【完結】前提が間違っています

蛇姫

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前提が間違っています

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「アンタが私を虐めないとシナリオが進まないでしょう!?悪役令嬢なんだから私をちゃんと虐めてよね!分かった!?」

ピンク頭の子爵令嬢は銀髪の公爵令嬢に意味不明なことを言うと、走り去った。

(何あれ?)

銀髪の公爵令嬢ルナリア・ドラグーンは困惑した。
自分が転生したことは5歳の時に自覚したが、この世界が乙女ゲームに酷似した世界だという認識はなかった。
なぜなら彼女は一度も乙女ゲームをしたことがなかったからだ。
シナリオといわれても全く分からない。
攻略対象が誰かでさえも分からない。

(ごめん、本当に分からない)

彼女も前世においてはオタクの部類に入るタイプだったため、何となく高位貴族とか王族が攻略対象だろうなぁ……くらいの認識はある。
それ以上を求められても何もする気はないけれど。

二人のそんなやり取りを影から見つめる女子生徒が一人。彼女こそが王太子妃その人である。
【転生ヒロイン】が喚くべき本当の相手。
しかし面倒事が大嫌いな公爵令嬢は教えない。
何もしないし何も言わない。
ピンク頭のいう【攻略対象】の中に公爵令嬢の婚約者は含まれておらず、ピンク頭の好みでもなかった。
要するに牽制する理由がないのである。

「あらあら、困ったこと」

【転生辺境伯爵令嬢】は微笑んだ。
王太子妃としてふさわしい対応をしなくては……と。

【転生悪役令嬢】はこの時になってようやく理解した。
前世の記憶を取り戻すきっかけとなった事件は、前世の記憶……それも乙女ゲームの記憶を持った女の子によるものだったのだと。
誰が自分を突き落としたのかを知っていた。
けれど面倒事を請け負ってくれる彼女に感謝した。
それはすべてを知った今でも変わらない。

【転生ヒロイン】は気が付かなかった。
この世界がすでに彼女の知る乙女ゲームの世界とは大きく異なる世界であることに。
前提が全く異なる世界において、彼女の知る知識など何の役にも立ちはしない。
だから彼女はバッドエンドに突き進む。
本人が気付かない程ゆっくりと……。

【転生辺境伯爵令嬢】は思った。
最推しの王太子様と添い遂げることが出来るなら、どんな困難にも打ち勝ってみせると。
たとえ誰を犠牲にしたとしても………。
だから公爵令嬢を湖に突き落とした。
周囲に誰もいないのは確認済みだ。
生き延びたことは誤算だったが、前世の記憶を取り戻した【転生悪役令嬢】は王太子にかけらも興味を示さない。
これ以上の手出しは不要と判断した。
その判断は非常に正しかった。
まさに次代を担う王妃にふさわしい洞察力である。

これは彼女たちそれぞれの視点から紡ぐ物語。









    
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