ライトサイド

タカヤス

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  外伝 「黒き霧 白き追憶」

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「セフィリア、時間厳守……い・い・で・す・ね?」
通常の3割増しの凄みを含ませながら、中年の女性は念押しする。
「はいはい、大丈夫ですよぅ………………多分」
セフィリアと呼ばれた少女は、小さく『多分』を付け加える。
ふわふわとした亜麻色の髪は、神々しくは見えず、小動物の毛並みを思わせる。
顔立ちは整っている方だが、『美人』というよりも、『可愛い』という言葉の方が合うだろうか。
少女を一言で言い表すとすれば、『ほのぼの』だとか『無害』だとか『天然(ボケ)』とかいう言葉だろう。
そんな『天然娘』という題名がしっくりする彼女が、ただの娘とは異なるのがその服装だ。
彼女の服装は、『光の女神ルコナーア教』の尼僧のもの。
神々しいはずの純白の神官服は、しかし彼女が着るとエプロンのようなほのぼのしたものに見える。
「しかし、あなたは失敗が自らやって来るというか、失敗に自ら飛び込むというか…」
中年の女性、ルコナーア教の神官服を着た司祭長は、きりきりと痛むこめかみを押さえながら呟く。
いちおう念押ししたものの、それがどれほどの効果をもたらすか…
その彼女の不安を証明してしまうかのように、司祭長の前に立つ娘は答える。
「だ~いじょうぶですって、いくら私でも『勇者様のお迎え』には遅れません」
何が楽しいのかセフィリアは笑顔で、えっへんと胸を張る。
司祭長の念押しは、恐らくは大した効果をもたらす事は無いだろう。
それを再確認してしまい、彼女は落胆の溜め息をついた。



世界は闇に包まれている。
『魔王』を主として魔物、つまりは魔獣や魔族が蔓延(はびこ)っている。
人々は高く堅固な壁を張り巡らせ魔物に備える。
しかし、それでも夜になれば犠牲者は増える。
そんな死と隣り合わせの状況においても、人々は生きている。

絶望と身近な死から逃れる為に、人々は神を信仰する。
『見えざる人を超越した』存在があるとする事で、人々は不可解な出来事も全て理解したと錯覚する。
例えば、魔王や魔物が支配する困難な世界、生きていくのに困難な出来事等は、全て『神の与えたもうた試練』と考える。
問題を乗り越える事で、人間は幸せを手にする、と考える。
また例えば、人が生きて行く為に必要な事は、神の許可が与えられていると考える。
人間は動植物を殺し、その血肉を食する。
それらは極論すれば、『神が人に与えて下さった』食事だと考える。
人が神に祈ったところで、神の声が聞こえるわけではない。
それでも人は、人を越える何かの存在が無ければ、恨み言を言う事さえ出来ない。
そんな全てを司る神は、『光の女神ルコナーア』と呼ばれる。



「きゃあああっ! やっ! 来ないで! いやああっ! やだってばっ!!」
魔獣の一匹が、セフィリアへと向かう。
台詞だけを聞いていると随分と余裕ある悲鳴だが、当人は必死だ。
魔獣―――熊と狼を合わせたような魔物―――は、柔らかそうな彼女を引き裂く為に、腕を振り上げる。
「ああっ! まだ、『イマニ亭』のお勧め定食、『モーク』のスペシャルパスタ、それにそれに、『マヤオ』の超絶紅色大トカゲの丸焼きだって食べてないのに………あれ?」
「グ…グアアアアアア!!」
苦痛の悲鳴を上げながら、魔獣は逃げ出す。
その場に残されたのは、鮮やかに切り落とされた魔獣の腕。
「まさか、私の悲鳴は魔物の体を切り裂くほどの力が……」
「怪我は無いですか?」
自分の隠された能力(そんなものがあるわけもないが)に驚くセフィリアに、現れた男が声をかける。
軽装の鎧に、細身の身体。
その右手には魔獣の腕を斬り捨てたであろう白銀の剣。
セフィリアの見上げるその顔は、男と言うにはまだ幼さを残す、少年のもの。
「あ…」
セフィリアのぽーっとした顔が、少年の顔を指差す。
彼女としては、彼の背後を指しているつもりなのだが、どう見てもそれは少年を指していた。
「あ?」
首を傾げた少年を、背後からの横薙ぎの一撃が過ぎる。
風を切る音と、風圧が少女の髪を巻き上げる。
「…危ないって言うなら、もう少し早く言って貰えるとありがたい」
一体、どのような動きだったのか。
セフィリアが瞬きする間には、『背後から迫る魔獣に気付かない少年』の図は、
『剣を斬り上げた少年と血飛沫を上げ断末魔の悲鳴を上げる魔獣』の図へと変更されていた。
「まだ……来るか?」
威圧するような鋭い眼光に、魔獣たちはじりじりと後退を始めた。





