ダークサイド

タカヤス

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ダークサイド 第10話 「聖斧戦士ウェンディー」

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部隊の指揮を失った軍隊ほど脆いものはない。
例えわずかな力が残っていたとしても、“鬼神”“魔王の再臨”“世界の救世主”と噂されるジュダが率いる軍に敵うはずもなかった。
多くの戦死者を出し、散り散りに逃げ出したクインヒア領の帝国軍を壊滅させようと思えば、それも可能だったかもしれない。
だが、それが実行に移されなかったのは、女領主ウェンディーが率いるベルザイン軍の進軍が原因だった。
ベルザイン軍は『魔王の遺跡』から溢れてきた魔獣たちを薙ぎ払い、バーザルの主要都市付近へと部隊を進めていたのだ。



「聖斧戦士の生まれ変わり……か」
ロゼッタへと戻り、報告を聞いたジュダは呟いた。
(さぞや、良い魂を持っている事だろう。くくくくっ……)
内心の言葉の欠片すらも見せず、彼は神妙な表情を装う。
「士気の高揚した軍隊は厄介です。いかが致しましょう?」
将軍アムンゼルが、ジュダに尋ねる。
「将軍はどのように考える?」
目にかかるほどの髪を掻き上げながら、ジュダは聞き返す。
アムンゼルは僅かに思考した後、答えた。
「我々が全速力でバーザルへ移動、しかるのち現地の傭兵たちを合わせれば、ベルザイン軍と互角以上になります。
地の利はこちらにあり、同数の闘いであれば、敵はやがて退くことになるかと愚考致します」
兵士をバーザルへと移動させ、防御に徹する作戦である。
アムンゼルの戦術は被害を最小限に抑える為のものだ。
(それでは血は流れぬし、我が目的にも添わないのだよ)
ジュダは内心の邪悪な言葉を微塵も見せずに、アムンゼルに言葉を返す。
「なるほど。守りを固め、長期戦を狙うか。将軍らしい堅実な戦術だ」
ジュダは決して「良い」とは言っていないが、その受け答えは、進言した者に不快さは与えない。
もっともアムンゼルは言葉の意味を敏感に察知し、無言で引き下がったが。
「将軍の戦術ならば、確かに被害が少なくなろう。
だが、帝国全土に、ひいては奸臣らに真の正義を示す為には、多少の犠牲も必要となる。今回の戦い……私自らが兵を率いて戦う」
居並ぶ将たちに、わずかにどよめきが溢れる。
「ジュダ様、御自ら戦場へ行かれるなど……我々だけで充分でございます!」
将の一人が進言した。
ジュダは微笑を浮かべながら、答える。
「兵たちだけに前線を任せ、自らは後方に居るなどという事は、命を賭けて戦う諸君らに失礼だ。
私にも戦わせてくれないか?」
表面に出る言葉は立派な騎士団長であるが、その内面は邪な存在でしかない。
「もったいないお言葉でございます!」
自己と他者に陶酔している将は、ジュダの冷たい微笑みに気が付かなかった。
「さあ、行こうではないか。我々の真の帝国を取り戻す為に!」
「おおおおおっ!!」
「…………」
アムンゼルとオルティア以外の将たちの歓声が上がった。



