ダークサイド

タカヤス

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ダークサイド 第9話 「南方総司令」

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『クルニクス平原の戦い』に大きな変化が見られたのは、両軍が対峙して一週間が経過した頃だった。
「背後から兵影が見えます!」
その報告にロイドの顔から血の気が引いた。
「速やかに確認して! それはどこの軍? 敵? 味方?」
戦場において前後からの挟撃を受ける事は、単純に考えて兵力の半減を意味する。
今まで1対1だった戦いが、2対1になれば当然、戦況は圧倒的に不利になる。
(しかし、なぜ? 一体どこから現れた軍隊なんだ?)
敵であった場合の最小限の被害で済ませる方法。
味方であった場合の軍隊編成の準備。
中立国であった場合の交渉。
考えられる限りの可能性を考慮しながら、ロイドは報告を待った。



「帝国軍の動きが鈍りましたね。ジュダ様が成功されたようです」
ロゼッタ軍を率いる将、オルティアは馬上で呟いた。
「将が単身で相手国へ乗り込むなど………私などには思い付かない策です」
オルティアに馬を寄せてきたのは、アムンゼル将軍だった。
長い年月を越え、その顔に刻まれた皺と白い髭は、その存在だけで周囲を安心させる。
「私を含め凡人には不可能です。ジュダ様だからこそ、可能な策です。
それに普通の策では、この戦局は乗り切れません」
抑揚なく、彼女が答えた。
「……そうですな」
(私は代々ロゼッタ領主に仕える将。領主様の幸せだけを願う存在。
だが、果たして戦乱の世はクレア様に幸せをもたらすのか……
エリィ殿。貴殿が生きておれば……)
アムンゼルは軽いため息と共に、内心の愚痴を吐き出したい衝動に駆られた。
だが今は戦場であり、実現しない事に思考を巡らせる暇は無い。
「この機に乗じて攻め込みます。敵右翼を狙って下さい。ですが深追いはしないよう」
「……承知」
アムンゼルが兵を率いて突撃を開始した。



背後からの軍隊、前からのロゼッタ軍。
背後から襲ってきた軍隊が、同じ帝国軍であることは早い段階で分かった。
だが、なぜ帝国軍同士が戦う事になったのか?
その詳細を知る者は少なく、仮に気がついたとしても、それを止める事は出来なかった。
『目の前の軍隊へ攻撃しろ』
そう命じられ動き出してしまえば、その流れに逆らうのは難しい。
帝国軍同士が混乱の中、無秩序に殺し合う。
帝国軍兵士の多量の血による地獄絵図が描かれた。
予想外の前後からの挟撃を受けながらも、部隊が壊滅しなかったのは、ロイドの存在が大きい。
相手の攻撃をやんわりと受け止め、反撃を仕掛ける。
それを前後同時に行い、かつ逃走経路を確保し、移動を行う。
そのまま彼が指揮を取っていれば、帝国軍の犠牲者は更に少なく収まっていたかもしれない。

軍を巧みに動かし、戦場をクルニクス平原から防御有利の地へ移そうとするロイドの目に、信じられない人物が写った。
「!?……リ、リーゼ!?」
遙前方の馬上にいる影。
それは見間違えるはずのない、彼の婚約者の姿であった。
リーゼらしき影は一騎、馬首を巡らせ走り出した。
「くっ!………フィブリ、カーツェル! 後の指揮は頼む!」
一瞬、罠の可能性も考慮したが、ロイドは感情を抑えることが出来なかった。
信頼出来る重臣に言い放つと、彼は返事も聞かずに飛び出した。


