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偶然
しおりを挟むそこにいたのは、不機嫌そうに腕組みをした東条楓だった。彼は、俺と蓮を殺意を込めて睨みつけている。
俺は、浮気現場を見られた主婦のように、顔が恐怖で死体のように青ざめた。
やばい。蓮と抱き合っていたところを見られてしまった。
「どういうことだ?俺の他にも男がいたの?」
楓は、連続殺人犯のようにドロリと濁った眼をしながら、俺達に一歩ずつゆっくりと近づいてくる。コツリ、コツリと響き渡る楓の足音を、やけに大きく感じる。
俺は、緊張のあまり唾をゴクリと飲んでから、口を開いた。
「え、えっと、蓮はそういう関係じゃなくて」
すぐにそう否定するが、蓮は、なぜか俺の口を右手で塞ぎ、ニヤッと意地悪な笑みを浮かべた。
「ああ、そうだ。俺と誠は、付き合っている」
その言葉に楓は足を止め、不快そうに眉をひそめ、ジロジロと蓮を観察する。
ええええええええええええ!!!何でそんなことを言うんだよ!!!
これじゃあ、楓から見た俺って、結婚しながら二人の男と不倫をしているとんでもないビッチじゃないか!どうして俺は、そんな人格破綻者みたいな設定になってしまったんだ!!!
さっき変な説教をしたから、意地悪してやろうとでも思っているのか。
楓は、イライラしたように髪をかき上げ「はっ。躾直しが必要みたいだな」と吐き捨てた。
髪をかき上げた楓は、色気が倍増してかっこいい。
ってそんなことを考えている場合じゃない。
まずいこのままじゃ、大変なことになってしまう。
俺は、強引に俺の口を押えていた楓の手を振りほどいた。
「違う!誤解だ!!!俺は、こいつと付き合ってなんかいない!」
そう楓に言うが、蓮は、馴れ馴れしく俺の肩をガシッと抱いてきた。
「何を恥ずかしがっているんだ、誠。俺と誠は、一緒にホテルに行くような仲じゃないか。このコートだって、俺にくれただろう」
そう言いながら、ニヤニヤと面白そうに笑いかけてくる。
あああああああああああああああああああああああ!!!こいつ、俺を殺す気か!
今の言葉は、嘘じゃないけれど、どうしてそんなに誤解を招くような言い方をするんだよ!!!
それを聞いた楓は、顎に軽く手を当てながら、不安そうに口を開いた。
「本当?正直に言って、誠。俺は、誠の言うことだったら、何でも信じるよ。こいつとホテルに行ったの?」
「えっと……その……ホテルには、行ったけれど、事情があったし、こいつとの間に何もなかったんだよ」
俺は、手を振りながら、必死に説明する。
えっと、蓮が段ボール箱に入っていたことを言っても、信じてもらえるだろうか。いや、この状況でそんなことを話しても、すごく嘘っぽく聞こえてしまわないか。そんな変な話、俺だって今まで聞いたことがない。だいたい、蓮みたいなキラキラしたイケメンが段ボール箱に入っていたなどと言っても、信じてもらえない気がする。
じゃあ、どう説明すればいいのだろう。
そう必死で悩んでいると、蓮は俺の手を自分の頬に当てながら、うっとりとしたように微笑んだ。
「誠の方から手を引っ張って積極的だったよな」
俺の設定が、この世の終わりみたいなとんでもないビッチになっているぞ!
俺は、蓮の頬に当てられた自分の手をさっと引っ込めて、彼から距離をとる。
「誤解を招くようなことを言うな!」
そんな風に否定する俺に、楓は「照れないで。誠の作ったカレーも美味しかった」と追い打ちをかける。
恩を仇で返されるとはこういうことを言うんだな!
「カレー……そいつに食べさせたの?」
楓の声がさらに低くなる。目に光がないような気がして、すごく怖い。
「えっと……ちょっと余っていたから……。本当にこいつとは付き合っていないんだよ!えっと……ただの友達で……」
俺は、頭をかきながら、必死で説明しようとするが、汗が止めらない。
どうして本当のことを言っているのに、こんなに嘘っぽくなってしまうんだ!!!
胃がキリキリと痛む。このまま胃に穴が開かないか、心配だ。
楓も俺の言葉を意訳したのか「セフレってこと?」と尋ねてきた。
「そんなわけないだろう!!!」
俺がそう否定するが、楓は少し疑っている様子だ。
「誠。そんな男は、やめておけ。見るからにチャラそうだ。誠を不幸にするだろう」
やめとけも何も、付き合っていないんだが……。
しかし、俺がちゃんと説明する前に、蓮が腕組みをしながら、楓を挑発するようにしゃべりだした。
「お前の方こそ、邪魔だよ。俺と誠が抱き合っていたのが、見えなかった?」
「誠は、お前のその態度迷惑そうだけど」
楓もそうイラついたように言い返すが、蓮の態度は余裕そうだ。軽く手を広げ、笑みを浮かべながら、楓に語り掛ける。
「俺に嫉妬して、目がくらんでいるんじゃないの?」
「はあ?お前こそ俺に嫉妬しているだろう」
楓と蓮が、親の仇でも見つけたようにバチバチと激しく睨みあう。
何だよ、これ……。
一体何を見せられているんだ?
俺は、ちょっと同窓会で嘘をついただけの男なのに、余計に複雑なことになっていないか。どうして蓮は、俺に濡れ衣を着せようとするんだ?
その時、1人の茶色のショートボブをした髪の美女が歩いてくるのが見えた。彼女は、黒いコートを着ていて、ヒールのある靴を履きながらコツリ、コツリとこちらに近づいてくる。
その美女は、俺の姿を見かけると、陽だまりみたいな笑顔を浮かべた。
「あら、誠ちゃん。こんにちは」
ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
もう俺の心臓は、喉から飛び出て宇宙へ行きそうだった。
「「「……」」」
なんてこった。
今日は厄日かもしれない。
そこで現れたのは、キャバ嬢のナナちゃん。
俺が妻だと偽った女である!!!
楓から見ると、妻と不倫相手二人が遭遇したヤバい現場が爆炎してしまったのである!
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