“聖斧戦士”“蒼の魔術師”“汚れなき聖女”
吟遊詩人に謳われる勇者ルクスの旅の仲間たち。
その中の聖斧戦士が興した領土、それがベルザイン。
そして『聖斧戦士の生まれ変わり』とさえ言われている女領主ウェンディー。
その彼女を、『小柄な少女だ』と侮った男たちはその身をもって誤りを訂正された。
その小柄な身体から振るわれる斧の一撃は、多くのロゼッタ兵を打ち倒した。
彼女の身長ほどもある巨大な戦斧が光の尾を引きながら、受け止めた剣ごと打ち砕く。
「くっ! 相手はたった一人の小娘だ! 一度にかかれ!」
ウェンディーを取り囲むように5人の兵士が同時に斬りかかる。
「あ~らら、多勢に無勢って、ずっるいわよねぇ」
彼女の口調はのんびりだが、その動きは俊敏だった。
長い斧を地面に突き立て、その柄の部分で倒立する。
「なにっ!?」「なっ……」「ええっ」
「ざ~んねんでしたっと!」
5人の剣を宙で躱すと、落下と同時に戦斧を振るう。
周囲の5人が血を吹き上げ倒れ、その中央では返り血一つ浴びていない彼女がふわりと降り立つ。
一対多でも、一対一でも彼女は最強だった。
彼女は一騎打ちを挑んだロゼッタ軍の将軍を、すでに2人討ち取っている。
士気が高まるベルザイン軍と反比例して、ロゼッタ軍の士気は急落していた。


「なぁんだ。『武のロゼッタ』とか言っても、こんなもんなの?」
遊びに飽きた子供のように、ウェンディーは呟いた。
やや赤みがかった髪を束ね、無邪気に言う彼女の外見から、その強さを把握出来る者は希だろう。
ロゼッタ兵の命を刈り取った戦斧がくるりと回って、地面へと突き刺さる。
「なるほど。聖斧戦士の生まれ変わり……か」
突然の声に、びくん、とウェンディーの身体が緊張する。
声の主、ロゼッタ軍騎士団長ジュダがゆっくりと馬から下りる。
「……そう、10歳の頃から一度も負けた事の無い天才戦士。それがあたし。
あなたはあたしを負かす事が出来るかしら?」
ウェンディーの言葉に嘘は無い。
彼女は紛れもなく“天才”であり、帝国首都で三年に一度行われる『武闘大会』においても優勝する腕前だ。
時代が時代ならば『剣聖』の称号も得られただろう。
「天才は確かに存在する。だが、上には上もまた存在する。それを証明してやろう」
ジュダがゆっくりと黒光りする剣を抜く。
(なんなの……この感覚……)
今まで感じたことのない感覚に、ウェンディーは自慢の戦斧を強く握る。
汗がその頬を伝う。
手にも汗が浮かび、早鐘のような鼓動を痛いくらいに感じる
それは直感的に感じた相手の能力ゆえに。
そして彼女は、初めて『完全な敗北』を味わう事になる。


一撃一撃が稲妻のような斬撃。
フェイントを交えた目にも留まらぬ攻撃。
指南書以上に洗練されたその剣筋。
そうかと思えば、蹴りも含む荒々しい我流の剣術。
二人の一騎打ちは、他の兵士たちが争いを止めて見入るほどにレベルの高いものだった。
だが、そんな闘いにも決着は訪れた。

響くような大きな金属の悲鳴が上がり、白銀がきらきらと飛び散った。
ジュダの黒刃が、戦斧を叩き壊していた。
その剣先は彼女の肩の上で、寸止めされている。
ロゼッタ軍からは歓声が沸き、ベルザイン軍からはどよめきが起こった。
「参ったわ………降参」
ため息を一つつくと、ウェンディーは両手を上げた。
「私にここまでの傷を付けたのは、この時代ではお前が初めてだ。褒めてやろう」
腕を薄く血に染めながら、ジュダは剣を収めた。
ジュダは魔法を使っていない。
圧倒的な力の差を見せつけられ、“完全な敗北”を彼女は認めた。
それを認めないベルザインの将たちは彼女を救出しようとしたが、それを止めたのは他ならぬ彼女であった。
「一騎打ちで敗れたのだもの。これ以上あたしに恥をかかせないで」
ウェンディーは捕虜となり、領主を失ったベルザイン軍は撤退を始めた。



