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ライトサイド 第14話 「氷弓」
しおりを挟む薄暗がりの玉座。
元々は人が作ったものであるが、それに座るのは人では無い。
褐色の肌、輝くような銀髪。
そして彼女が人でない一番の証拠が、やや尖り気味の長い耳。
『ダークエルフ』と呼ばれる種族である少女の瞳が、ゆっくりと開かれる。
「…何の用だ?」
ぶっきらぼうに呟かれる言葉は、ハスキーな声。
「随分な言葉だ。『闇の娘』ナーディアは私の配下ではなかったか?」
薄暗がりに突如として炎が浮かび上がる。
その炎からは、よく通る男の声が響く。
聞く者に不快感を与えない、透き通るような声質。
だが、ダークエルフの少女にはそれは不快以外の何物でもない。
「……力を与えて貰った分の義理を果たしているだけだ」
ナーディアは気怠げに答える。
「その割には担当地域の制圧が遅れているようだ。『氷弓』が足を運べば、日数などかからないだろうに」
炎の揺らめきは、その声の主の微笑を映し出すかのように大きくなる。
「『制圧』ならば我が足を運ぼう。だが、残党の『処分』ならば魔獣たちで充分だ」
吐き捨てるように、少女は答える。
話をすることさえ嫌悪を感じるのか、冷たく凍った無気力な声。
「残党の中に、『勇者』が居てもか?」
「……………」
しばらくの沈黙。
「『勇者』は二年前、『魔王』(おまえ)に戦いを挑み、敗北したのではないか?」
炎の奥の様子を窺い知る事は出来ない。
それでもきっと、男はいつもの冷酷な微笑を浮かべている事だろう。
ナーディアの言葉に答えたのか、それともそうでないのか、男の答えは曖昧だった。
「最近人間の剣士が、レジーナを倒し、その力を吸収したらしい」
美しい男の声は、ただの噂だが、と付け加える。
「……そうか」
少女は、簡潔にそれだけを吐き出す。
玉座からゆっくりと立ち上がる。
「凍える白い矢は標的を撃ち抜き、もう使い物にならなくなったか?」
「…………」
男のからかうような声に答えたのは、言葉ではなく一筋の白い閃光。
耳障りな炎を貫き、壁に一本の矢が突き刺さる。
「分かっている。我の役目は………」
少女の言葉は暗闇に溶けた。
元は人間たちの城であったそこは、今や魔物たちの巣窟となっている。
この大陸において最強の力を持ち、元の住人たちに恐怖と死を与えた魔物たちは、占領して初めて逆にそれらを与えられていた。
鋭い爪と牙とが向けられるが、それらは掠りもしない。
侵入者の姿が掻き消えたかと思うと、次の瞬間には血飛沫を上げながら魔獣たちが倒れる。
「時間が勿体ないから、とっとと死ね」
ステップが刻まれる度に、魔物たちの鮮血と絶叫が広がる。
その剣士の動きは、常人をはるかに超えている。
見える範囲で動くものが居なくなった所で、おどけた声が響く。
「随分と派手にやっちゃってくれますねぇ?」
シルクハットにタキシード。
おおよそ場違いな服装に身を包んだ男が現れる。
だがこんな場所に現れるのがただの男、人間のはずがない。
「派手好きなんでね……あんたもそうだろ?」
ニヒルな笑みを浮かべながら、侵入者ゼロは剣を構える。
相手の男の顔はシルクハットの影で見えない。
ただ、半月に吊り上がった口元が見えるだけ。
比喩表現ではない。
本当にそういう造形なのだ。
「けひひひひひ。ならば派手に散るがいいでしょう、人間」
人と似て非なる存在、タキシードを着た魔族の手の平がゼロへと向けられる。
宙に一瞬、錬成陣が輝き、魔力の弾丸が放たれる。
「……っと」
炸裂、轟音、爆発。
普通の人間ならば5回は死ねるほどの威力。
