ダークサイド

タカヤス

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ダークサイド 第12話 「氷弓 ナーディア」

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『ミリヨヒ領のエルフたちが、ロゼッタに宣戦布告した』
その知らせを受けた時、ロゼッタ軍で動揺しなかったのは数名だけだったろう。
なぜなら、エルフたちは『永世中立』を基本方針としており、世俗の争いに手出ししないのが暗黙の了解だったからだ。

彼らの特徴は、長い耳、痩せ型の身体に長寿。
長期間に渡り洗練されてきた『弓術』を含む武術は驚異であり、それ以上に彼らが得意とする精霊魔法は一領土の兵士に匹敵するとも噂される。

驚かなかった数名の内の一人、ジュダは冷静に分析した。
「本国であるロゼッタに付け入る隙がなく、バーザルは商業が急速に発展している今、不満を抱く者は少ない。
となれば、一番脆い部分とされるのが、ミリヨヒ領。
帝国軍がそこを突くのは至極当然だ」
「しかし古代種(エルフ)が動くなど……」
「騎士団長殿は、すでに予見されていたのですか?」
将たちの呟きを代弁するのは、年長者であるアムンゼルだ。
髪と髭とが白く染まっているのは、長い年月を武人として過ごしてきた証明。
それゆえに他の将たちからは一目置かれている。
「『古の盟約』をご存じか? アムンゼル将軍」
「!?……かつて魔王に戦いを挑んだ勇者ルクスの名において成された、盟約。
人類全体の敵が現れた時には、全ての種族が手を取り戦うという……」
老将の言葉に、ロゼッタの将たちからざわめきが起こる。
『蒼の軍師』が、ジュダを『魔王』呼ばわりしていたのを思い出したのだ。
「なんたる事だ! 我々を、ジュダ様を『魔王』と呼ぶなど!」
まだ若い将、オルビスは烈火の如く怒りだした。
貴族として知識はあるが、プライドが高く、やや先走るきらいがある男である。
将たちへの宣伝役として、制御しやすい彼もまたジュダの手で踊る哀れな男の一人。
暴走しかねない勢いのオルビスに対して、ジュダは落ち着くように指示する。
「真の正義がどちらにあるかは、戦いが証明してくれよう。
諸君らには冷静さを失ってもらいたくはない」
落ち着き、微笑さえ浮かべているジュダの存在は、将たちの動揺を鎮める。
「申し訳ございません、いささか取り乱しました」
頭を下げるオルビスに軽く応えると、ジュダはよく通る声で宣言した。
「諸君らには今まで同様、来るべき大規模な戦闘に備えて貰いたい。
趨勢(すうせい)を理解出来ない愚か者共は私が対処する」
不敵とも取れる微笑を浮かべる男。
老将は静かに目を閉じる。
(今度は一体何を企んでいるというのか……ある意味『魔王』という言葉は的を射ているのかもしれぬ。やはり……)
アムンゼルは、ただ無言で座していた。



ミリヨヒ領、南東部。
広大な森は、エルフたちが呪いをかけたと言われ『迷いの森』と呼ばれている。
そんな中を躊躇なく進むパーティーがある。
「敵の敵は味方、という事だ」
先を歩くジュダは後ろを歩く女性、オルティアに答えた。
「つまりエルフたちの敵が、我らの味方になるという事ですか? しかし、一体……」
そこまで言いかけて、オルティアは記憶のデータベースから、ある単語を検索した。
「ダークエルフ……」
オルティアの言葉に、ジュダは頷く。
「奴らは排他的で差別的。突然変異による肌の違いを許容出来ない。……愚かな事だ」

エルフたちの多くは、白い肌に金髪である。
だが、やや黒い肌に銀髪という者たちも存在する。
彼らは『ダークエルフ』と呼ばれている。
エルフとダークエルフの関係は険悪だ。
元は一つの種族だったと言うのに……。

「しかし、気に入らないというだけで、殺し合いにまでは発展しないのでは?」
オルティアの問いかけに、ジュダは微笑を浮かべる。
何も知らない者が見れば、それは天使の微笑みにも見えるかもしれない。
しかし、実質それは悪魔の邪悪な笑み以外の何物でもない。
「ならば、そう仕向ければ良い」
所々のエルフたちの魔法結界を、目聡く解除しながらジュダは笑う。
「さぁ、目的地に到着だ。せいぜい派手に暴れろ」
ジュダの声に、彼が秘密裏に組織した少数の兵士たちが、殺気を漲らせる。
偽装されたエルフたちの集団が、ダークエルフの集落を襲い始めた。


