【完結】前提が間違っています

蛇姫

文字の大きさ
77 / 95
転生辺境伯令嬢の一途な愛

恋愛事は好きなのよ

しおりを挟む
 私の声に反応したのか、或いはルナリアさんの気配を敏感に察知したのか、何れにしてもヴォルフの反応が犬っぽくて面白いこと。

「………………よかった」
「?」
「おかえり、ルナ」
「た……ただいま帰りましたわ、ヴォルフ様」

 ルナリアさんには何のことだか分かっていない様だけれど、ヴォルフにしてみれば、私は確かに悪者ね。
 とはいえ、何時まで抱きしめいているのかしら?時間は有限なのよ?婚約者との交流は大切にして欲しいわね。

「あら、ヴォルフ。私に取られるとでも思ったのかしら?安心して?ルナリアさんとは本当にお話がしたかっただけなの。どうして私の弟を婚約者に選んだのか………不思議だったのですもの」
「!!」

 あら、私が思っている以上に相思相愛な関係を築けているということかしら?それは……嬉しい誤算ね。

「ルナリアさんと私の趣味嗜好が異なるからといって、一目惚れするわけが無いと思ってしまったのよ。ごめんなさいね?」
「……………………」

 そうよね?……あの子なんて貴男の傷跡を見た瞬間に「化け物」と叫んでいたもの。信用しろという方が無理があるわ。

「蓋を開けてみれば本当にただの一目惚れなんですもの。悪いことを聞いてしまったと後悔しているのよ?」
「ルナ………そうなの?」

 ルナリアさん限定の仔犬がいるわ。アル様にあの顔をされては、私でも頷く以外の選択肢など無いというのに、確信犯かしら?

「お義姉様…………」
「あら?口止めしない貴女がいけないのよ?」
「!!」

 口をパクパクさせて……まるで金魚のよう。とても可愛らしいと思うけれど、少し意地悪だったかしら?

「僕に一目惚れしたのは本当なんだね?」
「き………傷跡に………ですわ」
「フフッ………嬉しいよ、僕のルナ」
「!!」

 面白いこと。あの子に対するアレがヴォルフの初恋なのだと思っていたけれど、この反応から察するに違ったみたいね。

「ヴォルフに朗報ですわ」
「何かな?姉さん」
「ルナリアさんは【正統派王子様は好みではない】と断言なさいましたわ。憂いは無くなったのではなくて?」
「…………姉さんの好みとは大きく外れるね」
「ええ、私も嬉しいわ」
「僕も安心だよ」

 私も(危ない橋を渡らずに済んで)本当に良かったと思っているわ。此処まで趣味が違うと寧ろ親友にでもなれそうな気分よ。
 残念なことに、其処まで図々しくはなれないけれど。

「二人共、ルナリアさんをお待たせしてどうするの?今日は大切な婚約者交流の日でしょう?」
「あら、そうね。二人の仲が深まるのは良いことだもの。ルナリアさん、ヴォルフを宜しくお願いね?」
「ええ……お義姉様、勿論ですわ」
「フフッ、貴女が義妹になってくれるのは心強いことだもの」
「………………」

 それから私達は屋敷に戻り、二人の邪魔をしないよう見守った。邪魔はしていないわよ?見守っていただけ。
 時間は瞬く間に過ぎていき、ルナリアさんが帰る時間になったのだけれど、何度も「来るな」と念を押されれば、行きたくなるのが人の性。二人の様子を最後まで観察しようと後を付けた。

 嫌だわ、門の前に羽虫が居るなんて。早く追い払って欲しいわ。
 ヴォルフが追い払うようだけれど、先んじて羽虫に関する情報を耳に入れておくべきよね。
 そう思った私は、最後までは見届けず屋敷の方へと踵を返した。

 羽虫は煩わしくて嫌いだわ。お父様はどうなさるのかしら?
 私ならば、巣ごと撤去しなければ気が済まないのだけれど、お父様はお優しいから……巣は残して差し上げるのかしら?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。