ジュダの部屋へと連れてこられたウェンディーに抵抗する様子はなかった。
彼女は今、軽装の鎧を脱がされ、活動的な普段着を着ている。
短めのスカートからすらりと伸びる色白の脚は、年相応と言える。
「へぇ………もっと警戒されるかすぐに処刑されるかと思ったのに。
まっ、あんたくらいの実力なら、あたしを怖がる理由もないか」
ウェンディーは今、全く拘束されていない。
部屋を飛び出そうとすれば、それは可能だったかもしれない。
だが、ウェンディーにはその気持ち以上に、『初めて出会った自分よりも強い存在』に惹かれる気持ちの方が強かったらしい。
臆する事なくベッドに、ぱふっ、と座り込む。
「私からすれば、もっと警戒されるか抵抗されるかと思ったがな?」
部屋の主、ロゼッタ軍騎士団長は、それだけで絵になるような仕草でグラスにワインを注ぐ。
琥珀色の液体がグラスで波打ち、少女へと手渡される。
「初めてっていうのもあるしね。興味の方があるから……ね」
グラスを傾け、一口舐めると、彼女は舌を出した。
「お酒って苦い。酒好きは、よくこんなのをおいしそうに飲むね?」
アルコールの苦さに舌を出す彼女の仕草を、ジュダは薄く笑う。
「経験を積むうちに形成されるものもあるし、状況にも個人にもよる」
「個人とか経験とかは分かるけど、状況って?」
ウェンディーは小首を傾げる。
「例えば……こんな状況だ」
ジュダは自らの口にワインを含み、ベッドの少女の顎を軽く持ち上げる。
「んっ……」
ウェンディーは目を閉じ、身体を預けた。































