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転生悪役令嬢は乙女ゲームをしたことがない
湖に突き落とされました
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「貴女に王太子殿下は渡さないわ!」
そんな声が背後から聞こえた瞬間、ドンッという衝撃と共に銀髪の少女は湖に落ちた。
ドレスが水を吸い危うく死にかけた時、バシャンッという音と共に引き上げられる。
王城での出来事であったため箝口令が敷かれたが、犯人は招かれた少女たちの誰かだという。
周囲が慌ただしくしている間に、銀髪の少女の意識は遠のいていった。
少女は気がつけば王城のベッドの上にいた。
湖に落とされ死にかけたことで、前世の記憶が呼び起こされた私は、現状把握に努めている。
前世の私と違って、今の私はどうやら天才の部類らしい……というのも、理解力が尋常ではない。
1つ目、これは個人的な疑問なのだが、なぜ王城の敷地内に湖があるのか……という点だ。
広いからでは説明しづらい案件ではあるけれど、成長すれば国の歴史とかで学ぶ機会があるかもしれないので、この疑問は保留にしておこう。
2つ目、私はどうやら前世の記憶と引き換えに、今の私の記憶を失ってしまったらしい。
自分の手を見る限り、5歳前後だろうことは理解できるが、今の私の年齢が5歳であるなら幸運だろう。
記憶が無いとしても大した問題にはならない。
3つ目、これが最大の問題なのだけれど、責任を取らされて王族と婚約する運びになる可能性があること。
前世からのコミュ症である私にとって、これだけはご遠慮願いたい案件だ。
王城にいたということは、貴族であることに間違いないだろうから、当主の判断に委ねるしかないのが悩ましいところである。
(最終手段としてシスターになる道もある)
私は必要のない紳士的対応とやらで、王太子妃教育を受けたくないし、絶対に頑張れません。
前世では私も三十路。当然ながら知っています。
王族といえばコミュニケーション能力が大いに試される尊い存在ではないですか!
前世の記憶を取り戻した今の私は「一応は返事だけはできます」レベルの重度のコミュ症です。
この時点で王族の婚約者は無理でしょう!?
挨拶は出来るけれど緊張で【無】になるんです!
全力で私は大丈夫ですアピールをしなければ!
今後について必死で考えを巡らせていた時だった。
扉が開かれ、メイドさん達が入ってきたのは。
三人のメイドさんと目が合った……そして、なぜか三人とも涙ぐみながら口に手を添えている。
三人は同時に口を開いた。
「「「ドラグーン公爵令嬢様!」」」
「…………………えっ」
「よ………良かったぁ」
「魔王が………魔王が………」
「二人共、気をしっかりお持ちなさい!」
(もしかしてドラグーン公爵令嬢って私?)
「私は公爵様にお伝えして参ります!」
「では私は両陛下にお伝えを!」
「頼みましたよ、二人共」
そんなに急いで報告しなくても良いのでは?
そんなことより気になる言葉があった。
1つ目は公爵令嬢、2つ目は魔王。
公爵令嬢は今の私の身分であり、その分の重責が私の肩に乗っているということ。
これは胃がすごく痛いけれど理解した。
(魔王って何?その説明はないの?)
「公爵令嬢様、痛む所などはございませんか?」
「………ありません」
「!!」
メイドさんが固まってしまった。
私の方に恐る恐る近づいてきたメイドさんは、私の額に手を添えて言った。
「ね……熱はないようですけれど……」
「どうかしましたか?」
「!!」
また固まってしまった。
何か問題となる発言をしただろうか?
前世の記憶が戻る前の私はどんな奴だったのか……今更ながらすごく気になる。
そんなことを考えていると、王城の廊下を走ってくる音が聞こえてきた。
(王城の廊下を走らないでください)
私が願掛けのように「調度品が壊れませんように」と祈っていると、少し開いていた扉が大きく開かれ、銀髪に紫色の瞳をした美丈夫が現れた。
「ルナ!」
「…………………」
(貴方は誰?ルナって誰?もしかして私がルナ?)