ダークエルフたちの集落には、妙な噂が流れていた。
エルフたちが人間と手を結び、ダークエルフを滅ぼそうとしている、と。

それからしばらく後、噂通りに人間とエルフが同盟を結び、同時期に集落が襲撃された。
タイミング良く起こりすぎる事態に、ダークエルフたちは手に武器を取り、報復を始めた。
エルフとダークエルフとの間に、小競り合いを越えた争いが起こったのは、こういったいきさつだった。
一度動き出してしまえば、後の流れは止まらない。
何者かが両方の集落にあった結界を解除していた事も、戦いが続くにつれ忘れられていった。
エルフたちの血で血を洗う戦いは、泥沼化していた。
その少女もまた、一人の男の作りだした流れに巻き込まれていった……。



「にん……げん?」
ダークエルフの少女の視界に飛び込んできたのは、一人の男だった。
長い髪の、整い過ぎてさえいる美麗の若者。
「まだ動かない方がいい。生きていたのが不思議なくらいの傷だったからな」
彼女の身体には治療が施されていた。
薄い褐色の肌に白い包帯が巻かれている。
少女は訝しむように男を睨み、次いで状況を思い出し、喚き出した。
「皆は! 仲間は!?」
問われた男は、首を左右に振る。
「っ……」
周囲は酷い有様だった。
魔法によるものだろうか?
エルフもダークエルフも焼き尽くされ、抉られ、周囲は原型を留めていない。
「一体、誰が……?」
呟くようにいう少女に、男が答える。
「直接手を下したのは帝国兵だろう。だが、裏で手を引いているのは……」
「エルフどもかっ!!」
少女は気が付いていなかった。
目の前の男、ジュダが内心で笑みを浮かべた事を。
彼が巧みに彼女の思考を誘導している事を。
「これだけの爆発の中で生き延びられたのは、奇跡だ。
よほど魔法の才があるか、運があるか………いや、そのどちらもか」
(今の私の最大級の魔法に耐えたのだからな)
惨劇の加害者は、被害者を哀れむ傍観者を装う。
「くっ………」
少女に、自分たちの集落を襲った存在に対する憎悪が沸き上がる。
新たに血が滲むのも意に介さず、拳を握りしめる。
「力が欲しいか? エルフたちに復讐したいか?」
闇から響く甘い誘惑。
褐色の少女はジュダを見やる。
「貴様は何者だ……いや、そんなことよりも可能なのか? 復讐が」
「全てはお前次第だ。お前のその気持ちが本当なら、私は力を与える事が出来る」
彼女が必要としているのは、復讐に生きる修羅としての自分。
何もせず屈するのは、戦士として、仲間を殺された誇り高きエルフ族として看過出来なかった。
「……欲しい。エルフたちに……人間たちに復讐出来る力が」
まっすぐに憎悪の炎が灯った目を向ける。
「いい目だ。己自身を含む全てを憎む目」
値踏みするかのように注視し、ジュダは彼女を評価する。
(くくっ……お前のような存在は最高の素材。いい『闇の娘』となる)
男はよく通る、美しい声で言った。
「いいだろう、与えてやる。……力を」












