状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

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状況の人、異世界へ転移する

状況の人、新たなる旅立ち5

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「のうタツミ……よかろう?」
 カレンの甘えるような声が龍海の耳元で囁かれる。頬も幾分紅潮している。
「よせよ真昼間から」
「我とお主の仲で何を水臭い事を言っておる。の? の?」
 龍海が諫めるも変わらない口調でおねだりするカレン。
「みんな見てるだろ」
「誰の目を憚る必要があろうか。の? の?」
「ビールごときで何を勘違いされそうなセリフ吐いてんのよ、二人共?」
 洋子が干し肉を齧りながら冷ややかに物申す。まあ誰も勘違いなどしないわけだが。
 安っぽいおねだりを一蹴されたカレンは、ブスっと唇を尖らせながら同じく干し肉に噛り付いた。
「この塩味と肉の旨みにビールはよく合うんだがのう」
「晩飯の楽しみに取っておいてくれ。酔っぱらっての魔法指南も考え物だしな。さて、イーミュウ嬢?」
「嬢なんて不要ですわ、イーミュウと呼び捨ててくださいな」
「んじゃイーミュウ。早速だが君はアープに引き返してくれないか?」
「シノノメ様も私とロイの仲を裂かれるのですか?」
 なんとな~くウソ泣き混じりの哀し気なウルウル目線で見上げるイーミュウ。龍海はそういう事じゃないとばかりに、
「君らの仲にとやかく言う気なんか、ま っ た く 無いから! ま っ た く 興味ないから、好 き 勝 手 に してくれていいから!」
と一字一句ごとに全角スペースを開けたような口調で強調して答えた。
「でもまあ、イーミュウの槍さばきは見事だったわ。ヒットこそしなかったけど一度はラプターを追い払ったし。そのおかげであたしも攻撃の準備が出来たわけだしね」
「おお、そう言えばあの三節根みたいな槍、かっちょ良かったなぁ。ああいうの流行ってんの? それとも特注?」
「はい! アープのドワーフ工房の職人さんに、私の体格に合わせて作っていただいたんです!」
「ほお!? ドワーフは定番通りに手先が器用な職人気質なのかな? とは思っていたが、やっぱ加工技とか秀でてんのかな!? 鉄工所上がりとしては、ぜひ見学したいところだな!」
「ええ、いつでもご案内いたしますわよ!」
「よし! じゃあこれからアープの工房に見学に行って、君はそのまま帰宅と言う事で」
「お断りします」
 ――しまった。帰宅はアープに行ってから言うべきだった……
「まあいいじゃない、連れて行きましょ」
「おい、いいのか?」
「まさかこの荒野の真ん中で、女の子一人で置いてきぼりには出来ないでしょ? ただのお邪魔虫ってわけでも無いし、武闘の心得が有るんなら銃を教えれば結構な戦力になると思うけど?」
「ありがとうございます、勇者様! ジュウ、とは先ほどの魔法でしょうか!? ならばぜひ、ご伝授頂きたいですわ!」
「ま、待ってくださいサイガ卿! お二人は国家最高機密に属する任務の最中なんですよ! そんな簡単に部外者を入れるなんてことは!」
「それは、あたしが決める事」
「いや、それはそうですけど! シノノメ卿! 卿からも何か言って下さいよ!」
「まあ、俺もあんまり大所帯になるのは避けたいけどさぁ。お前、任務がどうとかいう以前の理由で反対してるだろ?」
「や、そ、それは!」
 ロイくん狼狽しまくり。彼としてはもちろん、任務上の問題意識は確かにあるだろう。
 しかし、それより何よりロイがイーミュウを避けようとしている狙いがアリアリと分かり過ぎる訳で、そのせいで洋子も無自覚気味にイーミュウに肩入れし始めているのではないか? そんな雰囲気さえ漂っている。
 その避ける理由がロイがGである事も大いにあるってのは分かってはいるが、「逃げる事では解決せんだろう」とは龍海、おそらくは洋子も思っている事だ。