土煙が派手に舞い上がる。
「そんなに派手じゃないな。まさか、もう終わりじゃないよな?」
ゼロが腕を一振りするだけで、土煙は風に取り払われる。
傷一つ負っていない様子で笑う。
「けひひひひひひ! 人間がっ! 偉そうにっ! 笑わせるなっ!」
尚も続く連続の魔法攻撃。
ある程度強力な魔法を放つ際には、必ず魔法陣が浮かび上がる。
規定の文字(ルーン)を固定し、なぞる事で発動させる。
(詠唱無しで発動させる事も可能だが、威力は極端に落ちる)
ゼロはそれを一瞬で見切る。
どんな系統、属性のどういった動きをする魔法であるのか。
それを理解し、真逆(まぎゃく)あるいは、同等の魔法障壁を張り巡らせる。
言うのは容易いが、数多く存在する攻撃、補助魔法のほとんど全てを理解するのは不可能に近い。
しかしゼロは涼しい顔すらしながら、それをやってのける。
魔法の余波が、城内の壁や床を巻き上げ、爆砕する。
「どうやらもう面白いネタもなさそうだな」
「けひっ?」
土煙の中、疾風が走る。
タキシードの魔族の正面まで瞬時に移動。
そして移動を終えた時には、魔族の胸に剣が突き刺さっている。
「笑えよ。ほら、もっと笑ってみろよ」
腕に力を込める。
「け……ひっ………」
口から大量の血を吐くと、タキシードの魔族は力尽きる。
この魔物が弱いわけではない。
そう見えるのは、剣士の強さがそれ以上だったからだ。
魔族の魔法を喰らえば、良くて重傷、悪くて即死。
常人であれば、魔族と戦うなどという自殺に等しい行為は行わない。
剣を引き抜く。
鍛えられた白銀の刃にまとわりつく、魔族の血。
何の感情も無く、作業を行っていたゼロの顔が上がる。
「………『闇の娘』氷弓」
彼の視線の先には、豪華な階段があり、その先に立つのは華奢な少女。
褐色の肌に、銀髪、そして尖り気味の長い耳。
「復讐を否定はしない……だが、端から見ればこんなにも痛々しいものだったか」
憂うような、少女のハスキーな声が響く。
過去の自分と照らし合わせているのか、沈痛の表情を浮かべる。
「参ったな…このままの勢いで会話無しでいっちまおうって思ってたのに」
男は笑う。
悲しそうに。
「会話は不要だったか? その方が楽だと言うのなら、二年前にそう言ってくれれば良かったものを……」
微笑。
ダークエルフの少女、ナーディアも一瞬だけ哀しげな微笑を浮かべる。
「何も言わずに、不意打ちでもしてくれれば俺も容赦無くやれたけど……」
ナーディアからすれば、配下の魔物達を男に当たらせ、その体力や精神力を削る方法も採れる。
それは卑怯でも何でもなく、真っ当な戦術だ。
さらには彼女の武器は弓であり、わざわざゼロの前に姿を晒さずに、遠距離から狙い撃ちする事も可能であった。
「見損なうな。悪魔に身体は売り渡したとしても、心までは売り渡しては居ない」
「……………」
少女はゆっくりと弓を構える。
「手合わせ願えるか? それとも、このままでは存分に戦えないか?」
「いや……あんたが『闇の娘』。あの男の配下ってだけで充分だ」
ゼロもゆっくりと剣を構える。
「それでは始めるとしようか」
「ああ」
動き始めたのは、ほとんど同時だった。
― ◇ ― ◇ ― ◇ ―
高速で飛来する、氷をまとった矢。
直線ではない。
上下左右から予想外の軌道を描いて迫り来る、白い矢。
「ちっ!」
ゼロはその矢を弾く。
回避する事は出来ない。
軌道修正され、再び襲ってくるからだ。
「……………」
ナーディアは弓に3本同時に矢をつがえる。
軽快なステップを刻みながら、距離を取りつつ、矢を放つ。
(右から2本、左に3本…追加された3本の2本は正面で、最後は上!?)
