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嫉妬
しおりを挟む楓と蓮がいる現場に、現れたのは、キャバ嬢のナナちゃん。
俺が妻だと偽った女である!!!
楓から見ると、妻と不倫相手二人が遭遇したヤバい現場が爆炎してしまったのである!
彼女は、軽く手を振りながら、俺の方に近づいてきた。
「もしかして、誠ちゃんも帰るところ?」
「えっと、そ、そそそうなんだ」
挙動不審になりながら、何とか返事をする。
ダメだ。冷や汗が止まらない。1秒ごとに寿命が縮まっていく気分だ。
俺は、どうすればいいんだ。
「じゃあ、一緒に帰らない?」
「あ……あの……。その……」
実は、このキャバ嬢のナナちゃんは、俺の同じ安くて狭いアパートに住んでいるのである。両親が事故で死んだ彼女は、弟の学費を払うためにキャバ嬢になったそうだ。
アパートの前で、ゴミ捨てをしている時に、偶然会って、彼女の方から話しかけてくれた。俺のことは、ガツガツしていないし、自分を狙っていないこともわかるから、安心して話せると言っていた。
そんなこともあり、お店では、彼女の方から2ショットを撮ることも提案してくれたのだ。そういう理由で、俺のスマホには、彼女との2ショット写真が存在していた。
しかし、この“一緒に帰る”という表現は非常にまずい。彼女からしたら、方向が一緒だから一緒に帰ろうというただの提案だが、楓からしたら、俺が別居中の妻と仲が良かった証のように感じるだろう。
どうやって対応すればいい?本当のことを言えば、ナナちゃんにまで、俺の醜態がバレてしまう。
「うん、帰ろうか」
俺は、考えることを放棄して、ナナちゃんに同意した。
とりあえずこの場は、ナナちゃんと帰るしかない。彼女に変な話をするわけにはいかない。
状況に応じて、後で楓には、本当のことを打ち明けよう。楓との関係がもうちょっと続いて欲しかったが、さすがに二股疑惑と、妻と親密疑惑がかかったいま、楓だって俺にガッカリして呆れただろう。もう俺のことなんて、嫌いになってしまったかもしれない。
しょうがない。仕方がなかったんだ。
どうせ楓に捨てられるのは、時間の問題だったに違いない。
俺みたいな奴が、楓みたいな人の心をいつまでも繋ぎ止められるはずがないんだから。
そう考えながらナナちゃんの方に歩き出した時、ふいにガシッと右腕を強く掴まれた。驚きながら横を見ると、楓が鬼のような形相をしながら、俺の腕を握りしめていた。
「え?」
目をパチクリしていると、楓は感情を押し殺したように、ナナちゃんに爽やかなに笑いかけた。
「あの奥さん、誠をお借りしますね」
「はい?」
そして、呆然としているナナちゃんと蓮を置いて、俺を引きずるように近くの駐車場まで連行していった。
楓は、近くのコインパーキングにある赤いフェラーリの前で止まると「乗って」と鋭い口調で命令するように言った。
彼は、めちゃくちゃ怒ってそうだ。俺を離婚する気がないのに離婚すると言ったり、他の男とホテルに行ったりするような最低な男だと思っているのだろう。車の中で、俺を罵るかもしれない。
俺は、恐怖で怯えながらも、フェラーリの助手席に乗り込んだ。すぐに料金を払い終えた楓も隣に乗り込んでくる。
楓は、無言で車を発車させると、法的速度ギリギリの高速で運転し始めた。
彼は、一体どこに行くつもりだろう。
どんどん人気のない方へと走っている気がする。
やがて、彼は、誰もいない雑木林のようなところで車を止め、頭に手を当てながら長い溜息をついた。
長い沈黙の後、楓は、くるりと俺の方を向き、光のない目をしながら尋ねてきた。
「離婚する気なんてなかった?俺とのことは、遊びだった?」
楓は、血管が浮き出そうになるほど、怒っていた。
「そうじゃなくて……。その……俺……嘘をついて……」
しどろもどろになる俺のネクタイをグイッと掴んできた。
「うぐっ」
「さっきは、奥さんと仲良さそうだったよね。離婚の話は、まだしていない?どうせ誠は、俺と一緒に暮らす気はなかったんだろう」
どうしよう。
楓は、めちゃくちゃ怒っている。
ここで実は、結婚なんて嘘だったって言ったら、さらに怒ってしまうのだろうか。いや、でも、ここまで怒っていたら、素直に言った方がいいんじゃないか。
まるで、楓は、嫉妬をしているみたいだ。
「あの……実は……」
「いや、やっぱり教えてくれなくていい。それより、さっきの男って誰?」
「蓮という名前で、最近、知り合っただけだよ」
くそっ。蓮の存在自体がうさんくさい。
「随分親しそうだったけれど。あいつ、誠と付き合っているとか言っていたよね」
「あいつは、ただの知り合いで……」
ちくしょう。蓮に関する説明が難しすぎる。あいつのこと、実は、俺もあまり知らないんだよ。
「ただの知り合いとホテルまで行く?」
「凍死しそうで放っておけなかったんだ」
そう本当のことを言いながら、何て嘘くさい説明だろうと自分でも思った。
「へーそうだったんだ。あんな奴がね」
楓は、俺の言葉が信じられないのか、棒読み口調でそう言った。蓮みたいな容姿の男は、居場所には困らなそうだと思っているのかもしれない。
ふいに彼は、俺の首にガブッとかみついてきた。
「ひゃっ……。楓!ここ、外だよ」
「どうせ誰も見ていない」
そう言って、今度は、俺の服の下に手を突っ込んできた。そのまま乳首を軽く引っ張る。
「あんっ……あっああ……」
服の下で楓の手が、俺の乳首を引っ張ったり、軽く押したりしてくる。ここは、車の中だから、こんなことをしている場合じゃない。だけど、快感のあまり頭が真っ白になりそうだ。
「安心して。誠がどんなに淫乱でも、俺が誠を満足させてあげるから」
楓は、低く滑らかなブラックコーヒーのような声で、俺の耳元にそう囁いた。
そして、耳を飴玉のようにしゃぶりながら、俺の胸をいじり続ける。
「あ……っあ……あああ……」
俺は、恥ずかしさと快感のあまり目に涙が滲んできた。こんなところで気持ちよくなんてなりたくない。だけど、敏感なところを刺激されると、皮膚が泡立つ。
「誠は、俺だけのものだよ。誰にも渡さない」
そして、返事はいらないと言うように、楓は俺の口を塞ぐように、荒々しいキスをしてきた。
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