状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

文字の大きさ
197 / 197
状況の人、最終決戦へ

状況の人と、勇者の帰還5

しおりを挟む

「あー! だめだめ! ロイ! 見ちゃダメぇー!」
「え? 何慌ててるんだよ。あれって古龍方の素のお姿なだけだろ?」
 いわゆるラッキースケベなイベントであるに、ポケ~とした無表情・無感動な眼のロイ。相変わらずイーミュウ以外の女性には我関せずらしい。
「シノさん! 古龍さん姉さん方はともかく、アマリアちゃんに何を野外プレイなんかさせてんの!? ちょっとそこに正座しなさい!」
「いや、そんな趣味ねぇし! つか、あれはウェンさんたちが無理矢理!」
「いいから正座しろ、このエロオタ!」
 いや、河原で正座とか、拷問でしょうよ洋子サン?
「わ、分かった分かった! すぐ服着せるから!」
 言われて龍海は再現で次々服を出した。よほど慌てたのか出す服出す服、すべてジャージであったが。

「そうかぁ。そんな顛末とはなぁ~?」
 ジャージを着ながら事情を聞いた古龍たちは昔の馴染みの帰還を歓迎していた。
「タツミの相棒であるし、その意味ではワシらの盟友も同然だからな。再び相見あいまえたことは大変喜ばしい。よし! 二次会はヨウコの歓迎会だな!」
 ――ほい?
「賛成、ペクちゃん! ロイちゃんたちも来てるし、テーブルに行こ!」
「さあさあ、ヨウコさん、イーミュウさんもいらっしゃいな!」
 ネーロやアーシーらにも喜ばれ、洋子や龍海たちは肩を竦めながらもフッと笑いを浮かべ、みんな揃って、会場となるコンロ周辺に向かって歩き出した。
 その途中で、
「ねえシノさん?」
洋子が尋ねてきた。
「ん?」
「あたしってさ……」
「……」
「シノさんの事、支配してた?」
「え? 何のこと……あ、さっきの話か?」
「シノさん、あの時……泣いてたでしょ?」
「ん~……ああ、あの時か? てかお前も泣いてただろ?」
「どう?」
「……さあな? お前は?」
「え?」
「俺に支配されてた、そんな風に思ってたか?」
「……う~ん、さてね?」
 答えにならない答えを交わす龍海と洋子。しかしてその二人の表情は、心の底から認め合ったお互いとの再会を喜んでいる――そんな笑顔だ。
「そう言えばヨウコよ?」
「ん? なあに?」
「話だと、すまほだけは故郷くにに帰したんだったな?」
道すがら、カレンが洋子に聞いてきた。
「そうだけど、それが?」
「そうか。う~む、残念じゃなぁ」
「なによ? なにが残念?」
「いや、ほれ。結婚式のタツミとロイの活動画、アレだアレ!」
「え? あれ? ああ、あの動画!?」
「う~む、また見られるかもと期待したのだが……いや残念無念!」
「良いんだよ、あんな動画! 公序良俗に反するあげな動画は、三千世界から消えてしまえばいいんだ!」
 トラウマ級の思い出に思わず「要らんネタを!」とプンスカする龍海。
「え~、あの破廉恥な絵草紙をいつもご覧になってるシノさまが公序良俗とか仰いますのぉ?」
「自分も見返したかったんですけどぉ~」
「黙れロイ! みんなの心の中だけに仕舞って表に出すんじゃねぇ!」
 意気消沈のカレンやロイ。これ以上は無いってくらい唇がとんがっている。
 だが。だが洋子。
「えっへへ~」
 不敵な笑みを浮かべ始め、
 ――ん?
一同の注目を浴びる。
「はい!」
 軽妙な掛け声とともに、ポケットから抜き出した洋子の右手人差し指と中指の間には、小さなメモリーカードがちょこんと挟まれていた。
 ――え?
 メモカを見た瞬間、脳内でいろんな点と点が結び合った龍海の血の気が一気に引いていく。そのメモリ内のデータ内容など想像するまでも無い。
「例のデータは写真含めてみぃんな、このカードに記録してスマホから抜き取っておいたの。スマホさえあればいつでも見られるわよ?」
 ――やっぱりぃー!
 龍海の血の気が更に引いた。おまけに冷汗ダラダラ~。
 それに比べて、思わぬ朗報に後光もかくやと思わせる光に包まれるカレンとロイ。当然オメメ、キ~ラキラ!