「どなたですか?」
銀髪の美丈夫がこの世の終わりのような顔を一瞬だけしたが、私のことを抱きしめた時には無表情に戻っていた。なんとなく安心する。
「ルナ、記憶がないのか?」
「………ありません」
「そうか」
(あれ?何か声が嬉しそうな気がする)
銀髪の美丈夫が入ってきた扉から、今度は金髪の美丈夫が入ってきた。
例えるなら銀髪の美丈夫は「月」で、金髪の美丈夫は「太陽」といったところ。
金髪の美丈夫が控えていたメイドさんに問いかけた。
「ルナリア嬢の容態はどうなのだ?」
「意識はハッキリしておられるご様子なのですが、医師に診ていただくまではなんとも申し上げられません」
「わかった、医者を手配せよ」
金髪の美丈夫が銀髪の美丈夫に対して、申し訳なさそうに言った。
「ウィル、大切なご息女だというのは理解しておるが、この度の一件は内密に出来ぬか?」
「………王族との婚約は娘が望まぬ限りない方向で」
「ご息女が望めば良いのだな?」
「あくまでも娘の意思を尊重したく思います」
「…………分かった」
(危なかった!セーフ!ギリギリセーフ!)
「ルナリア嬢、儂の息子たちはどうであった?」
「…………息子たち?」
(待って、一人ではないの?)
「…………ウィル」
「……記憶がない」
「何もか?」
「私のことも分からないようだからな」
「…………すまん」
(いいえ、私は寧ろラッキーです!)
「ルナリア嬢、私はこの国の王である」
「…………この国の王様?」
「そうだ」
「ルナ、私はお前のパパだよ」
「…………お父さん?」
「パパだ」
「……………パパ」
父がとても満足げな顔をしている。
その隣で国王陛下が、珍しいものを見たと云わんばかりに面白がっておられる雰囲気から察した。
メイドさんが云っていた「魔王」は父のことだと。
(前世での私に父はいなかったので新鮮かも)
ただ先程から今の私の母の姿を見ていない。
父に聞いてみれば分かるだろうか?
「おと……パパ、お母さんは?」
「……………ママは遠くにいるよ」
「…………………」
(どっち?亡くなってるの?離婚してるの?)
取り合えず浮かんだ疑問は屋敷の雰囲気で分かるとして、どう反応するのが正解なのか分からない。
私は思ったことを率直に口にすることにした。
5歳だからギリギリ許されるはず。
「残念……会いたかった」
「………そうだね、私も会いたいよ」
「…………………」
(ヤバい、この反応は亡くなってるやつだ)
子供の気持ちを考えてくれたのは嬉しいけれど、離婚以外であの言い方は流石に反応に困る!
(とりあえず切り替えていこう!)
「パパ、ママはどんな人?」
「!」
陛下が首を大きく横に振っている。
(もしかして問題発言したの?私)
「や……やっぱり私は」
「ママはね、女神なんだよ」
「……………」
(変なスイッチ入れちゃった)
「出会いは私たちがまだ3歳の頃だった」
「……………」
(え?そこから?そこからなの?)
この後、父による母の「彼女は女神」という話を延々と聞かされた。
聞いたのは私だけれど、3歳の出会いから母が亡くなるまでを嬉しそうに話す父を止められるわけもなく、頑張って聞きました。
気が付けば陛下は椅子に座って半分寝ていた。
「……と、いうわけで簡潔に話すとこんな感じだ」
「ママの素晴らしさがとても伝わってきました」
「そうか」
父が非常に満足げなので何でもいいです。
母の話を父が始めたのが昨日の朝、そして今は一周回って朝になりました。
因みにその間に、私は陛下が手配してくださった医者に診察していただき、記憶喪失以外は特に問題ないとのこと。
湖で溺れかけても問題ない強い身体に産んでくれてありがとう!お母さん!
