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ダークサイド 第7話 「力を求めて」
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ロゼッタに攻め落とされたバーザル領。
だが、そのバーザルの人々に落胆、悲壮感といったようなものはない。
むしろ、逆に活気づいているほどだった。
戦争で負ければ、その領土の財や食料などは略奪されると思われていた。
だが、今回のロゼッタ軍は略奪や強姦などの行為を厳禁としており、実際に略奪を行ったロゼッタの将軍二人が軍規違反として公開処刑されている。
戦争の標的とされたのは、兵士や傭兵たちのみで一般人には手出しされていない。
誤って損害を受けた一般市民の報告に対しては、多額の慰謝料が支払われたほどだ。
『商業・経済都市』と呼ばれるバーザルに侵攻して、その経済を損ねる事なく陥落させたロゼッタ軍は、一般市民や中小規模の商人たちに評価されるという異例の事態となった。
さらに彼らを喜ばせたのは、新領主による経済改革だ。
これまでバーザルは整備された交通網を維持する為に、各所で関所のように料金を取り立てており、さらに都市で商売をするには、商人ギルドの許可が無ければならなかった。
だが、替わったばかりの新領主バダックはそれらを廃止した。
商人ギルドの息のかかった高官たちは揃って解雇・処分され、実質、自由に商売が出来る状態になったと言ってよい。
自然と商人たちが金の臭いを嗅ぎつけ、商品が集まり、人々が群れ、金が動く。
戦乱に巻き込まれる恐怖についても、新領主バダックは迅速だった。
『バーザルはこれまで通り非武装、帝国領土である』との発表を行ったのである。
ロゼッタがバーザルを属領としたのならば、帝国はそれを取り返すべく軍事行動に出る。
しかし名目が帝国領土であれば(実質は異なっても)行軍理由の一つは減る。
また『非武装』とし、ロゼッタ全軍が領土へと引き返す事も帝国軍への牽制の一つだ。
(もっともバーザルに駐留させておくほどロゼッタ軍兵士に余裕が無い、というのも実情だが)
それらを新領主にやらせた男は、ジュダであった。
武力での直接的支配を行わず、バダックという傀儡(かいらい)を立てての間接的支配。
一般民衆にとっては領主が誰であろうと、普通に暮らせる安全が確保されていれば大した問題では無いのである。
わずか数日の間に完全と言ってよいほど、バーザルは掌握されていた。
(愚鈍な奴らだ。せいぜい残り少ない余生を楽しんでいるがいい)
その城下町を見下ろす男、ジュダは内心でそう呟いた。
「全兵士、ロゼッタに戻る準備完了したとの事です。
それと、『魔王の遺跡』の正確な場所が把握出来ました」
端正な整い過ぎている、まるで人形のような女性、オルティアがそう報告する。
「そうか。では、アムンゼル将軍をリーダーにロゼッタに戻るように命じろ。
オルティア、お前もそれに付いて行け」
ジュダは彼女の方も向かずに命令を下す。
「分かりました。お気を付けて。……再会出来るのを楽しみにしております」
オルティアが危険性を考えていないわけではなかった。
制圧したばかりの領土に、征服者であるジュダが一人だけ残るというのだ。
暗殺の対象となる可能性は十二分にある。
だが、ジュダは敢えて『新領主を立て、操る』という形を取っている為、暗殺される可能性があるとしても、それは新領主だった。
それに何より、ジュダの個人的な武力も相当にあるのだ。
冷静に考えてみれば、心配する必要は無いのだ。
オルティアが一礼して、部屋を後にした。
「……さて。力を取り戻すとするか」
ジュダは人の顔で、人ならざる笑みを浮かべていた。
『魔王の遺跡』
それは、古の魔王の力を封じたと言われる場所の事である。
平和な時間が、その遺跡を過去のものとし、木々の根が覆い隠すその遺跡。
そこにジュダが足を踏み入れていた。
盗賊除けのトラップを歯牙にもかけず、瞬く間に進む。
やがて終着点と思われる、一際大きな広間へと辿り着いた。
そこには一人の神官服を着た女性が、静かに座っていた。
魔法陣に囲まれたその場所で、淡い光を纏いながら座している。
遺跡の状況を見れば、数え切れないくらいの年月を経ているはずなのに、中にいる女性は若く見えた。
漆黒の艶やかな長い髪は、純白の神官服と相まってより際だって白く見える。
『戻りなさい。ここは普通の人間には意味の無い場所です』
ジュダの脳裏に声が響く。
「生憎、私は普通の人間では無いようだ。あるのだろう? 魔王の残した力が?」
『……なぜ、それを求めるのです?』
女性が問いかける。
「関係無いな。貴様に話す事などない」
「そうですか………神官カノン・ベルサディール。あなたを排除します」
目の前のカノンと名乗った女性が目を開き、ゆっくりと立ち上がる。
封印を守る為だけに全てを犠牲にし、永遠とも言える時を生きる光の神官。
彼女がその力を行使する日が今、訪れた。
「くくくっ……いいだろう。ほんの少しだけ教えてやろう。
私に抵抗する事の無意味さをな」
美麗の男は涼しげに呟いた。
遺跡を守る光の女神官カノン。
彼女の力は常識を越えていたが、ジュダの力は更にそれを越えていた。
放たれた白い光弾が、ジュダの剣の一閃で断ち切られ、消える。
「っ…………!?」
「残念だったな。女神官。既に勝敗は決したと思うが?」
息を飲む彼女の喉元に、ジュダの剣の剣先が突きつけられていた。
「………そのようですね。悔しいですが」
カノンは魔法の詠唱を止め、腕を下ろす。
だがその拳は悔しさからか、強く握られている。
「足掻(あが)かないとは潔い事だ」
ジュダが嘲るように言う。
「人間を甘く見ないことです。例え私が倒れようと、いつか他の人があなたを倒します」
ジュダに命を握られている状態においても、彼女は気丈に言い放つ。
「くくくっ………」
「っ……!?」
突然近づいたジュダの顔が、巫女の唇を奪った。
「ん……むぐっ………んんっ……はっ!!」
顔を振り、カノンはジュダから逃れる。
「……気丈な事だ」
唇の端から流れる自らの血を舐めながら、ジュダが笑った。
「甘く見ないこと、と言ったはず………!?」
そこまで言い、彼女の体から力が抜ける。
(くっ……力が…………奪われた!?)
