詩未満

奥田たすく

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 彼が口を開けば
 もう些細なことなのだ


 海に滑り落ちたときには
 決まって底から見上げる自分がいるんだ
 表面張力と一体になった自分と
 何も感じなくなった僕
 息をすることも
 億劫でなくなった僕

 両手を広げても
 世界を感じられなくなった
 なんでこんなとこまで来たのか
 覚えてた日もある

 しごく透明に 純粋な世界が
 一番生きづらかった
 唾も吐き飛ばせないような
 自分でいたくなかった

 揺れ動く水面が 光が
 僕によってもたらされたものでないこと
 まつ毛さえ見失ってしまった
 口を開いても何も出なくなった
 周りを見回すこともなくなった
 果てがないことを知った
 皆何も違わないことを知った

 
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