私は今の私の母に心から感謝した。
朝食を王城で食べさせていただき、私は父が手配した公爵家の馬車で脱出……じゃなく帰ることが出来た。
(一晩を王城で暮らすってこういうことか)
一晩中、母がいかに素晴らしい人であるかを語って聞かせてくれた父は、何か重要な用事があるらしく、少し遅れて帰ってくるとのこと。
(婚約話が消えますように)
私は馬車に揺られながら必死で祈った。
コミュ症の私に王族の婚約者は荷が重いです。
この時の私は知らなかった。
湖に私が突き落とされたその理由を。
なぜ、私でなければならなかったのかを。
そんな声が背後から聞こえた瞬間、ドンッという衝撃と共に銀髪の少女は湖に落ちた。
ドレスが水を吸い危うく死にかけた時、バシャンッという音と共に引き上げられる。
王城での出来事であったため箝口令が敷かれたが、犯人は招かれた少女たちの誰かだという。
周囲が慌ただしくしている間に、銀髪の少女の意識は遠のいていった。
少女は気がつけば王城のベッドの上にいた。
湖に落とされ死にかけたことで、前世の記憶が呼び起こされた私は、現状把握に努めている。
前世の私と違って、今の私はどうやら天才の部類らしい……というのも、理解力が尋常ではない。
1つ目、これは個人的な疑問なのだが、なぜ王城の敷地内に湖があるのか……という点だ。
広いからでは説明しづらい案件ではあるけれど、成長すれば国の歴史とかで学ぶ機会があるかもしれないので、この疑問は保留にしておこう。
2つ目、私はどうやら前世の記憶と引き換えに、今の私の記憶を失ってしまったらしい。
自分の手を見る限り、5歳前後だろうことは理解できるが、今の私の年齢が5歳であるなら幸運だろう。
記憶が無いとしても大した問題にはならない。
3つ目、これが最大の問題なのだけれど、責任を取らされて王族と婚約する運びになる可能性があること。
前世からのコミュ症である私にとって、これだけはご遠慮願いたい案件だ。
王城にいたということは、貴族であることに間違いないだろうから、当主の判断に委ねるしかないのが悩ましいところである。
(最終手段としてシスターになる道もある)
私は必要のない紳士的対応とやらで、王太子妃教育を受けたくないし、絶対に頑張れません。
前世では私も三十路。当然ながら知っています。
王族といえばコミュニケーション能力が大いに試される尊い存在ではないですか!
前世の記憶を取り戻した今の私は「一応は返事だけはできます」レベルの重度のコミュ症です。
この時点で王族の婚約者は無理でしょう!?
挨拶は出来るけれど緊張で【無】になるんです!
全力で私は大丈夫ですアピールをしなければ!
今後について必死で考えを巡らせていた時だった。
扉が開かれ、メイドさん達が入ってきたのは。
三人のメイドさんと目が合った……そして、なぜか三人とも涙ぐみながら口に手を添えている。
三人は同時に口を開いた。
「「「ドラグーン公爵令嬢様!」」」
「…………………えっ」
「よ………良かったぁ」
「魔王が………魔王が………」
「二人共、気をしっかりお持ちなさい!」
(もしかしてドラグーン公爵令嬢って私?)
「私は公爵様にお伝えして参ります!」
「では私は両陛下にお伝えを!」
「頼みましたよ、二人共」
そんなに急いで報告しなくても良いのでは?
そんなことより気になる言葉があった。
1つ目は公爵令嬢、2つ目は魔王。
公爵令嬢は今の私の身分であり、その分の重責が私の肩に乗っているということ。
これは胃がすごく痛いけれど理解した。
(魔王って何?その説明はないの?)
「公爵令嬢様、痛む所などはございませんか?」
「………ありません」
「!!」
メイドさんが固まってしまった。
私の方に恐る恐る近づいてきたメイドさんは、私の額に手を添えて言った。
「ね……熱はないようですけれど……」
「どうかしましたか?」
「!!」
また固まってしまった。
何か問題となる発言をしただろうか?
前世の記憶が戻る前の私はどんな奴だったのか……今更ながらすごく気になる。
そんなことを考えていると、王城の廊下を走ってくる音が聞こえてきた。
(王城の廊下を走らないでください)
私が願掛けのように「調度品が壊れませんように」と祈っていると、少し開いていた扉が大きく開かれ、銀髪に紫色の瞳をした美丈夫が現れた。
「ルナ!」
「…………………」
(貴方は誰?ルナって誰?もしかして私がルナ?)
