状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

文字の大きさ
30 / 197
状況の人、異世界へ転移する

状況の人、依頼を受ける5

しおりを挟む
「でも、どうせ何もできない連中じゃない? 村に逃げ帰って、あたしたちの事を話したって邪魔しようにも、そんな余裕も無いと思うんだけど」
「それだと火竜を始末出来なきゃ、俺たちはともかくイーナさんの立場が無くなるよ。監視者のスキを突いての速やかな潜入・奇襲による短期決戦、これで行くしかないな。よし、イーナさん?」
「は、はい」
「先に言っておく。やるからには俺たちは全力を尽くすつもりだけど、結果として計画通りに行かなかった場合、俺たちは即座に撤退を選ぶ。もし、そうなったとしても恨みっこ無しでお願いしたい」
「……」
「詳しくは言えないが、俺たちには何より優先しなければならない事情があるもんでね、それだけは覚悟してくれ。その代わり成功不成功に関わらず、君たちからの報酬は一切受け取らない」
「そ、そんな。どうして? それじゃタツミさんたちが丸損で……」
「詳しくは言えないと言ったろ? あと、エミちゃんを救出できたとしてもやはり俺たちはそのまま現場を去る。君とも会わない。これが今回の依頼を受ける条件だ」
「で、でも……」
「駆け出しのあたしたちにとっては、そうね……竜退治も修行の一環……ま、そんな風にでも思っててちょうだい」
「ヨウコさん……」
「じゃあ、早速ここを撤収して現場に向かおう。出来るだけ早く現地の情報が欲しいからな」
「服も乾いてるわ。イーナさん、すぐに着替えてね? はい、シノさん回れ右!」
 シャキン!
「ちょ! 回れ右はいいけど、なんで拳銃の薬室チャンバーに弾込めてんだよ! 何か? 俺が彼女の着替えを覗くとでも思ってんのか!?」
「大丈夫よ。結果はシノさんの態度しだいだから」
 洋子は龍海の身体を無理やり180°回転させ、自分とイーナに背を向けさせた。
「どこが大丈夫だよ! 危ねぇよ! 銃口、背中に当たってるじゃないか!」
「当ててんのよ」
「違ーう! 『当ててんのよ』はそういう使い方じゃ無ぇー!」
 当てるならもっと柔らかいものだろ~! 柔らかいものを当ててぇ! そんな固くて物騒なもの当てないで―!
 龍海の魂の叫びが荒野に木霊した、ような気がした。



 その後すぐに出発した龍海たち一行は目算通り、日没前に火山の麓に到着した。
 イーナに示された件の火山は大した標高は無く、例の洞窟も説明された通りの位置に有る。
「大きな洞窟ね。もしかして火口?」
「マグマの状況次第で横に吹き出しちゃうってのはあるらしいけど、浸食や崩落で出来たか……まあその辺どうでもいいわな。高さは約17~18m、幅も10mくらいはあるか?」
 龍海と洋子は麓から数百m離れた岩場の陰から双眼鏡を覗きながら現場を確認していた。既に火竜を見張るための村人が二人、洞窟に続く道の近くに張り付いている。
「イーナさんの言った通りね。もう、見張りが来てる」
「エミちゃんが来るまでに仕掛けるってのは出来んか……あの見張りはいつ村に戻るんだろう?」
「おそらくエミが洞窟内に入ることを確認してから……だと思いますわ」
の戦力が不明での、ぶっつけ本番……分が悪いなぁ」
 龍海の大きな嘆息。
「あ、あの……」
 そんな龍海に不安そうな顔をするイーナ。だが洋子は、
「大丈夫よ。ここまで来て投げ出したりはしないから」
とイーナの肩をポンポンと叩いた。
 ――随分と肝が据わってきたな……
 涙目で震えていたあの日から僅か一週間程度、今の洋子は火竜との戦いを全然恐れていないようにすら見える。
 勇者の素質が目覚めてきた――と好意的に見るならそんなところだろうか? それともゴブリンを射殺したことで何かを吹っ切ってしまったか? 
 とは言え自分とて、モンスターとしては最強級なのが相場のドラゴンと戦うというのにあまり緊張を感じていない。携帯対戦車弾LAMの様な近代戦車をも屠れる武器が出せる、というのもあるだろう。
 ――補給処デポで実弾の搬入を手伝った時に触れただけなんだけどな……
 因みに似た用途の84mm無反動砲などは、火器班等で修理に回ってきた実物に触れる機会は多かったが砲弾を触った事が無いので再現できない、と言うか砲本体だけ再現できても使い様が無いのである。
 散弾にしても出せるのはグァムで撃ったバードショットとOOバックの2種類だけで、大型野獣用の一発弾であるスラッグ弾は出せない。撃った事も触った事も無いからだ。
 閑話休題。
「よし、これで場所は分かったし状況も概ね掌握出来たな。じゃあイーナさんはもう村に帰りなよ」
「え!? で、でも!」
「朝から俺たちの所へ来てたんだろ? 家族が心配してるはずだよ。何よりエミちゃんがね」
「……」
「エミちゃんは今日が家族との最後の日だと思ってるんだろ? 行ってあげな。あ、でも俺たちが動く事は言っちゃだめだよ? どこからか村民に漏れて邪魔されるかもしれないからね」
「は、はい……」
「成功、祈っててね」
 洋子が微笑んで語り掛ける。
「タツミさん、ヨウコさん……私の無茶な願いを聞いて下さり、本当にありがとうございます。このご恩は一生忘れません。どうか、どうか妹の事……よろしくお願いします!」
「まかせて!」
「ああ、全力を尽くすよ」
 イーナは一礼の後、村へ向かった。と、その時、何かに気づき振り返って、
「か、火竜!」
上空を見上げながら彼女は言った。
 龍海、洋子も彼女の目線を追って空を見た。
 その先には竜が一頭、雄大に空を飛ぶ姿があった。
 ――あれが火竜か?
 龍海は双眼鏡で火竜を追った。
 火を飛ばす竜という事で勝手に赤色の身体を想像していたが、実物はミルクブラウンに近かった。
「イーナさんが言ってたのより、大きく見えるわね」
 洋子も同じく双眼鏡で確認していた。
 翼を広げた状態で飛ぶ火竜の姿は確かに巨大に見えた。しかし胴体だけならその大きさは近代戦車並み程度に感じる。
 側の大きさだけで物事が決まるわけではないが、LAMの本来の標的と比較して、「全く勝負にならない!」とは言い切れなさそう。と言うか是非とも通用してほしいところ。
 ともかく火竜は戻ってきた――これで今日、再び飛び立つ事が無ければエミの人身御供儀式が今夜実行されることが決定的になる。
 ――LAMが効くかどうか……最初の一発でその後が決まるな……
 三人が注目している事を知ってか知らずか、火竜は頂上付近でゆらりと一周しながら減速して、火口の中へ降りて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...