助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき

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患者発見

 賢吾は、森を抜けて隣国に出る予定で会った。
 しかし、彼は、森で迷子になっていたのである。
 そもそも、賢吾というのは、勉強や手術はできるが、それ以外のことはほとんどできないというダメ人間であった。料理もできず、方向音痴で、片付けもできず、空気も読めず、
自己管理も過労死してしまうくらいできなかった。
「おかしいな……。ここは、さっきも通った気がする」
 彼は、頭をかしげながら、その辺の道をグルグルと歩き回っていた。
 ふと血の匂いがすることに気がついた。
「クンクン……」

 なんと地面には、1人の血だらけの男が倒れていたのである。

「こんなところに、都合のいい患者が!!!」

 賢吾は、目をハートマークにさせて、目の前で死にかけている男を見つめる。
(これは、私の患者だ。早く治療をしないといけない)
 こんな風に意識がなかったら、麻酔はいらないだろう。
 内藤 賢吾は、善人ではない。困っていたら助けるという偽善根性が、骨の髄まで染みついた人間ではないのである。
 ただ、手術という行為が大好きなのだ。手術が成功すると、自分が神になったような万能感すら感じるのである。それが、味わいたくて、中毒者のように手術をすることを求めてしまう。
 顔面という領域は、賢吾が勤めていた病院では口腔外科医が担当していたため、賢吾がオペをするのは初めてだ。だけど、顔面の筋肉は、全て把握しているし、手術の見学もしたことがある。消毒して、縫い合わせるだけの簡単な手術になるだろう。

 賢吾は、手持ちの器具を火であぶり消毒した後、自分の手にも消毒液をつけた。そして、懸命に作業すると皮膚はパズルのピースみたいに繋がっていった。顔面の皮膚をつなぎ合わせると、男の顔立ちがかなり整っていることがわかった。
 男は、黒髪に日に焼けた爽やかそうな雰囲気をしていた。背は190センチくらいあり、がっしりとしている。
 手術が終わりしばらくすると、男は意識を取り戻した。
「うーん……」
 目が覚めた男は、辺りを見渡した。彼は、美しい翡翠の目をしていた。
「俺は……熊に襲われて……。ああ!!!痛いっ」
「あまり動かない方がいい。顔面の皮膚を縫い合わせたばかりだ。1週間以上安静にしておいた方がいいだろう」
「あなたが俺を助けてくれたんですか」
「ああ、そうだ。私のような人間は、困っている人間を放っておくことができなかったんだ」
 噓である。
 この男、手術がしたくてたまらなかっただけなのである。
「ありがとうございます。あなたは、私の命の恩人です」
「とりあえず手術で皮膚を縫い合わせたが、他にも治療が必要な個所もあるかもしれない。しばらく、私が住み込みで君の状態をみよう。1週間後くらいに抜糸もしなくてはいけないし」
「そんな……何てお礼を言ったらいいのか」
「ふっ。私は、手術したばかりの患者を放っておくことはできないんだ」
 賢吾は、髪の毛を右手でかきわけかっこつけながらそう告げた。
 嘘である。
 この男、今日、寝る宿がなくて困っているだけなのである。
「ああ、神様……」
 男は、賢吾を眩しそうに見つめながら、瞳を潤ませた。
「さあ、動けるようなら行こう。君は、ベッドに行き安静にした方がいい」
「わかりました。私の名前は、ラルフ・シェゲールです。この近くで、農業や狩りをしているものです。私の住んでいる小屋まで案内します」
「私は、内藤賢吾だ」
「では、ナイトウ様。ついてきてください」
 ラルフは、足をひきずりながら歩き出した。
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