死亡フラグ乱立の極悪非道な国王になりました！

リュカ

　
「安心してください。僕は、銃の扱いが得意です。一発で死なせてあげますよ」

　そう言って聖母マリアのように慈悲深い笑顔を浮かべるリュカ。
　何が起こっているんだ？僕は、リュカに裏切られたのか。
　どうしてリュカが僕を殺そうとする？百万人のカルタヤ人が死んでもいいのか。

「一緒に頑張ろうって……」

「そんなの嘘ですよ。あなたから、力を奪うためのハッタリです。新聞だって、僕が前もって偽造しておいたものです」

　甘いハチミツみたいな声で残酷な真実を奏でる。

「アティスに弱みを握られているのか？」

「まだわからないんですか？僕が、自分の意志であなた達を裏切ったんです」

　理解が追いつかないギルをバカにするように、冷たく笑った。

「あなた達って、僕だけじゃないのか」

「ああ、そうだ。いいことを教えてあげましょうか。フローレンスを殺したのも、僕ですよ」

「何で……」

　言葉を失い彼を見つめる。

「無能なリーダーが組織の上に立っていたところで、いつまでも組織が進歩しないからです。無能なくせに、誰よりも人望がある。だから、いつまでもリーダーとしてのさばり続ける。厄介なお邪魔虫でした」

　フローレンスを殺したのがリュカなら、ブルーノは殺す必要がなかったはずだ。

「ブルーノを殺したのもお前か」

「アティスに正体がばれてしまった彼は、用済みでした。だから、殺して始末をしました」

「殺す必要なかったじゃないか」

「相手は、あのアティスです。顔のバレているスパイなんて、ＴＫＧを調べるための絶好の手がかりです。ＴＫＧが全滅させられるのも時間の問題だったでしょう」

「でも……」

「フローレンスは、それでもブルーノを仲間でいさせようとしていました。まったく、本当に愚鈍なリーダーでした」

「だって……お前、泣いていたのに……」

「あんな嘘泣きを信じるなんてつくづくバカな男ですね」

「……あの日、フローレンスを殺した後に、僕とお茶をしていたのか」

　あまりのサイコパスっぷりに、全身に衝撃が走った。

「ええ。アリバイ作りは大切ですから」

「じゃあ、どうしてジュレミーを裏切った？」

「それは、彼の死を利用するためです」

　まさか、こいつ……。

「おしゃべりは、ここまで。そろそろあなたを殺さないと、僕のアリバイが成立しなくなってしまいます」

　時計の針をちらりと見てから、彼が僕の人生を切り捨てた。


「賢くて正義感に溢れている。僕は、そんなあなたが好きでしたよ」


　翡翠の瞳が僕を捉えて逃がさない。

「死んでください、ギル様」

　彼は、笑顔で拳銃を引いた。

　パンという音と共に、意識が飛んでいく。

　僕の異世界生活は、信じていた人に裏切られあっけなく幕切れした。