「甘くなど見ていない。だからこそ力を奪わせて貰った。これで能力は使えまい」
彼女の神聖術法は封じられた。
それでも遺跡を守る神官として、彼女はジュダを睨み付ける。
「……………」
「くくっ。その威勢がどこまで続くか、見せて貰おうか?」
神聖術法の使えない彼女は、普通の若い女性と変わらない。
女性はジュダを睨み、ジュダは女性を見つめる。
「……っ!?………卑怯です!?」
男の紅い瞳に気が付いた時には、すでに遅かった。
彼女は体の自由までも奪われた。
ジュダはゆっくりと、動けない彼女の背後に回る。
「卑怯? 敗者のその言葉は負け惜しみにしか聞こえぬ」
彼女の純白の神官服に、男の手が伸びる。
胸の膨らみが、布地の上から男の手によって揉まれる。
否、『揉む』という表現は相応しくない。
相手の事を考えず、ただ『握られる』と言った方が正しい。
「くぅ…………ぅ…………」
女の口から、苦痛にうめく声が漏れる。
「どうだ? 懇願するなら、快楽を与えてやってもよいが?」
ジュダは、女神官の耳元で甘く囁く。
「……………ぅ……っく…………」
乳房を強く握られても、彼女はそれに耐えている。
「くくくくっ。その態度が逆に男を喜ばせるのだぞ?」
「くうっ!……変態! 止めなさい………うっ…………いたっ…」
ジュダの言葉通り、痛みに耐える彼女の表情は嗜虐心をそそった。
わずかに硬度の増した男のものを、柔らかな女の身体に当てる。
布の上からでも、女の温かさと柔らかさは充分に伝わって来る。
「止めなさい!………嫌だと……うっ…言っているのです!」
「そうか。痛いのは嫌か。では今度は痛くないようにしてやろう」
ジュダが喉の奥で笑う。
「誰がそんな事を言っ………っ……くっ……あなたに触られている事が不快です!」
先ほどまでの荒々しさとは一転して、今度はゆっくりと柔らかくジュダの手が蠢く。
彼女の性感を探り当てるように、優しく動く。
「……くっ…………うっ……んんっ…………」
巫女は声を押し殺す。
「どうした? 今度は痛みは無いはずだ。それにも関わらず声を上げるのか?」
彼女の顔が朱に染まる。
「くっ!………違います! んっ………き、気持ち悪いからです!」
「くくくっ………せいぜい囀(さえず)っているがいい」
身じろぎする程度の動きしか出来ない彼女の体を容赦なくジュダが弄ぶ。
「はぁ……はぁ………んくっ……ふっ………はぁ……はぁ……ん………」
「くくくっ。服の上からでも分かるくらいになってるぞ」
ジュダは、服の上に僅かに盛り上がった先端を摘む。
「嘘っ!!……っく…駄目…………やめ…やめなさい………んうっ!」
「先ほどから注文ばかりか。我が儘な女だ」
「何を言って………きゃ!!」
言葉を遮るように、ジュダは自分の膝の上に彼女を座らせる。
カノンのうなじに舌を這わせる。
「ひあっ………くぅ……や……やめ……」
「くくくっ……私に命令出来る立場だとでも思っているのか?」
ジュダは彼女の耳元で囁くと、今度は耳元に舌を這わせる。
びくり、と彼女の体が反応する。
「うっ……はっ………ああっ……嫌っ………」
「どうせ逃れられぬ。自分の立場をわきまえる事だ」
「!?」
(そうだ、私の立場は………役目は、魔王の遺跡の呪われし力を封印すること)
ジュダの何気ない一言が、カノンに役割を思い出させた。
(これが最後の手段……)
「あっ……ああっ………うっ……んっ………」
「?」
突然、何かに思い至ったのか、カノンの体から硬さが取れた。
体を仰け反らせ、素直にジュダに体を預けて来る。
漆黒の長い髪がジュダの体に触れる。
「何を企んでいる?」
ジュダは愛撫を続けながら、カノンの心を見透かそうと話しかける。
「はっ………んっ……あなたが言ったのですよ。
立場をわきまえろ、と。それに私だって、神官である前に女なんですから……」
先ほどまでとは、うって変わってカノンは微笑さえ浮かべていた。
ジュダは、その表情と台詞が嘘であることを看破していた。
「……………」
「観念したから、最後に肉欲を味わいたい……では、いけませんか?