どれくらい追いかけただろうか。
いつしか周囲は、平原から森林へと変わっていた。
へとへとに疲れた馬から下馬して、まだ新しい蹄の後を歩いて行く。
「……ロイ」
「リーゼ!!」
躊躇(ためら)いがちにかけられた声は、ロイドのよく知る女性の声だった。
「ロイ………あの…私………」
「良かった。無事だったんだね!?」
ロイドはリーゼに駆け寄り、その細い身体を抱きしめる。
「ごめんなさい、ごめんなさい……ロイ…」
腕の中の彼女は、身体を震わせ、謝罪の言葉を重ねている。
「いいんだ、リーゼ。帝国軍人失格だけど、君が無事だっただけで良かった」
安堵の表情を浮かべるロイドに、リーゼは首を左右に振る。
「違うの………私……もう…」
「えっ?」
予想以上に強い力にロイドは抗えず、地面に押し倒される。
彼女の瞳の色は、昔の『青』ではなく、『赤』だった。
























「え……あれ………リーゼ? いったい……んむっ……」
とまどうロイドの口に、リーゼの口が押しつけられた。
深く交わるように、互いの顔を交差させ、その味を確かめる。
甘い花のような香りと、熱いまでに上気した熱はロイドに伝わり、興奮を与える。
「あっ……ん……んんっ……ぷ……………はぁ……」
長い接吻の後、リーゼは顔を離す。
ロイドの唾液を一滴もこぼさないように、口の周りに赤い舌が蠢いた。
それは理知的なリーゼの姿ではなく、本能の感情のままに動く女の姿だった。
一度も見た事のない、淫靡な姿に、男の鼓動は早まった。
「ごめんなさい……私………こうしないと生きていけないの……
……汚されちゃったけれど……それでも…私……」
一瞬、昔の表情のリーゼの悲しい顔が表れた。
少しも変わらない、昔の彼女の顔が。
(綺麗だ)
こんな時だというのに、否、こんな時だからこそ余計に彼女が愛おしくなった。
ロイドの手が、リーゼの髪を撫でる。
「よく分からないけれど……僕はずっと君が好きだよ。
だから、君の好きなようにするといい」
リーゼの目に涙が浮かび、その一筋がロイドへと落ちる。
「ごめんなさい、ロイ………それと……ありがとう」
「いいんだ」
ロイドが上半身を起こし、リーゼの細い身体を抱きしめる。
彼女も安心したのか、男の腰に手を回す。
互いの体温と鼓動とを感じた後、ゆっくりと二人の顔が近づき、再び深い口づけを交わす。
舌と舌とが絡み合い、欲情を煽る。
唾液と唾液を混ぜ合うほどに、まるで媚薬を飲んでいるかのような、甘い痺れを感じる。
ロイドはいたずら心を起こして、強くリーゼの舌を吸ってみる。
一瞬、驚いた顔をしたリーゼだったが、すぐに安堵の表情とともに、それに応えた。
ロイドの口内を、リーゼの熱い舌が彷徨(さまよ)う。
しばらく男の口に留まっていたその舌が引かれ、逆に男の舌を呼び込む。
双方の味を堪能した後、口が離れる。
名残惜しそうに、その舌と舌とに糸が引かれる。


