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しおりを挟む一体何を待ってるんだ
白線の上に並べた
二つきりのつま先
乾いたタータンは音がする
一体何を願っているんだ
少しばかり大きくなった右手には
変わりゃしないライカン
しけった火薬の気配がする
見え透いたゴールテープ
努力賞は涙の味なんてしない
心臓が呼吸にかき消されたら
僕は世界から一抜けぴ
それでも走れと言う
ようなヤツはいない
このレーンにはいない
競技場にはいない
吐き気 嗚咽
立ち眩み
酸っぱい唾液は吐き捨てた
眩んでいくのは世界の方で
僕は 僕は僕は
右手の感覚が消えた
辺りがやけに静かになった
ほらやっぱりタータンは音がするんだよ
僕を追い抜いた君の背中だけがはっきり見える
ふとその右手が持ち上げられた
君の手にそいつはあまりに小さく見えた
君あ何も言わずに走り続けていく
僕は 僕は
思わず踏み越えたのは白線
タータンは乾いてなんていない
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