魔法家具屋のサラさんは

からどり

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【流行が過ぎた黒髪パッツン姫カットを今も貫く私サラは、これまた一部で流行って廃れた「吾輩」が一人称の男性とお見合いしたのよ。銀髪を七三分けにして、黒縁メガネをかけて真面目がスーツを着ているみたいな人だった。

「吾輩は特に趣味もなく、仕事一筋に生きてきた男です。女性に興味がなかったため、未だに独身のまま二十代も半ばを迎えてしまいました。自分で言うのもなんですが、仕事ができるのに結婚をしていないと性格に問題があるのかと思われるので、そろそろ結婚せねばと思うのですが……」

「私も魔法研究のことに夢中で、そろそろ結婚しなさいと親や周りに言われるものでして。仕事を続けたくてズルズルと問題を先延ばしになってしまって」

私がお見合いに応じたのも結婚する意志があると見せておけば親からうるさく言われないからなの。

彼は私よりも一つ年上で名前はジェフェリー。銀行に勤めるエリートマン。私は小さな魔法家具屋の開発研究員。会社のお得意様から彼とのお見合いをセッティングされてこうしてこの場にいるけども……この男性も私と同じで結婚にあまり興味がないタイプのようだったわ。

「お互い仕事を好み束縛を嫌うようですね。もしよければ吾輩とお付き合いから始めてみませんか?」

とジェフェリーに誘われて

「利害関係が一致しているようですし、よろしくお願いします」

と返事をして交際することになった。異世界から来た人間が持っていた道具・スマホを大きな会社が研究し、遠くの人間とも会話できるようにした通信道具「ケータイデンワ」の番号を彼と交換した。このケータイデンワは異世界人が持っていたスマホにまだまだ機能が追いついていないらしいのだけど声だけでなく文字を送ることもできてとても便利だわ。


その日の夜のうちにジェフェリーからお礼の連絡が来て、話をしているうちに交際しているからデートをしないと変だということで週末に二人で会うことになった。

初めてのデートだけど私はいつもどおりにこの髪型にあう清楚な格好をして待ち合わせ場所に向かった。ジェフェリーは私より先に来ていたのに私は彼の前を素通りしてしまい、彼に苦笑されなから声をかけられた。

「サラさん、吾輩はここですよ」

「ごめんなさい!お見合いの時と服装も雰囲気も違うし、眼鏡をかけていないから貴方の顔を見てすぐに気づかなかったわ!」

そう、ジェフェリーはあの特徴的な七三分けじゃなくて無造作ヘアになっているし、眼鏡も外している。
だから全然印象が違うのだもの。それに服装だっていつもの仕事用のスーツじゃないラフなベストとシャツ姿。

「今日のためにわざわざ服を買ってきたんですよ。眼鏡は真面目に見えるように、仕事の幸運を呼ぶチャームたいなものです。吾輩のような特徴のない顔だと仕方ありませんね。さあ行きましょうか」

と手を繋がれてしまった。恋人になったんだし手を繋ぐくらい当たり前のことよね?でもドキドキしてしまうわ……。ジェフェリーの手は大きくて温かくて、男性の手だと感じるんだもの。
デート先は映画館で恋愛映画を見た後、レストランに入って食事をした。

「サラさんの仕事のことを聞いてもいいですか?交際相手の仕事のことを知らないのは失礼だとはおもうのですが、吾輩は仕事にしか興味がなく他業種のことも女性の好みすらわからないのです」

「私の職場では魔力を原動力にした家具を作っています。エアーコンや冷蔵貯蔵器が有名ですけど、そういう魔力を動力に動く、家庭向きの魔道具の研究をしているんです。会社が小さいので魔導具を作るための素材を集めるためにモンスターと戦うこともあります」

「モンスターと?そんな危険なこと、女性の仕事ではないでしょう」

私が仕事のことを説明すると皆、こうやって驚くのよね。危ないことは男性がするものだという固定観念が強いみたいで心配してくれる人も多いけど、私は別に怖くはないわ。

「危険度の低いダンジョンに行くことが多いから大丈夫ですよ。それに私はこの仕事が好きですし、やりがいを感じています」

「強いのですね。吾輩にはそういった夢中になれるものがないので羨ましい限りです。ところでサラさんの趣味は?」

「趣味は魔法研究ですね。魔法研究が趣味なんて変わっていると言われてしまうかもしれませんが、今の仕事を選んだ理由ももっと色々な魔法を研究して応用したかったからなんです」

「なるほど。魔法研究とは興味深い。ぜひ一度、研究内容を聞かせてください」

「えぇもちろん。でも私って説明下手なのでうまく伝えられないかもしれないわ」

「それで構いませんよ。吾輩にとって未知の世界なのでサラさんの説明を聞くだけでも楽しいと思います」
それから私たちは魔法研究の話をしたわ。彼は聞き上手で相槌を打ちながら興味深そうに聞いてくれるから話していて楽しかったわ。

「サラさんは研究熱心なんですね。本当に夢中になれるものがあって羨ましい」

「ありがとうございます。私、小さい頃から魔法研究をする父に憧れていて、私もいつか魔法を研究する仕事につきたいとずっと思っていたんです。その憧れの夢を叶えることができて毎日幸せですよ」

「そうなのですか。貴女のように夢を叶えられませんでしたが、吾輩も仕事に生きる道を見つけました。これから、上手く交際が続けば仕事の苦労があってもお互いに支えられる関係になれるといいですね」

「はい!」

私は彼になら社会という戦いの場で背中を預けられる予感を感じて、彼とのお見合いを受けてよかったと思った。

食事の後は買い物をしたり楽しい時間を過ごしました。
帰り道に公園に立ち寄りベンチに座っている時にふいにキスされた。
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