「ロイ……見せて………」
甘えるような声で、リーゼはロイドの服に手をかけ、それを脱がしていく。
やや色白の彼の肌が、紅潮しているのが分かる。
「わあっ………初めて見た……」
大きく二、三度瞬きをして、リーゼは男の身体をまじまじと観察する。
「あんまり見られると恥ずかしいなぁ……」
本当に恥ずかしそうに、目を逸らしながら呟く。
やがて何かを思い付いたように、彼女の方へと振り向く。
「リーゼ………君のも……」
彼女は恥ずかしそうに、だが確かに、こくんと頷いた。
軽装の鎧と、服を順番に脱がしていく。
リーゼは抵抗しなかった。
一枚一枚脱がされていく。
最愛の男に見られる事が、快楽へと繋がっているかのように、彼女は身震いする。
白い新雪のような肌に、金色の髪。
その一房を取り、口づけする。
甘い、良い香りが漂った。
「やだ………恥ずかしい……」
騎士のような仕草のロイドに、リーゼの声がする。
「恥ずかしいのは、お互い様だよ……。綺麗だ、リーゼ」
一糸まとわぬ姿となったリーゼは、恥ずかしさから胸と下半身とを隠す。
その折れそうな細い手を掴み、ゆっくりと広げさせる。
強い抵抗は無かった。
「やだ……私……小さいから………」
この期に及んで恥ずかしがるリーゼに、ロイドは優しく口づけした。
「んっ…………またっ……んむっ……」
そのまま、顔をずらし、彼女自身が気にする胸の膨らみへと顔を沈める。
「全部含めて、僕はリーゼが好きなんだから」
その先端の桃色の突起は、すでに堅くなっていた。
「きゃうっ!……だ………だめ……だめぇ………」
吐息と共に、その身体がぴくぴくと反応する。
まるで赤子のようにその乳首を吸っていたロイドは、顔を離した。
少し意地悪く聞いてみる。
「だめなの?」
「……いじわる」
リーゼはロイドの顔をその胸に抱きしめる。
再びロイドはその先端を舐める。
それはぴん、と堅くなっていた。
「どきどきしてるのが分かるよ、リーゼ」
柔らかい膨らみの奥で、彼女の鼓動が早まっているのが分かる。
「ロイだから………だからだよ。……あんっ………」
愛しくなって、より強くその先端を吸うと、リーゼは声を上げた。
同時にロイドの顔がより強く抱き抱えられ、心地よい圧迫感を感じる。

どれくらいそうしていたのか、ゆるゆると彼女の腕が緩んだ。
ロイドもそれに対応して、次の行動に移る。


自らの堅くなった一物を、リーゼの同じ場所へと押し当てる。
そこは既に彼女が流した粘液で湿っていた。
「ロイ………」
不安が3割、期待を7割混ぜた声が聞こえた。
「リーゼ……いいかい?」
「うん…嬉しい」
顔に涙を浮かべながら、彼女は微笑んでいた。
そして異物が身体の中に侵入して来た事で、彼女の身体が強ばる。
「んっ………あくぅ……」
出血はしなかったものの、その狭い穴は彼女に痛みをもたらす。
「大丈夫かい? リーゼ?」
心配そうな顔のロイドに、リーゼは優しく微笑むと返事の代わりに口を近づける。
「んっ………むっ……はっ……あんっ………あうっ…………いいっ…いいよぉ……」
座っているロイドの上で、その腰を上下させる彼女の姿は男の欲情をさらに煽る。
「うっ……リーゼ…僕も……いい。きつくて………熱くて……」
「ああっ……ロイド………好き……好き……」
二人の腰がぶつかり合い、卑猥な水音が響く。
うっすらと汗をかきながらも、二人はその行為を止めようとはしない。
「あっ………あっ……ああっ……………うんっ……」
完全に一つになろうとするかのように、二人は密着する。
吐息と吐息とが合わさるように。
熱と汗とを混じり合わせるように。
互いの想いを確認し合うように。
「あっ……はっ……はあっ………んっ…んくっ……!!」
リーゼが強く男を抱きしめる。
それに呼応するかのように、男の男根を暖かい膣が締め上げる。
「うっ…はっ……ああっ……いいっ……」
リーゼが自然と腰を上下させる。
そうすることで、互いを高揚させる事を本能的に知っていたからかもしれない。
「くっ…はっ…………ああんっ……んっ……んんっ……」
彼女の腰が上がり、男の先端が抜けるか抜けないかの位置で締め付けられる。
そしてまた彼女の腰が下がり、男根を招き入れる。
暖かい、熱いくらいの高揚が二人を包む。
「くふっ……あああっ…………はっ……はっ……はぁ……んっ……」
絶頂が近づき、二人の呼吸が速くなる。
「はっ……はっ…あっ……ああっ……あああっ………ああんっ……!!」
「リーゼ、リーゼ……!」
この世で最も愛しい人の名を呼びながら、ロイドは腰を動かす。
同様に強く抱きしめながら、リーゼもそれに答える。
「ロイド…ロイドぉ……!! ………もう……私っ……!」
「僕…も……もう………リーゼ!」
双方の身体がぴん、と仰け反る。
「あっ………ああああああっ!!」
びくびくと震え、二人は重なり合って地面へと横になった。
息を整える二人の吐息が、森に響いた。





