「お前の名前は?」
ジュダの問いかけに、少女は憮然としたように答える。
「……ナーディア」
美麗の青年は薄く笑う。
「そうか、ナーディア……お前は生娘か?」
唐突の無礼な問いに、反射的に彼女の平手打ちが振るわれる。
だがその手の平がジュダの頬を叩く事はなく、男の手に掴まれる。
「くくっ、威勢が良いな。興味本位や侮辱では無い。力の受け渡しに必要な事だ」
ダークエルフの少女、ナーディアは烈火の如く怒り出す。
「人間は無礼だ! そんな事を貴様などに教える義理は無い!」
憤怒の炎を滾らせる少女に、まるで氷のような冷徹さで、ジュダは答える。
「私は人間かどうか分からぬからな……それに、その分かりやすい反応は質問に答えているも同じだ」
「このっ!」
傷だらけの身体だというのに、ナーディアはもう片方の手も振りかざす。
だが、やはり男に押さえられる。
彼女の両腕が男に拘束された。
「くっ、貴様、ふざけ……むっ………………ぐっ………んんっ……」
形の良い唇が唇で塞がれ、彼女の言葉は封じられた。
ナーディアは顔を必死に逃がそうとするが、ジュダはそれを許さない。
唇が離れる。
顔を背ける彼女に、男が囁く。
「力が欲しくはないのか? 仲間の仇討ちも出来ないぞ?」
「っ!?」
ナーディアは思い出す。
死んでいった仲間たちの苦痛を。
それを思えば彼女の破瓜で復讐が遂げられるのならば、安い取引だ。
彼女の身体から、余計な強ばりが抜ける。
「……いいだろう。だが、約束を違えた時には……殺すぞ」
ジュダは薄く笑うと、行為を続行する。
服の上から、女性特有の膨らみへと手を伸ばす。
「くっ……」
彼女から羞恥の声が上がる。
エルフ族は往々にして華奢であり、その膨らみもまた人間よりも小さいのだ。
「ふっ……気にしてるのか?」
「だっ、黙れ! 貴様、殺すぞ!」
女の反応を一々楽しみながら、ジュダは身体をまさぐる。
人間よりも少し長い耳に、舌を這わせる。
「っ……………」
左手は薄い胸の膨らみを楽しみながら、右手を彼女の腰に回す。
細い太股を滑り、手は尻のなだらかなカーブへと到達する。
「………っ……」
彼女は息を飲み、一瞬だけ反応する。
触れられている事への嫌悪感か、羞恥か、仲間を失った怒りか・・・
抱きかかえるような体勢で、互いの熱を伝え合う。
そのままの体勢で、ジュダの指が短いスカートの中へと侵入する。
「くっ…………」
一瞬、男の手を拒むように両脚が閉じられる。
だが思い出したかのように、その脚は開かれる。
障害の無くなったジュダの指は、柔らかい、さらさらとする布を上下に擦る。
「っ……………」
ナーディアは息を飲み、顔を背ける。
一刻も早く、この苦痛を伴う行為が終わる事を望みながら。

男の手が、薄布の中へと入れられる。
薄い茂みの奥は、いくらかの体温はあるものの、湿り気は無い。
まるで全てを拒む彼女の心情を表すかのように。
「これでは充分な力を渡すことは出来ぬな」
「なっ!?………ただの性交であろう! 我の状態など関係は……」
ナーディアの台詞に割り込むように、ジュダが呟く。
「必要な事だ。快楽に深く溺れれば、溺れるほどに受容出来る力は増す」
「くっ……」
ジュダの囁きに、ナーディアは唇を噛む。
力の受け渡しに感度が関係するのかどうかの真偽は定かではないが、彼女はジュダの言葉に従うしかない。
「どうしても高まれないというのであれば、魅了(チャーム)をかけてやってもよいが?」
「我にチャームは効かない。……それに余計なお世話だ。……我の事は我でやる」
苦々しげな口調で、ナーディアは答える。
「ならば、もう少しそれらしい反応をして貰わんとな……」
「っ! 黙れ! 分かっていると言っている!」
顔を怒りの色に染めながらも、彼女は感じる為に行動を始める。
傍らの布袋を漁り、中から木の実のようなものを取り出す。
毒々しい紫がかったそれを指ですり潰す。
「ほぉ……『天使の塵(エンジェルダスト)』か」
「知っているなら、少し黙っていろ」
忌々しげに、彼女は言い放つ。
男に背を向け、指に付いたそれを自らの秘所へと塗りつける。

『天使の塵』は、ある一定の地域にだけ生息する特殊な植物である。
その種子を精製したものが、闇に出回る麻薬となる。
それは主に戦場に赴く兵士たちの、精神高揚、痛み止めに使われる。

