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再会
しおりを挟む同窓会。
それは、過去の黒歴史が掘り返され、周囲から笑われる場所である。
俺、池田 誠にも誰にも触れられたくない黒歴史というものがあった。その黒歴史というのは、高校時代に学校一のイケメンに告白してしまったことであった。
そして、もう彼と会うことはないと告白をしてしまってから10年後……。
俺は、同窓会で最悪の再会を果たそうとしていた。
12月28日。
仕事が終わり地方の実家に帰省した俺は、お笑い番組を見ながら手を叩いて笑っていた。
「あははははははははははは」
やっぱり実家は、最高だぜ。こたつはあったかいし、年末の特番はおもしろい。
「あ、そうだ。年末にあんたの高校の同窓会が開かれるんだって」
テレビを見ている俺に、母さんが料理を作りながら話しかけてきた。
「へー。ソウナンダー」
まあ、若気の至りで男に告白してしまった俺は、同窓会なんて行くわけない。今年の年末年始は、実家に引きこもりながら過ごそう。テレビでお笑い芸人を見ながら、母さんの話を聞き流す。
「だから、勝手に参加するって連絡しておいたわよ」
母さんの言葉に、俺は、目ん玉が飛び出そうになるほど驚いた。
「はああああああああああああああああああああああああああああ!!!何しているんだよ!」
「だって、あんた実家に帰ってもゴロゴロするだけで何もしないでしょう。今年も帰省するって聞いていたし、同窓会でかわいい彼女でも見つけて来なさいよ!」
母さんは、料理をしていた手を止めて、こちらにそう文句を言ってくる。
「お、俺に彼女がいない前提かよ……」
「どうせそうでしょう。こんなところくらいしか、あんたに出逢いなんてないでしょう。別にいいでしょう」
全然、よくない。
俺は、男に告白してしまった気持ち悪いホモなんだぞ。万が一、楓が言いふらしていたら、同窓会中の笑いものになってしまう。
同窓会は、インフルエンザになったことにして欠席しようか。いや、母さんに仮病がバレてしまう。
くそおおおおおおお。俺は、地獄の同窓会に行くしかないのか……。
* *
ついに同窓会の日が来てしまった。
俺が同窓会に出ることで、楓が気持ち悪い思いをするかもしれない。そうして俺が考えたのが、結婚偽装だった。
指輪をつけて結婚した振りをするのである。そうすれば、もしも周囲に『お前、楓に告ったんだってなー』って笑われても、前髪をかき上げながら『あれは、完全に若気の至りだったよ。今では美しいワイフがいるさ』とかっこよく答えることができる。楓だって、いつまでも俺が初恋を引きずっているとは、夢にも思わないだろう。
どうせこんな田舎には、年末年始以外戻らず、その時は親としか顔を合わせない。俺の付いた嘘もバレないだろう。
もう傷だらけの恋をしたいと思うほど、子供じゃない。誰かに本音でぶつかりたいと思う勇気すらない。
本音を隠して、へらへら笑って、空気を呼んで……今日は、最後まで、いい大人を演じ切りたい。
同窓会につくと、さっそく太っている男から話しかけられた。
「よっ。池田じゃねーか。お前変わらないな」
「お前もな」
こいつ誰だっけと思いながら、適当にそう返す。
「そういえば、俺、看護師と付き合っているんだよね。お前はどうだ?」
「俺。もう結婚しているんだよね」
嘘である。
この男、結婚どころか、人生で一度も恋人がいたことがないのである。
もう一生童貞処女として生きていくことを決めてしまった僧侶のような男なのである!!!