「…というわけで、私は勇者様をお迎えする役目なのです」
誇らしげにセフィリアは胸を張る。
「えっと…色々とツッコミ所というか、質問があるんだけどいいかな」
少年は、困惑顔と微笑を足して2で割らなかったような顔で尋ねる。
というか、明らかに作り笑いに失敗している。
「はい、どうぞ~」
そんな細かい表情に気が付くセフィリアではなく、得意顔で続きを促す。
「ええと、まず北のアスコット山を越えて勇者が来るって話だけど…そうすると、こっちは全くの逆方向だけど」
「そんな事はありません。だって、地図にもこの通り……」
「……逆だよ、それ」
「げ」
セフィリアの顔が強ばる。
羊皮紙の地図がこぼれ落ちるのを、器用に拾いながら、少年は質問(追撃)を続ける。
「それと正規のルートを通るにしたって、魔物が出る。
 確か『ルコナーア教団』からは護衛を雇う充分な費用が出るはずだけど?」
いかに聖女と言え、女の一人旅はあり得ない事だ。
今は平穏な時期ではなく、魔物がはびこっている時代なのだから。
「そ、それは…そのぉ……使ってしまって………」
所在無さ気に、指をくるくると回しながら、少女が答える。
「使った? 結構な額だと思うけど」
「うう……その…帝都で痩せた赤ちゃんを抱えていたお母さんとか……」
どうやらセフィリアは、貧しい人々に施しを与えてしまったらしい。
彼女は裕福というわけではなく、むしろ今の彼女こそ施しが必要なように見える。
「いや、でも、食べ物とかは全然困らないんですよ!
 『光の女神』の信者さんは各地にいっぱい居らっしゃいますし……」

ぐーきゅるるるるるぅ……

セフィリアの小柄な身体に似合わない大きな腹の音が響く。
「うぅ…………」
頭の先からつま先までを真っ赤にしながら、少女がうつむく。
(恥ずかしい! 死んでしまいたい! けど、まだ死ねないわ)
内心で自問自答やら葛藤やらを繰り返すセフィリアに、少年は堪えきれずに笑い出す。
「ぷっ…くすくすっ」
「ひっ、ひどい! 笑うなんてひど過ぎます!」
羞恥から怒りの赤へと表情を変化させながら、少女が抗議する。
「それじゃあ、もうちょっと離れた場所で食事にしようか。
食べ物も少しなら僕が持ってるし…ぷっ……あははっ」
「ひっ、ひどい! ひどい!」
セフィリアは、がすがすと少年に拳でツッコミを入れているが、少年は愉しそうに笑うだけだった。



彼女――― セフィリア ―――は、失敗する少女だった。
やる事なす事ほとんど全てが、見事に失敗する。

休憩用に火の準備をすれば、派手に炎上させる。
蒸留水を運ぼうとすれば、何もない所で盛大にこける。
干し肉をあぶろうとすれば、黒炭に変える。
食後の洗おうとした食器類を粉々に破壊する……

それらはわざとやっているのではなく、本気でやっているので質が悪い。
「う……えうぅぅぅ……」
結局はてきぱきとした見事な手際で、少年が大部分を終えた。
「『光の神官』の人は、もっと厳格でしっかりした人だと思ってた」
簡単な食事を終え、少年は柔らかに、ほんの少しいじわるを加えて微笑する。
「ひっ、ひどい! まるで私が厳格じゃなくて、しっかりしてないみたいじゃないですか」
「あはははは」
「少しは否定して! それと笑って誤魔化さないでっ!!」
恥ずかしさで泣きそうな顔をしながらセフィリアは、がすがすと拳で突っ込む。
手の平で怒りの拳を受けながら、少年は「あははは」と笑うだけ。
ひとしきり叩き終えて、少女が息を切らす。
そんな様子を見ていた少年の笑顔が、わずかに曇る。
「…どうして『聖女』は、『勇者』と一緒に戦いたいのだろうか?」
声に今まで無かった真剣なものを感じ、セフィリアは思わず少年の顔を見る。
「名誉な事だから? けど、口では言い表せないほど危険な事だと思うのに……」

『勇者』と共に『魔王』を倒す。
言葉にすれば簡単な事であり、最上の名誉であろう。
だが、数え切れない程の自称『勇者』とその仲間が命を落としている。
『勇者』として戦うという事は、すなわち魔物に狙われる確率も増えるということ。
そんなものに志願する者の気持ちは、少年にとって理解の外だ。
ましてや教団関係者が勢力を上げて、その為の『聖女』を派遣するなど。