「……ふあっ………………っ………んっ………」
やがて彼女の上気した身体から、熱い吐息が吐き出される。
「手っ取り早くて良いが、これではこちらの楽しみが無いな」
「き、貴様は、黙っていろ…………っん……と言っている!」
荒い息と共に、瞳を潤ませる彼女の姿は通常時とのギャップにより、十二分に卑猥だ。
「はぁ………はぁ……………さぁ、もう充分なはずだ!」
目の前の男を睨み付けながら、吐き捨てる。
言われた男の方はといえば、形の良い口の端を、くっと引き上げ不敵な笑みを作る。
「いや、もう少し鑑賞させて貰おうか……誇り高きエルフの特別なショーを」
「きっさま……」
彼女の歯と歯がぎりぎりと鳴る。
だが、高まる心拍数と体中を駆け巡る興奮物質は彼女から言葉を奪う。
両肩を抱えながら、彼女は悦楽に抗う。
「……っ………ふっ……くっ……………はっ……うっ………」
細い両脚と華奢な身体が、わずかに震える。
媚薬を塗りつけた箇所がじんじんと疼く。
彼女が密を流しているであろう、一番熱い部分へと再び手が伸びる。
だが、彼女の理性がそれを許さず、彼女の細い手はゆるゆると漂う。
「んっ………くっ…………はぁはぁ………はぁ……うくっ……」
寄せては返すような快楽の波が、彼女の興奮を高めていく。
ジュダは薄ら笑いを浮かべながら、敢えて彼女に触れずに、耳元で囁く。
「力を得るという大義名分があるのだ。今日くらいは思い切り乱れてはどうだ?」
「っ……はぁ………っく……あっ……………ん………んぐっ……」
耳にかかる吐息にさえも反応し、ナーディアの身体がぴくりと動く。
「だま………れ…………………っく………」
それでも彼女は震える体を押さえ込もうとする。
そんな様子のナーディアに、ジュダは肩をすくめる。
「やれやれ、埒があかぬな。……仕方がない。ほんの少しだけ手伝ってやろうか」
突然、男の手が女の下腹部へと伸びる。
「ひあっ!………あっ………くぅ……………ぐっ……」
白い薄布は濡れていた。
体内から無理矢理に引き起こされた火照りが、じわりじわりと染みを広げていく。
「くっ……あっ………は………………ぅ……くはっ……」
まるで微量の電気を流されたかのように、彼女の身体がびくりと反応する。
「あくっ…………っ…………あっ…………えっ?」
女の喘ぎ声に、疑問が混じる。
ジュダの腕が、彼女から離れたからだ。
「自分でやって見せるんだ」
ジュダが微笑と共に囁く。
「っく………あっ……………ああっ………はあっ……んっ………」
今度は逆らえなかった。
彼女の手は刺激を求めて、ショーツの中で蠢く。
瞳を潤ませ、荒い息づかいを繰り返す。
「あっ……はっ………はぁ………はぁはぁ……ふぅ……っく………」
少女が恐らく初めて行うであろう自慰行為は、ひどく卑猥だ。
切なげに漏れる声は、男の欲情を煽る。
「準備は整ったか? 整ったのなら、懇願してみろ」
「はぁはぁ……んくっ………だっ……はぁ………誰が……」
ナーディアの精一杯の抵抗。
この期に及んでも、彼女の意志は強い抵抗を示す。
「いいのだぞ? 今日だけだ、薬のせいでこうなったのだと言い訳しろ」
「あっ……………ぐっ……はぁはぁ………んっ……ああっ……」
抑えようとする意志が強ければ強いほどに、蓄積される快楽の波が彼女を襲う。
彼女自身の秘部をまさぐる手が、速度を増す。
「くぅ………んっ…………んんんんっ…………」
顎を仰け反らせ、涙と涎とを流しながら、ナーディア
は達した。
「はぁはぁ……はぁ…………んっ………………………えっ………くっ……」
だというのに、収まるどころか逆に強くなる欲望に、彼女の口が驚愕を形作る。