ゼロの周囲を飛翔する矢たちは、まるで意志を持っているかのように男を取り囲む。
右と左が同時に襲ってくるのを、一方を回避しながら剣で迎撃。
弾かれ氷の力を失い、矢が折れる。
残りの矢はゼロの逃走経路を塞ぐ。
「厄介だっ……身動きが取れ…!?」
方向を変え上昇した一本が、頭上のシャンデリアを叩き落とす。
自重により落下する先は、矢を弾くゼロへ。
「うおっ!?」
派手な土煙と轟音が巻き上がる。
だが、それで終わりでは無い。
土煙の中心へと吸い込まれるように、飛翔していた矢が一斉に向かう。
「……………」
女は冷静にそれを見ながら、更に追撃の矢を3本放つ。
「くっ!」
土煙に紛れようとしていたゼロは、油断無い追撃にたまらず距離を取る。
その剣士を追尾し、矢が一斉に向かう。
空中で2本を叩き落とすも、一本は脇腹へと突き刺さる。
「あぐっ!」
男は衝撃を殺しきれずに、壁へと吹き飛ばされる。
「くそっ!」
渾身の力を込め、矢を引き抜き投げ捨て……
「……おい、嘘だろ?」
攻撃を喰らい、壁に背を預ける剣士の目に写るのは冷気の塊。
一本の矢の先端に強力な気を溜め、放とうとしているナーディアの姿。
「……『凍槍(フローズンスピア)』」
ハスキーな呟きから放たれたのは、槍ほどの大きさの氷の矢。
逃走経路は、くるくると回転する矢により塞がれている。
回避は至難の業。
「くっ…おおおおおっ!!」
ならば迎撃するしかない。
一瞬の間に、そう判断するとゼロは剣に力を込める。
氷の粒が炸裂し、轟音と蒸気を撒き散らす。
「……………」
瓦礫の山と化した場所が僅かに崩れ、血だらけの剣士が現れる。
(やべぇ……普通の魔法なら無力化出来るが、精霊力は…つーか、レベルが違いすぎる)
息を切らしながら、倒れそうになる身体を剣で支える。
「はっ…はぁはぁ……はぁっ……」
「……そんな程度か!?」
向かって来ない剣士へ、ナーディアが大声を上げる。
今までのまさしく『氷』と言った冷静な彼女とは思えない声。
「復讐を糧に生きるならば、それを貫け!
お前は大切なものを失ったはずだ!
だからそれに対して復讐をしようとしている!」
それは半ば以上が、彼女自身への戒めの言葉だった。
『氷弓』とは思えぬ、苛烈な言葉は続く。
「達成出来ない復讐であるならば、しょせんその程度だったという事だ。
お前自身が、ではない。失った大切なものが、だ!」
諦めが支配しはじめていたゼロの瞳に、炎が灯る。
いつだって優しく微笑んでくれていた『100年に1人の聖女』と呼ばれていた少女。
「大丈夫ですよ。だって貴方の事信じてますから」
剣の柄を強く握りしめる。
そこから血が流れ、柄を染めようと。
全身を突き刺されるような痛みを感じようと。
男は戦わなければならない。
「…厳しいな………ったく。
俺はこんな程度だ…けど、俺を信じて俺の身代わりになった彼女は…
あの人は凄い人だった。
…だから、俺は負けられない!」
光が凝縮する。
ゼロは自然に、水平に剣を構える。
彼の持つ剣が光を纏い、その大きさが増す。
それはナーディアがかつて見たジュダの技に似ている。
大気中の全て、そして己の闘気を刃に変える剣技に。
ダークエルフの少女は薄く微笑む。
「我、最大の技をもって応えよう。貫いて見せろ、お前の力を!」
弓に三本の矢を構える。
それら一つ一つの先端に、巨大な冷気が凝縮される。
発生する闘気と闘気とがぶつかり合い、逆巻く渦となる。
「…………っ」
ナーディアは苦痛を表情には出さない。
だが、必殺とも言えるその技は確実に彼女の命を削る。
それでも、彼女は折れるわけにはいかない。
復讐という名の仮染めの目的を達成し、その最後の仕上げの為に。
『三本凍槍(フローズンスピア・トリプル)』
三本の必殺の槍が、連続して男へと向かう。
「おおおおおおぉおお!!」
咆える。
迫りくる三本の刃を回避する選択肢も無くは無かった。
だが、ゼロは真っ向から力をぶつけることを選んだ。
命を削り、全てを出し尽くした力が魔王配下にすら及ばないのならば、魔王を倒せるはずもない。
「ああああああああぁ!!」
振るわれる剣から放たれる光。
