状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

文字の大きさ
91 / 197
状況の人、異世界で無双する

状況の人、奮闘中1

しおりを挟む
 今、龍海が持っている自動拳銃CZ P-09は最近、彼のお気に入りの副兵装サイドアームになっている。
 当初は信頼性もあって副兵装の拳銃はG17や自衛隊時代の九ミリ拳銃を使用していたが、訓練等で試験も兼ねて多用し、信頼に足ると判断して愛用し始めた。
 量産型自動拳銃の中では(いろいろ注釈は付きそうではあるが)最高傑作との評価の声も高いCZ75の流れをくむ、現在主流のポリマーフレームを採用した装弾数はG17より若干多い19発の自動拳銃だ。
 CZ75の、多弾倉自動拳銃ながらも非常に握りやすい握把グリップは、本銃を評価するうえでは語り草である。
 しかし、龍海がグァムの射撃場でP-09を握った瞬間、それは完全にアップデートされてしまった。龍海の右手にとって、それは正に衝撃的と言えるほどの握り具合だったのだ。
 これは、偶さか龍海の手に異常にフィットしただけ、とも言えるであろう。
 だが龍海はこのP-09に魅入られ、日本国内で販売されているトイガンもグァムから帰国直後にショップへ突撃し、毎夜枕元に置いて眠りに入ったものである。
 とは言うものの、使用弾薬は所詮は9mmパラベラム弾である。
 今現在、龍海に襲い掛かってきている大型魔獣、大黒熊ニグレス・ベアには例え弾倉内19発を全弾叩きこんだとしても、その足を止める事は出来ない。大体が既に主装備で持っていた散弾銃M500も全弾叩き込んでいるのに怯ませることは出来ても倒せない、そんな大型の熊魔獣が相手なのだ。 
「卿! 伏せてください!」
 後方からロイの声。
 龍海は横に飛んで地に伏せた。
 ガアァァー!
 腹に響くような咆哮を上げながら龍海の方を向く大黒熊ニグレス・ベアに、ロイとイーミュウの曲銃床型89式が火を噴いた。
 タタタ! タタタ!
 2人の3点制限点射バースト射撃が熊魔獣の動きを止める。
 ドォン! ドォン!
 更に洋子が散弾銃でOOバック弾を浴びせた。
「シノさん、今のうち!」
 三人が作ってくれた隙、龍海は即座に収納からM82を取り出した。
 ジャカン!
 チャージングハンドルを引き、初弾を装填。熊に銃口を向ける。
 相手は只でさえ大型に分類される大黒熊ニグレス・ベア。その中でもこの個体は更に大きかった。しかも距離はもう、わずかに5~6m。狙いは概ねであっても龍海の腕なら外す事は無い。
 ドガァン!
 豪快な銃声を轟かせ、M82から口径12.7mmのFMJ弾が飛び出す。
 ドパァン!
 どてっ腹に18.000ジュール越えのエネルギーを持った完全被甲弾を喰らった熊魔獣は、卒倒する様に後ろへ倒れた。
 すかさず龍海が、とどめの一発を熊魔獣の胸部に叩き込む。
 ドガァン!
 二発目に心臓や肺を吹き飛ばされた熊は、その生命活動を停止した。
「やったかや?」
 後方で眺めていたカレンが聞いた。
 ボス戦等であればこのセリフはバッドフラグなワケだが、熊相手ではそんなものは立たなかったようだ。
「大丈夫、死んでるわ」
 M500を構えながら洋子が近寄って、熊の生死を確かめる。
 いざとなったら半開きの口に銃口を突っ込んで、散弾を撃ち込むつもりであったがその必要は無さそうだ。
「ハアァァ~……」
 M82を抱えて座り込む龍海。
「慌てたね~シノさん。でも熊相手に9パラは無いでしょ~?」
 洋子さん、揶揄からかう気ほぼほぼ満タンで擦り始めた。
「くそ~、言い訳出来ね~。収納からM82これ出す暇もなかったからな~。ロイ、イーミュウ、援護サンクス!」
「ご無事でよかったですわ、シノさま!」
「ご苦労様でした、シノノメ卿!」
「ふ~む、それにしてもこの大黒熊ニグレス・ベア、かなりの大物じゃのう。本来もう二回りほど小さいのが普通であるになぁ」
「64式の7,62mm弾でも怪しかったな」
「ハチキュウでも動きを止めるのが精一杯でしたね」
「5,56mmでもエネルギーだけなら44Mag以上なんだけどなぁ」
 実際この熊は体長は3m近く、地球で言えばひぐま級を越えて白熊級であろう。
 しかも猪もかくやと思わせるご立派な牙が生えており、いかにも魔獣然としている。
「これだけ大きいと魔石に辿り着くのも難儀ですね。卿、魔石は自分が取りますから、上下の牙4本の採取、お願い出来ますか?」
 そう言いながらロイは山刀のような刃物を取り出すと、手際よく腹を裂いて熊の内部に作られる魔石を探し始めた。
 龍海は鉈を取り出し、口周りの牙に叩きつけ、へし折る様に切り離した。
 この世界で初めて会った冒険者のトレドが角狼のそれを採取したように、熊の牙も薬剤等の素材になるそうなので持ち帰ることに。
 龍海の回収作業が終わるころ、ロイも目当ての魔石を取り出し終わっていた。
「慣れてるなロイ」
「はい、魔獣討伐は軍の山間演習でも実際に行いますし、解体の指導も受けております」
「立派な魔石ですね。これほど大きければ、依頼されていた『異様に大型で凶悪な大黒熊ニグレス・ベア』だと証明できますわ」