まるでその事を予想していたかのように、美麗の悪魔は笑みを漏らす。
「一人だけでどうにか出来ると思ったか?」
「はぁはぁ……あっ………はぁ……はぁ………くっ……」
自分の肩を抱き、劣情を抑えようとする彼女。
だが同時に、その片手は更なる快楽を得ようとして、もぞもぞと動く。
それでも男に抗うのは、彼女のプライドだろうか。
「くくっ……さすがは誇り高きエルフ、と言ったところか」
言いながら、ジュダはナーディアの身体に手を伸ばす。
「あっ……くっ…………」
彼女はジュダを進んでは受け入れない。
だが、逆に拒みもしない。
彼女に、背中向けの体勢を取らせる。
小刻みに震える体が映り、細い腰と引き締まった身体全体がよく見える。
男は背後から覆い被さるように、両手を胸に回す。
「はくっ……やぅ…やっ………やめ……………はっ……んっ……」
「くくくっ……薬の影響か、それとも小振りの方が感度は良いか?」
手の平に収まるほどの控えめな膨らみを、揉みしだく。
「っ……くっ………いっ…いやぁ………んっ………だっ……だめっ……」
肌を上気させ、必死に耐えようとするが、彼女からは艶っぽい声が漏れる。
それが自然と男の欲情を煽る。
ジュダはエルフ族の特徴的な長い耳に、舌を差し入れる。
それだけで、ナーディアはぴくりと身体を震わせる。
「ひあっ………くっ……やめっ………はっ…くっ……………ああっ……」
「言葉では素直になれないのか? では、行動で示してみろ」
目の前の大木にしがみつきながら、彼女はジュダの責めに耐える。
しかし薬の影響からか、身体は勝手に反応している。
「はっ……あっ………くっ………はぁはぁ………んっ……」
ゆっくりと形の良い尻が持ち上がる。
それを確認すると、ジュダはゆっくりと自らの誇張したモノを突き入れる。
ずぶりという柔肌の感触と、柔らかな膜を突き破る感覚。
「あぐっ……ああああああっ………いっ……いたっ………くっ…」
初めての痛みに、ナーディアは拳を握り、耐える。
無意識のうちに逃げようとする腰を、ジュダの手が固定する。
「はぐっ………うっ……んんっ……やっ……はっ………あぁ……」
ジュダが腰を突き入れる度に、それに合わせるように女の声が出る。
出し入れを繰り返しながら、男は彼女の上着をたくし上げる。
「くぁ……うっ………んぅ……んっ…………んんっ……………はぁ……んっ…」
服に隠されていた形の良い乳房が、露わになる。
そのむき出しになった双丘を、直に撫でる。
「くっ………はぁ…あっ……あっ…………あああっ……」
膨らみの中心部分の突起を念入りに弄ると、ナーディアは一際高い声を上げる。
胸を責める間にも、男と女の結合部分は、にちゃにちゃという水音を立てている。
深く結合した部分は、エルフ族にとっては大き過ぎるそれを締め付ける。
「あっ…ぐっ……んっ……ああっ………はっ……はぁ…はぅ……くっ……」
エルフの女が男根を拒む反面、その内部は別の生き物のように包み込む。
互いの液体が滑りをスムーズにし、かつ、締め上げる。
熱すぎるその中は、どん欲に男を求めているかのようだ。
「あ…あっ…………んっ……んむっ………かっ……んっ………」
破瓜の痛みに、顔中を涙で濡らしながら、それでもナーディアは耐える。
一族を殺した者に、帝国に、エルフ族に復讐する力を得る為に。
ぱんぱんという肌と肌を合わせる音が一際早く、強く響く。
「んぅ……あっ…まっ………くっ……まさっ…かっ………膣に……」
木にしがみつきながら、ダークエルフの少女は苦しげな声を上げる。
男の方は、微笑のままだ。
「そうだ。安心しろ。力を与えるだけだ。……命までは与えられん」
ジュダはそう呟くと、そのスピードを上げる。
「ひぅ………あっ…くっ……はっ……はぁ………あ……ああ…………あくっ……」
それに伴い、彼女の嬌声の感覚も短く、大きくなる。
未だ痛みはあっただろうが、薬の影響からか、快楽も確かに存在していた。
一際強く、彼女の膣内が収縮し、男を締め上げる。
「っ……受け取るがいい…………力を……」
ジュダの腰が深く挿入される。
心地よい柔肉が男を包み込み、子種を、力を受け入れる体勢を作る。
「あっ……んっ………ああんっ…………あああああああっ!!」
少女の声が響いた。













