6 / 41
遭遇
しおりを挟む「俺が、漫画家として成功できたのは、全部、誠のおかげだ。誠の言葉が、いつも俺に勇気をくれた」
楓は、俺の肩に手を置きながら、まっすぐ目を見て話しかけてくる。それを聞いた俺は、チベットスナギツネのように目が点になった。
いや、俺、あの時、漫画を読んだことなんて一度もなかったし、漫画業界がどういうものかも知らなかったんだよ。
よくわからない罪悪感で胸が痛い。
でも、楓が夢を叶えて幸せに生きているなら、よかった。楓だったら、何でもできると思っていたのは事実だ。
だけど、楓って、東条グループの跡継ぎとか言われていたような……。
「両親から、反対されなかったの?」
「反対されていたよ。父さんも、母さんも、俺には、会社の跡をついで欲しかったんだ。でも、俺は、それを辞退した」
俺の一言が東条グループの未来を変えてしまっただと⁉
え?そんなバカな……。
俺ってとんでもないことをしてしまったんじゃないか。
恐怖で、手がブルブルと震えてくる。
「親不孝ものと殴られ、実家とは縁が切れた時もある」
「……」
あばばばばばばばばばばばば。
俺の発言のせいで、そんな事態になっていたなんて!!!
「風呂がついていない狭いアパートで暮らしていた時期もあった。父さんたちは、俺がすぐに辞めると思って、一切支援をしなかったんだ。売れないときは、エロ漫画を描いていたときもある。誠も見てみる?」
「お、お前が!?エロ漫画?」
驚きのあまり、声が裏返ってしまった。
この爽やか100%ですみたいな男が、エロ漫画とか似合わなすぎる。
「売れるためには、いろいろやったさ。世間では知られていないけれど、これも俺が描いていたんだ」
そう言われながら、渡された本を見て、あまりの破廉恥さにギョッとした。
『上司と旅館で不倫してしまいます』
『親友の彼氏に襲われた!』
そんなタイトルがある本の表紙には、男に拘束されながらアへ顔している巨乳の女の子が描かれていた。
「あ……」
こいつでも、こんなエロいことを考えるんだ。想像したら、顔が林檎のように真っ赤になってしまった。
「何を考えているの?」
「あ、えっと……。このヒロイン、気持ちよさそうだなって……」
「誠は、破廉恥だな」
耳元でボソッと言われると、さらに真っ赤になってしまう。
あれ?こいつの作品……寝取られとか、不倫ばっかりじゃない?
も、も、も、も、もしかして……。
俺は、一つの結論に達した。
そう。楓は、寝取りや不倫の趣味があるに違いない!!!
彼は、真面目な優等生すぎて、いつの間にか性癖が歪んでしまったのだ!
だから、平凡なサラリーマンである俺なんかに興味を持ったのだ!!!
そうじゃなかったら、モテ過ぎて困ってしまう人生を歩んできた楓が、俺なんかに興味を持つことに説明がつかない。
きっと人には言えない趣味を持っていた楓は、苦しんでいたに違いない。そんな時、過去に自分に告白をして立ち去った男が、結婚したということを知ったのだ。男だったら妊娠もしないし、どうせ昔、告白してきた男だったら、抱いても大丈夫だろうと考えたのかもしれない。
楓と付き合えるなんて、俺の人生における一番輝いている瞬間かもしれない。実は、結婚していなかったなんて言うのは……もうちょっと先でもいいんじゃないかな……。
楓だって、人妻や、彼氏持ちの女と付き合うより、誰も恋人がいない俺と付き合った方が健全だろう。
そういうことなら、もう少しだけ、俺が結婚していないということは黙っておこう。俺は、心の中で、そう決意をした。
「誠のこともこんな風に気持ちよくさせてあげる」
楓は、俺の後頭部を手で支えながら、ソファーにゆっくりと押し倒してきた。
「え、えっと……」
「だから、早く奥さんと離婚して、俺だけのものになって」
そう言うと、俺からの返事はいらないと言うように、彼は、強引に口をキスで塞いだ。
* *
その日は、流されるまま楓と体を重ねてしまった。俺が本当のことを言ったらこんな関係は終わるかもしれないが、それまで楓と付き合っていたかった。
翌朝、楓の仕事を邪魔しないように早めに家に帰ることにした。楓は、俺を送ろうとしてくれたが、楓の迷惑になりたくなくて断った。彼から渡された漫画や、茶封筒の離婚届けは、紙袋に入れてもらった。
エレベーターを降りてマンションから出た途端、茶髪の巻き髪をした人形のようにかわいらしい女の人と目が合った。持っている服やバッグも高級そうだし、金持ちのお嬢様のように見える。彼女は、なぜか俺を睨みつけながら、近づいてきた。
「あなた、楓とどういうご関係なの?」
彼女は、鈴の音ようにかわいらしい声をしながら、いきなり尋ねてきた。
楓の知り合いなのだろうか。だから、俺に興味を持ったのかもしれない。
「俺は、楓の……友達です」
「私は、葉月 桃華。楓の婚約者よ」
「え?」
衝撃のあまり、俺は持っていた紙袋を床にポトッと落とした。
床に落ちた紙袋は横に倒れ、楓から受け取ったエロ漫画が床に散らばった。
乳首まる出しでアへ顔をしている女の子が表紙の漫画や、不倫、種づけセックスなどいかがわしい文字が丸見えになる。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
桃華の甲高い悲鳴が、フロア中に響き渡った。
俺は、楓の婚約者に対してとんでもない精神攻撃をしかけてしまったようだ。
156
あなたにおすすめの小説
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
からかわれていると思ってたら本気だった?!
雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生
《あらすじ》
ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。
ある日、「あいつ真に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。
葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。
弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。
葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる