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ダークサイド 第6話 「殺戮人形」
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戦乱はかつての英雄、ヘルゼンにより統一された。
そして帝国が築かれ、人々は繁栄し平和な時代が続いた。
南方には、3つの領土が出来た。
武術の盛んな領土として知られる南方の中心、ロゼッタ領。
ロゼッタの西、交易の盛んな商業都市を持つ、バーザル領。
ロゼッタの東、穏和な領主が治める、ミリヨヒ領。
そしてロゼッタの北に接する、南方城塞都市として有名なクインヒア領。
「独立宣言後、まずバーザル領を落とす」
ジュダの言葉に、居並ぶ将たちにざわめきが起こる。
「独立……ですか? それは皇帝陛下に弓を引く………という意味になりますぞ?」
将の中で、一番の老将アムンゼルが代表して言った。
かつての英雄の血を引く皇帝に逆らえば、逆賊扱いされるのは明白だ。
「アムンゼル将軍、それは違う。我々は皇帝陛下を傀儡(かいらい)としている逆賊どもを討伐する為に立ち上がるのだ」
またもや将にざわめきが起こる。
「かつては皇帝陛下が善政を行っていらしたが、今の帝国の状況はどうだ?
未だ皇帝陛下は9歳であらせられる。
現状は、周囲の高官どもが自らの利益の為に皇帝陛下を傀儡とし、利用しているに過ぎないのだ」
ジュダの声は特別大きいものではなかったが、周囲によく響いた。
「この賄賂・腐敗が横行する現在の帝国が真の帝国と言うならば私は何も言うまい。
だが、諸君らが帝国を真に愛する者であるならば……今、立ち上がらなければならないのだ」
ジュダの口から淀みなく言葉が紡がれる。
一見すると正論のように聞こえるが、賄賂が全く無い国、組織などは滅多になくジュダの言っている事は建前論に過ぎない。
だが、それすらも甘美な使命感をもたらすのは、その男の能力か。
「そんな、強大な帝国に………」
「だが、ジュダ様ならば………」
周囲のざわめきの、これ以上無いタイミングでジュダは立ち上がった。
「この作戦については今は明かせない。本当に信用出来る者にしか話せない。
よって私の考えに賛成出来ない者については、今この場で不参加を示して貰って構わない。
むろんそれを罪とすることは無いと、我が主クレア・ロゼッタの名において誓おう」
男の発言は敢えて強制せず、将たちが自発的に賛同したと思わせるように、計算されたものだった。
ジュダはマントを翻し、部屋の出口へと向かう。
「一時間後に、参加するものは座席に残っていてくれ」
優れた騎士団長兼宰相の皮を被った男は、部屋を後にした。
一時間後ジュダの目論み通り、彼が立ち去る前と同じ面子がその場所に居た。
「騎士団長殿! 我々はあなたに付いて行きます! 例えどんな困難があろうとも!」
(間抜けな奴らだ。使い捨ての駒に過ぎぬのに。くくっ………)
残っていたのは若い将だけでなく、異論を唱えた老将アムンゼルもいた。
「……(エリィ殿がおっしゃられた事……真実かどうか見極めねばならぬ)」
そんな老将を知ってか知らずか、周囲を見渡すとジュダは立ち上がった。
「では、行動に移すとしようか」
ジュダがそう宣言し、時は動き出した。
個人の武力と指揮する全体の武力も正比例する。
そんな誤った認識を与えるほどに、ジュダの指揮能力は群を抜いていた。
敵の陣形の隙を付き、そこを重点的に攻め、完全なタイミングで進退する。
いかに不意を突かれたとは言え、バーザル兵たちは散り散りと言った様子で逃げていった。
戦功を上げようとした相手兵士たちは、ほとんど一瞬でジュダの剣の錆となっていた。
(確かに非凡なのは認める。だが、それでも……)
老将は内心呟く。
特定の軍隊を持たないバーザルではあったが、その経済力による他地域からの傭兵は際限がない。
冷静に考えれば、ロゼッタがいかに武の国と言われようと、戦争を決めるのは純粋な兵力なのだ。
さらには時間が経てば、北のクインヒア、東のミリヨヒからも増援はやってくる。
全軍の八割をバーザル攻略に充てている為、できるだけ早くバーザルを陥落させたいところだった。
非凡では足りないのだ。
(このままでは、ロゼッタは滅亡する。一体どうするつもりなのだ)
老将の心配をよそに、軍隊がバーザル主要都市に迫った二日目の夜、ジュダが動いた。
「ええい! まったく不甲斐ない!」
バーザル領主キエヌフは飲んでいたグラスを叩き付ける。
いかにロゼッタが強く、不意を突かれたとはいえ、たった二日で領主の城を目前にまで攻め込まれるとは。
「だが、まあ……」
バーザル城は城下町である商業都市を丸々城壁で囲んでいる。
籠城しても一ヶ月以上持ちこたえる事が出来る。
キエヌフは気を取り直して、新しい酒を持ってくるように命じる。
だが、領主の命令に反応する声はない。
「おい! 聞こえないのか!?」
「……過労ではないか? 皆疲れて眠っているようだ」
領主の声に答えた声は、部下のものではなかった。
剣に付いた血糊を振り落としながら、男がゆっくりと歩いて来る。
「なっ! 誰だ、お前は!?」
「ロゼッタ騎士団長……と言えば状況を把握し易いかな?」
女のような長い艶やかな髪に、これまた同様に整った顔立ち。
敵陣にありながら、ジュダは笑みを浮かべている。
「ぬぬぅ……」
ここに至るまで、少なくとも50人以上の兵士が居たはずだった。
いくら戦で疲弊していたとはいえ、単身乗り込んで来られる場所ではない筈だった。
「ぐぬっ………」
キエヌフは喉にまとわりつく唾を、やっと飲み込む。
「さて、バーザル領主キエヌフ公。私の用件は分かるな?」
「よ、用件?」
不敵に笑う男は、線の細い優男にしか見えないのに、恐ろしいほどの圧迫感がある。
「そうだ。今日これよりバーザル領はロゼッタの属領となるのだ。
なに、自分の命と天秤にかければすぐに答えは出るだろう?」
ジュダは恐ろしく穏やかな表情で、とてつもなく物騒な事を言う。
「ぐっ………ぐふぐふ!
そんな台詞はこいつと戦ってからにするんだなぁ! 出てこい!」
領主の言葉に応え現れた人影は、意外にも若い女性だった。
だが、その人ならざる感覚にジュダが僅かに警戒する。
「自動人形(オートマター)か……」
魔族と比べ、身体能力に劣る過去の人間たちは様々な武器を作り出した。
俗に遺失技術(ロストテクノロジー)と呼ばれる、失われた技術により作り出されたヒトの手によるヒト。
その一つが『自動人形』である。
その戦闘能力は普通の人間では太刀打ち出来るものではない。
「ぐふぐふ。こいつを知ってるか!? ならばその強さも知ってるだろう?
領主などをやっていると、暗殺者に命を狙われる事が多いからなぁ!」
キエヌフは得意気に喋る。
「魔族に匹敵すると言われている殺人人形だ! 私に偉そうな事を言った罰だ!
死ぬがよい! おい、あの男を殺せ!」
男の声に、女性型人形が起動する。
「……はい、命令認識しました」
「ふん………」
だが、ジュダは不敵に笑った。
「なっ……ぐっ……ば、馬鹿な………」
キエヌフの自信は打ち砕かれた。
動作テストでは素晴らしい結果をもたらした自慢の自動人形だったが、それでも目の前の男に劣っていたからだ。
ジュダと数合剣戟を重ねた後、彼女の剣が弾き飛ばされる。
「……」
無手となりつつも、男に掴みかかろうとする。
だが、男が口内で何かを呟くと同時に床や壁から鎖が出現し、鎖は一瞬で彼女の体を拘束する。
「おい、お前の馬鹿力ならそんな鎖くらいっ!」
ぎりぎりと力が拮抗する音が聞こえる。
「……申し訳ありません。私の力を上回る拘束力です。解除に時間を要します」
女型人形は無表情のまま、しかし全力で拘束から逃れようとする。
「せっかくの芸術品だ。壊すのは容易いが……」
傷一つなく、余力を残しつつも男はゆっくりとキエヌフに向き直る。
「ひ、ひぃいいいいいっ!?」
「魔族に匹敵するくらいでは、私を倒すことは出来ない。
例え不完全な今の状態であってもな。………さて」
ジュダがゆっくりと近づく。
キエヌフの頼みの綱の人形は、鎖の拘束から逃れられない。
「偉そうな事を言った罰だったか? 存分に味わわせてやろう」
「たっ、たしゅけ………はがっ!」
容赦ない一撃で、壁に赤黒い血が飛び散る。
キエヌフの言葉は永遠に途切れた。
「さて………済んだぞ。出てこい」
ジュダの言葉に従って出てきた男は、薄ら笑いを浮かべる中年の男だった。
よく見ればキエヌフと顔が似ている。
「へへへっ……ありがとうございます。
これでバーザルはジュダ様のものでございますな」
男の追従するような声がする。
エリィから取り込んだ記憶に、バーザル次期領主の座を狙う者は多くいた。
彼女はそのために多くの工作をしていたが、ジュダが選んだのはこの領主の弟だった。
タイプで言えば、『領主』と言うより『商人』。
感情よりも実利益を重視し、金と地位そして命の保証を与えれば簡単に制御できる。
もちろん、ジュダが一たび劣勢となれば、簡単にひっくり返る存在ではあるが。
「私が言った事は全て理解しているな?」
ジュダが微笑を浮かべながら問う。
「へっ………へへへへ。もちろんですとも」
冷や汗をかきながら、領主となった男は揉み手する。
「ならば結構だ。私は少し休むとしよう」
ジュダはその場を後にした。
こうして、わずか二日でバーザルは陥落した。
浴室で汚れを落としてやり、服を着替えさせる。
町人の服を着る彼女は、普通の人間の少女にしか見えない。
もっとも人形と言っても、人間の体を使用して作られているため、人間と変わらなく見えるのは当然ではあるが。
「……………」
戦闘に必要のない感情一切を抑制され、プログラムされていた彼女は無表情に立ちつくす。
ジュダは改めて彼女を観察する。
亜麻色のくせのない長い髪、人工物であるからこその完璧なプロポーション。
整ったその顔は、まさしくヒトの理想が具現化した姿。
愛玩用としても用いられるだけあって、その容姿には非の打ち所がない。
「どうした? お前の精神を縛っていたプログラムは全て消去してやった。
お前はお前の自由にしてよいのだぞ?」
「………それは私に至らない点があるのでしょうか?」
やっと口を開いた彼女の言葉は抑揚が無かった。
機械として、『主人』の命令に絶対服従であるよう存在してきた彼女にとって、『命令されないこと』は不要品だと言われているようなものなのだ。
「……お前の自由にしてよいと言っているのだ。至らないというわけではない」
珍しく歯切れの悪い口調で、ジュダが答えた。
歯切れの悪い理由は、彼自身よく分からない。
「……私には理解出来ません。再度、命令の入力をお願い致します。
それが叶わないならば、お手数ですが破棄して頂きたいと思います」
抑揚の無い声で彼女が答える。
「お前の名は何と言うのだ?」
ジュダは唐突に別の質問をする。
「製造番号ORU11H……」
「そうではない。人としての名だ。持っているのだろう?」
僅かな沈黙の後、彼女は答えた。
「……オルティア、と呼ばれていた時期があります」
「そうか。ならばオルティア。お前はオルティアとして生きろ。それが命令だ」
彼女は思考する。
「やはり理解出来ません。……私は………どうすれば……」
彼女は困惑する。
機械のように感情を排除されていれば、困惑する事もないのだが、彼女は確かに困惑していた。
「難しく考える必要はない。お前が今一番やりたいこと。それをやればいい」
どこか苛立たしげにジュダは言った。
「……………」
彼女はさらに思考し、やっと言葉を紡ぎ出した。
「では、オルティアはあなたに従う存在になりたい………です」
彼女が僅かに言い淀んだのは、初めてだった。
「……ふん。そんなに束縛されたいのか? せっかく命令から解放してやったというのに。
今度は、私の束縛を受けたいと?」
「はい。それが私……オルティアが望む事…だと思います。……駄目でしょうか?」
初めて手に入れた感情を持て余しながら、オルティアはうつむいた。
「……勝手にするがいい」
「ありがとうございます。」
オルティアは深々と頭を下げる。
そしてしばらく動きを止める。
「何か変………です」
オルティアの表情や声の抑揚に変化は無いが、言葉にはわずかに戸惑いが見える。
「何がだ?」
「運動を行ったわけでも無いのに、脈拍数と体温が上昇しています。
会話もはっきりと出来ない事があり、明らかにエラーなのに、それに該当しません」
「……それは感情というやつだろう」
「感情?」
オルティアの表情は変わらない。
ぶつぶつと呟く。
「感情。なるほど、それがこの症状の原因なのですね」
オルティアは自分の胸に手を当てて、しばらく考える。
「あぁ。それがあるから人間どもは争い、殺し合う。無意味なものだ」
「…………」
(それでも、これは暖かい………)
口には出さず、オルティアは心の中でだけ呟いた。
「ジュダ様。マスターとして、あなたの細胞を登録したいのですが、よろしいですか?」
「好きにしろ」
オルティアはゆっくりとジュダに近づく。
そしてゆっくりと彼女の唇がジュダに近づく。
柔らかい女の舌の感触が、男の口内を這い回る。
「ん……………」
舌と舌とが絡み合い、熱と無味な液体の味を伝える。
しばらくした後、互いの顔が離れた。
「……ジュダ様、失礼して………よろしいでしょうか?」
「好きにしろ、と言ったはずだが」
「……はい」
オルティアがぎこちなくジュダの衣服を脱がせる。
実は細胞の登録は口づけだけで、すでに終わっていた。
だが、生まれて初めてオルティアは感情を手に入れ、それに従ったのだ。
彼女はジュダの布地の上から、ゆっくりと刺激を加える。
まるで壊れ物でも扱うように、ゆっくりと。
それが逆にこそばゆいような刺激を与える事になる。
「…………」
男にも女にも言葉は無いが、女の呼吸は荒くなっている。
「やはり変です。………心拍数が……勝手に上昇しています」
オルティアが不安そうに言う。
「それは興奮しているというのだ」
「……そう………なのですか」
ジュダの言葉に、オルティアの顔が赤くなる。
表情は変わらないが、わずかに目を逸らす。
(そうか。これが興奮なのか。……悪くない。ううん、心地よい)
自身に芽生えた感情に、戸惑いながらもオルティアは行為を続ける。
やがてもっと過度な刺激を与えたくなって、彼女はジュダの服を脱がそうとする。
「……取って………よろしいでしょうか?」
「いちいち聞かなくてもよい」
「はっ、はい」
慌ててジュダから目を逸らし、服を脱がせる。
自動人形として、登録や愛玩行為を行うのは初めてではない。
だが、オルティアとしての意志・感情でこういった行為をするのは初めてだった。
だから、彼女の顔は赤く火照り、消されたはずの『恥ずかしい』という表情がわずかに浮かぶ。
服の下から現れたジュダの一物は、やや硬度を増している。
「失礼………します」
オルティアは髪を軽く掻き上げ、ジュダのものを口に含む。
「んっ……んむっ…ぷっ………はぁ………んんんっ………」
人間と同じ温かな感触がジュダの一物を包む。
その後、一度口を離し、今度は側面から頂上に向かうように舐め上げる。
「んっ…はっ…ぁ………んんっ………はぁ……んっ……」
温かいナメクジが這うような、だが不快ではない感触が男に与えられる。
彼女の添えた手はジュダのモノを逃がさないように添えられ、かつ刺激を与える。
再び誇張した男根をくわえる。
「っ……ぷあっ………んんっ……はっ………んんぁ……」
オルティアの動きは、格段に良くなっていった。
ジュダの反応を確認しながら、より良い快楽を得られるような動きを学習する。
最初はぎこちなかった動きが、今では男が快楽を得るツボを知り尽くしたかの動きとなっている。
動きは完全なのにそれに不安を抱いているのか、オルティアは健気に触れながら、上目遣いにジュダを見る。
「ふっ……心地よいぞ」
「んむっ………ありがとうございます」
彼女はジュダのモノを口に入れたまま、もにょもにょと礼を言う。
丁寧かつ適切な刺激が与える甘美な感覚にわずかに酔いながら、ジュダは高まっていた。
「オルティア……そろそろ………いくぞ」
「えっ……きゃ!?………んむっ」
オルティアの絹のような柔らかい髪を自らに引き寄せ、激しく前後させる。
口調は戸惑っている彼女だが、シミュレートされた動きは完全にジュダに合わせた動きだ。
「ふむっ……んっ………んんっ………うんんっ……」
ジュダの心を読んでいるかのように、まるで自慰行為をしているかのように的確に彼女の舌と口がジュダに刺激を与える。
「んっ……んんんっ………んっ……!?」
食事のようなものであっても、射精の感覚はジュダにも快楽をもたらす。
ジュダの体がわずかに脱力する。
オルティアの口が離れ、その口の端から白濁の液体がこぼれる。
「……………」
味わうように彼女はそれを飲み込んだ。
「……ジュダ様……嬉しい…です」
オルティアは微笑しながら言った。
「では次は、私がオルティアに快楽を与える番だな」
「………はい。お願いします」
オルティアはゆっくりと立ち上がり、纏っていた服を脱ぎ始める。
だが、その動きは途中で止まる。
「……あの、ジュダ様」
彼女が戸惑いながら話す。
「何だ?」
「服……着たままで……よろしいですか?」
初めて兵器や愛玩人形でなく、人間として扱われた証。
それが、戦闘用でない町人の服装だった。
初めての贈り物に、彼女は愛着を感じていたのだ。
「……好きにすればいい」
それを知ってか知らずか、ジュダは認め、彼女をゆっくりとベッドへと横たわらせる。
脱ぎかけの服をずらすと、彼女の白い肌が露わになった。
「…………」
彼女は感情を取り戻して来ている。
だが、人形でいた時が長かった為、彼女はそれを表現するすべを知らない。
男の手が彼女の下着をずらす。
「ひっ………んっ…………」
消え入りそうな、わずかな悲鳴が上がる。
それは彼女の感情がもたらした、生の反応だった。
ジュダはそれに構わず、露わになった乳房を口に含む。
周囲から徐々に先端へと舐めていく。
「あくっ……んっ………」
感情に慣れていないのか、オルティアは顔を強ばらせて、声を押し殺す。
「んっ……はぁ…あっ………んんっ………」
ジュダが軽く乳首を噛んだのに反応したのか、彼女がジュダの頭を抱え込む。
が、すぐに失礼となると思ったのか、手を離す。
「遠慮せずとも良いぞ。もっとも頭を潰されてはかなわんがな」
「はっ…い。………それは大丈夫だと……思いま…きゃ!」
何の前触れもなく、突然強く吸われた為、オルティアの声が悲鳴で途切れる。
だが、すぐに控えめな喘ぎ声に変わる。
「……ふっ…んっ……あっ………くっ…んんっ……」
ジュダの舌が執拗に乳首を舐め上げ、その腕は下に侵入していった。
「きゃふっ!……あっ…そこは………ぁ……だめ………」
男を抱きしめる腕が僅かに固くなった。
茂みの無い女性器にジュダの指が触れたからだ。
以前の所有者があえて、このような仕様にしたらしかった。
ジュダの手には、濡れそぼった柔らかい肉の感触のみが当たる。
「す、すいません…………ジュダ様………」
何となく申し訳なくなって、オルティアは呟いた。
「気にする事はない」
だが、ジュダは意に関しない様子で答えた。
「し、しかし……私は普通の人間では無いので………きゃん!?」
沈みがちになっていた彼女の声は、またしても彼女の甘い悲鳴に消されていた。
ジュダの手が、彼女と同等かそれ以上に精密な動きで彼女に快楽を与えていたからだ。
「普通の人間など誰が決めたのだ? ましてや普通の人間などどこにも居ない。
例え居たとしても、全てが平均な人間など面白味に欠ける」
「うっ………んっ…ああっ………ジュ…ジュダ様ぁ………んんっ…」
初めて彼女の全てを認めて貰った喜びからか、彼女から涙が溢れる。
愛しい、という感情が男の頭を抱きしめる。
だが、その男は女の体をまさぐりながら、冷笑していた。
(お前から力を貰う事は出来ないが、保険をかけさせて貰う。せいぜい愉しむがいい)
今まで感じた事のない刺激を与えられ、彼女は体をぴくぴくと痙攣させる。
「くっ……あああっ……はっ…んんっ……はぁ…ああ……あっ……」
くちゅくちゅと彼女の愛液が音を立てる。
「もう充分だな」
ジュダが手を離し、下着を下ろす。
「はい……ジュダ様」
オルティアは身を起こし、自らジュダにまたがる。
「…はぁはぁ……失礼………します」
男の誇張したものが、オルティアの膣内に侵入する。
いや、正確には女の方から男の方へと腰を近づける。
「んくっ……あっ……ジュダ様の………大きくて…はっ……熱い」
熱病に冒されたように、オルティアが喘ぐ。
ジュダが上半身を起こし、彼女の背に手を回す。
一番深く結合する姿勢で、女もジュダの背中に手を回す。
「ああっ……はっ…あっ……ああっ……あっ………んんっ…」
男の突き上げる動作に、完全にタイミングを合わせて、オルティアも動く。
「んんっ………あっ…あああっ……あんっ…あっ………はぁ……んんっ……」
腰を突き上げる度に、結合部からは水を叩くような音が聞こえる。
オルティアの火照って上気した肌が、男にもその熱と興奮を伝える。
「はあっ…あっ……ああっ……んんんっ……あっ…はぁ……あっ………」
女の喘ぎ声もその間隔を狭めている。
「そろそろ……いくぞ」
声と共にジュダの動きが速度を増す。
「あっ……?……うあっ…はっ……あん……ああっ…んん……あああっ」
ピストン運動がオルティアの体を抉る度に、彼女は喜びの声を上げる。
「あっ……あ…はっ……はぁ……ああっ…あん……くっ………………ああああっ……」
彼女の絶頂も近くなったのか、抑えていた声も今は大きくなっている。
「あ…うっ……ジュ、ジュダ様ぁ……だっ、出して………中に…ああっ……」
一際強く差し入れる。
「あっ………ああああああっ!!……ジュ、ジュダさまぁ!!」
男の白濁する液体が、女の体内に注ぎ込まれる。
「エラー発生………いえ、体の調子が…変です………ジュダ様」
さきほどとは違う喘ぎ声を上げながら、オルティアが言った。
「心配するな。お前には私の力を分け与えた。すぐに済む」
「……はい。分かりました」
信じられる男の言葉に、ためらい無く彼女は従った。
やがて男の言葉通りに、体は調子を取り戻してきた。
「…これは?」
「大して違和感は無いはずだ。体はほとんど以前のままだからな。
ただ、いくらか能力を得た事は違うだろうが」
自動人形オルティアは、いや、魔族に作り替えられたオルティアはゆっくりと起きあがる。
「はい。以前と比べて53%能力が向上しています。
そしてこの能力は………?」
「精霊力だ。訓練次第で強力になる、励め。
これからのお前の働きに期待させて貰うぞ。オルティア」
彼女の信頼する主人の声がする。
「はい、ジュダ様」
彼女は、嬉しそうな笑顔を見せる。
(この人はきっと多くの人間を殺す存在になる。……けれど、私には唯一にして最高の救い。
お守りして、付いて行きます。ずっとずっと…永遠に……)
オルティアの一生変わる事のない、『使命』が決定された。
他人からのものでない、自分の内からの使命が……。
ロゼッタ独立とバーザル領陥落の知らせが、クインヒア領南方総司令ロイドにほぼ同時に届いたのは、それからすぐの事だった。
大きな争いの無かった帝国は、再び戦火に焼かれようとしていた。
たった一人の男によって……。
To Be Continued・・・
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あとがき
あーーーー! べたべたな、くそ恋愛は嫌いじゃあ!!(←なら、書くなよ)
次回はやっぱり嫌がる相手を……ってシチュエーションがいいですね。
けど本気で嫌がられると引くので、ある程度は和姦っていう、いつも通りな方向で(←おい)
今回、相手にする国(正確には、帝国領土)が増えたせいで、シミュレーション部分が長くなってしまいました。
これでも原文の7割くらいに抑えたんですけどね(^^;)
なので、自動人形オルティアさんについての説明とか、バトルシーンとか一切無し。
言い訳がましく補足すると、彼女は人間が作り出した人造人間ってな感じです。
と言っても、完全に機械だと人形と変わりない(=あのシーンが萌えない)ので、感情抑制プログラムをジュダに外されたということにしてみました。
彼になぜ、そんな事が出来るのかと言うと・・・
・・・・・
ほら彼、魔王だからさ(笑)
色々思い出したんだよ、きっと。
本文中の「保険」ってのは、多分、オルティアさんの体に爆弾っぽいのを仕掛けたんです。
嫌な奴ですね、ジュダって! これだから魔王は!(笑)
これでクレアに続いて、二人目の魔族の娘。
……大丈夫です。死にキャラにはなりません、きっちりと覚えてますとも! ええ。
………多分。(←だから、作者なんだから多分とか言うなよ)
次回は南方総司令ロイド(多分若くて美形の軍師タイプのにーちゃん)との対決か!?
と思わせておいて、『魔王の遺跡』とやらに行く話になりそうです。
行き当たりばったりですね(笑)
勇者はどうしたんでしょう?
それでは、また次回のあとがきでお会いしましょう。
それでは~。
そして帝国が築かれ、人々は繁栄し平和な時代が続いた。
南方には、3つの領土が出来た。
武術の盛んな領土として知られる南方の中心、ロゼッタ領。
ロゼッタの西、交易の盛んな商業都市を持つ、バーザル領。
ロゼッタの東、穏和な領主が治める、ミリヨヒ領。
そしてロゼッタの北に接する、南方城塞都市として有名なクインヒア領。
「独立宣言後、まずバーザル領を落とす」
ジュダの言葉に、居並ぶ将たちにざわめきが起こる。
「独立……ですか? それは皇帝陛下に弓を引く………という意味になりますぞ?」
将の中で、一番の老将アムンゼルが代表して言った。
かつての英雄の血を引く皇帝に逆らえば、逆賊扱いされるのは明白だ。
「アムンゼル将軍、それは違う。我々は皇帝陛下を傀儡(かいらい)としている逆賊どもを討伐する為に立ち上がるのだ」
またもや将にざわめきが起こる。
「かつては皇帝陛下が善政を行っていらしたが、今の帝国の状況はどうだ?
未だ皇帝陛下は9歳であらせられる。
現状は、周囲の高官どもが自らの利益の為に皇帝陛下を傀儡とし、利用しているに過ぎないのだ」
ジュダの声は特別大きいものではなかったが、周囲によく響いた。
「この賄賂・腐敗が横行する現在の帝国が真の帝国と言うならば私は何も言うまい。
だが、諸君らが帝国を真に愛する者であるならば……今、立ち上がらなければならないのだ」
ジュダの口から淀みなく言葉が紡がれる。
一見すると正論のように聞こえるが、賄賂が全く無い国、組織などは滅多になくジュダの言っている事は建前論に過ぎない。
だが、それすらも甘美な使命感をもたらすのは、その男の能力か。
「そんな、強大な帝国に………」
「だが、ジュダ様ならば………」
周囲のざわめきの、これ以上無いタイミングでジュダは立ち上がった。
「この作戦については今は明かせない。本当に信用出来る者にしか話せない。
よって私の考えに賛成出来ない者については、今この場で不参加を示して貰って構わない。
むろんそれを罪とすることは無いと、我が主クレア・ロゼッタの名において誓おう」
男の発言は敢えて強制せず、将たちが自発的に賛同したと思わせるように、計算されたものだった。
ジュダはマントを翻し、部屋の出口へと向かう。
「一時間後に、参加するものは座席に残っていてくれ」
優れた騎士団長兼宰相の皮を被った男は、部屋を後にした。
一時間後ジュダの目論み通り、彼が立ち去る前と同じ面子がその場所に居た。
「騎士団長殿! 我々はあなたに付いて行きます! 例えどんな困難があろうとも!」
(間抜けな奴らだ。使い捨ての駒に過ぎぬのに。くくっ………)
残っていたのは若い将だけでなく、異論を唱えた老将アムンゼルもいた。
「……(エリィ殿がおっしゃられた事……真実かどうか見極めねばならぬ)」
そんな老将を知ってか知らずか、周囲を見渡すとジュダは立ち上がった。
「では、行動に移すとしようか」
ジュダがそう宣言し、時は動き出した。
個人の武力と指揮する全体の武力も正比例する。
そんな誤った認識を与えるほどに、ジュダの指揮能力は群を抜いていた。
敵の陣形の隙を付き、そこを重点的に攻め、完全なタイミングで進退する。
いかに不意を突かれたとは言え、バーザル兵たちは散り散りと言った様子で逃げていった。
戦功を上げようとした相手兵士たちは、ほとんど一瞬でジュダの剣の錆となっていた。
(確かに非凡なのは認める。だが、それでも……)
老将は内心呟く。
特定の軍隊を持たないバーザルではあったが、その経済力による他地域からの傭兵は際限がない。
冷静に考えれば、ロゼッタがいかに武の国と言われようと、戦争を決めるのは純粋な兵力なのだ。
さらには時間が経てば、北のクインヒア、東のミリヨヒからも増援はやってくる。
全軍の八割をバーザル攻略に充てている為、できるだけ早くバーザルを陥落させたいところだった。
非凡では足りないのだ。
(このままでは、ロゼッタは滅亡する。一体どうするつもりなのだ)
老将の心配をよそに、軍隊がバーザル主要都市に迫った二日目の夜、ジュダが動いた。
「ええい! まったく不甲斐ない!」
バーザル領主キエヌフは飲んでいたグラスを叩き付ける。
いかにロゼッタが強く、不意を突かれたとはいえ、たった二日で領主の城を目前にまで攻め込まれるとは。
「だが、まあ……」
バーザル城は城下町である商業都市を丸々城壁で囲んでいる。
籠城しても一ヶ月以上持ちこたえる事が出来る。
キエヌフは気を取り直して、新しい酒を持ってくるように命じる。
だが、領主の命令に反応する声はない。
「おい! 聞こえないのか!?」
「……過労ではないか? 皆疲れて眠っているようだ」
領主の声に答えた声は、部下のものではなかった。
剣に付いた血糊を振り落としながら、男がゆっくりと歩いて来る。
「なっ! 誰だ、お前は!?」
「ロゼッタ騎士団長……と言えば状況を把握し易いかな?」
女のような長い艶やかな髪に、これまた同様に整った顔立ち。
敵陣にありながら、ジュダは笑みを浮かべている。
「ぬぬぅ……」
ここに至るまで、少なくとも50人以上の兵士が居たはずだった。
いくら戦で疲弊していたとはいえ、単身乗り込んで来られる場所ではない筈だった。
「ぐぬっ………」
キエヌフは喉にまとわりつく唾を、やっと飲み込む。
「さて、バーザル領主キエヌフ公。私の用件は分かるな?」
「よ、用件?」
不敵に笑う男は、線の細い優男にしか見えないのに、恐ろしいほどの圧迫感がある。
「そうだ。今日これよりバーザル領はロゼッタの属領となるのだ。
なに、自分の命と天秤にかければすぐに答えは出るだろう?」
ジュダは恐ろしく穏やかな表情で、とてつもなく物騒な事を言う。
「ぐっ………ぐふぐふ!