それとも怖いですか?」
挑戦的な口調は、いままでの物静かな口調も相まって、余計に淫靡さを感じさせた。
「くくくっ………笑わせてくれる」
何を企んでいようとも、神聖術法を封じられ、体の自由まで失われた女を恐れる事があろうか。
仮に何か企んでいたとしても、興味深いではないか。
そう考え、ジュダは敢えて彼女の挑戦を受ける事にした。
「あなたが魔族なら、たかが人間ごときを恐れる必要はないのでは………ひゃん!」
カノンの言葉が途中で遮られたのは、ジュダの手が彼女の下腹部へと伸びたからだ。
にちゃり、という湿った音が聞こえる。
「お前の下半身はこんなに反応しているのだ。無粋な事を言う必要は無い」
「あっ……いっ………いいっ……はっ………あっ…もっ……もっと………ああっ……」
ジュダの右手は茂みをかきわけ、彼女の奥をまさぐる。
同時に左手も、布地の上からではなく、直に彼女の胸へと触れる。
「はんっ……くっ…あああっ………はぁ…はぁ……あっ……あ……ああっ……」
柔らかで熱を帯びている体を丹念に揉みしだく。
その都度、カノンから喘ぎ声が出される。
「あくっ…はっ……ああっ……あんっ…だっ……めえっ………そこ……」
ジュダの膝の上の彼女の顔が、ジュダに近づく。
素直に感じている彼女の口はやや開き、そこから液体が唾液か涎が見える。
それの全てを舐め取るように、ジュダの唇がカノンの唇と周辺を動く。
「ふっ………んんっ……むっ………っ……くんっ………はっ………むっ……」
彼女の舌もジュダの顔を舐める。
やがて互いの唇がより深く繋がるように、互いが顔を押しつける。
「……むっ……んっ……んっ………んんっ………」
彼女の舌がジュダの口内を動き回り、逆に男の舌がカノンの口内を浸食する。
長く深いキスが終わり、唇が離れると互いの唇同士に糸が伸びた。
垂れて伸びる糸をこぼさないように、彼女の方がジュダの頭を押さえ唇を近づけた。
「はぐっ……んんん…………………ぷはあっ……」
再び長い接吻が終わり、互いの顔が離れた。
その間もジュダの手は休むことなく、カノンの体を責め続ける。
「くくくっ……光の神官が魔の剣士に触られ悦んでいるなど、お前たちが崇拝する女神が知ったら、さぞ嘆くのだろうな」
「うっ…ああっ……ん……偉そうな事………ぁん……言わないで………ああっ…」
彼女の手がジュダの股間に伸びる。
「あっ……んっ………あなただって……ふぅ………ん…こんなに…しているのではなくて」
彼女の言葉通り、ジュダの一物も固さを増していた。
さわさわと女神官の手が動く。
「ふん、自分で入れて見せろ。体は動くはずだ」
ジュダの言葉に従い、カノンは自ら下着をずらす。
男に向かい合うと、そのまま腰を落とす。
「はあっ……くぅ………ん………」
充分に濡れていた彼女のそこは、ジュダの男根を静かに受け入れる。
ぬるり、という滑る感覚がやがて、じわりじわりとジュダのモノを包み込む。
「ああっ………はっ…………やっ…おっ……大きい……」
受け入れる準備はされていたものの、彼女の膣は小さかった。
ジュダの男根を熱い柔肉が包み、締め上げる。
「……っ………大きいだけか?」
「ふあっ……うっ………それに…かっ…固い………あああっ……」
座りながら腰を突き上げるジュダの上で、カノンも腰を上下させる。
密着する彼女の腰がジュダの腰から体中までに、熱と興奮を伝える。
ジュダはカノンの上着を捲り上げ、露わになった双丘を舐める。
「あふっ……む…胸も………ああっ………」
ぴん、と張った胸を舐めながら、ジュダの腰の動きが早くなる。
「そろそろ……行くぞ………」
「あんっ……あっ……ああっ………くっ……き………来てぇ!!」
カノンの喘ぎに答えるように、白濁の液体が彼女の体に流し込まれる。
「!?」
そこでジュダは違和感に気が付いた。
通常であれば、相手の命を吸収出来るはずだ。
だが、今回は違う。
流れ出る液体と同様に、自分の命が流れるような……。
(吸われている……だと?)
信じられないほどの脱力感が、ジュダを襲う。
「あっ……いっ、今頃気が付きましたか?