「あの……多分ですけど、名誉だけじゃないと思うんです」
小さな声だが、しかしはっきりと少年の耳に声が届いた。
心に染み入るような、暖かな言葉。
「えっと、うまく言えないですけど……みんな頑張ろうって気持ちもあると思う。
 『勇者』様一人だけに全てを任せるんじゃなくって、弱くてもほんの少しだけの力でも役立てたいって思ってる人が居る……そう思います」
「役立ちたい……か」
セフィリアの言葉を、噛みしめるように繰り返す。
全く考えなかった側面を教えられ、少年は感心したような表情を浮かべる。
「あ!」
唐突にセフィリアが、ぱんと手を叩く。
「ん? どうした?」
何かを察知したのかと、少年がセフィリアの方へと向き直る。
「そういえば、今までずっと名前を聞いてませんでした!
 申し遅れましたが、私、『光の女神ルコナーア様』の神官、セフィリアと申します」
少年は一瞬、きょとんとした後、くすくすと笑い出す。
「セフィリアさんの事は最初に聞きましたよ? 僕が自己紹介してなかっただけで」
「そうでした?」
「うん…僕も自己紹介しないと…えっと、僕はルク……ルックです。
 魔物と戦う旅をしています」
何かを含むような口調と表情だが、鈍感なセフィリアが気づくはずもない。
「まぁ! 魔物と戦うなんて、まるで『勇者』様みたいじゃないですか!」
しきりに感心する少女に、そうだね、などと笑顔で答える。
だが、その少年の笑顔はわずかに曇る。
曇った笑顔を見破られないように、ルックと名乗った少年は質問する。
「セフィリアさんも、やはり『勇者』と一緒に戦いたいんですか?」
問われた少女は、ううむ、と少し悩む。
「実はですね…そんなに戦いたくは無いんです」

『光の聖女』たる教義は、『勇者の力となれ』である。
司祭長などが聞けば、小一時間ほどは説教のネタにされるであろう。
だが、そんな事は意に介さないのか、セフィリアはその理由を続ける。
「私ったら失敗ばっかりだから、一緒に戦ったら足手まといにしかならないですし…
あ…けど、ルックさんみたいな人なら一緒に旅したいですよ」
聞きようによっては勘違いされるような言い方に、そこで初めて気づいたのか、少女は慌てて手を振る。
「あ、えっとですね、ルックさんが勇者っぽくないとか、そういう意味じゃなくって…」
「それはどうして? 『勇者』は嫌だけど、僕ならいいの?」
「えっと……」
少女は言い淀んでいたようだが、やがて観念したように話し出す。
「正直に言うと、『聖女』とか『勇者』って嫌いなんです。なんだか特別な存在っていう感じで。
 違うと思うんです……世界を救うのはほんの少しだけの選ばれた存在なんかじゃない。
 ごく普通の人たちがみんなで力を合わせてすべきだと思うんです」
「……………」
彼女の口調は強くなく、むしろ穏やかでのんびりしたものだ。
だが、少年の心にじわりと染みこむような、そんな穏やかな衝撃を与えた。
「いや、だからって『勇者』様が嫌いってわけじゃないですよ? 会った事無いですけど」
慌てて付け加えるように言っているが、セフィリアが自分の立場を考えての事では無い。
純粋に他人の好き嫌いを極力減らそうとしている彼女の性格からだろう。
(『聖女』っていうのは、こういう人の事を言うのかもしれないな)
ルックは内心でのみ呟く。
「……………」
無言の少年をどのように判断したのか、少女はますます慌て出す。
「あう、その、また私ったら変な空気を作り出してしまいましたか!?」
「……………」
そんな事は無いのだが、ルックにしては珍しく、彼女の慌てる様を見ていたくなった。
だから神妙な顔で無言を保つ。
「う…あぅ……そのぉ……」
「…………ぶっ」
「ぶ?」
「…っははははは!」
「……!?(怒)」
良く分からないが、セフィリアは自分の事が笑われていると判断し、静かに(拳で)突っ込む。
「い、痛い、はははっ、いや、違うって。馬鹿にしてるわけじゃ、はははっ」
「~~~~!!(怒り継続中)」
セフィリアが機嫌を直したのは、笑い転げるルックを散々殴った後だった。



同時刻、帝都。
「お、おほほほほほほ……」
引きつった女性の笑い声が響く。
「司祭長様、その…落ち着いて下さい」
なだめるシスターに、司祭長は怒りを笑みで抑えようとして、失敗していた。
「一体、どうして、一直線に北上すれば済むお迎えすら失敗出来るのかしら」
「司祭長、その、隣室には勇者様がいらしているわけですし…」
ぷるぷると震える司祭長は、間違いなく寿命を減らしているだろう。
そこまでいかなくとも、セフィリアのせいで血圧が上がっているのは間違いない。
「勇者ルクス様もお迎えには特に言及されてませんし、むしろ大事なのはこれからではありませんか?」

『勇者ルクス』
その名は最近、特に噂されている名である。
勇者を自称する存在が数多い中、自らは勇者と名乗らず、各地で魔物と戦う旅をしている男。
様々な噂の全てが本物では無いだろうが、人々の期待が最も大きいのが彼だろう。

「そう…ですね。シスターアリア。勇者ルクス様に失礼の無いように」
司祭長はシスターの言葉を肯定し、気分を入れ替える。
光の女神、ルコナーア教団として勇者の手助けをする為に。