 洋子としては同じ年頃の同性と言う事も後押ししているかもしれない。
「任務に私情を絡めちゃイカンなぁ、ロイ?」
「シノノメ卿~」
「とは言っても、俺たちの直近の課題は洋子の勇者修行なわけだが、同行する者にはそれなりの理由が必要だと考える。カレンは魔法の指南役だし、ロイは俺たちを庇護する王国からの要請だし、連絡員・橋渡し役としても期待できる、と言う事で了承する。で、イーミュウのメンバー入りの理由としては?」
「お役に立ちます!」
「いや、だからなんの役?」
「こんな右も左も分からない異世界に召喚されて、勇者様も大変不安であったと思います。そんな時、同性で年齢も近い私ならいろんなことの相談にも応じさせていただけるのではないかと思います。ヘアケアでも著名な理髪師を紹介できますし、最先端ファッションの仕立て屋とかも!」
「まあ、そう言うのも興味はあるんだけど……さっきも言ったように、銃の扱いや戦法を教えれば背中を任せられたりするかもねって期待できるかなとか?」
「銃か……」
「どうしたの?」
「う~ん、俺の考えとしちゃ、あまりこの世界の者に銃を預けたくないんだよな」
「盗賊団戦じゃロイに拳銃渡したじゃない?」
「ありゃあ戦力差があり過ぎたし、人数も割けなかったからな」
「しかし何故ジュウの使い手の増強を拒むのかや? お主の再現リプロダクションを使って大量の銃を持つ兵団を作れば魔導国に対する強力な戦力――いや、その後にもアンドロウム帝国やポータリア皇国に対する威嚇にもなるのではなかろうかの?」
「そいつは最初に考えたさ。でも戦争後の事を考えてみろよ。王国軍が銃火器部隊ありきの体勢になったら俺は生涯、武器弾薬を作り出す生きた工場にされちまうんだぜ? そんなのお断りだし、その武器が地下市場ブラックマーケットに流れりゃ一般市民にとってすごい脅威だし」
「……なるほどのぉ。お主の能力からすれば王国のみならず、他国からも犯罪組織からも狙われる存在になると言うわけだの?」
「自国に引き入れられないなら、脅威を排除するために暗殺……なんて冗談じゃねぇし。それに俺が何か大病とか事故とかで死んだら、火器を維持できないアデリア軍は、たちまち立ち行かなくなるんだしな。洋子が無事日本に帰れたら、俺はどこかで冒険者でもしながら勝手気ままに生きて行くつもりなんだよ、ぶっちゃけ」
「シノノメ卿は、お帰りにならないんですか?」
「帰らないんじゃなくて帰れないんだよ。洋子は天界に正規の手法で要請されての召喚だったから道のりは残されてるけど、俺は帳尻合わせの転移でな。一生ここで暮らすのさ」
「そ、そうだったんですか、ずっとこの世界で……(ニヤリ)」
「おい、今笑ったか? 何かほくそ笑んだか?」
「む、顔に出てしまったか? 戦のあとも、二人の絡みが続くかと思うとつい……我もまだまだか」
「お前もかい!」
「と・に・か・く!」
 龍海らの寸劇を遮り、洋子が決定を下さんと割って入る。
「アープには引き返さない、イーミュウはこのまま同行を許可。ただし、あくまで暫定措置。あたしたちのこれからに戦力として期待できそうならそのまま採用。ダメだったら即刻帰郷って事でどう?」
「サ、サイガ卿!」
「うん、まあ妥当なところだな。ここから一人で帰す訳にもいかんし、ドワーフ工房の見学は次の機会にしよう」
 と洋子の提案に龍海も同意。
「そんな! お考え直し下さいサイガ卿!」
 ロイは、尚も抵抗を試みるも、龍海はロイを諭すように言う。
「一応このパーティ(?)の序列は勇者である洋子が一位だ。故に洋子の意向が最優先されるのが道理だと思うが?」
「ありがとうございます、ヨウコ様、タツミ様! 必ず期待に違わぬ働きをして見せますわ!」
 被願成就。明るいお顔が更に明るくなるイーミュー。
 対してロイは、重くなる自分の体重を支え切れず、四つん這いになって落ち込んだ。
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