闇に力があるならば、光にも力はあるのです。
これが……あんっ………くっ………私の奥の手です!」
カノンは尚も、ジュダと繋がったまま、腰を上下させる。
「くっ……貴様………」
闇に対抗する手段として、光も闇と同様の技を手に入れたらしかった。
ジュダの手が、カノンの心臓を貫こうとする。
だが、すでにその力は無く、彼女の細い手に掴まれる。
今や男が女に組み敷かれる形になっていた。
「くっ……はっ…ん………ああっ……あなたに………あっ……命を吸われた女たちの……
…っ…んっ……痛みを思い知りなさい………ああっ……」
カノンの腰が上下する度に、ジュダの男根がきつく擦り上げられる。
「くっ……」
力を失ったジュダに、彼女を引き剥がす力は残されていない。
「あっ……あっ…ああっ………んんんっ………いっ…いいっ………ああっ……」
命を宿す為の行為も、光の神官と魔王とでは命の奪い合いにしかならない。
ただ女の喘ぎ声と、くちゅくちゅという水音だけが響く。
「あっ………はっ……あっ…あああっ……あんっ………っ……」
命を吸われているというのに、ジュダは逆に冷静になっていた。
彼が乗り越えてきた逆境はこれくらいではないのだ。
(体は動かなくとも、戦い方はある………それを教えてやる。小娘)
ジュダは動く口だけで、呪を紡ぐ。
「はあっ……あっ………んっ……くっ…………っ……うっ……」
「カノン……」
不意に優しげな声が彼女の耳に届いた。
はるか昔に聞いたことのある、心安らぐ声が。
「はっ!? …ん………嘘……そんなはず………ない………」
彼女の口から、否定の言葉が漏れる。
いつの間にか彼女の周囲の光景が変わっていた。
そこは、花畑だった。
様々な花が咲き誇る、綺麗な花畑。
そこで彼女は花を摘んで、優しかった兄に花の冠を作った。
それは彼女の記憶の最奥に封印したはずの記憶。
肉親であるが故に愛し、肉親であるが故に諦めた恋だったはず。
その記憶の中の優しげな兄が、今微笑んでいる。
「カノン………好きだ」
「う…嘘っ………」
決して結ばれない恋だと思ったからこそ、彼女は封印の役割を請け負った。
孤独に一人、永遠を生き続ける封印となる事で、忘れようとした。
「ぅ……嘘よ……ああっ………あっ…んんん!!」
口と理性は否定しながら、その感情は彼女を押し流そうとする。
(嘘よ……私と兄さんは結ばれないから、私は神官になったのに………)
突き上げられる痺れるような快楽が、彼女の体を支配する。
「あああっ……あああっ………嘘っ…うそっ……いやぁ…………あああああん!!」
「カノン……」
優しげに微笑む兄の姿。
記憶と同じ優しい声。
「あっ…いっ……いやっ………駄目…駄目よぉ………兄さん………ああっ!」
「カノン……好きだ」
感情がカノンの理性を奪い、彼女は自らの欲求に従った。
「ああああっ!………兄さん、私も…私だって……大好き!………ああああっ…」
彼女の動きが早くなり、呼吸も鼓動も比例して速度を増す。
絶頂が近づき、彼女の意識は白く飲まれそうになっていた。
「あああああっ……いくっ………いくっ……兄さん……兄さぁん!…あああっ!!」
カノンの身体が弓なりに反る。
全身を襲う快楽の波が、彼女の身体をびくびくと震えさせる。
「……んうっ……………はぁああああああっ…んんっ……」
カノンの意識はそこで途絶えた。
光の封印が解かれ、『魔王の遺跡』にはその名の通りの闇の力が満ちていた。
「油断は出来ない、という事か……」
吸収を終え、ジュダは息をつく。
だが次の瞬間には、いつもの自信に満ちた冷徹な笑顔が浮かんでいた。
「くくくっ……そうでなくてはな。障害が無ければ楽しみも無い」
男は、広間の中央へと歩みを進める。
封印のヴェールに覆われた先には、黒光りする『魔王の力』がある。
「さて、どの力が得られるかな?」
ジュダは手をかざす。
ガラスが割れるような音とともに、光の封印が解かれる。
そして男の手には、一振りの剣が握られる。
「ふっ……ふはははははっ!!待たせたな、我が剣よ!」
男の手中で、黒い刃が脈打つように、ジュダに力を与える。
光の封印は解かれ、魔王は古の武器『闇の剣』を再び手にした。
帝国領クインヒア。
主城エルディティラとその城下町を囲む、高く頑丈な城壁は『城塞都市』という名に相応しい。
その会議室へと向かう男がいる。
ふんわりとした、収まりの悪い金髪。
会議室へ向かう重臣たちの中にあって、その男の年齢は若い。
おそらく20代の中頃であろう。
だが、その男の肩には『ヘルゼン帝国南方総司令』、という重要な地位がある。
ロゼッタ、ミリヨヒ、バーザル、そしてこのクインヒアを統括管理する役目だ。
帝国の中でもエリート中のエリートである彼の表情は、今はやや青ざめている。
ロゼッタの独立に続いてバーザルの陥落という出来事は、安穏と看過出来るものではない。
「悪いことは重なって起こるものだな……」
総司令ロイドから、思わず本音が漏れる。
「ロイ……愚痴は今だけにしてね。兵士に聞かれれば士気に関わるんだから」
彼を窘(たしな)めたのは、キルシェよりも若い女性だった。
蜂蜜色の金髪を邪魔にならないようまとめ、颯爽と歩く姿はロイドよりも有能に見える。
彼女、リーゼが『上から下まで隙のない』と言われる由縁である。
「分かったよ……せいぜい無い演技力を総動員するさ」
リーゼにだけ聞こえるように、小声で話す。
二人は婚約しており、結婚が間近なのだ。
「くすっ……頑張ってね、ロイ」
他の人間には決して見せない表情で、リーゼが笑った。
会議室の扉が開かれる。
そしてロゼッタ攻略の軍議が開かれる。
帝国とロゼッタ軍。
両軍のかつて無い大規模な闘い、後に『クルニクス平原の戦い』と呼ばれる戦いが始まろうとしていた。
To Be continued・・・
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あとがき
いやぁ、リポD飲みながら打った文章はエロい(くどい)なぁ……(自画自賛)
妄想ゲージレベル3って感じです。
だけどその分、素の自分が読み直すと、すごく引くんですね。
ほんとに疑似自慰行為だなぁ。
やってるときと、書き終えた時の爽快感はあるんだけど、それが過ぎるとすんごく冷静に自分を見直して「何やってるんだ? 俺?」と、なる所なんかそっくり(おい)
今回は、「ザ・エロバトル」(笑)
