【完結】前提が間違っています

蛇姫

文字の大きさ
76 / 95
転生辺境伯令嬢の一途な愛

可愛い義妹

しおりを挟む
 幾ら私にとって都合の良い縁談とはいえ、前例がある以上は確認して於かなければならない大切なことがある。

「一つ目の質問……私の弟を婚約者に選んだ理由は?」
「ひっ……………一目惚れですわ………私の」
「あら、何処に惹かれたのかしら?………ああ、これは質問ではなくてよ?好みの話ですもの」
「………最初は傷跡に一目惚れいたしました」
「それは顔にある大きな傷跡のことかしら?」
「………そう……ですわ」
「………もしかして人と話すことが不得手なのかしら?これも質問ではなくてよ?貴女の状態を観察して導き出した結論の話よ」
「…………前世の時から苦手ですわ」
「そう………そうなの」

 前世の頃から人と話すことが不得手だったのであれば、是が非でも王妃の座は遠慮したいと言ったところかしら?
 彼女が婚約を回避した理由が【コミュ症だから】だとすると、悪役令嬢になりたくなくて婚約を回避したわけではない可能性が出てきたわね……。念の為に確認をしておいても損はないわね。

「二つ目の質問………貴女この世界についてご存知?」
「えっ……………この世界?」
「あら、てっきりご存知だから回避したのかと……」
「回避?」
「フフッ……此方の話よ。ご存知でないのなら構わないわ」

 彼女が【乙女ゲーム】を全く知らないことは瞳を見れば分かる。だって、激しく動揺しているもの。これが演技だというのなら、寧ろ【天晴】と褒め称えたいくらいだわ。

「安心なさって?弟と婚姻するのなら問題ないわ」
「よ………よかった………わ」

 あら、本気で弟と婚姻するつもりでいるのね。これまで半信半疑だったことを謝罪したい気分だわ。

「最後の質問………これは前提が壊れてしまったのだから本来なら必要ないのだけれど………念の為……ね?」
「……………………」
「貴女にとって王太子殿下はどのような方?ああ……社交辞令は要らなくてよ?私は貴女の本心を把握しておきたいのよ」
「臣下としての意見なら【心から尊敬と忠誠を捧げるに相応しいお方】でございますけれど、個人的な意見としましては【正統派王子様は好みではない】ですわね」
「…………フフッ、確かに貴女が一目惚れした私の弟は【正統派王子様】では無いわね」
「素敵な方ですよね!ヴォルフ様は!」
「ええ………貴女と私の好みは違うようで安心したわ。私……前世から同担拒否なのですもの」
「な………成る程」
「本当に良かったわ………そろそろ帰りましょう?貴女のことを知れたことが一番の収穫よ」
「そ………それは何より」

 私はルナリアさんと道中を引き返しながら、彼女に泉を見せる機会が訪れなかったことに安堵した。
 此処まで趣味が違う相手も珍しいけれど、一般的に弟は怖がられる顔をしていると思うのだけれど……姉としては喜ばしい誤算ね。

 弟がお父様に羽交い締めにされながら何事かを叫んでいるけれど、どうでも宜しいことを聞き流すのは得意なのよ。
 ルナリアさんを心配する気持ちは……間違いではないけれど、戻ってきたのだから結果的には何事も無かった事になるわよね?
 私は自分本意な生き方をしてきたの。この生き方を変えるつもりは毛頭ない。自分の為に多くを犠牲にするのだから、その責任を負う覚悟くらいあるわよ。

「あらあら………困ったこと」
「!!」

 ヴォルフ……ルナリアさんとの大切な時間を無駄に浪費するなど許さないわよ。彼女の記憶は近々戻る。
 私の勘が外れたことは前世を含めて一度も無いわ。
 彼女は私が犯人であることを吹聴しないばかりか、まるで共犯者のように私を護ろうとするでしょう。
 自分が王妃にならなくて良い最善策に、私を選んだことを……絶対に後悔させませんわ。
 貴女は私の可愛い義妹………敵では無いわ。
 私を恐れても宜しい。その権利が貴女にだけはあるのだから。その変わり、貴女に王妃の座が転がり込まないよう、私が防波堤になりましょう。……私にとっても利益しかございませんもの……ね?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!

みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。 彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。 ループから始まった二周目。 彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。 「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」 「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」 淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。 未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。 これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。 「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」 (※カクヨムにも掲載中です。)

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

処理中です...