― ◇ ― ◇ ― ◇ ―



平穏とは言えないまでも、かろうじて地図上に名を残していた村。
しかしその村も、魔物たちの気まぐれな侵攻により、名を消そうとしていた。
「ぐかかかかかっ!!」
高笑いするのは、村を襲撃した魔物のボス。
トカゲが二足歩行したような風体だが、トカゲと異なるのは、言語を解する程度の知能とその体。
ゆうに3mはありそうな巨体は石斧を振り回す。
「ぐ! ああああっ!」
農具を手にする村人たちでは、歯が立たない。
「お、お父さん!!」
血を流し倒れる男に、子供が駆け寄る。
「…に、逃げろ……早く」
「ぐかかかかっ! 逃がすわけないだろう! ガキの肉が一番旨いんだからなぁ」
子供が見上げた先にあるのは、まるで巨大な山。
腕力が全てである今の状態では、どうする事も出来ないような巨大な絶望。
「あ…う…あああっ……」
子供は満足に悲鳴すら上げられない。
全身がガクガクと震え、この世の不条理を嘆く暇すらも無い。
「ぐかっ! どぉれ、美味しく頂く前に下ごしらえするか……っと」
ぴんっと指で弾く。
それだけで子供の身体は数メートル吹き飛ばされる。
「う…ああ………」
圧倒的な暴力。
どうする事も出来ない閉塞感。
流れ出る鼻血やら、擦り傷やらを確認する事も出来ない。
トカゲの形をした絶望は子供を許しはしないのだから。
「ぐかかかかっ! いいぜえ、その恐怖に歪んだ顔。たまんねぇ!!」
「た……っ…………って……」
子供の口から漏れる言葉。
嗚咽と苦痛とが、言葉を発する事さえも邪魔をする。
「ぐかかっ! もっと泣け、喚けっ!」
転がった子供を掴み上げ、指先でいたぶる。
「あっ…がっ…ぐっ……うああっ……」
絶望、恐怖、諦め、そういった全てが子供の心を支配する。
(どうして…どうして僕たちの村が…)
「ぐかかかっ! 速攻でくたばっちまえよお! 人間なんて所詮、魔族の餌だ!」
獲物をいたぶるように、じわりじわりと傷付ける。
なぶった後は無抵抗の獲物をゆっくりじっくりと食するだけ。
(誰か………)
霞む眼前に覆い被さるように、不吉な黒い影が映り込む。
「…たすけ………」
「ぐかか……んあ? 助けなんて来るわけねえだろう?
 他人を助けてる余裕なんてねぇんだよぉお!!」
トカゲの魔族は子供を摘み上げる。
血だらけでぼろぼろの子供に抵抗する気力は無い。
「ぐかかかっ……そろそろ喰うかぁ!」
大きく開かれる口の上に、子供が持ち上げられる。
その大きな指が、子供を口の中へ放り投げる。
「あーん…ぶぉっ!?」
重力に従い落下する子供は、しかし化け物の口の中へは入らなかった。
飛来した衝撃が、トカゲ男を吹き飛ばす。
放り出された子供を空中で抱き止めるのは、純白の神官服を纏う少女。
「痛かったでしょう……すぐに治してあげるから」
セフィリアは穏やかに呟く。
かざした手が光を放ち、子供の傷を癒していく。
「……………(本当に聖女みたいだ)」
失礼な事を考えながらも、ルックは彼女に見惚れていた自分に軽い驚きを感じる。
「ぐるぉおおおおおおっ!」
ルックたちの背後で騒音と共に、トカゲ男が立ち上がる。
「ぎっさまぁ! 不意打ちだどぉ!? おまけに俺様の顔に傷を付けやがったかあ!」
周囲の空気を震わせるほどの大音量。
憤怒の形相で立ち上がるその体躯は、小柄なルックを見下ろす。
普通の人間なら、それだけで逃げ出したくなるような威圧感。
「許さねえ! グッチャグチャのばらんばらんにしてやる!」
ぴくり、とルックが反応する。
「……それはこっちの台詞だ」
普段の物静かな彼からは想像できないような押し殺したような声。
「僕はお前たちを許さない」
「ざぁけんなぁあああああああぁ!!」
トカゲ男が怒声を上げ、石斧を振り下ろす。
地面にクレーターを作るほどの強力な一撃に、土煙が舞い上がる。
轟音と砕かれた大地の破片が舞い散る。
「!?」
そんな中で一瞬だけ、ルックとトカゲ男の目線が合う。
斧の一撃を回避し、ふわりと滞空した少年。
トカゲ男の口が言葉を紡ごうと……

一閃。

横薙ぎの一撃はトカゲ男の首を斬り飛ばす。
「……………!!」
悲鳴すら上げる間もなく、巨体が倒れる。
土煙が晴れた先に立つのは、ルックの姿。
「その子…大丈夫かい?」
静かに剣を鞘へと収めながら尋ねる。
「はい、絶対に助けます」
『癒し』がどれほどの疲労を伴うものなのかは分からない。
だが、彼女の額に浮かぶ汗を見れば楽なものではない事は想像出来る。
それでもセフィリアは、苦しい顔は見せない。
「あ、あれ…ぼく……ここ、天国?」
「くすっ、違うわ。ここは貴方の村よ、見覚えあるでしょ?」
子供を地面に立たせてやる。
「おおっ、ヒュー!」
ヒューと呼ばれた子供は、脚をひきずりながらも歩いて来た父親に抱き締められる。
二人は互いの無事を確認し合う。