先にイった方の負け、というエロ漫画とかにありがちな展開です。
こういう馬鹿っぽい設定って大好きです。
だからあと何回か、こういう馬鹿バトルする予定です(あくまで予定ですが)
勇者と軍師と戦士と南方総司令と彼女……
あぁ、書きたいキャラはいっぱい居ますが、時間がない……
では、今回はこのへんで。(まとまらず終了)
だが、そのバーザルの人々に落胆、悲壮感といったようなものはない。
むしろ、逆に活気づいているほどだった。
戦争で負ければ、その領土の財や食料などは略奪されると思われていた。
だが、今回のロゼッタ軍は略奪や強姦などの行為を厳禁としており、実際に略奪を行ったロゼッタの将軍二人が軍規違反として公開処刑されている。
戦争の標的とされたのは、兵士や傭兵たちのみで一般人には手出しされていない。
誤って損害を受けた一般市民の報告に対しては、多額の慰謝料が支払われたほどだ。
『商業・経済都市』と呼ばれるバーザルに侵攻して、その経済を損ねる事なく陥落させたロゼッタ軍は、一般市民や中小規模の商人たちに評価されるという異例の事態となった。
さらに彼らを喜ばせたのは、新領主による経済改革だ。
これまでバーザルは整備された交通網を維持する為に、各所で関所のように料金を取り立てており、さらに都市で商売をするには、商人ギルドの許可が無ければならなかった。
だが、替わったばかりの新領主バダックはそれらを廃止した。
商人ギルドの息のかかった高官たちは揃って解雇・処分され、実質、自由に商売が出来る状態になったと言ってよい。
自然と商人たちが金の臭いを嗅ぎつけ、商品が集まり、人々が群れ、金が動く。
戦乱に巻き込まれる恐怖についても、新領主バダックは迅速だった。
『バーザルはこれまで通り非武装、帝国領土である』との発表を行ったのである。
ロゼッタがバーザルを属領としたのならば、帝国はそれを取り返すべく軍事行動に出る。
しかし名目が帝国領土であれば(実質は異なっても)行軍理由の一つは減る。
また『非武装』とし、ロゼッタ全軍が領土へと引き返す事も帝国軍への牽制の一つだ。
(もっともバーザルに駐留させておくほどロゼッタ軍兵士に余裕が無い、というのも実情だが)
それらを新領主にやらせた男は、ジュダであった。
武力での直接的支配を行わず、バダックという傀儡(かいらい)を立てての間接的支配。
一般民衆にとっては領主が誰であろうと、普通に暮らせる安全が確保されていれば大した問題では無いのである。
わずか数日の間に完全と言ってよいほど、バーザルは掌握されていた。
(愚鈍な奴らだ。せいぜい残り少ない余生を楽しんでいるがいい)
その城下町を見下ろす男、ジュダは内心でそう呟いた。
「全兵士、ロゼッタに戻る準備完了したとの事です。
それと、『魔王の遺跡』の正確な場所が把握出来ました」
端正な整い過ぎている、まるで人形のような女性、オルティアがそう報告する。
「そうか。では、アムンゼル将軍をリーダーにロゼッタに戻るように命じろ。
オルティア、お前もそれに付いて行け」
ジュダは彼女の方も向かずに命令を下す。
「分かりました。お気を付けて。……再会出来るのを楽しみにしております」
オルティアが危険性を考えていないわけではなかった。
制圧したばかりの領土に、征服者であるジュダが一人だけ残るというのだ。
暗殺の対象となる可能性は十二分にある。
だが、ジュダは敢えて『新領主を立て、操る』という形を取っている為、暗殺される可能性があるとしても、それは新領主だった。
それに何より、ジュダの個人的な武力も相当にあるのだ。
冷静に考えてみれば、心配する必要は無いのだ。
オルティアが一礼して、部屋を後にした。
「……さて。力を取り戻すとするか」
ジュダは人の顔で、人ならざる笑みを浮かべていた。
『魔王の遺跡』
それは、古の魔王の力を封じたと言われる場所の事である。
平和な時間が、その遺跡を過去のものとし、木々の根が覆い隠すその遺跡。
そこにジュダが足を踏み入れていた。
盗賊除けのトラップを歯牙にもかけず、瞬く間に進む。
やがて終着点と思われる、一際大きな広間へと辿り着いた。
そこには一人の神官服を着た女性が、静かに座っていた。
魔法陣に囲まれたその場所で、淡い光を纏いながら座している。
遺跡の状況を見れば、数え切れないくらいの年月を経ているはずなのに、中にいる女性は若く見えた。
漆黒の艶やかな長い髪は、純白の神官服と相まってより際だって白く見える。
『戻りなさい。ここは普通の人間には意味の無い場所です』
ジュダの脳裏に声が響く。
「生憎、私は普通の人間では無いようだ。あるのだろう? 魔王の残した力が?」
『……なぜ、それを求めるのです?』
女性が問いかける。
「関係無いな。貴様に話す事などない」
「そうですか………神官カノン・ベルサディール。あなたを排除します」
目の前のカノンと名乗った女性が目を開き、ゆっくりと立ち上がる。
封印を守る為だけに全てを犠牲にし、永遠とも言える時を生きる光の神官。
彼女がその力を行使する日が今、訪れた。
「くくくっ……いいだろう。ほんの少しだけ教えてやろう。
私に抵抗する事の無意味さをな」
美麗の男は涼しげに呟いた。
遺跡を守る光の女神官カノン。
彼女の力は常識を越えていたが、ジュダの力は更にそれを越えていた。
放たれた白い光弾が、ジュダの剣の一閃で断ち切られ、消える。
「っ…………!?」
「残念だったな。女神官。既に勝敗は決したと思うが?」
息を飲む彼女の喉元に、ジュダの剣の剣先が突きつけられていた。
「………そのようですね。悔しいですが」
カノンは魔法の詠唱を止め、腕を下ろす。
だがその拳は悔しさからか、強く握られている。
「足掻(あが)かないとは潔い事だ」
ジュダが嘲るように言う。
「人間を甘く見ないことです。例え私が倒れようと、いつか他の人があなたを倒します」
ジュダに命を握られている状態においても、彼女は気丈に言い放つ。
「くくくっ………」
「っ……!?」
突然近づいたジュダの顔が、巫女の唇を奪った。
「ん……むぐっ………んんっ……はっ!!」
顔を振り、カノンはジュダから逃れる。
「……気丈な事だ」
唇の端から流れる自らの血を舐めながら、ジュダが笑った。
「甘く見ないこと、と言ったはず………!?」
そこまで言い、彼女の体から力が抜ける。
(くっ……力が…………奪われた!?)