光の波は、氷の槍に激突しそれを粉砕する。
そして余波は、ナーディアへと向かう。
「………ふっ」
ダークエルフの少女に浮かんだのは、微笑。
歩み続けた少女の復讐劇に幕を下ろす、最後の一撃。
轟音と光が全てを支配した。
「魔王には程遠い……」
ナーディアの穏やかな声が響く。
そこに憎しみ、復讐は存在しない。
ただ、穏やかな少女の笑顔のみ。
「だが……悪くない攻撃だった」
ダークエルフの少女は、ゆっくりと座り込む。
「……」
ゼロは、一応の勝者である男は、ゆっくりと女の前に歩み立つ。
『氷弓』の攻撃を全ては相殺しきれなかった結果、男の左腕からは血が流れている。
「左手を……」
少女に言われた通りに左手を差し出す。
「精霊力が暴走している。……良く平気な顔をしているものだ」
ナーディアは男の腕に優しく手を添える。
「もっとひどい痛みを受けてるから………ん? いててっ!」
感覚の無い左腕に、僅かながら感覚が戻ってくる。
じわりと痛みと、包み込むような暖かさが広がる。
「多少痛いだろうが、我慢しろ。使い物にならなくなるよりはマシだ」
治癒を終え、ナーディアは息を吐き出す。
「……すまない。ナーディアさん」
「構わない。それに礼を言うのは早い」
少女はゆっくりとボロ布と化した衣服を脱ぎ始める。
「我は魔王に『力』を与えられた。だが、復讐は終わった」
「……………」
ゼロは何も答えない。
少女は男の答えなど期待していないように思えたからだ。
ナーディアの独白は続く。
「復讐を終えれば、何も残らない。いや、まだ良い方か。
これ以上新たな憎悪を生み出さずに済むのだから………」
褐色のみずみずしい肌が現れる。
少女の細い裸体が、男に晒される。
「もう……疲れた。だから安らぎが欲しい」
氷解し、浮かべられる柔らかな笑顔。
「ああ……」
ゼロは静かに少女を抱きしめた。
力一杯抱き締めたら、折れてしまいそうな細い身体。
顔の横の長い耳に囁きかける。
「俺で……いいか? いや、断られても困るけど……」
ナーディアは薄く笑ったようだ。
同時にゼロの背中に手を回してくる。
「お前が…いい。魔王に与えられた力を勇者に渡せるのだ……」
唇と唇とが重なる。
最初は軽く、続いてゆっくり深く口を合わせる。
「ん…………」
唇の先端を、ちろちろと舐めるような舌の動きは、やがてナーディアの口内へと入って来る。
「……っ……んんっ……」
舌と舌とが優しく絡み合い、その刺激に少女の身体はびくりと反応する。
唇が離れる。
赤みの差したナーディアの顔が、戸惑いの表情を作る。
「あ、案外慣れているのだな……」
「意外かい?」
ゼロがいたずらっぽい微笑を浮かべる。
「…ああ、正直に言うと意外だ」
そう答えるエルフの少女に笑いながら、男は行為を続ける。
「もっと意外な所を見せてやるよ」
「んっ!……っ………あっ!?」
ゼロは身体を僅かにずらす。
細い首に舌を這わせるのと同時に、右手が華奢な腹から腰のラインを滑る。
柔らかなタッチから、するすると残った布を取り払う。
小振りな乳房が露わになると、ナーディアはそれを隠そうとする。
「やっ…そっ…こは駄目………あっ…ああっ!」
ゆるゆると抵抗しようとするその手を許さず、男はその先端を舐める。
「……だっ…やだっ………胸はっ……」
「こんなに綺麗だってのに、見せてくれないのはサービス悪いぜ?」
嫌々と抵抗する少女に、囁くように伝える。
胸の中心に浮かんだ汗を、すくい取るように舌を伸ばす。
「あっ…んっ……あ…………っ……馬鹿者が」
ナーディアの手から余分な力が抜け、少し照れた様な言葉が返ってくる。
細い背中に手を回し、優しく撫でる。
「ん…んっ……んふっ……あ、あっ……んああっ…」
応えるように、少女は自らの胸にゼロの顔を抱き入れる。
赤子のように口で吸い、舌で転がす。
ふんわりとした胸の、その先端は固さを増して来る。
「あ…ああっ…んっ………んんっ……はぁ…んっ…」
抑えるような吐息に、甘いものが混じる。
ゼロはそのまま舌を伸ばしながら、顔の位置をずらす。
なだらかな腹を伝い、薄い茂み、そしてその中心へと至る。