「良かった……ルックさん、私いつもこの時に、光の神官で良かったなって思うんです」
柔らかな笑顔を浮かべるセフィリアを、ルックは見つめてしまう。
「…うん、そうだね。良かった」
返答が少し遅れたが、少女はそんな少年の心中に気付いた様子は無い。

その一瞬、彼にしては本当に珍しい事だが、周囲の気配を察知するのを怠っていた。
そして魔獣たちの生命力が恐ろしく高い事も、失念していた。
悪い事が重なる中、セフィリアの方がそれに気付いた。
「っ!?」
少女の恐らく生涯で最も迅速な行動だっただろう。
ルックの背後で首だけになっても、未だに死んでいなかったトカゲ男が動く。
器用にも首だけで少年の背中へと飛びつく。
「危ない!」
そのトカゲの牙はルックの代わりに、セフィリアへと食い付いた。
「つうっ!」
「!?」
少女の細い腕を食いちぎらんとする生首を殴りつけ、引き離す。
ごろごろと転がりながら、魔獣はがらがら声で高笑いする。
「くかかかっ! 一人じゃ死なねえ! 俺様の毒は猛毒だぜえ!
 しかもじわりじわりと効いて来る! ゆっくりと…ぐげっ!」
ルックの剣が突き立てられ、今度こそトカゲ男は絶命した。



リーダーが死に、魔獣たちは自然と引き上げて行った。
村は深刻な被害を受けたものの、壊滅までには至らなかった。
そんな中、重傷を負ったセフィリアは村のベッドに寝かされている。
すぐに毒を吸い出したはずだが、猛毒だったらしく荒い息を繰り返す。
「お姉ちゃん……だいじょうぶ?」
少女に命を助けられた子供とその両親の看病も、効果が薄い。
大規模な都市に行けば有効な解毒剤があるだろう。
だが、それまでセフィリアの体力は持続しない。
「………ここからは僕が看病します。貴方たちも怪我人なんですから休んで下さい」
ルックが穏やかに伝える。
それでも看病すると言い続ける家族に、ルックは困ったような、しかし意を決した表情で言う。
「一つだけ試してみたい事があります。
僕とセフィリアさんの二人だけにして貰えますか?」



ベッドに横たわる亜麻色の少女。
毒が体中に廻っているせいだろう。
頬は朱色に染まり、顔のみならず体中に汗をかいている。
それでも家族が居る間は、心配をかけさせたくなかったのだろう。
やせ我慢しているのは、少年によく分かった。
「セフィリアさん……聞こえますか?」
額のタオルを新しいものと交換しながら、ルックが優しく囁く。
「…ぁ…はい……よく聞こえます。………えへっ、大丈夫ですよ。
 明日には…はぁ……きっと良くなって…」
無理に笑おうとするセフィリアを遮り、ルックがその言葉に割り込む。
「光の女神の神官は、嘘をついちゃいけない」
「…嘘をつく神官は………やっぱり駄目ですか?」
亜麻色の少女はそれでも、笑みを作る。
他人を思いやる優しい嘘。
聖女の微笑みに、少年は覚悟を決めた。
「…駄目だ。だから、そんな悪い神官の言葉は信じない」
ルックの言葉に、セフィリアはやはり微笑む。
「ひどい……はぁ…よ、ルックは……やっぱり意地悪……」

(嫌われたって、意地悪だって思われても……それでも僕は君を助ける)

「セフィリアさん……文句は、抗議や償いは後で必ずやるから……今はごめん」
言葉の意味が良く理解出来ないのか、それとも意識が薄れて来ていたのか。
少女の反応ははっきりとはしない。
荒い呼吸を繰り返すセフィリアの顔に、顔を近づける。
「はぁ…はぁ………んっ!?」
触れるか触れないかの柔らかな口づけ。
ルックとセフィリアの最初の行為がそれだった。