「甘くなど見ていない。だからこそ力を奪わせて貰った。これで能力は使えまい」
彼女の神聖術法は封じられた。
それでも遺跡を守る神官として、彼女はジュダを睨み付ける。
「……………」
「くくっ。その威勢がどこまで続くか、見せて貰おうか?」
神聖術法の使えない彼女は、普通の若い女性と変わらない。
女性はジュダを睨み、ジュダは女性を見つめる。
「……っ!?………卑怯です!?」
男の紅い瞳に気が付いた時には、すでに遅かった。
彼女は体の自由までも奪われた。
ジュダはゆっくりと、動けない彼女の背後に回る。
「卑怯? 敗者のその言葉は負け惜しみにしか聞こえぬ」
彼女の純白の神官服に、男の手が伸びる。
胸の膨らみが、布地の上から男の手によって揉まれる。
否、『揉む』という表現は相応しくない。
相手の事を考えず、ただ『握られる』と言った方が正しい。
「くぅ…………ぅ…………」
女の口から、苦痛にうめく声が漏れる。
「どうだ? 懇願するなら、快楽を与えてやってもよいが?」
ジュダは、女神官の耳元で甘く囁く。
「……………ぅ……っく…………」
乳房を強く握られても、彼女はそれに耐えている。
「くくくくっ。その態度が逆に男を喜ばせるのだぞ?」
「くうっ!……変態! 止めなさい………うっ…………いたっ…」
ジュダの言葉通り、痛みに耐える彼女の表情は嗜虐心をそそった。
わずかに硬度の増した男のものを、柔らかな女の身体に当てる。
布の上からでも、女の温かさと柔らかさは充分に伝わって来る。
「止めなさい!………嫌だと……うっ…言っているのです!」
「そうか。痛いのは嫌か。では今度は痛くないようにしてやろう」
ジュダが喉の奥で笑う。
「誰がそんな事を言っ………っ……くっ……あなたに触られている事が不快です!」
先ほどまでの荒々しさとは一転して、今度はゆっくりと柔らかくジュダの手が蠢く。
彼女の性感を探り当てるように、優しく動く。
「……くっ…………うっ……んんっ…………」
巫女は声を押し殺す。
「どうした? 今度は痛みは無いはずだ。それにも関わらず声を上げるのか?」
彼女の顔が朱に染まる。
「くっ!………違います! んっ………き、気持ち悪いからです!」
「くくくっ………せいぜい囀(さえず)っているがいい」
身じろぎする程度の動きしか出来ない彼女の体を容赦なくジュダが弄ぶ。
「はぁ……はぁ………んくっ……ふっ………はぁ……はぁ……ん………」
「くくくっ。服の上からでも分かるくらいになってるぞ」
ジュダは、服の上に僅かに盛り上がった先端を摘む。
「嘘っ!!……っく…駄目…………やめ…やめなさい………んうっ!」
「先ほどから注文ばかりか。我が儘な女だ」
「何を言って………きゃ!!」
言葉を遮るように、ジュダは自分の膝の上に彼女を座らせる。
カノンのうなじに舌を這わせる。
「ひあっ………くぅ……や……やめ……」
「くくくっ……私に命令出来る立場だとでも思っているのか?」
ジュダは彼女の耳元で囁くと、今度は耳元に舌を這わせる。
びくり、と彼女の体が反応する。
「うっ……はっ………ああっ……嫌っ………」
「どうせ逃れられぬ。自分の立場をわきまえる事だ」
「!?」
(そうだ、私の立場は………役目は、魔王の遺跡の呪われし力を封印すること)
ジュダの何気ない一言が、カノンに役割を思い出させた。
(これが最後の手段……)
「あっ……ああっ………うっ……んっ………」
「?」
突然、何かに思い至ったのか、カノンの体から硬さが取れた。
体を仰け反らせ、素直にジュダに体を預けて来る。
漆黒の長い髪がジュダの体に触れる。
「何を企んでいる?」
ジュダは愛撫を続けながら、カノンの心を見透かそうと話しかける。
「はっ………んっ……あなたが言ったのですよ。
立場をわきまえろ、と。それに私だって、神官である前に女なんですから……」
先ほどまでとは、うって変わってカノンは微笑さえ浮かべていた。
ジュダは、その表情と台詞が嘘であることを看破していた。
「……………」
「観念したから、最後に肉欲を味わいたい……では、いけませんか?