口から口へとワインが流し込まれる。
こくんとウェンディーの喉が鳴り、流し込まれたワインが嚥下される。
僅かに漏れたワインの一筋が口の端からこぼれ落ちた。
「………はぁ……」
女らしい吐息が漏れる。
アルコールに酔ったのか、彼女の顔はわずかに紅潮している。
「これが状況による味だ。多少は味が変わっただろう?」
囁くように言うジュダの問いかけに、ウェンディーは頷く。
「うん。なんか……ふわふわしてる感じっていうのかなぁ……」
ワインの味を吟味するように呟く。
「ん……んしょっと」
やがて彼女はジュダの膝の上に乗る。
空いているジュダの手を、自分の腹へと導く。
結果、男が女を後ろから抱きかかえるような形になる。
「……こうしてると安心するんだ」
彼女は完全に脱力しながら、ジュダの胸に背中を預ける。
「私にも飲ませて貰いたいのだがな」
心地よい重さを感じながら、ジュダは耳元で囁いた。
「うん………」
ウェンディーはワインを口に含み、今度は男の口へと流し込む。
少しずつ琥珀色の液体が流し込まれる。
口内の全てを流し終わっても、二人の口は離れずに互いの舌をむさぼる。
「んっ………んむっ……」
キスに慣れていないのか、度々彼女の歯が当たり、ウェンディーは恥ずかしそうに顔を離した。
「ごめんねぇ。初めてだからさぁ……」
照れ隠しか、性格なのか、おどけたように言う彼女にジュダは微笑する。
「気にするな。たまにはこういう趣向も良い」
「それって、下手だって言ってるのとおんなじ……きゃ…………んっ……」
ウェンディーの台詞の最後は、甘い吐息が混じった。
腹にあったジュダの手が上方に伸び、その二つの膨らみに触れたからだ。
服に隠されているので大きさは把握できていなかったが、実際に触れた感触は確かに女性特有のものだった。
訓練で鍛えた賜物か、想像以上の弾力をもつ膨らみは、ジュダに心地よい刺激を返す。
「んっ…………ふっ……んっ………」
揉みしだく度に、彼女の口から僅かな吐息が漏れる。
まだ慣れていない感覚に戸惑っているようにも思える。
張りのある、わずかに固さを残す膨らみは、服の上からでも分かるほどに熱い。
それは胸だけでなく、身体全体が熱を発しているかのようだった。
「ふくっ………んっ……んんぅ………はっ……んっ……」
無意識にか、彼女の身体が前傾になるのをジュダは許さない。
強引に引き寄せ、揉みしだく。
ウェンディーは、自分の膨らみを撫でる男の顔をまじまじと観察する。
「やっぱり………んっ……かっこいい……ね………んふっ……」
整ったジュダの顔に、彼女の手が触れる。
男とは思えないほどのきめ細やかな肌を、細い指が彷徨う。
「あたしの…命をあげる相手としては……んっ………合格…かな?」
熱にうなされるように、顔にうっすらと汗を浮かべながら、彼女はそう言った。
「分かっていて、抗わないと言うのか? 逃げようとも思わないと?」
ジュダの手は休む事なく、少女の身体をまさぐる。
その手は服の中へと侵入し、柔らかな下着の上から触れている。
「うん………だって逃がしてくれないでしょ?
 だったら人生の最後なんだから、思いっきり愉しませて欲しいなぁって……んっ…」
彼女の口から、甘い吐息が漏れる。
ブラをずらされ、ジュダの手が直にその膨らみに触れたからだ。
ゆっくりじっくりと。
かと思うと、跡が残るほどに早く強く。
「過去の聖斧戦士が聞いたら、何と言うかな?」
愛撫の手は緩めず、ジュダは耳元で囁く。
「んくっ……あたしはあたし……ご先祖は………んっ……ご先祖だよ…」
一方的に責められるのは彼女の性格に合わないのか、その細い手がもぞもぞと動く。
均整の取れた鍛えられた、だが筋肉質ではない男の胸から、彼女の手はゆっくりと下へと下がる。
「ふわ……んっ………男の人ってやっぱり……こうなるんだ」
布地の上からさわさわと、撫でるように細い手が動く。
「怖いか? あるいは直に見れば、グロテスクに見えるかもしれんな」
眼前の小さな耳に、息を当てながらジュダは愛撫を続ける。
「きゃふっ……んっ…怖いってのは…んっ……あるけど………あんっ……」
男の手が下へと滑り、スカートをゆっくりとめくり上げる。
ゆっくり焦らすように、見えるようにその中へと侵入する。
わざわざスカートをたくし上げる行為は、彼女の羞恥心を煽る。
「やっ……ん…萎え萎えってのも……ああっ………んふっ…嫌だからさ」
ウェンディーは甘えるように、ジュダに身体を擦り寄せる。
薄布の下の、女の部分はすでに湿っていた。
「もうこんな状態だ。他の男とも経験があるのではないか?」
ジュダが意地悪く、囁く。
「あっ……無いよ………んっ…だって、あたしより強い男にって…んあっ……決めてたから……」
湿り気のある音が響く。
ジュダの指が秘所をなぞり、その上部の小さな芽に到達する。
「んっ……」
ウェンディーの身体がわずかに強ばる。
「くっ…んんっ………」
敏感な部分を軽く摘まれ、彼女の身体が弓なりにぴんと張る。
ジュダの指はしばらくウェンディーを弄んだ後、ショーツからその指が出される。
「くくくっ……初めてでこんな状態か? 淫乱だな」
しとどに濡れる指を少しずつ開くと、その指の間には粘り気のある液体がまとわりつく。
ジュダはわざと、ウェンディーの顔の前にそれを見せつける。
「あはっ……ん……だって、気持ちいいんだもん。………んっ」
ウェンディーがジュダの指をくわえる。
男の指に舌が絡みつき、それはまるで彼女の膣に入れているような感覚を覚える。
さらにお返しとばかりに、女の指がジュダの男根に直接触れる。
すっかりそれが誇張しているのを確認すると、ウェンディーは僅かに腰を浮かせる。