「んっ!…んんん……んっ……」
戸惑いと驚きから、セフィリアから抵抗の声(と思われる吐息)が上がる。
少し強引に少女の手を掴み、そのまま口づけを続ける。
「ん……んむっ………………んぅ…」
抵抗していたセフィリアから、力が抜ける。
毒に体力を奪われていたのもあるだろうが、それ以上にルックという少年が、状況に流されて行為に及んだのではなさそうだからだ。
少年の意図は不明だが、真摯な眼差しは邪なものを感じない。
ゆっくりと顔を離し、ルックは静かに告げる。
「…嫌だと言われても、続ける。君を助けたいんだ」
ふわふわした艶やかな髪を撫でる。
撫でられる事を喜ぶ子犬のように、少女は目を細める。
「はぁ……はぁ………毒…移っちゃうかもしれませんよ?」
「構わない。むしろ僕に全部移すくらいでいい」
今までに無い、互いの吐息を感じるほどの至近距離。
毒の効果以上に頬を染めながら、少女は軽く拗ねて見せる。
「…んぅ……私、初めてだったのに…」
「ごめん………けど、僕もそう」
すまなそうにするルックに好感を覚えながらも、セフィリアは呟きを継続する。
「私だって女の子なんですよ? もっと雰囲気作ってからにして欲しかった」
「ほんとにごめん………」
申し訳なさそうに言う少年をいじめるのは、ここらへんで終了にする。
荒い息は相変わらずだが、セフィリアの気分は和らいだようだ。
「くすっ………はぁ……はぁ………っ……」
微笑むセフィリアに見とれながらも、ルックは目的を思い出す。
同時に今更ながらに恥ずかしさがこみ上げて来て、少年の顔に赤みが差す。
「…っ……はぁ…ルック………ちゃんと理由が…あるのね?」
穏やかな笑みで問われ、こくこくと頷く。
単純な性欲だけが理由では無いが、だからといって落ち着いていられるわけでもない。
荒い息を整えながら、セフィリアは頷く。
「よく…分からないけど……お願いしますね……」
人を疑う事を知らない少女に胸を打たれながら、少年も答える。
「こっちこそ…………始めるよ」
セフィリアがかすかに頷いたのを確認して、上掛けを剥ぐ。
震える手を必死に抑えながら、少女の上着に手をかける。
「…はぁ、はぁ………んぅ……」
熱に冒された吐息と、わずかに漂う甘い香り。
枕元に広がる髪の金色と、桜色に染まった肌の赤と白が映る。
「…恥ずかし………はぁ……」
毒による吐息と興奮の吐息が混ざりながら、少女が喘ぐように言う。
白い神官服と同じように白い下着が露わになる。
「……………」
「ん…はぁ……はっ……ぅ……私…変ですか?」
不安げにセフィリアは尋ねるのだが、ルックが沈黙した理由は全くの逆だ。
女らしい柔らかそうな曲線。
想像以上にきめ細かい肌。
ほんのりと漂う香りは、心臓の鼓動を高まらせる。
「いや、そんなことは無い。……ただ、すごく綺麗だから」
少年の言葉に、少女の顔が火がついたように赤く染まる。
「うぁ~~……ぅ~~~」
セフィリアは、呻くように口をパクパクさせる事しか出来ない。
「あ、えっと、嫌だったかな?」
狼狽する少女に、困った顔で尋ねる。
「…っ……照れてるんだよぉ」
軽く口を尖らせながら、少女は『猫ぱんち』ならぬセフィリアパンチを浴びせる。
そんな事に体力を使わせるのも忍びない為、そっと手を握る。
「っ…えっ…ちょ……んっ……」
細く白い首筋に舌を這わせる。
暖かいを通り越えて、熱いくらいの肌を感じる。
「はぁ…くぅ……んぁ……んん」
くすぐったいのか嫌なのか、少女は身をよじる。
ルックの舌はそのままゆっくりと、胸の膨らみへと降りて行く。
大き過ぎるわけでなく、かと言って小さいわけでもない女らしさの象徴。
セフィリアの白いブラをゆっくりとずらすと、その先端が露わになる。
「はぁはぁ……ひ…あっ………」
舌の先で突くように、弱い刺激を与える。
「んふぅ…ぁ……ひぁん……」
つつく度に、喘ぐような声をあげる。
普段の彼女は性交渉とはあまりにもかけ離れているので、その声は余計に艶っぽく聞こえる。
先端が固さを増してきたのを確認して、胸の上で舌を滑らせる。
「ん…んふぁ…………ふぅ…んくっ……」
膨らみのトップから胸の中心へと進む。
自然と柔らかな胸に顔を埋めるような形となる。
「あ…ああっ…はぁ…んっ……あ…ああ…んっ…」
波打つようにぴくりと反応するのを感じながら、ゆっくりと顔を離す。
充分なほどに恥ずかしそうな顔の少女と目が合う。
「う………」
セフィリアの顔には汗がうっすらと輝き、白い肌はほんのりと朱色に染まっている。
ややウェーブがかった柔らかそうな金髪が、やはり白いシーツに広がる。
幻想的。
いや、何かある種の神々しさのようなものを感じ、ルックは少し怯む。
「………はぁ……んっ………」
両手が差し出され、ふわりと少年の頬を包み込む。
「だいじょぶ……ですから………」
セフィリアは、やんわりと微笑む。
(聖女なのに、悪女っぽいなぁ……すごくドキドキする)
自分でもよく分からないような事を考えながら、ルックは頷く。
目を合わせていると落ち着かないので、視線を下へとずらす。
女性らしい胸の膨らみから、艶めかしい腹部。
ごくり、と唾を飲むのも一苦労しながらその下へと向かう。
「はぁ…うっ……そんなに…じっくりと見られると………」
更に(セフィリアにとっては無意識の)追撃を食らい、少年の手が震える。
それでも爪で引っ掻かないように気を付けながら、ショーツを降ろす。
「あれ??」
降ろそうとしたのだが、少女がその中心部を恥ずかしそうに押さえている為、中途半端に衣が伸びる。
「あぅ…あっ………はぁ……その……やっぱり…恥ずかしぃ……」
(だから、そういう仕草は逆効果になるんだってば!)
内心でだけツッコミながら、少年は問いかける。
「えっと……嫌かい?」
やめるか? とは聞けない。
少女を助ける為には行為を続けるしか無いのだから。
「うぁあ……ルック………ずるい…はぁ……そう言われたら、嫌じゃないとしか答えられない……」
くすっと笑いながら、少年はゆっくりと少女の手に触れる。
緊張からぎゅっと固まっていた手は、ゆっくりと解かれる。
自然、するりとショーツが降ろされる。
薄い茂みの奥、おそらくまだ誰にも触れられていない秘所が露わとなった。
「はぁ…はぁ…………ぁ……」
毒と性行為により揺らめく視界の中で、ルックが下を脱ぐのが映る。
少年の陰茎はしっかりと屹立している。
はやる気持ちを抑えながら、自らのモノを少女の淫裂に慎重にあてがう。
「ふぅあっ!……きゃ…ふぅ……ぁ……んっ…」
セフィリアは唐突に一際高い声を上げる。
ぴくんと彼女の身体が跳ねる。
どうやらルックの先端が、少女のクリトリスを刺激したらしい。
「あれ………っと……」
少年は痛いほどに固くなった自らの竿を、彼女の秘所へと向ける。
にゅるっというほんの少し湿るような音が聞こえる。
ごくり、と自分の唾を飲む音が大きく聞こえる。
「……いくよ」
「…………うん」
準備を終えた少年の腰が、ゆっくりと着実にセフィリアへと近づく。