エルフ族の村と、そこに駐留していた少数の帝国軍兵士は、たった一人のダークエルフの少女によって滅ぼされた。

彼女が矢をつがえる。
四本同時に放たれた矢は、氷を纏い蒸気の欠片を宙に残しながら、対象へと突き刺さる。
冷たく凍てつく『氷の弓』から、死を呼ぶ矢が放たれる。
ほとんどの者は、それらの軌跡すらも認められずに、死を認めさせられる。
正確過ぎるほど正確に、氷の矢は急所へと突き刺さる。
喉を貫通し、背後の木に縫いつけられるエルフ。
武器を持ったものの、構える時間を与えられず眉間を貫かれた男。
彼女を背後から狙っていながら、逆に心臓を貫かれた兵士。
彼女の凍り付いた矢は、ターゲットを逃しはしない。

動く者が居なくなった森に、火が放たれた。
ナーディアには、もう戻る場所が無いから。
敵とはいえ、うち捨てて腐らせるのは、あまりにも不憫だったから。
「……………」
炎が少女の顔を照らす。
憐憫に、孤独に、悲しみに、虚無に、様々な負の感情を混ぜ合わせた顔を。
「『氷弓』ナーディア……お前の仇はまだ残っている。
帝国は未だ半分も兵力を残しているのだ」
少女と同様に炎に照らされた男が言う。
「貴様は何者なのだ……人間ではあり得ない。神か………いや、悪魔だ」
彼女がジュダを睨み付ける。
無抵抗の女、子供をも、彼は斬り殺したのだ。
冷たい微笑まで浮かべながら、冷徹に。
「くくくっ……世間では、『魔王』と呼ばれているがな。
これからも期待している、『闇の娘』ナーディア」
ジュダは彼女の肩を軽く叩き、ロゼッタへと戻り始める。
その隙だらけのはずの背後にさえ、圧倒的なプレッシャーを感じ、ナーディアは唇を噛んだ。



「まさかエルフたちが、こんな短期間にやられるとは……思わなかったわ」
蒼の軍師アニエスは、深くため息を吐いた。
それに答えるのは、軍師見習いであるキールベインだ。
「それでも部隊を再編成する時間は充分に稼げました。
そして、これからが本当の戦い…………だというのに……」
キールベインは拳を握る。
帝都への散々の援軍要請に対して、同じ返答しか来ないからだ。
すなわち、『検討中である』と。
「ベルン様やザッシュ様は、自ら参加したいとまでおっしゃられて、止められたらしいです。
ですが、ランドルフ、ガーランドと言った奴らは……」
帝都には、皇帝を守る七人の将軍が居る。
彼らの協議によって様々な軍事関係の事項が決定されるのだが、アニエスたちを理解してくれる人物は残念ながら多くない。
「権力争いの為か、自分の土地を守る為か……私が敗れれば、次は自分たちだというのにね……」
アニエスは呟く。
それはあまりにも脆く、触れるだけで壊れてしまいそうな様子だった。
「アニエス様……」
「たまに思うわ。
勇者と聖女と戦士と多くの兵士たちが、古の盟約により、一致団結したらって……
ふふっ、駄目ね。自分の才能の無さを人のせいにしては」
「アニエス様、そんな事ありません! あなたは帝国で最高の軍師です!
 ただ、帝都の石頭たちが無能なだけで……」
力強く言うキールベインは、必死にアニエスを励まそうとしてくれる。
彼女は柔らかく、破顔した。
「ありがと。あなたのような後輩がいてくれて良かっ……こふっ」
「アニエス様!?」
口元をハンカチで押さえながら、アニエスは大丈夫、と手を上げる。

蒼の魔術師の一族は、短命だと言われている。
強力な魔法力は、彼女たちに脆弱な肉体というハンデを与えたのだ。
否、強力な魔力の代償というべきか……。

「アニエス様……」
心配そうなキールベインに、アニエスは笑顔を見せる。
「大丈夫……ちょっと最近疲れてるから……
それとも、先祖代々多くの人を殺してきた報いかもしれな…きゃ」
彼女の言葉は、途中で遮られた。
キールベインがアニエスを抱きしめていた。
「もう、いいですから……『蒼の軍師』なんて辞めて、どこか遠くへ行きましょう。
俺がアニエス様の面倒を見ますから!」
キールの顔は真剣そのものだった。
嘘偽りのない本心だった。
「キール……ありがとう。
けど、私の病気、ひょっとしたら移るかもしれないから、離れてくれる?」
「……………」
「キール?」
いつもであれば聞き分けの良い彼は、今日は違った。
「構いません。アニエス様が亡くなられたら、俺も一緒に死にます。
あなたが病気で苦しんでいるなら、俺も一緒に苦しみます。
だから、俺は離れません……」
アニエスはただ黙って、ほんの少しだけ、キールベインに身体を預けた。

