状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

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状況の人、異世界で無双する

状況の人、収監中7

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 ――吸血鬼ヴァンパイア族!? HPは……5千越えか!
 その他順次ステータスをスキャンしたが、今まで相手にしてきた魔族とは全くレベルが違う。まさにボスキャラと言ったデータが並んでくる。
 しかしラスボスは魔導王フェアーライトだ。
 つまりこのスペックでも中ボスクラスかもしれない。MPもそれに並ぶくらい強大で、大化けした洋子のスペックともかなり拮抗している。タイマンならどちらが勝つか、予想はかなり難しい。最後は戦闘センスがモノを言いそうだ。
 ――銀の弾でも必要かな~
「なんだこの臭いは……?」
 今までの延長ではあるが、龍海たちの前でもいきなり臭いの話をされる。
 洋子らやロイたちもスメルスキャンされていたから自分もやられるとは思ったが、臭う、と言われりゃ、あまりいい気分はしない。声は聞こえてこないが、「そりゃ、オタは臭いわよねぇ~と()」とか洋子に弄られそうだ。
「何かが……油? いや、薬が焼けた様な……」
 ――硝煙? ガンオイル?
 この世界に来てからこっち、訓練や実戦、おまけに趣味も加えて、龍海は千発に届こうかというほど弾薬を消費している。
 洋子らに比べても、その臭いが身体に染みつきまくっているのは道理であった。
 ――火薬はこの世界には無いし、イノミナの閃光弾は魔石が材料だから臭いも違うし……確かに初めて嗅ぐ臭いだろうな……
 イノミナが知っているくらいだから、アデリアで召喚儀式が行われた情報は魔導国にも察知されていて不思議ではない。
 しかも魔王・宰相クラスであればその情報は上がって来ているだろうし、それが偽情報だと推察される事も当然有り得る。そこに連中の考えが及ぶかどうか。
「さっきの兄妹も纏っていた臭いだが、こっちはかなり強い……う~む、なにか、なにか引っ掛るが……んんん!」
 顎に手を当てて思案していたシステは急に顔を上げて龍海に目を向けた。
 ――気付かれたか!?
 龍海は緊張した。
 事と次第によっては無限収納魔法アイテムボックスから火器を取り出して制圧することも視野に入れなければならない。
 しかし、宰相や魔王などと言ったVIPを手にかけてしまったら、それこそ開戦待った無しである。
「この檻を開けよ!」
 システの命令が飛ぶ。
「は! あ!? し、しかし!」
 番兵は躊躇した。
 いきなりの命令であると言うのも然る事ながら、この囚人は奴隷商とは言え同じ領内に生きる同胞を20人も死傷させた凶悪犯である。国家の重鎮を前にして、それを閉じ込める檻を開放するなど……
 もちろん龍海としても虚を突かれた。
 ――くそ、分からねぇ! 何に反応してるんだ!?
「早くやれ! 宰相命令である!」
「は、はい! 直ちに!」
 そこまで言われては下っ端如きに抗う事など出来るはずもない。番兵は急いで解錠し、檻を開いた。
「さ、宰相!」
 戸惑うリバァを無視してシステは室内に入った。
 龍海はいつでも無限収納魔法アイテムボックスから銃を取り出せる様に構えた。
 しかしシステの動きは龍海の予測をいとも簡単に崩した。
 システは龍海を無視して斜め後ろに回り込み、イノミナを見据えた。
 睨まれて怯えるイノミナ。思いっきり龍海に縋りつく。
 ――え? イノミナが目的? は? なんで?
 龍海の頭が混乱する。
「何をしているんですか?」
 と、システ。
 ――え? け、敬語! は? なにぃ!?
「こんなところで何をなさっておられるのですか!?」
 システは怒鳴りながら左手をイノミナの額に向け、念を送った。
「ひゃあ!」
 思わず悲鳴を上げるイノミナ。
「何すんだ!?」
 龍海は踵を返すと瞬発力を増強してイノミナを抱え、壁際まで後退しながら無限収納魔法アイテムボックスからP-09を抜いた。
 ほぼ条件反射的な動きであったが、その素早さに、少なくとも番兵はあっけにとられていた。こんな動きが出来るのは、機動遊撃隊の中でも上位数人の腕利き……いや彼らでも敵うかどうか、と。
 洋子の成長の著しさに隠れてはいるが、彼女ほどでは無いにしろ龍海も神の恩恵チートは授かっているのだ。
 しかしシステはそれを見ても動じる事は無かった。
 彼女が見据えているのはイノミナのみであった。
「あんた! イノミナに何をした!?」
 龍海は叫んだ。
 標的は自分だとばかり思っていたところへ不意を突かれ、予想していなかったイノミナへの攻撃に不覚を取ってしまった。P-09をJ・ウィックばりの片手コッキングで装填すると銃口をシステに向ける龍海。
「無礼者! そのお方から離れよ!」
 システの怒声が飛ぶ。
「へ?」
 一瞬、龍海の気が削がれた。
 ――その、お方……だと?
 室内には相対している龍海とシステ、そしてイノミナしかいない。
 自分は、そのなどと呼ばれる覚えはない。故にそれはイノミナの事を指すしかないわけだが……えええ?
 龍海は腕の中のイノミナを見降ろした。
 ――ね、猫耳が……無ぇー!
 何事か!?
 見降ろした龍海の目には、さっきまで彼女の頭上でピコピコとハネていた茶色い毛髪の猫耳が映らなかった。
 つか、そんなもん、どこか明後日の方向に飛んで行ったがごとく、影も形も無くなっている。
 しかも髪の毛の色が、茶髪から燃えるような赤髪のボブに変わってしまっている!
「だ、誰……?」
 などと龍海が困惑していると、
「へ、陛下ぁー!?」
駆け付けたモノーポリが、先だっての龍海の声にも及ばないほどの素っ頓狂な声を上げて狼狽していた。それはもう、額から冷汗が滝のように流れているような、噴き出しているような勢いで。
「さ、宰相が、魔王が、へ、陛下って……まさか……え……えええええええー!」
 龍海もまた大声で驚いた。まるで素っ頓狂合戦でもやっているのかのごとくだ。
 番兵に至っては声も出せず、合戦に参加する事も叶わず、大口をカパーンと開けて眼ン玉もこぼれそうなくらいの勢いで見開いていた。呼吸しているのが不思議なくらいの驚きようだ。
 自国の領主と宰相閣下を目前にするだけでも、身も心もガッチガチ状態であるのに、果ては祖国魔導王国の天辺と来たもんだ。さもありなん、さもありなん。
「いつまで陛下を気易く抱きかかえておるか! いい加減放さぬか、破廉恥男め!」
「まあまあ、落ち着けシステよ。タツミには罪は無い、全ては余の責任である」
 怒鳴るシステを宥めつつ、「陛下」は龍海の手をやさしく下げると一歩踏み出した後、回れ右。
「改めて名乗りを上げよう。余が魔導王国現国王の魔導王フェアーライトだ。『イノミナ』はいわゆる世を忍ぶ仮の姿と言う奴でな? 今まで欺いていたことは詫びさせてくれ。な、タツミ。いや、シノサンの旦那?」
 茶目っ気たっぷりにお笑いになられる魔導王陛下。
 対して龍海は血圧がゼロになったような感覚に襲われた。
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