「ええ!嘘!」
「まじかよ。お前に先を越されるとは」
周囲に、一昨日中古で買った3000円の指輪を堂々と周囲に見せつける。
「お前、もう結婚していたのかよ」
「意外だな」
「奥さんの写真みせてよ」
近くにいた林が、定番の質問をしてきた。
ふっ。計画通り。
当然、俺は、抜かりない。ノープロブレムさ。
上司とキャバクラに行ったとき、かわいい女の子との2ショットを手に入れていた。それを見せればいいだけだ。
「えええ。しょうがないなー」
俺は、恥ずかしそうに頭をかきながら、用意した写真を周囲に見せつけた。
「なんか……お前の奥さんって……」
「ちょっと派手だね。ちょっと意外」
だって、キャバ嬢だからな。
「いや、でも綺麗な人だな。お前にしては頑張ったな」
恰幅のよくなった林は、ガハハと笑いながら俺の背中をバシバシと叩いた。
お前にしてはって何だよ!確かに俺は、誰からも告白なんてされたことがない地味な男だけどな。
その時、背後から「誠の奥さんってどんな人?」とブラックチョコレートみたいに低く滑らかな声がした。
「ひっ」
ビクッと大げさに反応してしまう。
結婚している設定にしていて、よかったー。このままじゃ、初恋を永遠に引きずる気持ち悪い中年ストーカーだと思われるとこだった。
そこにいたのは、東条 楓だった。
あああああああああああああ。
相変わらず、クソかっこいいな。惚れ直してしまう。
癖のないサラリとした黒髪に、目が自然と惹きつけられる桃花眼の瞳。モデルのような高身長で、全身に程よい筋肉がついているため、ひょろひょろした感じがしない。学ラン姿もかっこよかったけれど、スーツ姿も似合っている。繊細な美貌に、暴力的な色気も組み合わさっている。存在そのものがエロスだ。18禁に相当しそうなくらい声にも色気があり、一言聞いただけで腰が砕けそうだ。
近くにいると、いい匂いがフワッとする。安物のシャンプーとかではなく、清潔感あるできる男の香りだ。
って、何で楓の匂いなんて意識しているんだよ!相変わらず、気持ち悪いな、俺は……。
楓は、林から受け取った俺のスマホに映っている写真をまじまじと見つめた。
「ふーん。綺麗な人だね。お前の趣味変わった?」
ぐほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。何てひどい質問をするんだ!!!
お前の言葉は、俺の心に右ストレートくらいのダメージを与えたぞ。
それって明らかに、『高校時代は俺のことを好きだったのに、こんな女と結婚したのか』という皮肉だ。
しかし、こんなことで負けたりはしない。俺の不屈のメンタルは、ブラック企業でダイヤモンドのようにつるつるに磨かれたんだぞ。
「まあ、10年も経てば趣味くらい変わるって」
俺は、さりげなく『お前のことなんて過去になったぞ』とアピールした。
「そうなんだ」
そう言いながら、楓は俺にスマホを返してきたので、受け取ってポケットにしまう。
楓とスマホで間接接触したから、手を洗いたくない……。って何、気持ち悪いことをまた考えているんだよ。
やっぱり、今でも、こいつのことが好きだ。だけど、その気持ちは、誰にも触れられたくない。心の片隅で、鍵をかけて厳重にしまい込んでおきたい。
「そういうお前は、どうなんだ?」
「俺?ずっと好きな人がいるから、恋人も作らなかった」
楓は、俺の方をジッと見ながら言った。自分は、俺とは違って一途な人間だとアピールしているのかもしれない。
俺みたいな奴が同じセリフを言うとキモく感じるかもしれないが、楓がこのセリフを言うと、映画のメインヒーローみたいにかっこいい。イケメンってずるいな。
だけど、楓が片思い?意外だな。
「意外だな。お前が告白すれば、どんな奴でもオーケーすると思うのに」
「へー。お前でも?」
そう流し目で試すように聞かれて、心臓が大きくドクリっと跳ねた。
くそっ。からかわれている。
俺が高校時代に告白したことに対する皮肉だ。
しかし、俺は、準備を完璧にしてきた偽装結婚詐欺師だ!この時のために、何度も鏡で練習してきた。
「ハハハ。冗談言うなよ。俺は結婚したし、もう奥さん一筋だよ」
唇を吊り上げながら、ニッコリ笑う。きっとアカデミー賞をもらえるくらいの名演技に違いない。
「そうか。じゃあ、お前の結婚を祝うから、たくさん飲んで」
楓は、近くにあってシャンパンを俺に渡してくる。
「うん」
俺は、楓と乾杯をしてシャンパンを一気に飲み干した。
もう窮地は乗り切った。
楓の友達として上手くやれている。俺をゲイだと、こいつのことをまだ好きだと指摘する人間は、誰もいなかった。
今夜は、俺の完全勝利だ。
このまま黒歴史を永遠に封印して、“いい大人”として同窓会を終えることができそうだ。本当によかった……。
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