「ん……んっ……はあっ!」
少女の中に、静かに侵入する。
少しずつ腰が奥へと進むのだが、中程までが入ったくらいで窮屈になる。
柔らかい柔肉に、ぎちぎちと締め付けられる。
「くっ……セフィー………ちょっと力を抜いて……」
「はっ…んっ…そんな……ん…こと言われてっ……も……」
お互いに、喘ぐような声が漏れる。
注射されるのを我慢する子供の様に、少女の身体には必要以上に力が入っている。
奥に突き入れる事も、引き抜く事も出来ないまま、ルックはしばらく待ってみる。
痛いくらいに誇張している自分のモノ以上に、少女は痛いはずだから。
「…ん…はぁ……はっ……はぁ…………はぁ……」
少しずつ、少しずつセフィリアの身体から強ばりが消えていく。
痛みに慣れたのか、それとも落ち着きを取り戻したのだろうか。
「ごめん…出来るだけ早く終わらせるから……
 痛かったら、僕にしがみついていいから」
うっすらと涙を浮かべる少女に、出来るだけ優しく囁く。
「うん……はぁ…あっ………いいよ、ルックなら………んうっ!」
深く腰を突き入れると、少女は強く抱きついて来た。
胸元に当たる柔らかな感触と、一物を包む熱く柔らかい中を感じる。
「あくっ……んぅ…はぁ…あ……ああ……ん……んんあっ…」
ただでさえ狭く圧迫されている上に、熱さと柔らかさが加わる。
体中の神経が股間へと集中するかのような錯覚。
痺れるような快感と、それ以上に達するであろう放出感が集まる。
セフィリアを気遣いながら、それでもあまりの気持ちよさに目的を忘れそうになりながら腰を使う。
「あふっ…あっ……ん……ああっ……あ……あぅ…」
リズミカルに突き入れる度に、少女の声が快楽となり伝わる。
くちゅくちゅという水音とベッドの軋む音。
この家の人たちに聞かれてしまうのではないかと思いながらも、行為を止める事は出来ない。
「くふっ…ふぅ……あ…んんっ…あくっ………ふぁああっ……」
柔らかな中は、ルックを飲み込むように収縮し、刺激する。
「…あん……あっ…はぁ………はっ……はぁん……あ……」
これ以上無い快楽は、意識を飲み込んでしまうかのようだ。
深く腰を突き入れ、中を味わうともう一度引き抜く。
「ふぅあっ!…あ…ああっ……ん…はぁ……っく……ふっ…んあ…」
より強く擦りつけるように、腰を突き出し、そして抜ける直前までまた戻す。
壊れた機械のように、ただただ同じ動作を繰り返す。
「あ…ああっ………ルック……ふぁ……ああ……あああっ……」
達してしまいそうな中、少年は最後のスパートをかける。
身体を本能のままに動かしながらも、ルックは自分に言い聞かせる。


大丈夫だ、僕のこの力は奪うだけのものじゃない。
生命力を渡す事だって、きっと出来る。
やって見せる。
この娘を助けたい。
その為に……
お願いだ。
僕の生命力を、毒を打ち破る力を、セフィーに!


