状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

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状況の人、異世界へ転移する

状況の人、西へ3

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「この辺りの領主である魔王ポリシックはこの地方に流れ着いたオーガの長の末裔なんだ。デクスの町でもオーガが多いんだけど、あたいたちが商売してても邪魔したり差別したりはしてなかったよ。奴隷を使うってのも嫌っててね」
「ん? じゃあ盗賊たちが彼女たちを売る相手はデクスの人じゃないって事?」
「ああ、南部のウエアウルフ族が主だった取引相手らしい。南部は奴隷制を認めてるところが多いから労働力だけじゃなくて、その……」
「性的、愛玩的な?」
「そう。そういう事にも抵抗が無いんだ」
 洋子が徐に嫌な顔をする。
 今まで歴史の中の話として耳にすることはあったが、フィクションの創作物ですら不快になるのに現実に行われているとなると恐怖よりも怒りが先行する思いだ。
 魔法が身に付き始め、龍海の与える強力な火器を使うスキルをもモノにした事もあり、恐怖より怒りが勝ってしまうのだろうか?
「戦闘となるとオーガは勇猛です。その恵まれた体躯による強烈な剣や槍攻撃の脅威は侮ることは出来ません。かなり強力な弓も引けますので、その威力や射程は厄介ですね」
「全員と正面切ってやり合うのは極力避けたいがな」
「まあ皆殺しなら話は簡単だがな。今回は人質救出が目的だからのう」
「皆殺しって……シノノメさんはそんなにお強いの? 剣も槍も持ってないのに!?」
「ダニーとか言ったか? こいつは特殊な魔法使いでのう……ん?」
 カレンが何かを感じたのか、街道を覆う森の奥を見ながら龍海に目配せした。
 龍海も索敵を起動していたのでギリギリ境界に現れた物体を感じ取った。
 その只ならぬ雰囲気に洋子やロイはもちろん、セレナたちも警戒し始めた。
「カレン、なんだかわかるか?」
 暗視眼鏡を覗きながら聞いてみる。
「ふむ、おそらくメガロボアだな。カレーの香りに寄って来おったか?」
 ――ボア? 猪の類かな?
 さらに目を凝らす龍海。
「ホントだ、大きめだがまんま猪だ。スパイスの香りを舐めてかかったかな~。レトルトだからそれほど香りは強くないと思うんだけど……手軽さ優先で選らんじまったからなぁ」
「自分が相手します。皆さんは援護をお願いします!」
 そう言いながらロイは腰の剣を抜いた。
「僕も!」
 負けじとダニーも剣を持ち出し前衛に立った。
 話にも出ていたのだが、前回の行商で彼は他所の仕事についていて、セレナ達の護衛に就けなかったらしい。
 そしてこの顛末。悔恨の思いが余計に彼を奮い立たせているようだった。

 ボアは30mくらいまで接近してきた。
 森の暗闇の中、焚火の炎に目が反射して緑っぽい光が浮かび上がり、セレナたちにも視認できた。
「うわ~、掛かってくる気マンマンだな。思いっきり鼻鳴らして寄って来やがる」
「4頭か。群れとしては少ない方かの?」
 とは言え、4頭相手では剣しか持たないロイやダニーの手には余りそうだ。
 そんな相手でも気合を入れて先頭に立つその勇気には感服するが、ここは自分らが出るべきところであろう。
 対盗賊戦で自分らが主導権を得るためにも、彼らに近代兵器の威力を見せておくのは悪くないと考えた。
「セレナさんたちは馬車に隠れててくれ。カレン、合図したらライトで照らしてくれるか?」
「まあ、その程度なら」
「あたしM500でいい?」
「猪の割にデカいけど、この距離なら00バックショットでも結構効果あるんじゃないかな? 怯ませてくれれば俺が64で仕留めるよ」
「ヨウコさん、下がってください! ここは僕が!」
「その心意気や良し! しかし下がるべきはお主ぞ?」
「そんな! 女性を前に出すなんて!」
「そうですよ! 自分たちが前に!」
「ダニー君、ロイくん、気持ちは嬉しいけど黙って見てて~」
 そう言うと洋子は、
 ジャカ! シャコ!
 フォアグリップをポンプして初弾を薬室に送るとチューブマガジンにもう一発シェルを送り込んだ。これで6発。
 初めて見る得物にキョトンとするロイとダニー。
 そんな二人を尻目に、準備が出来た洋子はロイたちの前に出て腰を落とし、M500を膝撃ちの姿勢で構えた。
 龍海もその隣で64式を同じく膝撃ちの姿勢を取った。
「カレン、ライト!」
 龍海の号令にカレンはフラッシュライトをボアに向けて照射した。
 ブギイィ!
 いきなりの眩い光を浴びた先頭のボアはこれを威嚇、若しくは攻撃と判断したのか、雄叫びを上げながら一気に突撃してきた。正に猪突猛進!
 その先頭に向けて龍海は64式の引き金を引いた。
 ドバァン!
「ひ!」
「わ!」
 初めて聞く銃声にセレナらはもちろん、ロイやダニーも目を瞑り、耳を押さえて蹲ってしまった。
 龍海の一射目は先頭のボアの鼻先に命中。そのまま侵入した7.62mm弾は頭部の骨を砕き脳味噌を粉砕してボアを即死させた。
 手足に伝わる信号が突然途切れて動きをやめたボアは、そのままもんどりうって転倒、後続の障害物となり果てた。
 ブギャアァ!
 プギィ!
 それでも残りの三頭は脇目も振らず、仲間の死体を乗り越えて突撃を続けた。猪の特性は異世界であっても共通なのだろうか?
 ドガァン! シャカ! ドガァン! シャカ! ドガァン! 
 横並びで突撃してくるボア。それに対して洋子はM500から九粒弾00バックを連続して浴びせかける。
 ピギー!
 さすがに通常の猪より大きな魔獣メガロボアである。直径8mm強の十数発のペレットを喰らっても怯んだり転倒はするが、まだ起き上がり突っ込もうとする。
 が、しかし。
 ドバァン! ドバァン!
 足の止まったボアを龍海の冷静な銃撃が3頭を襲い、猪は次々倒れていった。
 鉄鉢横に取りつけたライトを点灯させ、龍海と洋子は前進した。
 万が一起き上がってもすぐに銃撃できるように構えながら近寄り、龍海が4頭の状況を確認する。
 その間、洋子は周りを警戒し、他の魔獣や襲撃者の発見に努めた。
 訓練通りの動きである。
「フゴー! フゴォ……」
 4頭のボアのうち、2頭にはまだ息があった。
 苦痛に満ちた、そんな感じの呼吸であったが、龍海らの接近に気づくと脚を藻掻かせて尚も立ち向かおうとする。
 だが、ペレットと7.62㎜弾に射抜かれた体は立ち上がるどころか向きを変える事すら困難であった。
 ドバァン! ドバァン!
 龍海は64式の引鉄を二度引き、彼奴らに引導を渡した。
 制圧の完了を確認すると、二人は尚も周りを警戒しながら馬車の所へ戻った。
「……」
 ギリ大型魔獣に属するメガロボア4頭を、たった2人で剣も斧も使わず矢継ぎ早に屠っていくのを目の当たりにしたロイとダニーは目が点になってしまった。今現在、自分の目前で起こった事象を整理するのに、彼らの大脳はかなりの血量を要することになる。
 ポカンと顎は垂れ下がり、絵に描いたような茫然自失である。
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