「どなたですか?」
銀髪の美丈夫がこの世の終わりのような顔を一瞬だけしたが、私のことを抱きしめた時には無表情に戻っていた。なんとなく安心する。
「ルナ、記憶がないのか?」
「………ありません」
「そうか」
(あれ?何か声が嬉しそうな気がする)
銀髪の美丈夫が入ってきた扉から、今度は金髪の美丈夫が入ってきた。
例えるなら銀髪の美丈夫は「月」で、金髪の美丈夫は「太陽」といったところ。
金髪の美丈夫が控えていたメイドさんに問いかけた。
「ルナリア嬢の容態はどうなのだ?」
「意識はハッキリしておられるご様子なのですが、医師に診ていただくまではなんとも申し上げられません」
「わかった、医者を手配せよ」
金髪の美丈夫が銀髪の美丈夫に対して、申し訳なさそうに言った。
「ウィル、大切なご息女だというのは理解しておるが、この度の一件は内密に出来ぬか?」
「………王族との婚約は娘が望まぬ限りない方向で」
「ご息女が望めば良いのだな?」
「あくまでも娘の意思を尊重したく思います」
「…………分かった」
(危なかった!セーフ!ギリギリセーフ!)
「ルナリア嬢、儂の息子たちはどうであった?」
「…………息子たち?」
(待って、一人ではないの?)
「…………ウィル」
「……記憶がない」
「何もか?」
「私のことも分からないようだからな」
「…………すまん」
(いいえ、私は寧ろラッキーです!)
「ルナリア嬢、私はこの国の王である」
「…………この国の王様?」
「そうだ」
「ルナ、私はお前のパパだよ」
「…………お父さん?」
「パパだ」
「……………パパ」
父がとても満足げな顔をしている。
その隣で国王陛下が、珍しいものを見たと云わんばかりに面白がっておられる雰囲気から察した。
メイドさんが云っていた「魔王」は父のことだと。
(前世での私に父はいなかったので新鮮かも)
ただ先程から今の私の母の姿を見ていない。
父に聞いてみれば分かるだろうか?
「おと……パパ、お母さんは?」
「……………ママは遠くにいるよ」
「…………………」
(どっち?亡くなってるの?離婚してるの?)
取り合えず浮かんだ疑問は屋敷の雰囲気で分かるとして、どう反応するのが正解なのか分からない。
私は思ったことを率直に口にすることにした。
5歳だからギリギリ許されるはず。
「残念……会いたかった」
「………そうだね、私も会いたいよ」
「…………………」
(ヤバい、この反応は亡くなってるやつだ)
子供の気持ちを考えてくれたのは嬉しいけれど、離婚以外であの言い方は流石に反応に困る!
(とりあえず切り替えていこう!)
「パパ、ママはどんな人?」
「!」
陛下が首を大きく横に振っている。
(もしかして問題発言したの?私)
「や……やっぱり私は」
「ママはね、女神なんだよ」
「……………」
(変なスイッチ入れちゃった)
「出会いは私たちがまだ3歳の頃だった」
「……………」
(え?そこから?そこからなの?)
この後、父による母の「彼女は女神」という話を延々と聞かされた。
聞いたのは私だけれど、3歳の出会いから母が亡くなるまでを嬉しそうに話す父を止められるわけもなく、頑張って聞きました。
気が付けば陛下は椅子に座って半分寝ていた。
「……と、いうわけで簡潔に話すとこんな感じだ」
「ママの素晴らしさがとても伝わってきました」
「そうか」
父が非常に満足げなので何でもいいです。
母の話を父が始めたのが昨日の朝、そして今は一周回って朝になりました。
因みにその間に、私は陛下が手配してくださった医者に診察していただき、記憶喪失以外は特に問題ないとのこと。
湖で溺れかけても問題ない強い身体に産んでくれてありがとう!お母さん!
私は今の私の母に心から感謝した。
朝食を王城で食べさせていただき、私は父が手配した公爵家の馬車で脱出……じゃなく帰ることが出来た。
(一晩を王城で暮らすってこういうことか)
一晩中、母がいかに素晴らしい人であるかを語って聞かせてくれた父は、何か重要な用事があるらしく、少し遅れて帰ってくるとのこと。
(婚約話が消えますように)
私は馬車に揺られながら必死で祈った。
コミュ症の私に王族の婚約者は荷が重いです。
この時の私は知らなかった。
湖に私が突き落とされたその理由を。
なぜ、私でなければならなかったのかを。
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