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状況の人、最終決戦へ
状況の人と、勇者の帰還4
しおりを挟む「そ、却下。あたしの日本――地球への帰還は認められないって」
「ば、ばかな! あれだけ苦労してやっと逆召喚までこぎつけたのに!」
「天界の女神さまが色々考えてはくれたんだけどね~。あたしが逆転生すると、色々マズいみたいでさぁ~」
「天界に行ったのか、今度は? じゃあ、あのボブヘアの女神さまとも……」
「ああ、やっぱりあの女神さまなのね、シノさんが最初に会った女神さまって。んで、彼女が言うにはねぇ、ほら、あたしたちの前に出てきた猫ちゃん。シノさんはあのコが不具合を起こしたって言われてたんでしょ?」
「あ、ああ、確かにそう説明受けたんだけど……え? それが?」
「結論から言うと、あのコは不具合なんて起こしていなかったの。あのコは転生課召喚受付班からの指示で勇者の素質を持っているあたしを誘っていたのよ」
「さ、誘った? え? それって……」
「そう、あたしは召喚要請に従ってあの猫に誘われちゃったのよ。勇者としてこの世界に転移するために」
「ええ!? あれってあれで正常だったのか!?」
「あの時点では女神さまには召喚班からの連絡が無かったらしくて、てっきり歪み監視システムの不具合だと思ったんだって。それで、それを知らされないまま彼女がシノさんの担当に当てられたそうでね」
「て事は、あの事故は召喚のために起こされた……?」
「うん、せっかくシノさんが命をかけてあたしを救ってくれたんだけど、目的の魂はあたしのだから……2tトラックからは助けてもらったけど、即座に10tクレーン車が突撃して来たってのは……そういう事、なんだってさ」
「つ、つまり?」
「最初に会った時、シノさんが話した通りでさ~。あの時シノさんに助けてもらえなくても、あたしはどのみち死んでいるってことよ」
「じゃあ、俺がやった事って……」
「言っちゃあ悪いけど……無駄死にだったねぇ~」
「だああああー!」
龍海はひっくり返った。ひっくり返って、大口空けて、大の字になって目を見開いて透き通った青い空を呆然として見つめた。
何と言うオチか? 自分は死ぬ必要――決死の救助などする必要は、まるで無かったと言う事か? いやしかし……
「がっかりした? シノさん?」
洋子が覗き込んでくる。
「落ち込まないでよ? 結局はシノさんは……」
そう……
「結局はあたしのこと、助けてくれたんだしさ」
経緯はどうあれ龍海は洋子を救った事、このことに間違いはない。それに何より、
「そ、其方の前世の経緯とか、よ、余はよくは分からんが……」
この世界で、
「救われたのはヨウコだけではない、余も、其方には救われたのだぞ!?」
「そうじゃな。ヨウコやメルだけではない、アデリアや魔導国の多くの者がお主に救われた。前世の、ヨウコを救うために踏み出した一歩が無駄だったとは我は思わんぞ?」
こいつらに会うことが出来たのだ。そのことには何の憂いも悔恨も無い。有るはずがない。
「でも、それなら何で俺は成仏しなかったんだ?」
「まあ、結局はあの猫ちゃんに誘発された死だったから想定外の死だったワケで、やっぱりこっちに転移するしかなかったみたいよ? 女神さまの言う、いわゆる歪みの元? こっちの魂が弾き出されたから、帳尻合わせないと歪の原因になるとかどうとか? そうそう、あの女神さま喜んでたよぉ? シノさんがすんなり転移を承諾しくれたおかげで評価が上がって、例の余所の部署への転属願い、受理されたんだってよ?」
「あ、努力報われたんだな~、そりゃ良かっ……じゃなくってばよ! 逆召喚はどうなってんだよ、却下って何!?」
「シノさんも知っているでしょ? あたしたちの身体は魔素を使って再構成された身体だってこと。だからあたしたちの身体は地球環境じゃ耐えられないのよ。一応、女神さまも、いろいろ考えてくれたんだよ? シノさんには良くしてもらったからって。でも結局は、あたしの身体から漏れる魔素が原因での歪みの発生が抑えられそうになくてね。やっぱりシノさんの時と同様、魂が擦り切れるまで天界に留まるか、魔素が循環しているのが自然のこの世界に戻るか。そのどちらかしか無いって言われて」
「で、其方は戻る方を選んだわけか?」
「だって、何もせずに天界でボーっとしてるのなんて選べるわけないじゃん。もう、戻る一択よ。その方が安定するからって女神さまも強く推奨してたしね~」
「そんな……せっかく家族の下へ帰れたものと思ってたのに……」
「それは……あたしも残念だったけど……でも、そんな予感も有ったしね。なにせ、あたしの身体って10tクレーン車に轢かれたんだもの。そりゃ遺体は、ぐっちゃぐちゃだったろうしぃ。それで戻って『実は生きてました~』ってのもね。で、そこで女神さまが骨折ってくれてね」
