魔法家具屋のサラさんは

からどり

文字の大きさ
2 / 3

1−2

しおりを挟む
キスをされたと意識した途端に顔が熱くなって耳まで熱を持ってジンジンとしてきたわ。

「すみません。急にこんなことをして。嫌なら拒否してください」

「突然で驚きましたが、お見合いから交際をする意味は知っています。でも、会ったばかりなのに……」

「一緒に見た映画で『愛に時間は関係ない』という言葉がありました。私はレストランで仕事や趣味を生き生きと話す貴女をもっと見ていたいと思ったんです。そしてできれば恋人、いえ生涯の夫として独占したいとも。だから、ああ、これじゃあ束縛したいと言っているのと一緒だ」

私は嬉しくて涙が出てきた。この人と一緒になりたい。私も、彼と一緒にいたいと心から思っていることをはっきり自覚している。

「その言葉に『時間を重ねた愛は何よりも強い』と返事をしたんですよね。私も同じ気持ちです。結婚を前提にお付き合いをお願いします」

こうして本当の交際が始まって、この2か月後に婚約を結んだの。】

******

「と、いうわけなんです。あの時は本当にびっくりしましたけど、あの時の感動は今でも忘れられません。あの人は仕事人間で仕事以外は何も興味がないと思っていたんですけど、彼も剣術を覚えて一緒にモンスターを退治してくれるようになりましたし、公私ともに背中を預けられる仲になりましたのよ。それに彼って想いが昂じると気持ちを秘めておけなくて、いままで私は三回もプロポーズされたんです!うふふっ! 私は彼のことが大好きですし、今も変わらず優しくて愛情を注いでくれるから彼も私が大好きなのを感じています。私は彼が浮気するなんて考えられませんもの。だから貴女がジェフリーの浮気相手とおっしゃられても困りますわ」


突然、アポイントも無しで私の会社に来られたお嬢さんとその御友人。お嬢さんがジェフェリーの真の恋人だと言うので、会社の会議室を借りてこうしてお話し合いをすることになりました。

「彼は貴女と別れたいとずっと言っているんです!どうか彼を開放してください!」と御友人と揃って頭を下げるので、私は見聞きし、感じたことをありのままお伝えしたのでした。

「……そんな……」

御友人の顔が青ざめています。お嬢さんが付き合っている『ジェフェリー』という男性と名前が同じで、お嬢さんと付き合っているジェフェリーと私の婚約者のジェフェリーが違う人だといち早く気づかれたのでしょうね。
勘違いは誰にでもあるとはいえ、強大な敵と戦う前にじっくり挑む相手を調べておかないと返り討ちにあうことも知らないのでしょう。モンスター退治は社会で渡り歩くための人間関係の構築に通ずるところが多くありますから、体育などで必須授業にしても良いとおもうのですけども……。

「貴女が真に愛する人が誰なのか、誰と付き合い、何を思っているのか、よく考えてください。貴女は、どうしたくて、何を思って、ここに来たのですか?私はこれ以上、お話しすることはありません。仕事もありますし、お引き取りください」

ここは年上としてしっかり世間の厳しさを教えておかないといけないわ。若いのだし、失敗した時に反省することが大事なのよ。

「おい!サラ!時間だ!途中でも切り上げろ!今から骨骨集団と戦闘なんだぞ」

「あら、ごめんなさい。今行きます」

ちょうど良いタイミングで父である社長が呼びに来てくれましたわ。

「では失礼いたします。お帰りは気をつけてくださいね」

「ま、待ってよ!貴女が一方的に話しただけで話は終わってないわ!」

「サラ~!早くお客様に帰ってもらいなさい!あと二分で転移魔法が発動するわよ!」

専務である母も会議室に来ました。手には私の装備一式を持っています。もう準備できる残り時間がわずかなので助かります。

「ありがとうございます。お母、じゃなくて専務。さあ、おふたりともお帰りくださいね。これから店ごと戦場に突入いたしますから。移動してからでは命の保証はできませんよ」

私は母から鎧とショートソードを受け取り装備をつけていきます。

「ね、ねえ、帰ろうよ。なんかオカシイよ。なんでこの人達、鎧着だしたのよ」

「ココまで来て引き返せないわ!彼の心は私のものよ!」

「おい!お嬢さん方よ!早く帰りな!足手まといだ!」

「サラ!お客さんを追い出しときなよ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

前世を越えてみせましょう

あんど もあ
ファンタジー
私には前世で殺された記憶がある。異世界転生し、前世とはまるで違う貴族令嬢として生きて来たのだが、前世を彷彿とさせる状況を見た私は……。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...