「んっ…うっ…あああっ……んうっ………っ」
セフィリアの身体が弓なりになったかと思うと、ルックをきつく締め付ける。
「ル、ルック……私……ああっ……何か…うぁ…あっ…ああああっ……」
少年も二人が繋がる腰を離さないように、しっかりと密着させる。
「く、来るぅ……ふくっ………んっ………ああああああっ」
びくんびくんと痙攣する彼女。
迫り上がる快楽が少年と少女の意識を白く染めた。












「勇者ルクス様は、ルコナーア教団の申し出を断ったそうです。もう、大慌てですよぅ!」
セフィリアは当初よりも元気にそう伝える。
帝都に戻り、『勇者様お迎え失敗』で怒られるかと想像していた彼女だが、それ以上にショッキングな出来事の為、彼女の失敗はうやむやになったのだろう。
「そうだね。そういうつもりだったらしい。
 勇者ルクスは出来るだけ他人を巻き込みたくなかったみたいだ」
何やら知っている様子のルックを不思議そうに見ながらも、少女は言葉を続ける。
「まぁ、勇者ルクス様がどんな人か一度見てみたかったというのはありますけど…。
 いいです。私はルックさんについて行くって決めましたから」

事が終わった後、ルックの予想通り、セフィリアは元気を取り戻した。
毒を打ち消すくらいの生命力を分け与えるのに成功したのだ。
つやつやぴかぴかしていたセフィリアと比べ、ルックは真っ白く燃え尽きていたのは余談だが。

解毒が成ったわけだが、性行為の事実が消えるわけでは無い。
上目遣いに少女は、
「ルックさん……責任、取って下さいね」
などと反論を許さない発言をしたのだ。

「『勇者』だとかは嫌いだって言っていたのに、顔だけは見てみたいの?」
穏やかに、ほんの少しだけとげを含むツッコミに、セフィリアはぷーっと頬を膨らませる。
「それとこれとは話が別です。ルックさんは、ほんとに意地悪なんですから」
腰に手を当て、本人は怒っているつもりだろうが、全く迫力を感じない。
ここまでほんわかと怒られると、ある種の才能なのではないかとさえ思える。
そんなセフィリアを更に怒らせるだろう事を考えながらも、ルックは別の言葉を発する。
「くすっ、ごめん。
じゃあ、罪滅ぼしに勇者ルクスと呼ばれている人の顔を見せてあげるよ」
「? ルックさんの知り合いかなんかで…」
小首を傾げながら、うーん、と唸る彼女を遮るように少年は告げる。
「この顔がルクスっていうセフィリアさんが嫌いな勇者の顔さ」
「へぇ~、ルックさんがルクスさんの顔……って?
 えっ? ………えええええええっ!?」
『?マーク』を10個以上頭の上に浮かべた後、
「ええっと…………双子?」
とかいう天然ボケをかます彼女に構わず少年ルック、否、勇者ルクスは穏やかな笑みを浮かべている。

これが、後に『聖女』と呼ばれる事になるセフィリアと、後に『勇者』と呼ばれる事になるルクスとの出会いである。



その少年の笑顔は時が経っても、薄れる事はない。
彼女の脳裏にしっかりと焼き付いているのだから。
だからこそ、それは寂寥となる。
だからこそ、それは悲哀となる。
だからこそ、それは未練となる。
……けど、だからこそ、それは淡い希望となる。

黒いローブの隙間から覗く唇が、言葉を紡ぐ。
「あなたは……いつまで待たせるのでしょうね……」
一陣の風が、黒いローブをはためかせる。
幻想的な月明かりの下、花びらが舞い散る。
『失われた聖女』は、ただ静かに佇んでいた。































あとがき

「人の家のベッドで何してくれやがんだ……」(事が終わった後のベッドで呟くオヤジさん)

「ライトサイド(1部)」では、勇者君が頼りなくて、聖女様がしっかりもの。
ですので、過去ではその逆です。
天然聖女セフィリアさんと、しっかり勇者ルクス君。

作者の内面がドロドロしてるからなのか、真面目な勇者君を書くと疲れます。
「正義? 下らぬな。しょせん、人間は愚かな生き物なのだ」
とか、悪役のジュダ台詞の方がすらすら出てくるのは人としてどうかと(笑)


今回のシナリオなんですが、別パターンとして…

勇者ルクスの偽物(魔族)が、教団を破壊しようとして忍び込んでいる。
本物のルクスがそれに気付き、止めようとする。
教団に殴り込み、「そいつは偽物です!」と。
証拠を見せろと言われ、「僕が…ルクスですから」(周囲&セフィリアびっくり)

とかも考えてましたが…
これだと、どうやってもエロシーンに結びつかないので止めにしました。
(エロ文章作者も大変なんです)

今回のエロシーンは、性交による「解毒&体力回復」
ファンタジーエロゲーには、ごろごろしてそうな展開です(笑)
毎回毎回「ホイミ」の代わりにエロだと飽きるだろうけど、呪いを解くとかには使えそう。
他にも「魔力の受け渡し」とか大義名分はいっぱいあります(笑)
便利だな、ファンタジー。
(↑そんな事に便利を感じるのは、ごく少数)

今回一番気に入っているのが、敵のトカゲ男。
分かる人にゃあ分かると思いますが、彼のイメージは「ハーメルンのバイオリ○弾き」のドラム。
指先でぴんぴんっと、子供とかを弾く彼は、分かりやすい悪役です。
さんざん悪い事した挙げ句に、一ページで殴られ粉砕(笑)
いい仕事するなぁ(笑)

あと、補足的に説明ですが、帝都に来ていた『勇者ルクス』はニセ者です。
と言っても、ルクス本人に頼まれて断りを入れているんですよね。
そこらへんの話は、別の外伝「蒼の魔術師」に繋がったりします。
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