それとも怖いですか?」
挑戦的な口調は、いままでの物静かな口調も相まって、余計に淫靡さを感じさせた。
「くくくっ………笑わせてくれる」
何を企んでいようとも、神聖術法を封じられ、体の自由まで失われた女を恐れる事があろうか。
仮に何か企んでいたとしても、興味深いではないか。
そう考え、ジュダは敢えて彼女の挑戦を受ける事にした。
「あなたが魔族なら、たかが人間ごときを恐れる必要はないのでは………ひゃん!」
カノンの言葉が途中で遮られたのは、ジュダの手が彼女の下腹部へと伸びたからだ。
にちゃり、という湿った音が聞こえる。
「お前の下半身はこんなに反応しているのだ。無粋な事を言う必要は無い」
「あっ……いっ………いいっ……はっ………あっ…もっ……もっと………ああっ……」
ジュダの右手は茂みをかきわけ、彼女の奥をまさぐる。
同時に左手も、布地の上からではなく、直に彼女の胸へと触れる。
「はんっ……くっ…あああっ………はぁ…はぁ……あっ……あ……ああっ……」
柔らかで熱を帯びている体を丹念に揉みしだく。
その都度、カノンから喘ぎ声が出される。
「あくっ…はっ……ああっ……あんっ…だっ……めえっ………そこ……」
ジュダの膝の上の彼女の顔が、ジュダに近づく。
素直に感じている彼女の口はやや開き、そこから液体が唾液か涎が見える。
それの全てを舐め取るように、ジュダの唇がカノンの唇と周辺を動く。
「ふっ………んんっ……むっ………っ……くんっ………はっ………むっ……」
彼女の舌もジュダの顔を舐める。
やがて互いの唇がより深く繋がるように、互いが顔を押しつける。
「……むっ……んっ……んっ………んんっ………」
彼女の舌がジュダの口内を動き回り、逆に男の舌がカノンの口内を浸食する。
長く深いキスが終わり、唇が離れると互いの唇同士に糸が伸びた。
垂れて伸びる糸をこぼさないように、彼女の方がジュダの頭を押さえ唇を近づけた。
「はぐっ……んんん…………………ぷはあっ……」
再び長い接吻が終わり、互いの顔が離れた。
その間もジュダの手は休むことなく、カノンの体を責め続ける。
「くくくっ……光の神官が魔の剣士に触られ悦んでいるなど、お前たちが崇拝する女神が知ったら、さぞ嘆くのだろうな」
「うっ…ああっ……ん……偉そうな事………ぁん……言わないで………ああっ…」
彼女の手がジュダの股間に伸びる。
「あっ……んっ………あなただって……ふぅ………ん…こんなに…しているのではなくて」
彼女の言葉通り、ジュダの一物も固さを増していた。
さわさわと女神官の手が動く。
「ふん、自分で入れて見せろ。体は動くはずだ」
ジュダの言葉に従い、カノンは自ら下着をずらす。
男に向かい合うと、そのまま腰を落とす。
「はあっ……くぅ………ん………」
充分に濡れていた彼女のそこは、ジュダの男根を静かに受け入れる。
ぬるり、という滑る感覚がやがて、じわりじわりとジュダのモノを包み込む。
「ああっ………はっ…………やっ…おっ……大きい……」
受け入れる準備はされていたものの、彼女の膣は小さかった。
ジュダの男根を熱い柔肉が包み、締め上げる。
「……っ………大きいだけか?」
「ふあっ……うっ………それに…かっ…固い………あああっ……」
座りながら腰を突き上げるジュダの上で、カノンも腰を上下させる。
密着する彼女の腰がジュダの腰から体中までに、熱と興奮を伝える。
ジュダはカノンの上着を捲り上げ、露わになった双丘を舐める。
「あふっ……む…胸も………ああっ………」
ぴん、と張った胸を舐めながら、ジュダの腰の動きが早くなる。
「そろそろ……行くぞ………」
「あんっ……あっ……ああっ………くっ……き………来てぇ!!」
カノンの喘ぎに答えるように、白濁の液体が彼女の体に流し込まれる。
「!?」
そこでジュダは違和感に気が付いた。
通常であれば、相手の命を吸収出来るはずだ。
だが、今回は違う。
流れ出る液体と同様に、自分の命が流れるような……。
(吸われている……だと?)
信じられないほどの脱力感が、ジュダを襲う。
「あっ……いっ、今頃気が付きましたか?