「ふぅ…ん……はっ、はぁ………あ…んっ……」
細いふとももをゆっくりと開かせる。
同時に露わになる秘所に舌を這わせる。
「んあっ…あ……っくん……あ……」
柔らかい花弁を充分過ぎるほどに舐め、溢れる密の味を堪能する。
自身が楽しみながらも、ナーディアの一番反応するポイントを探す。
両手の指で傷付けないように開くと、上部には充血したような肉の芽が見える。
「ふぅっ…んはっ! …はぁはぁ…ぁ…っん……」
一番敏感な部分を丹念にじっくりと弄る。
触れるたびにぴくぴくと反応する様が愛らしくて、重点的に責める。
「やっぱり、ここがいいのか?」
「……っく……そんなこと…あ! んんっ!!」
小刻みに震える腰を見ながら、準備が出来た事を悟る。
向かい合うような体勢に戻しながら、ゼロは下を脱ぎ始める。
「はぁ、はぁ…んっ…その……我も……」
やや俯きがちに頬を染めながら言う仕草は、とても『闇の娘 氷弓』とは思えない。
そんな様子に微笑を浮かべながら、男は頷く。
「……ふぁ……何というべきか………その……」
優しく包むように細い手が動く。
触れるか触れないか、まるでくすぐっているかのような微弱な刺激はゼロの竿の強度を増す。
「ま、また大きく……こ、こんなものが………」
ナーディアの手の中で、男のモノは大きさと強度を増していく。
そんな様子に戸惑いと好奇心とを混ぜた吐息が漏れる。
「不安だったら、目をつぶってても……」
「い、いや……も、問題無い……恐らくは…」
赤い顔のまま自分自身に言い聞かせるようなナーディアを、再び軽く抱き締める。
華奢な、それでも柔らかい女の腹に触れ、ゼロの男根はびくびくと反応する。
「いれるぜ?」
優しく耳元で囁くと、少女はかすかに頷いた。
「あっ…んっ……はあっ…ん…あ…ああっ!」
ナーディアを壁に寄りかからせたまま、腰を突き入れる。
あまり男に慣れていないその膣内は狭く、熱い。
「は…くっ…ん…あ…ああっ……んっ……はっ…」
ダークエルフの少女は自ら声を上げるタイプでは無い。
どちらかと言えば突き入れられた瞬間に、吐息が漏れるといった所だろうか。
快楽を得る為の性行為ではなく、ある種の厳格な儀式という感じだ。
「あ……っく…はっ…あっ……あ…ああっ……」
それでも心地良さはあるのだろう。
二人の結合部からは、卑猥な水音が聞こえる。
(まあ、構わないが……ナーディアさんは真面目だな)
そんな事を考えながら、ゼロは行為に没頭する。
彼女の右脚を抱え上げ、より深く挿入されるようにする。
「うくっ…ふっ……ん…ああっ……はっ……」
ナーディアは無意識の内にか、口元に手を持っていき、耐えるように喘ぐ。
「…くっ……声…聞かせてくれても…いいのに」
「あっ……んくっ……ば、馬鹿者……」
微笑と共に囁くゼロに、少女は照れたような怒ったような声で応える。
狭すぎる膣とそこから伝わる快楽は、今まで感じた事の無いほどのもの。
前後に腰が動くたびに、熱すぎるほどの熱を感じる。
それは彼女の二つ名とは、全く正反対のもの。
「…あ、あ……っく…ふ…ん………んあっ……」
ゼロは夢中で腰を突き入れる。
一突きごとに力が流れ込んでくる感覚。
いつ果ててもおかしくない程の射精感がせり上がって来る。
だが、まだ放出するには早い。
ゼロにとって、これは単なる性行為では無いから。
魔王と呼ばれる、最強にして最悪な存在を倒す為に必要な行為。
『氷』の精霊を得る為の必要なステップ。
「くっ…うっ………」
男は歯を食いしばる。
溢れ来る悦楽に耐えるように。
力を、そして命を受け渡してくれているナーディアに失礼の無いように。
「ん…ああっ……っく…リュー…いや、今はゼロか?」
喘ぎながら、汗ばみながら少女は尋ねる。
「ああ……ゼロと………それで?……」
肌と肌とがぶつかり合う音の中、少女の小さな声が聞こえる。
「あ……ふっ…んんっ……その……あんっ……接吻を…」
「……ああ」
彼女の艶やかな銀髪を梳きながら、唇を合わせる。
「ん…ぷはっ……ん…んむっ………んっ…んんんっ……」
お互いが強く抱き合い、密着する。