腐ったバナナ
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、魔力を持たないという理由で、夫である侯爵エドガーから無能な妻と蔑まれる日々を送っていた。 魔力至上主義の貴族社会で価値を見いだされないことに絶望したアリアンナは、ついに離婚を決断。 多額の慰謝料と引き換えに、無能な妻という足枷を捨て、自由な平民として辺境へと旅立つ。

【完結】王太子妃候補の悪役令嬢は、どうしても野獣辺境伯を手に入れたい

たまこ
恋愛
公爵令嬢のアレクサンドラは優秀な王太子妃候補だと、誰も(一部関係者を除く)が認める完璧な淑女である。 王家が開く祝賀会にて、アレクサンドラは婚約者のクリストファー王太子によって婚約破棄を言い渡される。そして王太子の隣には義妹のマーガレットがにんまりと笑っていた。衆目の下、冤罪により婚約破棄されてしまったアレクサンドラを助けたのは野獣辺境伯の異名を持つアルバートだった。 しかし、この婚約破棄、どうも裏があったようで・・・。

【完結】婚約を解消されたら、自由と笑い声と隣国王子がついてきました

ふじの
恋愛
「君を傷つけたくはない。だから、これは“円満な婚約解消”とする。」  公爵家に居場所のないリシェルはどうにか婚約者の王太子レオナルトとの関係を築こうと心を砕いてきた。しかし義母や義妹によって、その婚約者の立場さえを奪われたリシェル。居場所をなくしたはずの彼女に手を差し伸べたのは、隣国の第二王子アレクだった。  留学先のアレクの国で自分らしさを取り戻したリシェルは、アレクへの想いを自覚し、二人の距離が縮まってきた。しかしその矢先、ユリウスやレティシアというライバルの登場や政治的思惑に振り回されてすれ違ってしまう。結ばれる未来のために、リシェルとアレクは奔走する。  ※ヒロインが危機的状況に陥りますが、ハッピーエンドです。 【完結】

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】婚約破棄したのに「愛してる」なんて囁かないで

遠野エン
恋愛
薔薇の散る夜宴――それは伯爵令嬢リリーナの輝かしい人生が一転、音を立てて崩れ落ちた始まりだった。共和国の栄華を象徴する夜会で、リリーナは子爵子息の婚約者アランから突然、婚約破棄を告げられる。その理由は「家格の違い」。 穏やかで誠実だった彼が長年の婚約をそんな言葉で反故にするとは到底信じられなかった。打ちひしがれるリリーナにアランは冷たい背を向けた直後、誰にも聞こえぬように「愛してる」と囁いて去っていく。 この日から、リリーナの苦悩の日々が始まった。アランは謎の女性ルネアを伴い、夜会や社交の場に現れては、リリーナを公然と侮辱し嘲笑する。リリーナを徹底的に傷つけた後、彼は必ず去り際に「愛してる」と囁きかけるのだ。愛と憎しみ、嘲りと甘い囁き――その矛盾にリリーナの心は引き裂かれ、混乱は深まるばかり。 社交界の好奇と憐憫の目に晒されながらも、伯爵令嬢としての誇りを胸に彼女は必死に耐え忍ぶ。失意の底であの謎めいた愛の囁きだけがリリーナの胸にかすかな光を灯し、予測不能な運命の歯車が静かに回り始める。

ゲームのシナリオライターは悪役令嬢になりましたので、シナリオを書き換えようと思います

暖夢 由
恋愛
『婚約式、本編では語られないけどここから第1王子と公爵令嬢の話しが始まるのよね』 頭の中にそんな声が響いた。 そして、色とりどりの絵が頭の中を駆け巡っていった。 次に気が付いたのはベットの上だった。 私は日本でゲームのシナリオライターをしていた。 気付いたここは自分で書いたゲームの中で私は悪役令嬢!?? それならシナリオを書き換えさせていただきます

天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~

キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。 事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。 イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。 当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。 どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。 そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。 報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。 こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

処理中です...