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ジョン・ニコラスVSヘル
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そのころ1階東側では、ジョンとニコラスが鉢合わせていた。ニコラスは、癖のある茶髪のアフロにモスグリーンの瞳をした、今年入ったばかりの新人で「あばばばばばばば。何が起きたんだ?」と青ざめながら、今にも気を失いそうな様子だった。
「血の匂いがする……。たぶん吸血鬼が侵入した」
ジョンは、辺りを見回しながら冷静にそう判断する。
「ええええええええええええええええ!!!ここは、ハンターの居場所なのに」
「復讐しにきたかもしれない。もしそうなら、1人とは限らない。大声を出すな。奴らに気がつかれる」
その時、月光の光がより一層差し込んだ。
ハチミツのような明るい金髪にヘーゼルの瞳をした美女が、音もなく現れた。白いドレスを着ている彼女は、月光で光り輝いているように見えて、妖精のように美しかった。彼女の手には、白銀色の軽そうな剣が握られていた。
「ふぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ニコラスは、恐怖のあまり尻尾を踏まれた猫のような悲鳴をあげた。
「で、でででででででで出たな。あわわわわわわわわわわわわわわわわ」
「落ち着け、ニコラス。こういう時は、冷静に戦い方を考えるんだ」
普段、アルコール中毒のゴミ人間であるジョンは、こういう時は、冷静だった。隣に自分以上にパニック状態になっている人がいたから、冷静になったというのもある。
「ジョンは、たくさん経験あるかもしれないけれど、俺、吸血鬼を見るのは3回目なんだよ。初回で恐怖のあまり剣を壁に突き刺して抜けなくなって、隊長に使えない奴と判断されていた。俺なんかにこんな強そうな奴を倒すのは、絶対に無理だってえええええええええええええええ」
ニコラスは、鼻水と涙を垂れ流しながらわめいている。
それを見たジョンは、必死でニコラスを殴りつけたい衝動を抑えていた。
(くそお。こんな使えなさそうな奴じゃなくて、ヨヅキやガルシアとペアになれればよかったのに)
2年前、ジョンは、アンジェロと部屋を交換した。アンジェロから交換条件に提示されたお金に飛びついたのだ。アンジェロは、ヨヅキの隣になりたかったのだろう。お互いに得をする交換条件だと思ったが、今となるとその判断が悔やまれる。
「お前……ちょっと黙れ」
イライラしながら低い声でニコラスに言うと、彼はようやく静かになった。
「こんばんは、ハンターさん。お会いできて嬉しいわ」
まるで鈴の音を転がすように透き通った声が響き渡った。
(この女、どこかで見たことがある。そうだ……。ゲイバー付近でオリバーを殺害したとき、テオがナンパしていた女じゃねーか。こいつも吸血鬼だったのか。そこからテオの正体がハンターであることがバレたのか……。くそっ)
悔しさのあまり唇を噛み締めると、ほんのりと血の味がした。
「あなた達に会えるなんて、最高の気分だわ」
「俺は、今日は酒を一口も飲めてなくて、最悪の気分だ」
給料日前ということもあり、ジョンの保有する酒は残り少なっていた。今日は、酒飲むのがもったいなくて酒瓶を拝んでいたら、飲み損ねてしまったのだ。自分の愚かな行いが心底悔やまれる。
「あらそう。かわいそうに……。今日があなた達の命日になるなんて」
ヘルは、全くかわいそうと思っていない口調でそう呟いた。
「ジョン!!!助けてくれええええええええええええええええ。生き残ったら、お前に好きなだけ酒をおごってやるよ」
ニコラスは、涙と鼻水を滝のように流しながらジョンに抱き着いた。ジョンはそれを引きはがしながら「それじゃあ、ニコラスが破産するまで飲んでやると言いたいところだが、俺一人じゃ無理だ。お前も協力しろ」と強い口調で命令するように言った。
「ででででも……」
ジョンは、ニコラスの胸ぐらを掴み上げた。
「お前、何のためにハンターになったんだ?何でここにいる?」
「……親友のせいだ」
かすれた小さい声で、ニコラスがそう漏らした。
「はあ?」
「マッドに庇われて生き残ってしまった命を……誰かの役に立てたかったんだ」
彼の声は溺れている人のように苦しそうで、瞳は罪悪感で染まっているようだった。けれども、そんなニコラス相手にジョンは、容赦のない声で「だったら、俺の役に立て。逃げることは許さない」とぴしゃりと命じた。
「はい……」