最後の力、全ての受け渡しの為のダークエルフの少女の優しさ。
「んっ…ああっ……んっ……ああっ……あ…あああああっ……」
二人の音が激しく、そして大きくなる。
絶頂が近づいている証だ。
腰が一際大きく下がり、そして深く結合する。
「あっ……ああっ、ふっ………あああああああっ!」
ナーディアが身体を震わせる。
これ以上無いほどの力と命と快楽が、ゼロの視界、思考を白く染める。
「くっ……」
全身に行き渡る、例えようのない快感。
眠りにつく瞬間のような心地よい脱力感が、男の身体を支配していく。
うっすらと水に溶けるようにナーディアの姿が消えていく。
「……………」
言葉は無かった。
だが、彼女は優しい安らかな笑みを浮かべていたように思う。
ゼロは『氷』の精霊力を手に入れた。
太陽が山の稜線へと沈む。
周囲を煌々と照らしていた陽光は、今はオレンジ色の夕日へと変わっている。
長く伸びる影は、もうしばらくすれば完全に夜の闇と同化するだろう。
夜は魔物の活動時間だ。
だから、人々は闇を恐れる。
平和であった時には、「綺麗だ」などと言われていた同じ夕日なのに、今は「恐怖の始まり」でしかない。
「……………」
ゼロが拠点としている街の入口。
妖精の少女は、そこで待ち続ける。
闘いを終え、帰って来る男を迎える為に。
「…………あっ」
妖精の少女、ニアの視界に見覚えのある青年の姿が写る。
血だらけでぼろぼろだが、それでも自らの脚で歩いて来る。
夕日を背負う、長い影を持つ青年。
かける言葉は決まっている。
たった一言だが、それだけで充分だ。
その為に彼女はここで待ち続けていたのだから。
「…おかえり」
ゼロは一瞬だけ、ほんの少しだけ昔の笑顔を見せ、答える。
「ああ…………ただいま」
闘いが終わった時に訪れる、わずかな休息。
リュークスは穏やかに微笑んだ。
To Be Continude・・・・
あとがき
勇者君ってば、魔王様と穴兄弟じゃん(笑)
今(ごろ)、気付いた衝撃の事実。
「闇の娘」とのバトルは基本的に一対一のタイマンバトルです。
正々堂々、卑怯な絡め手、魔王を一途に想う奴、洗脳(正確には違うけど)されてる奴…
「ダークサイド」を読んでいる人なら、どんな奴が出てくるかお分かりですよね(笑)
「ダークサイド」で広げたものを「ライトサイド」で畳む、って感じなので後者の方が疲れる~!
微妙に性格変わってしまったかもしれないけど。
ま、いいか(すでに決まり文句)
ちなみに「ライトサイド」と言えば、最初の方で先代勇者ルクスの記憶(?)やら人格やらが出てきてましたが、今のところあまり出てきて無いですね。
実は作者が忘れてい……げふげふ。
解説しますと、二年前、リュークスが死にそうになってその影響で、脳内ルクス(何だそれ)の声も小さくなってしまったんです。
勇者が力を吸収していくごとに、だんだんと復活してくるらしいので、ルクス好き(居るのかw)の方はご安心を。
ダークエルフにして『闇の娘』『氷弓』ナーディアさんは、実は手加減してたって設定です。
ゼロも強くなってるけど、まだ『闇の娘』の方が強いんです。
彼女は複雑なんで、上手く文章で表現出来てないんですけど……
復讐を糧に生きてきた彼女。
しかし、その復讐というのは実はジュダによって仕組まれたもの。
そういった事に薄々気付きながらも、彼女は考える事を放棄してしまった。
苦しい時に単純な理由付けして、一番楽な選択肢を選んでしまった……
そんな、捉え方によっては自暴自棄となっていた彼女の復讐対象、帝国が滅びてしまった。
彼女の未消化だけど、唯一と言って良い心の支えが無くなった現在、彼女は滅びる事を望んでいた。
その適任者が勇者だった。
言うなれば、魔王によって始められた苦悩・復讐劇が、勇者によって終えられるという。
だから勇者に活を入れてたんですね。
きっと彼女は泣きそうな顔をしながら、「私を倒してくれ」と言っていたんだと。
上手く表現出来なかったのが悔やまれますが、少しでもそんな雰囲気を感じて貰えればなぁ……と。
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