闇に力があるならば、光にも力はあるのです。
これが……あんっ………くっ………私の奥の手です!」
カノンは尚も、ジュダと繋がったまま、腰を上下させる。
「くっ……貴様………」
闇に対抗する手段として、光も闇と同様の技を手に入れたらしかった。
ジュダの手が、カノンの心臓を貫こうとする。
だが、すでにその力は無く、彼女の細い手に掴まれる。
今や男が女に組み敷かれる形になっていた。
「くっ……はっ…ん………ああっ……あなたに………あっ……命を吸われた女たちの……
…っ…んっ……痛みを思い知りなさい………ああっ……」
カノンの腰が上下する度に、ジュダの男根がきつく擦り上げられる。
「くっ……」
力を失ったジュダに、彼女を引き剥がす力は残されていない。
「あっ……あっ…ああっ………んんんっ………いっ…いいっ………ああっ……」
命を宿す為の行為も、光の神官と魔王とでは命の奪い合いにしかならない。
ただ女の喘ぎ声と、くちゅくちゅという水音だけが響く。
「あっ………はっ……あっ…あああっ……あんっ………っ……」
命を吸われているというのに、ジュダは逆に冷静になっていた。
彼が乗り越えてきた逆境はこれくらいではないのだ。
(体は動かなくとも、戦い方はある………それを教えてやる。小娘)
ジュダは動く口だけで、呪を紡ぐ。
「はあっ……あっ………んっ……くっ…………っ……うっ……」
「カノン……」
不意に優しげな声が彼女の耳に届いた。
はるか昔に聞いたことのある、心安らぐ声が。
「はっ!? …ん………嘘……そんなはず………ない………」
彼女の口から、否定の言葉が漏れる。
いつの間にか彼女の周囲の光景が変わっていた。
そこは、花畑だった。
様々な花が咲き誇る、綺麗な花畑。
そこで彼女は花を摘んで、優しかった兄に花の冠を作った。
それは彼女の記憶の最奥に封印したはずの記憶。
肉親であるが故に愛し、肉親であるが故に諦めた恋だったはず。
その記憶の中の優しげな兄が、今微笑んでいる。
「カノン………好きだ」
「う…嘘っ………」
決して結ばれない恋だと思ったからこそ、彼女は封印の役割を請け負った。
孤独に一人、永遠を生き続ける封印となる事で、忘れようとした。
「ぅ……嘘よ……ああっ………あっ…んんん!!」
口と理性は否定しながら、その感情は彼女を押し流そうとする。
(嘘よ……私と兄さんは結ばれないから、私は神官になったのに………)
突き上げられる痺れるような快楽が、彼女の体を支配する。
「あああっ……あああっ………嘘っ…うそっ……いやぁ…………あああああん!!」
「カノン……」
優しげに微笑む兄の姿。
記憶と同じ優しい声。
「あっ…いっ……いやっ………駄目…駄目よぉ………兄さん………ああっ!」
「カノン……好きだ」
感情がカノンの理性を奪い、彼女は自らの欲求に従った。
「ああああっ!………兄さん、私も…私だって……大好き!………ああああっ…」
彼女の動きが早くなり、呼吸も鼓動も比例して速度を増す。
絶頂が近づき、彼女の意識は白く飲まれそうになっていた。
「あああああっ……いくっ………いくっ……兄さん……兄さぁん!…あああっ!!」
カノンの身体が弓なりに反る。
全身を襲う快楽の波が、彼女の身体をびくびくと震えさせる。
「……んうっ……………はぁああああああっ…んんっ……」
カノンの意識はそこで途絶えた。
光の封印が解かれ、『魔王の遺跡』にはその名の通りの闇の力が満ちていた。
「油断は出来ない、という事か……」
吸収を終え、ジュダは息をつく。
だが次の瞬間には、いつもの自信に満ちた冷徹な笑顔が浮かんでいた。
「くくくっ……そうでなくてはな。障害が無ければ楽しみも無い」
男は、広間の中央へと歩みを進める。
封印のヴェールに覆われた先には、黒光りする『魔王の力』がある。
「さて、どの力が得られるかな?」
ジュダは手をかざす。
ガラスが割れるような音とともに、光の封印が解かれる。
そして男の手には、一振りの剣が握られる。
「ふっ……ふはははははっ!!待たせたな、我が剣よ!」
男の手中で、黒い刃が脈打つように、ジュダに力を与える。
光の封印は解かれ、魔王は古の武器『闇の剣』を再び手にした。
帝国領クインヒア。
主城エルディティラとその城下町を囲む、高く頑丈な城壁は『城塞都市』という名に相応しい。
その会議室へと向かう男がいる。
ふんわりとした、収まりの悪い金髪。
会議室へ向かう重臣たちの中にあって、その男の年齢は若い。
おそらく20代の中頃であろう。
だが、その男の肩には『ヘルゼン帝国南方総司令』、という重要な地位がある。
ロゼッタ、ミリヨヒ、バーザル、そしてこのクインヒアを統括管理する役目だ。
帝国の中でもエリート中のエリートである彼の表情は、今はやや青ざめている。
ロゼッタの独立に続いてバーザルの陥落という出来事は、安穏と看過出来るものではない。
「悪いことは重なって起こるものだな……」
総司令ロイドから、思わず本音が漏れる。
「ロイ……愚痴は今だけにしてね。兵士に聞かれれば士気に関わるんだから」
彼を窘(たしな)めたのは、キルシェよりも若い女性だった。
蜂蜜色の金髪を邪魔にならないようまとめ、颯爽と歩く姿はロイドよりも有能に見える。
彼女、リーゼが『上から下まで隙のない』と言われる由縁である。
「分かったよ……せいぜい無い演技力を総動員するさ」
リーゼにだけ聞こえるように、小声で話す。
二人は婚約しており、結婚が間近なのだ。
「くすっ……頑張ってね、ロイ」
他の人間には決して見せない表情で、リーゼが笑った。
会議室の扉が開かれる。
そしてロゼッタ攻略の軍議が開かれる。
帝国とロゼッタ軍。
両軍のかつて無い大規模な闘い、後に『クルニクス平原の戦い』と呼ばれる戦いが始まろうとしていた。
To Be continued・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
いやぁ、リポD飲みながら打った文章はエロい(くどい)なぁ……(自画自賛)
妄想ゲージレベル3って感じです。
だけどその分、素の自分が読み直すと、すごく引くんですね。
ほんとに疑似自慰行為だなぁ。
やってるときと、書き終えた時の爽快感はあるんだけど、それが過ぎるとすんごく冷静に自分を見直して「何やってるんだ? 俺?」と、なる所なんかそっくり(おい)
今回は、「ザ・エロバトル」(笑)
先にイった方の負け、というエロ漫画とかにありがちな展開です。
こういう馬鹿っぽい設定って大好きです。
だからあと何回か、こういう馬鹿バトルする予定です(あくまで予定ですが)
勇者と軍師と戦士と南方総司令と彼女……
あぁ、書きたいキャラはいっぱい居ますが、時間がない……
では、今回はこのへんで。(まとまらず終了)
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