みついて優しい言葉を殺していく。

 ヨヅキの言葉を聞いたアンジェロは、苛立ちを抑えようともせず「お前、俺のしたことが余計だったとでも言いたいのか」と低い声で射殺すように睨みつけながら問いかける。

「……」

 怒りで満ちたアンジェロから胸倉を掴まれる。ヨヅキは、そのあまりの迫力に驚き、全身がビクッとなる。

「俺から、助けてもらわなくてよかっただと?俺は、あのままお前を放置させておけばよかったのか。そうしたら、ヨヅキは、どんな目にあっていたと思う?」
「それは……」

(違う。助けてもらわなくてよかったなんて思っていない。本当は、こいつに感謝している。だけど、こんな奴にお礼なんて言いたくない)

 アンジェロは、言葉につまるヨヅキの顎をクイッと持ち上げ、自分の顔を近づけた。

「ああ、わからないのか?だから。そんなバカなことが言えるんだな。だったら、どういう目にあっていたか、思い知らせてやろうか」

 アンジェロの吐息がヨヅキの唇に触れるくらい距離が近くなる。ヨヅキは、そんなアンジェロを軽蔑するように睨みつけた。
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