そんな台詞はこいつと戦ってからにするんだなぁ! 出てこい!」
領主の言葉に応え現れた人影は、意外にも若い女性だった。
だが、その人ならざる感覚にジュダが僅かに警戒する。
「自動人形(オートマター)か……」
魔族と比べ、身体能力に劣る過去の人間たちは様々な武器を作り出した。
俗に遺失技術(ロストテクノロジー)と呼ばれる、失われた技術により作り出されたヒトの手によるヒト。
その一つが『自動人形』である。
その戦闘能力は普通の人間では太刀打ち出来るものではない。
「ぐふぐふ。こいつを知ってるか!? ならばその強さも知ってるだろう?
領主などをやっていると、暗殺者に命を狙われる事が多いからなぁ!」
キエヌフは得意気に喋る。
「魔族に匹敵すると言われている殺人人形だ! 私に偉そうな事を言った罰だ!
死ぬがよい! おい、あの男を殺せ!」
男の声に、女性型人形が起動する。
「……はい、命令認識しました」
「ふん………」
だが、ジュダは不敵に笑った。
「なっ……ぐっ……ば、馬鹿な………」
キエヌフの自信は打ち砕かれた。
動作テストでは素晴らしい結果をもたらした自慢の自動人形だったが、それでも目の前の男に劣っていたからだ。
ジュダと数合剣戟を重ねた後、彼女の剣が弾き飛ばされる。
「……」
無手となりつつも、男に掴みかかろうとする。
だが、男が口内で何かを呟くと同時に床や壁から鎖が出現し、鎖は一瞬で彼女の体を拘束する。
「おい、お前の馬鹿力ならそんな鎖くらいっ!」
ぎりぎりと力が拮抗する音が聞こえる。
「……申し訳ありません。私の力を上回る拘束力です。解除に時間を要します」
女型人形は無表情のまま、しかし全力で拘束から逃れようとする。
「せっかくの芸術品だ。壊すのは容易いが……」
傷一つなく、余力を残しつつも男はゆっくりとキエヌフに向き直る。
「ひ、ひぃいいいいいっ!?」
「魔族に匹敵するくらいでは、私を倒すことは出来ない。
例え不完全な今の状態であってもな。………さて」
ジュダがゆっくりと近づく。
キエヌフの頼みの綱の人形は、鎖の拘束から逃れられない。
「偉そうな事を言った罰だったか? 存分に味わわせてやろう」
「たっ、たしゅけ………はがっ!」
容赦ない一撃で、壁に赤黒い血が飛び散る。
キエヌフの言葉は永遠に途切れた。
「さて………済んだぞ。出てこい」
ジュダの言葉に従って出てきた男は、薄ら笑いを浮かべる中年の男だった。
よく見ればキエヌフと顔が似ている。
「へへへっ……ありがとうございます。
これでバーザルはジュダ様のものでございますな」
男の追従するような声がする。
エリィから取り込んだ記憶に、バーザル次期領主の座を狙う者は多くいた。
彼女はそのために多くの工作をしていたが、ジュダが選んだのはこの領主の弟だった。
タイプで言えば、『領主』と言うより『商人』。
感情よりも実利益を重視し、金と地位そして命の保証を与えれば簡単に制御できる。
もちろん、ジュダが一たび劣勢となれば、簡単にひっくり返る存在ではあるが。
「私が言った事は全て理解しているな?」
ジュダが微笑を浮かべながら問う。
「へっ………へへへへ。もちろんですとも」
冷や汗をかきながら、領主となった男は揉み手する。
「ならば結構だ。私は少し休むとしよう」
ジュダはその場を後にした。
こうして、わずか二日でバーザルは陥落した。
浴室で汚れを落としてやり、服を着替えさせる。
町人の服を着る彼女は、普通の人間の少女にしか見えない。
もっとも人形と言っても、人間の体を使用して作られているため、人間と変わらなく見えるのは当然ではあるが。
「……………」
戦闘に必要のない感情一切を抑制され、プログラムされていた彼女は無表情に立ちつくす。
ジュダは改めて彼女を観察する。
亜麻色のくせのない長い髪、人工物であるからこその完璧なプロポーション。
整ったその顔は、まさしくヒトの理想が具現化した姿。
愛玩用としても用いられるだけあって、その容姿には非の打ち所がない。
「どうした? お前の精神を縛っていたプログラムは全て消去してやった。
お前はお前の自由にしてよいのだぞ?」
「………それは私に至らない点があるのでしょうか?」
やっと口を開いた彼女の言葉は抑揚が無かった。
機械として、『主人』の命令に絶対服従であるよう存在してきた彼女にとって、『命令されないこと』は不要品だと言われているようなものなのだ。
「……お前の自由にしてよいと言っているのだ。至らないというわけではない」
珍しく歯切れの悪い口調で、ジュダが答えた。
歯切れの悪い理由は、彼自身よく分からない。
「……私には理解出来ません。再度、命令の入力をお願い致します。
それが叶わないならば、お手数ですが破棄して頂きたいと思います」
抑揚の無い声で彼女が答える。
「お前の名は何と言うのだ?」
ジュダは唐突に別の質問をする。
「製造番号ORU11H……」
「そうではない。人としての名だ。持っているのだろう?」
僅かな沈黙の後、彼女は答えた。
「……オルティア、と呼ばれていた時期があります」
「そうか。ならばオルティア。お前はオルティアとして生きろ。それが命令だ」
彼女は思考する。
「やはり理解出来ません。……私は………どうすれば……」
彼女は困惑する。
機械のように感情を排除されていれば、困惑する事もないのだが、彼女は確かに困惑していた。
「難しく考える必要はない。お前が今一番やりたいこと。それをやればいい」
どこか苛立たしげにジュダは言った。
「……………」
彼女はさらに思考し、やっと言葉を紡ぎ出した。
「では、オルティアはあなたに従う存在になりたい………です」
彼女が僅かに言い淀んだのは、初めてだった。
「……ふん。そんなに束縛されたいのか? せっかく命令から解放してやったというのに。
今度は、私の束縛を受けたいと?」
「はい。それが私……オルティアが望む事…だと思います。……駄目でしょうか?」
初めて手に入れた感情を持て余しながら、オルティアはうつむいた。
「……勝手にするがいい」
「ありがとうございます。」
オルティアは深々と頭を下げる。
そしてしばらく動きを止める。
「何か変………です」
オルティアの表情や声の抑揚に変化は無いが、言葉にはわずかに戸惑いが見える。
「何がだ?」
「運動を行ったわけでも無いのに、脈拍数と体温が上昇しています。
会話もはっきりと出来ない事があり、明らかにエラーなのに、それに該当しません」
