状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

文字の大きさ
90 / 197
状況の人、異世界で無双する

状況の人、検討する5

しおりを挟む
「塩気も香辛料も控えめで、ヴァンパイア族好みの味付けであったぞぅ~? どうじゃ、今度一緒に行かぬか?」
「陛下! ですからご自重を! 確かに先代魔導王さまも身分を隠して市井の様子を窺い、治政に反映されては居られましたし、その御心を拒む気は毛頭、有りませんが、対外的な脅威もさることながら、国内においても懸案事項は日増しに……」
「……何か掴めたか?」
 お肉談義に笑っていたフェアーライトの目が、瞬時に魔導王モードに変わった。
「はい。最近、オデ市に於いて我が方に依るとされるテロ未遂事件が発覚した件ですが、どうやら軍や一部主戦活動家等の仕業ではない、との見方が強く……」
「つまり、どういう事か? アデリアの自作自演か?」
「はぁ、その可能性もありますが、そうであったとしても、どうも何やら半端と言いますか……」
「煮え切らんな? 簡潔に事実を申せ」
「我が方の勢力にせよ、連中の自演であるにせよ、とにかく半端なのです。開戦気運の高まりが目的ならば、標的となった倉庫の見張り番の殺害なども躊躇は無かったのではないかと?」
「ふむ……」
「しかるに、攻める方、受ける方にも軽傷者は出ておりますが、死者は居りません。見張り番の言から、襲ってきたのは確かにウルフ族やオークらの混成だったとの証言は有ります。現地連絡員が、それらがアデリアの冒険者によって制圧されたと、報告を上げて来ております」
「それもオデ側が言っているだけでは無いのか? やはり連中の自演くさいな」
「ですが、それも何か半端なのです。そんな程度の自演では当然のことながら開戦の気運が高まるどころか、双方の主戦派をモヤモヤとさせるだけです。テロ、と言う行為にも拘らず、目的が見えてこないのです」
「ふむ、確かに」
「結果としてオデ市駐屯軍は物資倉庫等の防備を増強し、シーエスはそれに対抗、及び報復に備えて、部隊の配置・編成を兵站防御重視への変更を余儀無くされております」
「……開戦・侵攻とは、真逆の結果になってしまったか。間抜けな話だな」
「……」
「ん、リバァよ、なにか言いたそうだが?」
 フェアーライトは、リバァの目がそれとなく落ち着かない動きをしていることに気付いた。
「あ、いえ、その……」
「構わぬ、申せ」
 戸惑うリバァにフェアーライトが催促。
 リバァは一瞬怯むが、フェアーライトに軽く笑みを浮かべて、更に促すように首を傾けられると躊躇している場合では無く、一つ深呼吸をして話し始めた。
「私の愚考、とも思えるのですが今回の結果、これが……」
「それが?」
「これが本来の狙い通りだったと仮定したら、どんな連中がどんな思惑で、と……あ、いえ、本当に思いつき程度なんですが」
「本来の結果とな? いやしかし、主戦派どもならずとも、余も何かモヤモヤする結果でしか、無い、と……」
 ここまで言うとフェアーライトはついと、片眉を吊り上げた。
「陛下?」
「システよ、先ほどの現地連絡員の定期報告、直近の物はあるか? オデ市の市井では、我が方に対する機運は如何な感じかな?」
「あ、はい。リバァ? 先週の報告書は?」
「は、はい、確かこの中に……有りました、これです」
 リバァに預けていた報告書を受け取り、急いで目を通すシステ。ある程度は憶えているが、やはり最終的な確認は必要と考えた。
 報告書の内容はシステの記憶通りだった。
「主戦派の勢いが僅かに強く感じられるものの、非戦派勢力も相当数いるようです。特に非戦派は若い者が中心だとか……」
「ふむ、狼たちは年配の武勇伝を聞かされて育ったせいか、主戦派はむしろ若い者が多い傾向にあるのにな」
「武門を尊ぶ彼らです。自分も武勲を立てて誇りたい、と言う気持ちはわからなくもありませんが、男手不足になった後方で、家事・育児に加えて力仕事も回される女たちの身にもなってほしいものですね」
