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TKG

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 必要最小限の荷物を急いで用意して馬に乗った。一日中馬を走らせて向かった場所は、TKGの本部があるペルーシカだった。

 TKGは、世界最大のテロ組織だ。僕は、メシアとして国際的なテロ組織TKGと繋がりを持っていた。ちなみに僕には、TKGが卵かけごはんの略に聞こえてしまう。本当の意味は知らないが。

 TKGは、もともと独裁者に不満を持つ者がたくさん集まっていた。そして、メシアに対して、軍事基地の場所、独裁者の居所、犯罪者の場所など、様々な情報を無料で提供してくれていた。相手は、予告通り数々の場所が破壊されるとコンピュータ上で連絡をとっている人間がメシアであることを信じてくれ、さらに協力的な姿勢を示してくれた。特に、情報屋のJと呼ばれる人間とは、数多くやり取りをしていた。

 基地がある場所の途中の裏路地に向かうと、ふいに飛び出してきた男が剣をつきつけた。

「おい、てめぇ。どうしてここがわかった」
「ひっ」

 喉元に剣がつきつけられた。
 月光により銀色の剣がきらめていている。
 男は、20歳前後だろうか。まだ若そうだが、全身からビリビリするような殺気が出ている。

「おい、顔を見せろ。じゃなければ、殺す」 

 僕は、しぶしぶとフードを脱いだ。
 黒色の目が見開き、口笛を吹いた。

「おいおい、こんな大物が現れるなんて……。あんたギル・ノイルラーかよ」

 隠したところで、どうせばれる。だったら、正直に話した方がいい。

「そうだ」

「まさか、ずっと殺したいと思っていた相手が自ら現れるとはな。ちょうどいい機会だ。ミンチにしてやる」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ。ここのリーダーに大事な話があるんだ」

「はあ?何かの罠か。てめぇみたいな奴にリーダーを会わせられるわけないだろう」

「武器は所持していない。調べてもらって構わない」

「地獄でてめぇの今までの行いを反省していろ」

 くそっ。こいつ、聞き耳を持たない。

「4月3日モスク外壁を破壊予定。4月14日マルゲリー外相を暗殺予定。4月24日ドルトムント基地を破壊予定!」

 とりあえず頭に浮かんだTKGしか知りえない情報をしゃべる。そうすれば、必ず次に質問されるだろう。

 しかし、これは男をますます苛立たせてしまった。

「てめぇ、どこでそんな情報を手にした?誰かを尋問したのか」

 黒曜石のような目をスッと細めて睨み付けてくる。 

「それは、TKGの情報屋から直接頂いた」

「ふざけるな。あいつがお前なんかに情報を渡すわけない。一体、どこから情報を盗んだんだ?」

「盗んだなんて人聞きが悪い。僕は、情報をもらった。この基地の場所も、情報屋から教えてもらったんだ」

「あいつが組織を裏切るわけねぇだろう!これ以上、嘘をいうようならお前の口に剣を突っ込む」

 こうなったら、隠している場合じゃない。もうカードを切ろう。

「嘘じゃない。僕は、彼に信頼されていた。なぜなら、僕がメシアだからだ」

 しかし、男は遊ばれていると思ったのか、さらに殺気を出し、剣を握る手に力を込めた。

「はあ?ふざけるな」


「僕は、ふざけていない」


「お前がメシアだっていう証拠はあるのか」

「そうだな。今日の災害はまだ起こしていない。壊して欲しい場所を言ってくれたら、破壊してあげよう」

「じゃあ、モスク外壁」

「了解した。モスク外壁よ、滅べ」

「呟くだけで何が変わるんだよ」

「誰かに連絡でも取ってみろ。もうモスク外壁は破壊しているはずだ」


 その時、リリリリリと男が身につけていた無線機のようなものが音を立てた。

「こちら、ナイト。そっちは、どうした?」

 こいつは、ナイトというのか。黒髪に黒目をしているし、ピッタリな名前だな。

「大変です。モスク外壁が一瞬にして破壊されました」

 ナイトは、信じられないものでも見るように僕を見ている。

「あ、ああ……。後で指示を出す」

 通話がプツリと切れた後、化け物でも見るかのようにナイトが僕を見てきた。

「お前、本当にメシアなのか」

「そうだって言っているだろう。まずは、僕の手首を拘束してくれ。その後、身体検査をして、情報屋か、リーダーの所にでも連れて行ってくれ。そしたら、真実を全て話そう」

 ナイトは、何かを考えるように黙りながらも、俺の手首をロープで縛り始めた。これから連れて行かれるのが、TKGの本部だと思うと冷や汗が流れそうになる。 

 さあ、命がけの交渉の始まりだ。
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