「……それは感情というやつだろう」
「感情?」
オルティアの表情は変わらない。
ぶつぶつと呟く。
「感情。なるほど、それがこの症状の原因なのですね」
オルティアは自分の胸に手を当てて、しばらく考える。
「あぁ。それがあるから人間どもは争い、殺し合う。無意味なものだ」
「…………」
(それでも、これは暖かい………)
口には出さず、オルティアは心の中でだけ呟いた。
「ジュダ様。マスターとして、あなたの細胞を登録したいのですが、よろしいですか?」
「好きにしろ」
オルティアはゆっくりとジュダに近づく。
そしてゆっくりと彼女の唇がジュダに近づく。
柔らかい女の舌の感触が、男の口内を這い回る。
「ん……………」
舌と舌とが絡み合い、熱と無味な液体の味を伝える。
しばらくした後、互いの顔が離れた。
「……ジュダ様、失礼して………よろしいでしょうか?」
「好きにしろ、と言ったはずだが」
「……はい」
オルティアがぎこちなくジュダの衣服を脱がせる。
実は細胞の登録は口づけだけで、すでに終わっていた。
だが、生まれて初めてオルティアは感情を手に入れ、それに従ったのだ。
彼女はジュダの布地の上から、ゆっくりと刺激を加える。
まるで壊れ物でも扱うように、ゆっくりと。
それが逆にこそばゆいような刺激を与える事になる。
「…………」
男にも女にも言葉は無いが、女の呼吸は荒くなっている。
「やはり変です。………心拍数が……勝手に上昇しています」
オルティアが不安そうに言う。
「それは興奮しているというのだ」
「……そう………なのですか」
ジュダの言葉に、オルティアの顔が赤くなる。
表情は変わらないが、わずかに目を逸らす。
(そうか。これが興奮なのか。……悪くない。ううん、心地よい)
自身に芽生えた感情に、戸惑いながらもオルティアは行為を続ける。
やがてもっと過度な刺激を与えたくなって、彼女はジュダの服を脱がそうとする。
「……取って………よろしいでしょうか?」
「いちいち聞かなくてもよい」
「はっ、はい」
慌ててジュダから目を逸らし、服を脱がせる。
自動人形として、登録や愛玩行為を行うのは初めてではない。
だが、オルティアとしての意志・感情でこういった行為をするのは初めてだった。
だから、彼女の顔は赤く火照り、消されたはずの『恥ずかしい』という表情がわずかに浮かぶ。
服の下から現れたジュダの一物は、やや硬度を増している。
「失礼………します」
オルティアは髪を軽く掻き上げ、ジュダのものを口に含む。
「んっ……んむっ…ぷっ………はぁ………んんんっ………」
人間と同じ温かな感触がジュダの一物を包む。
その後、一度口を離し、今度は側面から頂上に向かうように舐め上げる。
「んっ…はっ…ぁ………んんっ………はぁ……んっ……」
温かいナメクジが這うような、だが不快ではない感触が男に与えられる。
彼女の添えた手はジュダのモノを逃がさないように添えられ、かつ刺激を与える。
再び誇張した男根をくわえる。
「っ……ぷあっ………んんっ……はっ………んんぁ……」
オルティアの動きは、格段に良くなっていった。
ジュダの反応を確認しながら、より良い快楽を得られるような動きを学習する。
最初はぎこちなかった動きが、今では男が快楽を得るツボを知り尽くしたかの動きとなっている。
動きは完全なのにそれに不安を抱いているのか、オルティアは健気に触れながら、上目遣いにジュダを見る。
「ふっ……心地よいぞ」
「んむっ………ありがとうございます」
彼女はジュダのモノを口に入れたまま、もにょもにょと礼を言う。
丁寧かつ適切な刺激が与える甘美な感覚にわずかに酔いながら、ジュダは高まっていた。
「オルティア……そろそろ………いくぞ」
「えっ……きゃ!?………んむっ」
オルティアの絹のような柔らかい髪を自らに引き寄せ、激しく前後させる。
口調は戸惑っている彼女だが、シミュレートされた動きは完全にジュダに合わせた動きだ。
「ふむっ……んっ………んんっ………うんんっ……」
ジュダの心を読んでいるかのように、まるで自慰行為をしているかのように的確に彼女の舌と口がジュダに刺激を与える。
「んっ……んんんっ………んっ……!?」
食事のようなものであっても、射精の感覚はジュダにも快楽をもたらす。
ジュダの体がわずかに脱力する。
オルティアの口が離れ、その口の端から白濁の液体がこぼれる。
「……………」
味わうように彼女はそれを飲み込んだ。
「……ジュダ様……嬉しい…です」
オルティアは微笑しながら言った。
「では次は、私がオルティアに快楽を与える番だな」
「………はい。お願いします」
オルティアはゆっくりと立ち上がり、纏っていた服を脱ぎ始める。
だが、その動きは途中で止まる。
「……あの、ジュダ様」
彼女が戸惑いながら話す。
「何だ?」
「服……着たままで……よろしいですか?」
初めて兵器や愛玩人形でなく、人間として扱われた証。
それが、戦闘用でない町人の服装だった。
初めての贈り物に、彼女は愛着を感じていたのだ。
「……好きにすればいい」
それを知ってか知らずか、ジュダは認め、彼女をゆっくりとベッドへと横たわらせる。
脱ぎかけの服をずらすと、彼女の白い肌が露わになった。
「…………」
彼女は感情を取り戻して来ている。
だが、人形でいた時が長かった為、彼女はそれを表現するすべを知らない。
男の手が彼女の下着をずらす。
「ひっ………んっ…………」
消え入りそうな、わずかな悲鳴が上がる。
それは彼女の感情がもたらした、生の反応だった。
ジュダはそれに構わず、露わになった乳房を口に含む。
周囲から徐々に先端へと舐めていく。
「あくっ……んっ………」
感情に慣れていないのか、オルティアは顔を強ばらせて、声を押し殺す。
「んっ……はぁ…あっ………んんっ………」
ジュダが軽く乳首を噛んだのに反応したのか、彼女がジュダの頭を抱え込む。
が、すぐに失礼となると思ったのか、手を離す。
「遠慮せずとも良いぞ。もっとも頭を潰されてはかなわんがな」
「はっ…い。………それは大丈夫だと……思いま…きゃ!」
何の前触れもなく、突然強く吸われた為、オルティアの声が悲鳴で途切れる。
だが、すぐに控えめな喘ぎ声に変わる。
「……ふっ…んっ……あっ………くっ…んんっ……」
ジュダの舌が執拗に乳首を舐め上げ、その腕は下に侵入していった。
「きゃふっ!……あっ…そこは………ぁ……だめ………」
男を抱きしめる腕が僅かに固くなった。
