【完結】前提が間違っています

蛇姫

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転生辺境伯令嬢の一途な愛

家族会議

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 ルナリアさんを見送った後、羽虫を引き渡した様だけれど、未だに婚約者気取りで我が家に押しかけるだなんて、随分と軽んじられたものね。不愉快だわ。
 貴族は軽んじられれば終わりと言うけれど、それは少し違うと思うの。だって…そうでしょう?
 軽んじられた所で、適切に対処すれば宜しいだけのこと。
 終わったりなどしないわ。終わるのは……軽んじた方なのですもの。さて、羽虫の駆除をどうするか……楽しい家族会議の時間ね。

「例の女が…婚約者気取りで我が家の門を潜ろうとしました」
「あら、怖いわね。ルナリアさんに怪我は?」
「…………無いよ」

 あら、残念。公爵令嬢に怪我でも負わせたとあっては、その場で一族郎党に罪を問えるというのに。
 怖い顔ね。私が自分の意志でルナリアさんを傷付けることなど二度としないわよ。
 人間は損得感情で動くものなのよ?どれほどの美談も結局は自分にとって、その行為が損か得かで動いているの。
 意識して動けば「偽善者」で、無意識ならば「心が美しい」なんて巫山戯ているわ。どちらも同じことなのに。
 話が脱線したわね、私の悪い癖。
 今は羽虫の駆除をどうするか考えているところだったわね。

「安心したわ、怪我をしていたら大変だもの(羽虫が)」

 話し合いの末、羽虫には引取先を用意して差し上げることで満場一致したのだけれど、羽虫の巣に関しては、お父様と私たちで話が割れてしまったのよね。
 お父様曰く「撤去される巣を気にするな」ですって。
 本当に、お父様はお優しいわね。要するに「平民になる連中にまで手を出してやるな」という意味なのでしょう?
 それで終わらせて差し上げるなんて、お優しいという他に何があるというのかしら?

「ふふっ、私の旦那様は優しくて素敵でしょう?」

 娘に惚気ないで欲しいわね。お父様がお優しい方であるのは認めるけれど、素敵なのはアル様だけで、他の殿方は例え家族であっても論外よ。お母様も私と同類でしょう?

「……そうですわね、お父様はお優しいわ」

 私の返答に満足したお母様は、不安気な顔でお父様に進言した。

「撤去されるまでは不安で眠れそうにないわ」
「!!」

 その言葉だけで、お父様の顔色が一瞬にして青褪めるのだから、お母様は直ぐにでも女優に転身できると思うわ。

「それは良くない!」

 先程までは「羽虫の巣には何もしない」で纏まりかけていた案件が、一瞬にして「羽虫の巣も即時撤去」という案にすり替わるのだから、我が家の黒幕はお母様で間違いないわね。
 満足そうに微笑むお母様を見倣って、私も淑女の嗜みを学んでいく所存よ。……お母様は怒る所が人と違うのだもの。
 ルナリアさんを湖に突き落とした時だって、突き落とした事ではなくて、どうして自分で行動したのかと叱られたわ。
 尤も…お母様が私を叱った事実は誰も知らないけれど。

「先ずは羽虫の引取先を考えるとしよう!」

 こうして、婚約者気取りの羽虫とその巣は、学園が始まる前に、貴族名鑑から消えていった。
 いつ没落しても不思議はない子爵家が一つ消えたからといって、騒ぎ立てる者はいない。……当然よね?

 ルナリアさんは、暫くの間…羽虫の存在を不安に思っていた様だけれど、姿を見せなくなったからなのか、自然と頭の片隅から消えていったらしいわ。
 らしい……というのは、ルナリアさんが総ての記憶を取り戻して以降、私を怖がっていたからなのだけれど、怖がるだけで実害は無いのよね。寧ろ、アル様と婚約する手助けまでしてくれたみたい。
 ルナリアさんって………凄く……ユニークな子なのね。
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