「え? なにを?」
「あたし、スマホ持ってったでしょ? それにここで撮った写真とあたしからのメッセージをメモファイルに記録して、あの猫ちゃんに自宅まで持って行ってもらえたの。質量が小さいし、短期間で回収すれば歪みは何とか抑えられそうだからって」
「メッセージ? 何て?」
「『あたしは別世界で元気でいます。パパ、ママ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、みんなも元気で仲良くね』って」
「し、信じて貰えるのかな?」
「ここで撮った写真や動画見れば……すぐには信じて貰えないだろうけどね、でもそれが精いっぱいだったから」
「でも、じゃあ何で、すぐに戻って来なかったんだ? あれから二月経ってんだぞ?」
「それよ!」
洋子が龍海をビシッと指さして叫ぶ。いきなりの指差しでビクッと怯む龍海。
「ここに戻る時にあの女神さま、一応は『少しはズレるかも~』とか言ってたけど、結局どこに落とされたと思う? アンドロウムよ、アンドロウム!」
「はい!?」
「まいったわよ。そりゃ他の大陸に落とされるよかマシだったかもだけど、半年前まで戦争してたとこよ! 知ってる!? アンドロウムやポータリアって今、黒髪ポニーテールが絶滅してんのよ? ポータリア戦の噂がアンドロウムまで広まっててさぁ。あたしの事、アデリアの斑の魔女って呼ばれてんの!」
「斑の魔女? ああ、迷彩服のせいか」
「だからあたしがしてた黒のポニテってめっちゃ忌み嫌われててさ、生きた心地しなかったしすぐ解いたわ。おまけに服は制服のままだし、奇異の目で見られて取り付く島も無かったのよね。で、人里離れた森とか山とか選んでアデリア目指してたんだけど、地図も無いし勝手が分からなくてさ~。髪型変えて町や村で情報拾いながらやっとたどり着いたのよ?」
「そうであったか。ポニテや斑模様の服は、こちらでは女子に大流行なのだがな?」
「そっか、そりゃあ大変だったな……て、でもその服は? こちらの服じゃないか?」
「え? あ、まあ、そこはそれ、いろいろとね?」
「……盗ったん?」
「だ、だって仕方ないじゃん! あたしはシノさんみたいな再現能力ないもん! 変装しなきゃ街道だって歩けなかったしぃ!」
「路銀とか、食糧とかも?」
「聞くなってば!」
「アデリアの英雄が盗人に身を窶しとったか~。苦労したのう~」
カレンがニヤニヤしながら洋子をイジる。更に唇尖らす洋子。
「洋子……」
まだ頭の整理がつかない龍海、立ち上がって洋子の前に。
「こういう時、なんて言ったらいいか……その……」
「ん?」
「……おかえり? か、な?」
「……あたしは……ただいま、かな?」
尖らせた唇を収めてニッと笑う洋子。応えてニッと笑う龍海。そして、お互い笑顔でグータッチ。
「遅くなりました~」
と、ここで洋子の後ろの方から男性の声。
「よう、ロイ! 待ってたぞ!」
「申し訳ありません、シノさま。昨日の雨で街道が……え!?」
詫びるイーミュウの声が、振り向いた洋子を見た途端に一時停止。
「ヨ、ヨウコ……さま……」
「元気してたイーミュウ? 身体の調子はどう?」
「ヨウコさま……ヨウコさまぁ―!」
洋子の名を叫びながら涙目で駆け出すイーミュウ。しかし目前で躓き、バランスを崩す。
「イーミュウ!」
しかし、すぐ彼女を抱きとめて支える洋子。
「ほら、気を付けてイーミュウ。大事な身体なのよ?」
「ヨウコさま。なぜ、なぜ!?」
「神さまがイジワルでね~。結局、故郷には戻れなかったの~」
――バチ当たるぞ~
「そんな! あ、でも……じゃあ……じゃあ!」
「うん、ずっとここにいる事になるわ。また、よろしくね?」
「ヨウコさまぁ~!」
洋子の胸に顔を埋めて泣き出すイーミュウ。そんな彼女を洋子は、やさしく抱きしめた。
「二度と、二度とお会いできないと思ってました! うれしいですぅ~!」
しゃっくり上げながら号泣するイーミュウ。ロイも彼女をいたわるように支えながら、
「サイガ卿……お久しぶりです」
込み上げるものを胸に抱える、そんな笑顔で洋子を見るロイ。洋子も負けずに笑顔を返して、
「何言ってんの。たかだか二カ月よ?」
更にニカッと。
「ヨ、ヨウコ様! お戻りになられたのですか!?」
今度はアマリアだ。しかも、
「なに? ヨウコだと?」
「え~? うっそぉ~?」
「あらあら、まあまあ!」
古龍連も集まって来る。ただし、再び同じ問題が……
「ちょ、ちょっとあんたたち! なんて格好で歩き回ってんの! 浴場じゃないのよ、外よ! 河原なのよ!?」
洋子が慌てて諫める。アマリアだけはタオルこそ羽織っていたが、古龍連はスッポンポンのポンである。
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