茂みの無い女性器にジュダの指が触れたからだ。
以前の所有者があえて、このような仕様にしたらしかった。
ジュダの手には、濡れそぼった柔らかい肉の感触のみが当たる。
「す、すいません…………ジュダ様………」
何となく申し訳なくなって、オルティアは呟いた。
「気にする事はない」
だが、ジュダは意に関しない様子で答えた。
「し、しかし……私は普通の人間では無いので………きゃん!?」
沈みがちになっていた彼女の声は、またしても彼女の甘い悲鳴に消されていた。
ジュダの手が、彼女と同等かそれ以上に精密な動きで彼女に快楽を与えていたからだ。
「普通の人間など誰が決めたのだ? ましてや普通の人間などどこにも居ない。
例え居たとしても、全てが平均な人間など面白味に欠ける」
「うっ………んっ…ああっ………ジュ…ジュダ様ぁ………んんっ…」
初めて彼女の全てを認めて貰った喜びからか、彼女から涙が溢れる。
愛しい、という感情が男の頭を抱きしめる。
だが、その男は女の体をまさぐりながら、冷笑していた。
(お前から力を貰う事は出来ないが、保険をかけさせて貰う。せいぜい愉しむがいい)
今まで感じた事のない刺激を与えられ、彼女は体をぴくぴくと痙攣させる。
「くっ……あああっ……はっ…んんっ……はぁ…ああ……あっ……」
くちゅくちゅと彼女の愛液が音を立てる。
「もう充分だな」
ジュダが手を離し、下着を下ろす。
「はい……ジュダ様」
オルティアは身を起こし、自らジュダにまたがる。
「…はぁはぁ……失礼………します」
男の誇張したものが、オルティアの膣内に侵入する。
いや、正確には女の方から男の方へと腰を近づける。
「んくっ……あっ……ジュダ様の………大きくて…はっ……熱い」
熱病に冒されたように、オルティアが喘ぐ。
ジュダが上半身を起こし、彼女の背に手を回す。
一番深く結合する姿勢で、女もジュダの背中に手を回す。
「ああっ……はっ…あっ……ああっ……あっ………んんっ…」
男の突き上げる動作に、完全にタイミングを合わせて、オルティアも動く。
「んんっ………あっ…あああっ……あんっ…あっ………はぁ……んんっ……」
腰を突き上げる度に、結合部からは水を叩くような音が聞こえる。
オルティアの火照って上気した肌が、男にもその熱と興奮を伝える。
「はあっ…あっ……ああっ……んんんっ……あっ…はぁ……あっ………」
女の喘ぎ声もその間隔を狭めている。
「そろそろ……いくぞ」
声と共にジュダの動きが速度を増す。
「あっ……?……うあっ…はっ……あん……ああっ…んん……あああっ」
ピストン運動がオルティアの体を抉る度に、彼女は喜びの声を上げる。
「あっ……あ…はっ……はぁ……ああっ…あん……くっ………………ああああっ……」
彼女の絶頂も近くなったのか、抑えていた声も今は大きくなっている。
「あ…うっ……ジュ、ジュダ様ぁ……だっ、出して………中に…ああっ……」
一際強く差し入れる。
「あっ………ああああああっ!!……ジュ、ジュダさまぁ!!」
男の白濁する液体が、女の体内に注ぎ込まれる。
「エラー発生………いえ、体の調子が…変です………ジュダ様」
さきほどとは違う喘ぎ声を上げながら、オルティアが言った。
「心配するな。お前には私の力を分け与えた。すぐに済む」
「……はい。分かりました」
信じられる男の言葉に、ためらい無く彼女は従った。
やがて男の言葉通りに、体は調子を取り戻してきた。
「…これは?」
「大して違和感は無いはずだ。体はほとんど以前のままだからな。
ただ、いくらか能力を得た事は違うだろうが」
自動人形オルティアは、いや、魔族に作り替えられたオルティアはゆっくりと起きあがる。
「はい。以前と比べて53%能力が向上しています。
そしてこの能力は………?」
「精霊力だ。訓練次第で強力になる、励め。
これからのお前の働きに期待させて貰うぞ。オルティア」
彼女の信頼する主人の声がする。
「はい、ジュダ様」
彼女は、嬉しそうな笑顔を見せる。
(この人はきっと多くの人間を殺す存在になる。……けれど、私には唯一にして最高の救い。
お守りして、付いて行きます。ずっとずっと…永遠に……)
オルティアの一生変わる事のない、『使命』が決定された。
他人からのものでない、自分の内からの使命が……。
ロゼッタ独立とバーザル領陥落の知らせが、クインヒア領南方総司令ロイドにほぼ同時に届いたのは、それからすぐの事だった。
大きな争いの無かった帝国は、再び戦火に焼かれようとしていた。
たった一人の男によって……。
To Be Continued・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
あーーーー! べたべたな、くそ恋愛は嫌いじゃあ!!(←なら、書くなよ)
次回はやっぱり嫌がる相手を……ってシチュエーションがいいですね。
けど本気で嫌がられると引くので、ある程度は和姦っていう、いつも通りな方向で(←おい)
今回、相手にする国(正確には、帝国領土)が増えたせいで、シミュレーション部分が長くなってしまいました。
これでも原文の7割くらいに抑えたんですけどね(^^;)
なので、自動人形オルティアさんについての説明とか、バトルシーンとか一切無し。
言い訳がましく補足すると、彼女は人間が作り出した人造人間ってな感じです。
と言っても、完全に機械だと人形と変わりない(=あのシーンが萌えない)ので、感情抑制プログラムをジュダに外されたということにしてみました。
彼になぜ、そんな事が出来るのかと言うと・・・
・・・・・
ほら彼、魔王だからさ(笑)
色々思い出したんだよ、きっと。
本文中の「保険」ってのは、多分、オルティアさんの体に爆弾っぽいのを仕掛けたんです。
嫌な奴ですね、ジュダって! これだから魔王は!(笑)
これでクレアに続いて、二人目の魔族の娘。
……大丈夫です。死にキャラにはなりません、きっちりと覚えてますとも! ええ。
………多分。(←だから、作者なんだから多分とか言うなよ)
次回は南方総司令ロイド(多分若くて美形の軍師タイプのにーちゃん)との対決か!?
と思わせておいて、『魔王の遺跡』とやらに行く話になりそうです。
行き当たりばったりですね(笑)
勇者はどうしたんでしょう?
それでは、また次回のあとがきでお会いしましょう。
それでは~。
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