余韻を楽しむ間も無く、ロイドの身体が苦しみに痙攣する。
「くっ……がはっ………うっ……」
「ろ、ロイ!?」
リーゼには薄々分かっていた。
今のリーゼの身体は魔族の身体であり、それは魔王の望む通りの機能を持つ。
魔王に作り替えられた身体は、本人の意思に関わらず、ロイドの命を奪うのだ。
「ぐっ………だい……じょうぶ…だよ。………リー………ゼ」
少しも大丈夫でない顔で、男が呻いた。
脂汗を浮かべながらも、ロイドは笑おうとする。
「うっ……ロイ……私たち……結婚…しましょう? ……ねぇ?」
悲しみの涙を浮かべながら、リーゼがロイドに口づけする。
「……………」
リーゼの言葉に答える言葉は無い。
「ロイ? ………ロイ!」
微笑むロイの顔が、水に溶けるように消えていく。
それが魔族に命を奪われた者の末路。
「ああっ………ロイ! ロイっ!!」
顔をくしゃくしゃにして、リーゼが泣きじゃくる。
つい先ほどまで、温もりを伝えてくれた存在を思いながら。
「ああっ……ああああっ…………うああっ……」

「ご苦労だった。二人分のその力、貰うとしよう」

突然背後から沸いた冷たい声。
「あっ……あああっ………うっ!!」
リーゼの身体が衝撃に仰け反る。
「二人分に、絶望の彩りを加えた魂だ。たっぷりと味わえ、我が剣よ」
彼女の視界に、胸から飛び出た血塗られた剣先が映った。
力を急速に失っていく感覚。
だが、リーゼはそれに抗う事をしない。
なぜなら、彼女が生きる理由は失われたのだから。



「二人の魂は、輪廻するのですか?」
オルティアの問いに、ジュダは冷笑を浮かべる。
「どうでもよいことだ。輪廻しようがしまいが、どうせ全ての人間は死に耐えるのだ」
ジュダは馬へと跨(またが)る。
「……………」


あなたたちはまだ、幸せなのかもしれない。
最後に二人一緒だったのだから。
多くの人間は孤独に死んでいくのだから。

オルティアは内心で呟いた。
彼女の影は、ジュダの後を追っていく。
まだ、やらなければならないことは残っているから。
帝国領度は、未だ完全に掌握されたわけではないから。



To Be Continued………
































ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき


だから、甘ったるい展開は好きでは無いのですよ!くわっ!(☆o☆)
それにも関わらず、なぜこんなラブラブいちゃいちゃな展開をするのかと言うと、
・・・やっぱり好きなのかも(おい)

正直なところ、ラブラブは恥ずかしいのですが、一種の緩急だと思ってます。
いつも同じ速度のボールばかりでは、目が慣れてしまい、打たれてしまう。
だから、時にはチェンジアップも必要なのです!
「いつもジュダのSプレイばかりでは、飽きるので、たまにはラブラブを」という意味。
・・・と、言い訳しておきます(笑)。


先日、掲示板で「読んでくれてる人っているのか?」と愚痴った所、数人の方が答えてくれました。
どうもです!
カウンターが1000くらい増えても、書き込みは全くないような状態なので、何かの間違いかと思ってましたが。
そうか・・・居たんだ(しみじみ)
実は読んでるのは、全国で3人くらいで、心優しいその方たちが、一日5回とか足を運んで、優しい嘘をついてくれてるとか!? と思ってました。
(人間不信だな、俺)





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