「そうだな、男共ももう少し奥を労って……」
「……陛下?」
 フェアーライトは再び眉を吊り上げると今度は眼も閉じて、眉間に右手人差し指を当てて何やら思考し始めた。
 周りの空気がいくらか重くなった。
 フェアーライトの気がそう感じさせるのだろうか? 
 システとリバァは互いに目を合わせ、魔導王に声も掛けられず、彼女からの発言を待つしかない状況を確認し合った。
 ――陛下の中で、何かが結ばれそうなのか……
 待っていた時間はほんの数十秒程度であっただろう。
 しかし二人にはずいぶん長く感じてしまう時間だった。
 何か余計に老けてしまったかのような錯覚さえ感じる……と言うと言いすぎだろうか?
「システよ……」
「は、はい!」
 魔導王が口を開いた。
「先だってのテロを制圧したと言う冒険者とやらは、特定はできておるのか?」
「あ、はい。今回の件、実働は3人でしたが実際は、最近流れてきた5人組のパーティだそうです」
「うむ。あと、そのテロを画策したのが証言通りに我が方のウルフやオークだと仮定して、そいつららしき人材は浮かびそうか? 軍や過激派どもの中に、似たような計画が立案されていたとか噂されていたとか?」
「軍による隠密テロであれば、焼討ちには失敗したわけで、その反動と申しますか、動揺の様なものがあっても良さそうではありますが……リバァ? お前は何か聞いていないか? 小耳に挿んだ程度でもいいぞ?」
「そうですねぇ……」
 問われてリバァは口に右こぶしを当て、記憶をまさぐりながら答える。
「情報課から今回のテロ未遂の情報を受け取った時ですが、妙な顔をしておりました。軍部が主導したのなら、今回の結果は黒星なわけですから不機嫌な空気があってもおかしくないのに、そのような雰囲気や、悪感情等は感じられなかったかと……」
「実行犯に対しても失敗の責任・懲罰は必至なはず。そう言った雰囲気が無いのであれば、少なくとも軍や軍の息がかかった過激派の関与は無いと言う見方も注視すべきだな」
「だとしますと……ますます訳が分かりません。アデリアの自演でなければいったい誰が……いえ、どの勢力が?」
「余の見る限り、反戦派勢力……例えばハスク公爵はウルフの中でも数少ないハト派だが、自らも主戦派のシーエスを諫めるような事はしてはおらん。余のからも、裏で動きを見せるようなそぶりも報告されてはいないしな」
「我が方の工作か、アデリアの自演かは判断しかねますが、制圧したと言う5人組は特定できると思われますし、まずこちらから洗ってみてはいかがでしょうか?」
「遠回りに見えてそれが一番かな? もしも自演説が覆れば我が方の仕掛け人は連中が存じておろう」
「連絡員に指令を出します。件の5人組の素性を調査する様に」
「うむ、余もを送ってみる。もしも我が方に、余らの目に見えていない反主流の勢力が人知れず築かれているとすれば……」
「まさか我が国に、アデリアと通じている勢力が?」
「それは早計よ、リバァ。あくまで我が国の内部だけの反戦派かもしれない」
「余も戦など御免なのだが……座して死を選ぶわけにはいかんでな。それらの勢力が戦を避けようとするあまり、売国に等しい行為を画策するならば、それは摘んでしまわなければならん」
「はい、この国は我ら魔族の最後の砦。これ以上は一歩たりとも譲るわけには」
「ああ、しかし最も優先すべきは民の平穏だ。民の安寧なくして国の安寧などあり得んからな」
「心して!」
「ところでシステよ?」
「はい?」
「明後日の夕刻当り、エームスの南市場、行ってみんか? あのバイソン、ほんに絶品なのだがな? 余も、もう一度食したいのだ!」
「もう、陛下ったら! ……4時半からなら時間が取れますわ……」
 ――ホント、血の味に弱いんだから、ヴァンパイアは~!
 傍で聞いていたリバァは軽く頭痛を覚えた。
 システらが不在時に何かあれば、それに対処させられるのは彼女であるし、さもありなんである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...