【完結】大嫌いな同僚が俺のこと大好きなヤンデレだった

夜刀神さつき

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シリウスVSヴィヴィアン

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 その頃、寮の3階西側で寝ていた特殊任務課の隊長であるシリウスは、悲鳴と共に飛び起きて、急いで廊下に出た。

(今の悲鳴は、ヘンリーのものか?吸血鬼が侵入したのか。早く助けないと)

 廊下を風のように走り出したシリウスは、1人の女を見かけて立ち止まる。
 彼女の髪色は、満月に照らされてはっきり見える。まるで血を被ったように綺麗な赤色だ。彼女は、前髪をぱっつんにした赤いロングヘアをしている。瞳の色は、桃色で、彼女のドレスの色は、カラスのように黒い。唇の色は赤黒く、肌の色は雪のように白かった。
 シリウスは、ピタリと足を止め、すぐに剣を構えた。

「お前は、吸血鬼か。テオを知っているのか」
「テオ?もしかして、コルトンに骨にされた奴かしら?」

 彼女は、首を傾げながら砂糖のように甘ったるい声で、そう言った。

(こいつの仲間が誰かを骨にしたのか?やっぱり、こいつは吸血鬼だ)

 シリウスは、瞬きをするのも忘れて目の前の女を観察するように見つめる。

「血の匂いがする。他にも吸血鬼がたくさん来ているな?お前たちは、隣国を襲った吸血鬼の家族か」
「別に……。家族が欲しいのは、ミクトランだけよ。あたしたちは、彼に頼まれて一緒にいてあげるだけ。本当は、情熱的な恋がしたいの。でも、あたしを愛してくれる男なんて誰もいないの。ルミティスはおもしろいことしか興味ないし、コルトンは食べることしか興味ない。どうせ誰もあたしのことなんて好きじゃないのよ!みんな嘘つき!みんな死ねばいい」

 彼女は、甲高い耳障りな声で叫びながら、精神が狂ったように自分の手にカッターナイフを突き立て、リストカットしだした。

(こんな吸血鬼は、初めて見た。まるで壊れかかったメンヘラ女みたいだ)

 シリウスは、唖然としながら彼女を見つめた。

「お兄さん、イケメンだね。あたし、お兄さんみたいな人タイプだわ。でも、お兄さんはあたしみたいな女タイプじゃないんでしょう。どうせあたしのことなんて、変な女だって笑っているんだわ」

(もちろん彼女が人間だったとしても、タイプじゃない。けれども、ここでは情報を引き出すことが大事だ)

 シリウスは、少し考え込んでから「俺が、付き合うって言えば、人間を食べることを辞めるのか。君は……とても綺麗だ」と彼女を試すように言った。

「本当?嬉しい!お兄さん、すごくかっこいいから。昔、好きだった人に似ている気がするわ。あたしの名前は、ヴィヴィアンよ」

 彼女は、頬を染めニコッと笑いかけてきた。

「ヴィヴィアン。他の吸血鬼の特徴と人数を教えてくれないか」

 そう尋ねると、彼女は自分の頬に長い爪を突き立て血を流しながら発狂しだした。

「嘘つき嘘つき噓つき噓つき噓つき噓つき噓つきいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
「ヴィ、ヴィヴィアン……」

 思わず、衝撃的な光景に後ずさる。彼女の精神状態はどう考えてもおかしい。

「きやすく名前を呼ばないで。あなたは、どうせあたしを利用しようとしているだけなんだわ。この嘘つき男がああああああああああああああ!!」

 彼女は、怒りのあまりか自分の手首をカッターナイフでズバっと切断した。けれども、手首はあっという間に生えてくる。

(再生の速度が速いっ。こんなに速い奴は、珍しい)

 シリウスの顔が険しくなる。

「振られるということは、あたしの存在意義を否定されることなの。あたしは、誰かも愛されない自分が許せない。あたしを否定する人間は、もっと許せない。あなたみたいに失恋したこともなさそうな人間は、どうせあたしの気持ちなんてわからないんだと思うけれど……。でも、いいわ。あたしだって、あなたのことなんて食べてやるんだから。あたしと一つになりましょう。それこそ究極の愛だわ。うふふふふふふふふ」

 ヴィヴィアンは、スカートをまくり上げて2本の細い剣を掴んだ。そして、蜂のようなスピードで、一瞬でシリウスの首を切り落とそうと飛んできた。シリウスは、その攻撃を避けるが、彼女のあまりの速さに分の悪さを感じていた。

(こいつは……めちゃくちゃ速い。攻撃は軽やかだが、俺の首くらい難なく切れるだろう。油断したら、一瞬で死ぬ)

 数回彼女と打ち合うが、シリウスの全身から滝のような汗が流れ落ちた。

「うふふふふふふふ。お兄さんが焦っている顔、素敵だわ。眼鏡をとるとどんな感じなのかしら」

 次の瞬間、ヴィヴィアンはシリウスの眼鏡を剣で弾き飛ばした。眼鏡を失ったシリウスは、彼女から距離をとるように後ろに下がった。
 眼鏡は、伊達であるから戦闘には問題ない。
 だけど、シリウスは、30代にしては幼く見える自分の顔が嫌いだった。

(ガルシアみたいに、歩いているだけでカツアゲができそうな顔だったら、よかったのに。そうすれば、相手も少しは自分を怖がったかもしれない)

「あら。さらに、イケメンになったわ。あなたの死体にキスしてあげる」
「ちっ……」

 こんな頭のおかしいわけのわからない女にキスされるなんて冗談じゃない。
 シリウスは、ヴィヴィアンを見ながらさらに後ろに下がっていく。

「あら?逃げるつもり」
「その逆だ」

 助走をつけて一気に彼女に近づいた。

「きゃあああああああああああああああああああああ!!!」

 そして、驚く彼女の剣を弾き飛ばし、背後に回り込んで心臓を刺した。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 断末魔の悲鳴をあげて、ヴィヴィアンが倒れた。辺りに洪水みたいに激しい血が飛び散り、シリウスの頬や髪を染め上げた。

「はあ、はあ、はあ……」

 シリウスは、彼女が動かなくなったことを確認すると、血の匂いが漂う奥へと歩き出した。
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