下着をずらし、ジュダがゆっくりとウェンディーの膣内へと入っていく。
「んっ…………くあっ…」
熱く狭いその中は、それだけで果ててしまいそうなほどのものだ。
最初は外界からの異物の侵入を拒んでいた膜も破られ、今や彼女が生み出した液体が男のモノに絡み卑猥な音を響かせる。
「くっ……んっ…ああっ………んんっ……」
ウェンディーの表情からすれば、それはかなりの痛みだっただろう。
だが、彼女は一度も『痛い』という言葉を口にする事はない。
『相手に情けなど受けない』
それは戦士としてか、女としてか、あるいは彼女自身のプライドだった。
「んっ………くあっ…あっ………あっ…ああっ………あっ……ん…」
ウェンディーは手を握り、痛みに耐える。
ジュダは彼女のそんな素振りに気が付かないかのように、腰を突き入れる。
彼女の狭く、熱い膣内は力の吸収という行為と同等かそれ以上の甘美な刺激をジュダに返す。
「ふっ……んっ…はっ………はっ……ああっ……………あんっ……」
やがて慣れて来たのか、ウェンディー自身もジュダの動きに合わせて腰を上下させる。
より深く挿入され、抜ける寸前で再び挿入される。
「くくっ……一度として苦痛の声を上げなかった事に敬意を表するとしよう」
ジュダが謳うように呪を唱える。
「ひゃ!? んっ…くっ……んっ……あはっ………」
突然彼女の痛みが和らぎ、代わりに甘美な刺激が彼女に広がる。
「くふっ……ああっ…いっ……いいっ………んくっ………あっ……」
彼女の声は痛みの声から、やがて喜びを伝える艶っぽい声へと変わっていく。
「んっ…あっ……あああっ……ねぇ……んっ…もっと強くても……あっ…」
ウェンディーの言葉に、ジュダは薄く笑った。
「望み通りに」
「ああっ!……んっ…あっ………あああっ……ああっ」
ジュダの両手は彼女の白い太股を抱えている。
より深くウェンディーの中をえぐるように、ジュダの腰が突き入れられる。
「ひあっ……あっ…あふっ………あんっ……あああっ……」
ウェンディーの頬は紅潮し、涙と涎とが彼女の顎を滑る。
極上の麻薬を味わうかのように、女の腰は男を貪る。
「ひっ…あっ……んっ……いっ…いいっ……いいの………ああっ……」
腰が降ろされる度に、彼女の中はきつくジュダを締め上げる。
無駄な脂肪の無い、引き締まった身体が収縮を繰り返し、男に快楽を与える。
「ひああっ……んっ…………んんんんんんんっ!!」
ウェンディーの身体がぴくぴくと痙攣したかと思うと、ぐったりと脱力する。
どうやら達したようだが、ジュダの責めは終わらない。
今まで以上に早く深く、ウェンディーの中を行き来する。
「…んっ………ふっ…あっ………くんっ……」
男と違い、女は達した後も火照りは緩やかに下がる。
頂上から緩やかに下降し始めた悦楽を、男は再び頂上へと持ち上げる。
「あっ………あくっ………またっ…あっ……んんっ………きゃ…ふっ」
「人生で最後なのだ。まだまだ、悦楽を終わらせるには早い」
抱え上げられ、ウェンディーは無意識の内に自らの乳房を揉む。
女の身体は二度目の絶頂を迎える準備を始めていた。
「あっ……また……またっ…ああっ……また………んんっ……」
先ほどより熱く湿る膣が、ジュダの陰茎を締め上げる。
「やっ………あはっ……今度は………ああっ…ジュダも………一緒に……ああっ」
ジュダに心地よい開放感の波が来る。
身体全体がとろけるような、重力の束縛から逃れられるような浮遊間。
「いっちゃう………ふぅ……んんっ!」
ウェンディーの視界が白く染まっていった。





