 アデリア王国西側中央部に有るロンドの町から更に西の、魔導王国魔王モノーポリの領地との国境線に近い森の中で、龍海たち一行は町からの魔獣討伐の依頼を受けて索敵をしていた。
 索敵と言っても対象は依頼の大黒熊ニグレス・ベアのみならず、時折り干渉しあうオーク族の長ともいえる魔王モノーポリを崇める魔族も含まれていた。
 そこの住民はオーク族が多いものの、ポリシック領やシーエス領以上に種々雑多の魔族が集っているらしい。
 中には魔獣を使役して狩りや採取、戦までも行う連中もいるそうで、龍海はその辺りにも興味を引き、偵察したいと考えて魔獣駆除の依頼を遂行すると言う体で森の中を前進していた。
 で、いきなり標的の大黒熊に出くわしてしまったと言う訳である。

 この世界に最初に降り立った時と同様の獣道を、龍海は前衛で歩いていた。
 その時と同じで、草木が鬱蒼と生い茂る森の中では、あまり長い得物は取り回しに支障が出そうと考えて龍海と洋子はショートタイプのM500を、ロイとイーミュウは銃床が折り畳める曲銃床の89式を備えていた。
 しばらく進むと、前方50m弱にゆらゆらと蠢く物影が確認され、警戒態勢に入った。
 その動く姿から、通常の大黒熊かと判断して近寄ったのだが、足音か若しくは臭いに気付いたのか、対象は立ち上がってこちらを睨んできた。
 ――げ!
 立ち上がった熊は、腹から上が地面から出ているように見えた。その上半身だけを見ても、相手がただならぬ図体であることは瞬時に判断できた。
 どうやら熊が居た所は窪んでおり、そこから飛び出したその姿は3m越えの大黒熊だったのだ。
 下半身は見えてはいなかったが「脚なんか飾りです!」と言う訳には行かず、大黒熊はその瞬発力と脚力で窪みを駆け上がり、龍海らを視認するや瞬時に突進してきた。
 いきなりビンゴを引いてしまった。
 龍海は即座にM500で攻撃を開始したワケではあるが……そのあとは先述の通りである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...