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転生辺境伯令嬢の一途な愛
恋愛事は好きなのよ
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私の声に反応したのか、或いはルナリアさんの気配を敏感に察知したのか、何れにしてもヴォルフの反応が犬っぽくて面白いこと。
「………………よかった」
「?」
「おかえり、ルナ」
「た……ただいま帰りましたわ、ヴォルフ様」
ルナリアさんには何のことだか分かっていない様だけれど、ヴォルフにしてみれば、私は確かに悪者ね。
とはいえ、何時まで抱きしめいているのかしら?時間は有限なのよ?婚約者との交流は大切にして欲しいわね。
「あら、ヴォルフ。私に取られるとでも思ったのかしら?安心して?ルナリアさんとは本当にお話がしたかっただけなの。どうして私の弟を婚約者に選んだのか………不思議だったのですもの」
「!!」
あら、私が思っている以上に相思相愛な関係を築けているということかしら?それは……嬉しい誤算ね。
「ルナリアさんと私の趣味嗜好が異なるからといって、一目惚れするわけが無いと思ってしまったのよ。ごめんなさいね?」
「……………………」
そうよね?……あの子なんて貴男の傷跡を見た瞬間に「化け物」と叫んでいたもの。信用しろという方が無理があるわ。
「蓋を開けてみれば本当にただの一目惚れなんですもの。悪いことを聞いてしまったと後悔しているのよ?」
「ルナ………そうなの?」
ルナリアさん限定の仔犬がいるわ。アル様にあの顔をされては、私でも頷く以外の選択肢など無いというのに、確信犯かしら?
「お義姉様…………」
「あら?口止めしない貴女がいけないのよ?」
「!!」
口をパクパクさせて……まるで金魚のよう。とても可愛らしいと思うけれど、少し意地悪だったかしら?
「僕に一目惚れしたのは本当なんだね?」
「き………傷跡に………ですわ」
「フフッ………嬉しいよ、僕のルナ」
「!!」
面白いこと。あの子に対するアレがヴォルフの初恋なのだと思っていたけれど、この反応から察するに違ったみたいね。
「ヴォルフに朗報ですわ」
「何かな?姉さん」
「ルナリアさんは【正統派王子様は好みではない】と断言なさいましたわ。憂いは無くなったのではなくて?」
「…………姉さんの好みとは大きく外れるね」
「ええ、私も嬉しいわ」
「僕も安心だよ」
私も(危ない橋を渡らずに済んで)本当に良かったと思っているわ。此処まで趣味が違うと寧ろ親友にでもなれそうな気分よ。
残念なことに、其処まで図々しくはなれないけれど。
「二人共、ルナリアさんをお待たせしてどうするの?今日は大切な婚約者交流の日でしょう?」
「あら、そうね。二人の仲が深まるのは良いことだもの。ルナリアさん、ヴォルフを宜しくお願いね?」
「ええ……お義姉様、勿論ですわ」
「フフッ、貴女が義妹になってくれるのは心強いことだもの」
「………………」
それから私達は屋敷に戻り、二人の邪魔をしないよう見守った。邪魔はしていないわよ?見守っていただけ。
時間は瞬く間に過ぎていき、ルナリアさんが帰る時間になったのだけれど、何度も「来るな」と念を押されれば、行きたくなるのが人の性。二人の様子を最後まで観察しようと後を付けた。
嫌だわ、門の前に羽虫が居るなんて。早く追い払って欲しいわ。
ヴォルフが追い払うようだけれど、先んじて羽虫に関する情報を耳に入れておくべきよね。
そう思った私は、最後までは見届けず屋敷の方へと踵を返した。
羽虫は煩わしくて嫌いだわ。お父様はどうなさるのかしら?
私ならば、巣ごと撤去しなければ気が済まないのだけれど、お父様はお優しいから……巣は残して差し上げるのかしら?
「………………よかった」
「?」
「おかえり、ルナ」
「た……ただいま帰りましたわ、ヴォルフ様」
ルナリアさんには何のことだか分かっていない様だけれど、ヴォルフにしてみれば、私は確かに悪者ね。
とはいえ、何時まで抱きしめいているのかしら?時間は有限なのよ?婚約者との交流は大切にして欲しいわね。
「あら、ヴォルフ。私に取られるとでも思ったのかしら?安心して?ルナリアさんとは本当にお話がしたかっただけなの。どうして私の弟を婚約者に選んだのか………不思議だったのですもの」
「!!」
あら、私が思っている以上に相思相愛な関係を築けているということかしら?それは……嬉しい誤算ね。
「ルナリアさんと私の趣味嗜好が異なるからといって、一目惚れするわけが無いと思ってしまったのよ。ごめんなさいね?」
「……………………」
そうよね?……あの子なんて貴男の傷跡を見た瞬間に「化け物」と叫んでいたもの。信用しろという方が無理があるわ。
「蓋を開けてみれば本当にただの一目惚れなんですもの。悪いことを聞いてしまったと後悔しているのよ?」
「ルナ………そうなの?」
ルナリアさん限定の仔犬がいるわ。アル様にあの顔をされては、私でも頷く以外の選択肢など無いというのに、確信犯かしら?
「お義姉様…………」
「あら?口止めしない貴女がいけないのよ?」
「!!」
口をパクパクさせて……まるで金魚のよう。とても可愛らしいと思うけれど、少し意地悪だったかしら?
「僕に一目惚れしたのは本当なんだね?」
「き………傷跡に………ですわ」
「フフッ………嬉しいよ、僕のルナ」
「!!」
面白いこと。あの子に対するアレがヴォルフの初恋なのだと思っていたけれど、この反応から察するに違ったみたいね。
「ヴォルフに朗報ですわ」
「何かな?姉さん」
「ルナリアさんは【正統派王子様は好みではない】と断言なさいましたわ。憂いは無くなったのではなくて?」
「…………姉さんの好みとは大きく外れるね」
「ええ、私も嬉しいわ」
「僕も安心だよ」
私も(危ない橋を渡らずに済んで)本当に良かったと思っているわ。此処まで趣味が違うと寧ろ親友にでもなれそうな気分よ。
残念なことに、其処まで図々しくはなれないけれど。
「二人共、ルナリアさんをお待たせしてどうするの?今日は大切な婚約者交流の日でしょう?」
「あら、そうね。二人の仲が深まるのは良いことだもの。ルナリアさん、ヴォルフを宜しくお願いね?」
「ええ……お義姉様、勿論ですわ」
「フフッ、貴女が義妹になってくれるのは心強いことだもの」
「………………」
それから私達は屋敷に戻り、二人の邪魔をしないよう見守った。邪魔はしていないわよ?見守っていただけ。
時間は瞬く間に過ぎていき、ルナリアさんが帰る時間になったのだけれど、何度も「来るな」と念を押されれば、行きたくなるのが人の性。二人の様子を最後まで観察しようと後を付けた。
嫌だわ、門の前に羽虫が居るなんて。早く追い払って欲しいわ。
ヴォルフが追い払うようだけれど、先んじて羽虫に関する情報を耳に入れておくべきよね。
そう思った私は、最後までは見届けず屋敷の方へと踵を返した。
羽虫は煩わしくて嫌いだわ。お父様はどうなさるのかしら?
私ならば、巣ごと撤去しなければ気が済まないのだけれど、お父様はお優しいから……巣は残して差し上げるのかしら?
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