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おうち帰りたい

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13歳 しあわせになるための「I」ter

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 マーガレットの剣では、ウィルフレッドとクリスはパーティで一度会っており、その時にクリスが落とした月の髪飾りをずっと大切に持っていると言う設定がある。年齢などの詳しい情報は語られないので、おそらく今の時期でも問題ないだろう。
 なんとしてでもクリスティアを会場へ連れて行き――いや、会場へ連れていくだけではない。月の髪飾りをつけるよう手配させ、そしてそれを王子に拾わせなくては。今回のパーティを逃したら、ただでさえ社交界に出たがらないクリスティアと殿下は会う機会がなくなってしまう。
 ――それに。
 アイテールは目を細めた。
 その日は、何としても動かなくてはいけないイベントがあるのだ。クリスティアにかまけてばかりはいれない。
 とにかく、その日はクリスティアと王子の出会いを優先しなくては。もし持っていないようなら、自分が彼女のために選んでも良いだろう。
「テディ様、クリスには月の髪飾りが似合うと思……、あの。念の為……本当に念の為伺いますが……」
 ある一つの考えに至ったアイテールは、顔を引き攣らせながらテディに聞く。
「クリスは社交界に一度も出ていませんが、ドレスや化粧道具を……持っていないという事は……」
 ないですよね、と続けようとした彼を、はっと顔を青くしたテディが遮った。
「……も、持ってない……」
「い、一着も?」
「持ってない……。お茶会とか、招待状が届いた瞬間に断ってるから……必要ないだろって……」
「……クリス……」
「いや……これは僕も考えが至らなかった……本当にごめん……」
 遠い目をしながら、2人して額を押さえ空を仰ぐ。
 ……今日も空は綺麗に青く澄んでいる。
 現実逃避をしていると、ワクワクを抑えきれないと言う表情でイベリス男爵を引き連れたクリスティアが姿を見せた。2人の姿を見て、講師も備品の確認をしていた場所から戻ってくる。
「おーい、2人とも。嬢ちゃん戻ってきたみてえだから訓練、続けるぞ。…………おーい?」
「アイ、テディ?」
「何してんだ? 2人して?」
 ……前途多難だ。
 その日アイテールはあまりにも剣の稽古に集中できず、何度も講師に投げ飛ばされ、父親に笑われた。

***

「王都へ行こう!」と食い気味にアイテールとテディに言われたクリスティアは、少し顔をあげ間髪入れずに「行かない」と答えた。
 今日も今日とて高く積まれたカール先生からの課題の山を右から左へ流していく彼女は、それきり顔をあげようとはしなかった。
 ので。課題を全く離そうとしない彼女を無理矢理馬車まで引き摺り、今に至る。
 王都グロリオサ。レシュノルティアの屋敷から馬車に揺れる事およそ七刻。揺れる馬車で痛む腰をさすりながらついたそこを見ると、わいわいと沢山の人と物で溢れていた。
 馬車は大きめの道で止まったようだ。忙しなく動く人々と、その間から見える焦茶のレンガで造られたたくさんの店。街行く人の服装は皆綺麗で、貴族御用達のお店が立ち並ぶ通りのようだ。

「……すごい」

 馬車から降り、キョロキョロと周りを見回すクリスティア。馬車の中では課題から顔を上げなかったが、流石に興味がひかれるらしい。

「クリス、王都は初めてか?」

 数人の従者に「後ろからついてきてくれ」と頼んだアイテールは、目を見開いておどろいているクリスティアに思わず笑いがこぼれる。

「……ううん。お母様のアトリエ、あるから……きた事は、ある」
「へえ、そうなんだ。……? でも、僕が屋敷に来てからは多分……」
「テディが来てからは、行った事ない。王都……勉強も稽古も、できる訳じゃないから」
「だよね……」
「だよな……」

 想像通りの言葉を返され、2人は苦笑いを浮かべる。

「今日、どこいくの? 私……お母様のアトリエ、行きたい」
「……それもいいけど……。姉さん、今日はこれだよ」

 馬車から少し歩いたところに、その店はあった。

「……これ……」
「クリス、今日は逃げても必ず捕まえるから……大人しくしててくれよ、頼むから」
「……姉さんを騙したの、本当に心苦しいんだけど……嫌いにならないでね?」

 ブティックと大きく書かれた二階建ての建物に、クリスティアの顔が明らかにゲンナリと歪んだ。さっと後ろにいる従者を確認する。明らかに、ただ王都に遊びに来ただけの人数ではない。中にはアイテールの屋敷で雇われている、イベリス男爵お墨付きの屈強な騎士もいるようだ。
 流石のクリスティアも、体格差のある男性に数で抑え込まれると弱い。

「…………」

 クリスティアは恨むようにアイテールを睨みつけたが、彼は全く意に返さず店の扉を開いた。
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