ニコラスは、涙目で小さくうなずく。彼の手の震えは、先ほどよりもおさまっていた。
「まず俺が行く。だから、お前は背後を狙え」
「はい」
ジョンは、ヘルに向かって攻撃をしだした。けれども、ヘルは、その攻撃がスローモーションで見えているかのように難なく躱していく。
「うふふふふ。大嫌いなハンターをこの手で殺すことができるなんて嬉しいわ」
ヘルは、好きな人から花束をもらった乙女のように嬉しそうな笑みを浮かべている。
「私がハンターにどんな目に合わされてきたか、あなた達には想像もつかないでしょうね」
「っ……」
(ああくそ。本当なら、今頃美味しい酒を飲んでいたはずなのに、お前のせいで台無しだ)
ジョンは、怒りを込めてテンポの速い攻撃をしかけていく。その隙に、ニコラスが背後を狙い出した。しかし、ヘルが振り返ってニコラスを見た瞬間、彼は奥に逃げてしまった。
ジョンは、そんなニコラスを追いかけて、怒鳴りつけた。
「逃げるなよ、ニコラス!今、チャンスだっただろう」
「だって……怖くって……」
「だからって、このままじゃいつまで経っても殺せない。いや……、それでいいのかもしれない」
ジョンは、動きを止めて考え込んだ。彼の金色の目が、何かを思いついたようにキラリと光り輝く。
「ニコラス。俺達は、あの女から距離をとりながら、攻撃を続けよう。隊長や副隊長の助けを待つんだ」
吸血鬼の弱点は、心臓である。心臓を銀製の剣などで刺さなければ、彼らは死なない。心臓以外の部位をどんなに傷つけても、彼らは身体を再生することができる。
しかし、心臓を狙うということはリスクを伴う。彼らに近づかなければ心臓を刺せない。近づくということは、殺される確率が上がってしまうということだ。
「ジョンは、隊長や副隊長は、生きていると思う?」
「……どっちみち隊長が死んでいたら、俺達に勝ち目はない」
ハンターで一番強い人間は、アンジェロかシリウスだ。そのアンジェロは、今はいない。シリウスも、吸血鬼と戦っている最中だろう。
「確かに。シリウス隊長が勝てない化け物に俺達が勝てるはずがない」
ニコラスは、ジョンが意図することがわかったようだ。
「ここで待って、どちらが勝つか賭けに出よう」
「わかった」
ジョンとニコラスは、握りしめた拳を軽く合わせた。
(俺たちは、危険な攻撃はせずにここで時間稼ぎをする。シリウスやガルシアが助けに来れば、きっと生き残れるだろう。しかし、相手の人数が増えたら、その時は、死ぬだろう。生き残って、運に任せるしかない)
上の階から、誰かが戦う激しい音が聞こえてきた。
「血の匂いがする……。たぶん吸血鬼が侵入した」
ジョンは、辺りを見回しながら冷静にそう判断する。
「ええええええええええええええええ!!!ここは、ハンターの居場所なのに」
「復讐しにきたかもしれない。もしそうなら、1人とは限らない。大声を出すな。奴らに気がつかれる」
その時、月光の光がより一層差し込んだ。
ハチミツのような明るい金髪にヘーゼルの瞳をした美女が、音もなく現れた。白いドレスを着ている彼女は、月光で光り輝いているように見えて、妖精のように美しかった。彼女の手には、白銀色の軽そうな剣が握られていた。
「ふぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ニコラスは、恐怖のあまり尻尾を踏まれた猫のような悲鳴をあげた。
「で、でででででででで出たな。あわわわわわわわわわわわわわわわわ」
「落ち着け、ニコラス。こういう時は、冷静に戦い方を考えるんだ」
普段、アルコール中毒のゴミ人間であるジョンは、こういう時は、冷静だった。隣に自分以上にパニック状態になっている人がいたから、冷静になったというのもある。
「ジョンは、たくさん経験あるかもしれないけれど、俺、吸血鬼を見るのは3回目なんだよ。初回で恐怖のあまり剣を壁に突き刺して抜けなくなって、隊長に使えない奴と判断されていた。俺なんかにこんな強そうな奴を倒すのは、絶対に無理だってえええええええええええええええ」
ニコラスは、鼻水と涙を垂れ流しながらわめいている。
それを見たジョンは、必死でニコラスを殴りつけたい衝動を抑えていた。
(くそお。こんな使えなさそうな奴じゃなくて、ヨヅキやガルシアとペアになれればよかったのに)
2年前、ジョンは、アンジェロと部屋を交換した。アンジェロから交換条件に提示されたお金に飛びついたのだ。アンジェロは、ヨヅキの隣になりたかったのだろう。お互いに得をする交換条件だと思ったが、今となるとその判断が悔やまれる。
「お前……ちょっと黙れ」