「でかしたヨウコ! さすが我が一番弟子!」
「あとは卿にすまほを再現してもらうだけですね!」
「断る!」
 龍海、当然に即答。
「よいではないかタツミ。それくらいは」
「なんだよメル! お前も見たいのか!?」
「そうですわ! ヨウコさまのご帰還のご祝儀に!」
「アマリアもかい! おまえら自分の亭主が男にNTRされても平気なんかぁー!」
「もう、御託はいいから、さっさとスマホ再現してよシノさん?」
「絶対ヤダ!」
「あら、そぉ~お? う~ん……。ねぇアマリアちゃん? シノさんの、いつも腰にぶら下げてる雑嚢って今日、持ってきてる?」
 ――ハ!
「え? ええ、タツミさまはいつも携帯されていますから、今日も……確かコンロの横に置いてあるかと?」
「それよ!」
 ――ま、まさか!
「その中にはタブレットが入っているはずよ! コミックだとあたしたちにバレるから、ダウンした電子書籍で満載のタブレットを再現してたから、あれならスマホより大きな画面で見られるわよ!」
「な! お前、また俺の雑嚢をこっそり!?」
「こっそりじゃない! シノさんが、トイレとかで居ない隙にと調べたの!」
 だからそれ、こっそり……
「く! させるか!」
 龍海はコンロに向かって全力で駆け出した。久々に筋力強化魔法発動! 
「むう! この機会を逃してなるものか! いくぞロイ!」
「はい、合点です!」
 目を血走らせ、即座に追いかけるカレンとロイ。
「おねえさん方ー!? シノさんを押さえてー!」
「え~? なあに~?」
「ウェン様! 例の動画が見られるぞ! タツミを押さえてくんなまし!」
 ――くそぉ! カレンのヤツ、余計な事を!
「なんと! あの美動画を再び!?」
「きゃー! なんて幸運!」
「なにか!? タツミを川に放り投げればよいのか? そうなんだな!?」
「おまかせ~!」
 ――なぜ――!?
 龍海の筋力強化もここまでであった。ナチュラルでこの上ない素早さを誇る古龍連に、ちょっとくらい魔法に秀でた程度の人間如きがその包囲をすり抜けられるべくもなく、龍海は5人の古龍お姉さま方に、雑嚢まで指先あと5,56mmのところでとっ捕まってしまった。
「あ、そ~れ!」
「うわ~!」
 バッシャーン!
 5人もの古龍に抗えるはずも無し。凄まじい水しぶきを上げて龍海は川に放り込まれてしまった。
「ぶは!」
 龍海が水面から顔を上げると、洋子がタブレットを操作して、みんなで例の動画を、きゃーきゃーと黄色い声を上げながら鑑賞しているのが見えた。
 ――終わった……
 万事休す、ガックリ項垂れる龍海。
「大丈夫ですか、タツミさまぁ?」
 アマリアが来てくれた。
「災難だったなタツミ」
 微笑むメルが手を差し出してくれた。アマリアもそれに倣う。
「…………へっ」
 憮然としていた龍海はであったが、やがてほんのちょっと噴き出すと、両手を出してメルとアマリアの手を取った。二人一緒で引き起こしてもらう。
「申し訳ありません、シノさま。が調子に乗っちゃってぇ」
 などと殊勝に詫びるイーミュウ。しかしその顔はテヘペロで笑っていた。その朗らかな笑顔に龍海も絆されていく。
「タ~ツミぃ! 早う来い! 歓迎会のビールも食材も足りんぞぉ!」
 カレンが催促してきた。次いで洋子、
「シノさぁ~ん! あたしも久しぶりに和牛とスイーツ食べたいわ~。早く来て~!」
と屈託のない笑顔で叫ぶ。そう、本当に屈託のない笑顔だ。
「おう! いまやるよ!」
 龍海はメルとアマリアを両手に抱きかかえ、身重のイーミュウを庇いつつ一緒に洋子たちの所へ歩き出した。
 川の水でびしょ濡れになった龍海の顔。メルとアマリア三人、顔を合わせて笑いあう。
 その濡れ落ちる水と共に龍海は人生二度目の、零れ出しているのに気づかない涙を流していた。
 だがそれは、一度目とは全く真逆の意味を持つ、そんな涙であった。



                                  完
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...