どれくらい二人はそうしていただろうか・・・。
「キール……誰かに見られたら、どうするの?」
アニエスの少し照れ臭そうな声に、キールベインは、我に返る。
今更ながら、自分の気持ちだけを押しつけていた事に気が付いたからだ。
「はっ、す、すみませ……」
青年は、慌てて離れようとする。
だが、意外にもアニエスの方が、彼を離さなかった。
「もうちょっとだけ……このままで」

アニエスは青年に見られないように、ハンカチをポケットへとしまい込む。
僅かに赤いものが付着したそれを見られれば、青年に心配をかけてしまうから……。

アニエスは『蒼の軍師』最後の戦いへと赴く。
鉄の決意を胸に秘め、よみがえった魔王を討つために……










To Be Continued・・・



































ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき

だんだんと説明文章が長くなってきている気がします・・・
こんなもんでしたっけ?
第1話とかは、もっと「あっさりさっぱり」だったような気がするんですが・・・

戦う相手も強くなくちゃ面白くないので、相手(軍師)の説明を入れる。
そうすると、それに対応する魔王(ジュダ)の説明が入り・・・・
だらだらと長くなりますな・・・
俺自身が長い文章を読めない体質なので、短くまとめたいんですが・・・・うぅむ・・・・・・まぁ、いいか


最初はただ単にエルフとダークエルフが争っていて、捕まっていたダークエルフの彼女の復讐心を利用する話だったのに・・・
いつの間にか、ジュダが全ての元凶になってた。
魔王は書きやすいな、何でも出来るから(笑)

人質作戦とか、濡れ衣を着せるとか、不意打ちとか闇討ちとか、色々出来ますな。
「卑怯? 最高の褒め言葉だねぇ! ぎゃーはっはっは!!」(突然下っ端悪役に取り憑かれる俺)
あぁ、いいなぁ・・・うっとり(←危険人物)



こほん、本編に戻ります。
今回『闇の娘』として、『氷弓』ナーディアさんが加わりました。
性格的には、武人タイプの予定です。
あまり卑怯な作戦とかは使わないタイプ。
彼女が放った矢は「氷」を纏いながら、彼女の意志通りの軌道で飛んでいくという、結構いんちきな能力(という設定)
元ネタは、「ヘルシ○グ」ではなくて、「デモン○イン」(パソゲー)です。
まぁ、バトルシーンやらないんで、関係無いんですけどね(しょんぼり)

彼女はジュダに、『氷』の精霊力を貰いました。
精霊についてはライトサイドでちらっと出ましたが、四大精霊以外は俺オリジナルのいんちきです(笑)

ええっと、考えた設定によりますと・・・
まず頭に、十字を思い描いて下さい。
それの一番上に「炎」があって、それと対立するように「水」の精霊があります。
そんで横の部分に「風」と「地」の精霊って感じ。
それで「炎」と「地」の中間部分くらいに『鋼』の精霊とかいうのがあります。
「炎」と「風」→『雷』
「水」と「風」→『氷』
「水」と「地」→『命』
と、なるらしいです。(飲み会で酔いながら、考えた設定)

ライトサイドの後の方で出てくる予定ですが、九割は自己満足ですね(笑)
飲み会では、(人の話を聞いている振りをしながら)こんなことばっかり考えてます。
というか、そうでもしないと、やってられませんから・・・
学生の時の飲みは、もっと楽しかったんだけどなぁ・・・(愚痴愚痴)

気がつけば愚痴になってるので、ここらへんで。

ではでは。










20年前は、『氷弾エレンディラ』という名前でした。
二つ名の方は、銃は登場しないのに弾丸っていうのはおかしいと思い変更。
名前の方は、パクリ元のトライガンのエレンディラは、性別が男だったので、ナーディアと変わりました。
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