イライラしながら低い声でニコラスに言うと、彼はようやく静かになった。
「こんばんは、ハンターさん。お会いできて嬉しいわ」
まるで鈴の音を転がすように透き通った声が響き渡った。
(この女、どこかで見たことがある。そうだ……。ゲイバー付近でオリバーを殺害したとき、テオがナンパしていた女じゃねーか。こいつも吸血鬼だったのか。そこからテオの正体がハンターであることがバレたのか……。くそっ)
悔しさのあまり唇を噛み締めると、ほんのりと血の味がした。
「あなた達に会えるなんて、最高の気分だわ」
「俺は、今日は酒を一口も飲めてなくて、最悪の気分だ」
給料日前ということもあり、ジョンの保有する酒は残り少なっていた。今日は、酒飲むのがもったいなくて酒瓶を拝んでいたら、飲み損ねてしまったのだ。自分の愚かな行いが心底悔やまれる。
「あらそう。かわいそうに……。今日があなた達の命日になるなんて」
ヘルは、全くかわいそうと思っていない口調でそう呟いた。
「ジョン!!!助けてくれええええええええええええええええ。生き残ったら、お前に好きなだけ酒をおごってやるよ」
ニコラスは、涙と鼻水を滝のように流しながらジョンに抱き着いた。ジョンはそれを引きはがしながら「それじゃあ、ニコラスが破産するまで飲んでやると言いたいところだが、俺一人じゃ無理だ。お前も協力しろ」と強い口調で命令するように言った。
「ででででも……」
ジョンは、ニコラスの胸ぐらを掴み上げた。
「お前、何のためにハンターになったんだ?何でここにいる?」
「……親友のせいだ」
かすれた小さい声で、ニコラスがそう漏らした。
「はあ?」
「マッドに庇われて生き残ってしまった命を……誰かの役に立てたかったんだ」
彼の声は溺れている人のように苦しそうで、瞳は罪悪感で染まっているようだった。けれども、そんなニコラス相手にジョンは、容赦のない声で「だったら、俺の役に立て。逃げることは許さない」とぴしゃりと命じた。
「はい……」
ニコラスは、涙目で小さくうなずく。彼の手の震えは、先ほどよりもおさまっていた。
「まず俺が行く。だから、お前は背後を狙え」
「はい」
ジョンは、ヘルに向かって攻撃をしだした。けれども、ヘルは、その攻撃がスローモーションで見えているかのように難なく躱していく。
「うふふふふ。大嫌いなハンターをこの手で殺すことができるなんて嬉しいわ」
ヘルは、好きな人から花束をもらった乙女のように嬉しそうな笑みを浮かべている。
「私がハンターにどんな目に合わされてきたか、あなた達には想像もつかないでしょうね」
「っ……」
(ああくそ。本当なら、今頃美味しい酒を飲んでいたはずなのに、お前のせいで台無しだ)
ジョンは、怒りを込めてテンポの速い攻撃をしかけていく。その隙に、ニコラスが背後を狙い出した。しかし、ヘルが振り返ってニコラスを見た瞬間、彼は奥に逃げてしまった。
ジョンは、そんなニコラスを追いかけて、怒鳴りつけた。
「逃げるなよ、ニコラス!今、チャンスだっただろう」
「だって……怖くって……」
「だからって、このままじゃいつまで経っても殺せない。いや……、それでいいのかもしれない」
ジョンは、動きを止めて考え込んだ。彼の金色の目が、何かを思いついたようにキラリと光り輝く。
「ニコラス。俺達は、あの女から距離をとりながら、攻撃を続けよう。隊長や副隊長の助けを待つんだ」
吸血鬼の弱点は、心臓である。心臓を銀製の剣などで刺さなければ、彼らは死なない。心臓以外の部位をどんなに傷つけても、彼らは身体を再生することができる。
しかし、心臓を狙うということはリスクを伴う。彼らに近づかなければ心臓を刺せない。近づくということは、殺される確率が上がってしまうということだ。
「ジョンは、隊長や副隊長は、生きていると思う?」
「……どっちみち隊長が死んでいたら、俺達に勝ち目はない」
ハンターで一番強い人間は、アンジェロかシリウスだ。そのアンジェロは、今はいない。シリウスも、吸血鬼と戦っている最中だろう。
「確かに。シリウス隊長が勝てない化け物に俺達が勝てるはずがない」
ニコラスは、ジョンが意図することがわかったようだ。
「ここで待って、どちらが勝つか賭けに出よう」
「わかった」
ジョンとニコラスは、握りしめた拳を軽く合わせた。
(俺たちは、危険な攻撃はせずにここで時間稼ぎをする。シリウスやガルシアが助けに来れば、きっと生き残れるだろう。しかし、相手の人数が増えたら、その時は、死ぬだろう。生き残って、運に任せるしかない)
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