状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

文字の大きさ
83 / 197
状況の人、異世界で無双する

状況の人、テロ防止に向かう3

しおりを挟む
 カッ!
 龍海の怒鳴る声と共に、9mm自動拳銃CZ・P-09の下部レールに取り付けられたフラッシュライトの光が三人に浴びせかけられた。
「大人しく、こちらの指示に従ってもらおう。抵抗しなければ貴様らに危害を加えるつもりはない」
 すでに三人、〆ちゃいましたけどね~。
「な、なんだぁ!」
 眩いライトの光に目をしばたかせながら、ウルフらは声の主を探った。
 まるで照明火球のような眩しさ。しかしこんな高さで全方向に光る火球を放てば術者も眩しくて目を開けてはいられない筈だが……頭に血を巡らせるも、状況の把握は出来ないでいるウルフたち。
「他の三人も、拘束はしたがケガはしていない。貴様らが倉庫番を殺さなかったようにな」
 警告を続けながら龍海はライトの射線を落とした。やがてウルフら三人は龍海たちのシルエットを確認する。
 浮かび上がる龍海と洋子、ロイの影。
「は? 人間ヒューマン? それに小娘と小僧だと!?」
 他の仲間が拘束された。
 更に、今までに見たことも無い光量の光を浴びて思わず身構えるオークだったが、視界に映ったのは、そんじょそこらの並みレベルの人間の男、そして小柄な女に、ただ一人だけ剣を構えているのは少年一人と来たもんだ。
 そんな組み合わせの、言ってしまえば思いっきり貧弱なパーティが、屈強なウルフやオーク様に向かってご命令とは、拍子抜けを通り越して眉間に怒りのシワが寄る。
 オークは自分の剣を抜いた。
「ガキが邪魔すんな!」
 そう言うとオークはロイ目掛けて剣を振りかぶり、足を踏み出した。
 だがそこへ、
プシュー!
「ぶが!」
洋子が右手に持っていた小道具から、霧状の液体がオークの顔目掛けて勢いよく噴き出した。
 カシャーン!
 剣を落とし、大きいが豚そのもの、と言うよりかは些か人間に近い形状の鼻と目を押さえながらうずくまるオーク。
「目、目が! ……ブフォ! げほ! ぐしゃ! へくしゃ! あがぁ~!」
 目が~! 目が~! とパロる余裕も無いほど、声も呼吸も阻害されて咳込み、くしゃみを連発。目からは号泣レベルで涙があふれ、口と鼻周りが止められない鼻汁とヨダレだらけになっていく。
 ――使うのは初めてだけど……結構な威力だな~
 ありがちだが、龍海の趣味は銃が中心なので、ミリタリーに留まらずポリス御用達の装備品等にも触手が動いていた。
 拘束に使った指錠・手錠の類、スタンガンに催涙スプレー等はそれらの定番と言えよう。
 使用は初めてだが、龍海自身は自衛隊前期教育時のガス体験訓練で催涙ガスの効果は身をもって知っている。
 目や気管へはもちろん、皮膚に付着すると細かい針で刺されたような痛みに覆われて、水で洗浄するもなかなか落ちてはくれなかった思い出。
 今、オークはそんな苦しみを体験していることだろうと思うと、心の中で一応は合掌して哀悼する龍海である。まあ、死んではいないんだが……
「て、てめぇ!」
 ウルフの一人が剣に手をかける。
 が、
「待て! リーム!」
もう一人は、リームと呼ばれたウルフの動きを制した。
「奴らはもう、四人を倒した連中だぞ」
「ティーグさん……」
 リームとの言葉のやり取りで、このティーグなるウルフからは今回のテログループのリーダー的な雰囲気を感じられた。
 目の前で謎の武器を使われた事もあるだろうが、三人の仲間を突破して、ここまでたどり着いている現実を即座に認めるだけの判断力は如何にもそれっぽい。
「……手前らは何者なんだ?」
 ティーグが龍海に問いかけた。
「見たところ冒険者っぽいが、そこの小僧は軍人か、軍属だよな?」
「小僧、小僧と、自分をやたら低く見て頂いてくれますね?」
 ロイくん、ムスッ!
「まあまあ、落ち着けロイ。ティーグっつーたか? 実はその通りなんだが、何か変か?」
「当然だ。軍や王国が後ろにいるなら、正規兵を差し置いて手前が目上っぽく振る舞うのは得心が行かねぇ」
 このティーグとやら、過激派と言っても単なるゴロツキでも無さそうだ。
 これだけを以て奴が聡明、と判断は出来ないが、血気に逸ってやたら得物を振り回して向かって来る、という手合いでも無さそう。
「まあ、ぶっちゃけで言うと、今日あんたらがここでテロやらかすって情報を小耳に挟んだもんでねェ。半信半疑だったんだが……ビンゴだったみたいでなぁ。じゃあ放っておくわけにもいかんか、てなワケで」
「漏れてた……?」
 リームが思わず零すように呟く。そしてティーグ。
「……どこからの情報……って簡単には吐かねぇよな?」
「わかってるねぇ?」
「で、どうする? ここで俺たちとやり合うか?」
「僅かながら数ではこちらが有利だぜ?」
「果たして、そうか?」
 ポッ
 ティーグは念を込めて、手の平に小さな炎を浮かび上がらせた。
「焼討ちの仕込みは、ほとんど終わってる。一か所、着火すれば火はあっと言う間に倉庫内に広がる。外に多少、仲間がいても抑えられるかな?」
「試してみる?」
 洋子は左手を下に向け、水魔法でシャワーの如く噴かせて見せた。
「倉庫内に広がった火を一人で鎮火出来るってぇのかよ!」
 と、リームが吠えるが、
「だから……試してみる?」
洋子は不敵に笑って見せた。
 おそらく今の彼女なら、倉庫内いっぱいにスプリンクラーよろしく水を噴出させ、あっと言う間に火を消して見せるだろう。ただし、その時は……小麦の多くがおじゃんになってしまう。
「洋子、その水でそいつの顔、洗ってやんなよ」
 龍海は、催涙スプレーを喰らって呻いているオークの洗浄を促した。
 それを受けて洋子はスプレーをロイに手渡すと、
「はい、少し我慢して~」
シャー!
「う、うう!」
オークの顔にマイクロバブルシャワーに見られる、肌理きめの細かい水を噴きかけて、へばりついたガス成分を落としていった。
「目をこすっちゃダメよ? 洗顔の要領でね?」
「う……はあぁ……」
 一回や二回、ざっと洗った程度で落ちるほど催涙ガスの成分は甘くはないが、熱く火照った皮膚に洋子の冷水バブルシャワーは心地よかった。
「どういうつもりだ?」
「ん? 何がだ?」
「俺たちの討伐、捕縛が目的じゃないのか!?」
「う~ん、まずは入ってきた情報が正しいかどうかが第一だったんだがな。テロに当たって、警備の者を殺害するようなら、まあ討伐も視野に入ってたんだけどね。でもあんたらは殺しはやらなかったし、これから焼く倉庫から離れたところに彼らを集めた」
「……」
「さて、この倉庫に積まれた小麦を燃やして王国に損害を与えるってのは分かるが、その意図は? 単なる嫌がらせか、挑発か? 開戦のきっかけにするには弱そうだが?」
「開戦したがっているのは手前ら側じゃないのか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...