帝国南方のほとんどがロゼッタの、ジュダの手中へと収まっていた。
『南方総司令ロイド』と『聖斧戦士ウェンディー』の敗北は帝国に暗い影を投げかける。
「惨憺(さんたん)たる状況ですね……」
主の居なくなったクインヒア領エルディティラ城。
まだ10代の青年が、ため息とともに呟いた。
以前の城主も同様の重いため息を吐いた事を、この青年は知っているだろうか。
「軍師に回って来る仕事は、楽な仕事の方が希よ」
青年の呟きに答えたのは、若い女性だった。
丸い眼鏡に、精緻な刺繍の施された軍服。
そして何より目立つのは、彼女の身体を覆っている明るい色合いの蒼いマント。
それが彼女が『蒼の軍師』と呼ばれる由縁である。
もっとも彼女自身は、
「ご先祖様がもっと地味めな格好をしてくれてれば、こんな格好しなくても良かったのに」
と愚痴っているのだが、こんな状況の時は強い武器になる。
個人を識別できる服装はよく目立ち、疲弊した兵士たちに僅かでも信頼を与えるのだ。
「アニエス様、演説の準備が整いました」
兵士の言葉に、アニエスと呼ばれた女性は頷く。
妹のリーゼと同様の輝くような金髪が揺れる。
「演説……ね。多くの未来ある兵士たちを騙して、死地に赴かせる嫌な作業だったかしらね」
自嘲気味にアニエスは呟いた。
「アニエス様……士気を高揚させて、少しでも生き残る兵士を増やす為の演説です」
傍らの青年、キールベインは答える。
「言い換えても本質は変わらないけれど、考え方を変えるのは大事な事よね。…ありがと」
アニエスは、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
とても今の帝国南方においての最大権力者とは思えない。
こういう無防備な笑顔はずるいと、キールベインはよく思う。
「いえ…いや……はい」
結局キールは口ごもり、尊敬する先輩軍師の後に続く。
『蒼の軍師』アニエスは、ゆっくりと演説台へと向かう。
先ほどまでのいたずらな表情はかき消え、代わりに厳しい将軍の表情を浮かべている。

かつて魔王に闘いを挑み、勝利した勇者ルクス一行。
その『蒼の魔術師』の子孫、『蒼の軍師』が帝国南方に到着した。
連戦連勝のジュダ率いるロゼッタ軍を食い止めるために。


戦乱の火種は燃え上がり、未だ沈静化する様子は見られなかった。




To Be Continued・・・


































ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき

なんの脈絡も無いんですが、ファンタジー世界の下着ってどうなってんですかね?
いや、実際の歴史では付けてなかったりとか、提灯ブルマーっぽいのとか、ふんどしっぽいの(ほんとか?)だと思うんですけど・・・
「 服をはだけて、うっすらと見え始める下着 」ってシチュエーションは俺的に外せない事ですんで、そこらへんは史実とかは無視です。絶対に!(力説)
一枚一枚剥いていく感覚っていうか、全裸より半裸って方が俺は燃えるんですよ!
同意見の方、ぜひ掲示板に励ましの書き込みを(笑)(←掲示板、今は設置してません)

俺世界ファンタジーの住人たちは、生活水準を上げる(銃器、ガス、電気等)よりも、まず先に女性の下着に力を入れたんですね(笑)
産業革命も、まず「女性の下着の向上を!」ってスローガンから始まるんです(馬鹿)
平和っぽくていいですね(笑)


服装にこだわるってなんか、フェチっぽいですね。
というよりも、コスプレ?

・・・はっ!?(突然、何かに気が付いた俺)
「どうしたの? ハ■メちゃん!?」
「・・・・・そうか、そうだったんだ。毎回職業が変わり、服装やオプションも変わる・・・
 これが意味する事、それは一つしかない」
「ど、どういう事なんですか、キバ■シさん!?」
「今まで俺たちは大きな勘違いをしていたんだ。魔王の設定とか、れいーぷまがいの行為がウケていたと思っていたが、それは違う! 違うんだ・・・」
「そんな・・・それじゃあ、一体? ・・・・・・まさか!」
「そう、それは・・・・・

『コスプレ』だったんだ。
そう考えれば全てが一つに繋がる!
 ファンタジー世界の様々な職業、服装を使っていたから、大して新しくも面白くも無い文章を、面白いと錯覚させられていたんだ!」
「なっ・・・なんだって(以下略)」

パロディー(パクリ)は楽でいいな。
知らない人はごめんなさい。








20年経って、金田一少年が37歳のおっさんになってるとは思いませんでした。
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