BLルートは絶対に回避してみせます!

おうち帰りたい

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13歳 しあわせになるための「I」ter

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 周りの人々が誰も気づかないくらいひっそりと駆けて行ったその人は、薄汚れたフード付きのケープから黒髪を覗かせていた。治安の良くないところから迷い込んでしまった孤児だろうかと一瞬思ったが、ここは貴族が多く訪れる通りだ。スリの可能性もある。
 何より気になるのが、彼の身体からは黒い靄のようなものが出ていた。あれは一体何なのだろうかと顎に手を当てる。
 ちらり、とアイテールはテディ達の方を見た。2人の会話はさらに盛り上がっているようだ。スケッチブックを取り出し、ドレスのデザイン案まで話し合っている。

「……すこし、様子を見るだけしておこう」

 厄介ごとに自分から首を突っ込む気はないが、それを差し置いてもあの人影は怪しすぎた。
 近くにいたメイドに一言声をかけ店を出る。すぐに従者が慌てて後を追ってきたが、手で制した。クリスティアが全力で逃げ出す可能性がまだある分、こちらに人手は割けない。食い下がる従者に「すぐ戻るから」と言い残し、半分逃げるように駆け出す。
 コートの中に隠し持った小振りのナイフを確認し、先ほどの人影が消えていった細い路地へ足を踏み入れた。アイテールは剣術のついでに体術も習っている。ナイフ一本だけでもそこらのコソ泥には余裕で勝てる自信があった。

「……どこまで行った?」

 路地はかなりの距離だ。高い壁に囲まれ、昼にもかかわらず薄暗い上に障害物も多い。突き当たりどころか、手を伸ばした先まで見えづらかった。
 一歩大通りから外れただけで、纏う空気が全く違う。もしかすると、治安が悪い場所と繋がる抜け道があるのかもしれない。貴族が行き交う表の通りは絶好の狩場だ。
 それにしても、この暗さ。このまま進むにはあまりにも危険すぎる。

「……光よルクス

 ボソリとそう言うと、アイテールの拡げた手のひらに球体の光が浮かび上がった。光魔法だ。
 3年前から訓練の始まったそれは、アイテールは今でも明かりを灯す程度しか扱うことができない。光魔法の醍醐味でもある治癒が、全くもって使えないのだ。レシュノルティア家で時折すれ違うカール――クリスティアの家庭教師――にも時折助けをもらっているが、なぜか少しも進歩しないのだ。……クリスティアの得意魔法は水だが、もう光魔法も殆どマスターしてしまっている。
 ぼんやりと光に灯され浮かんだ路地は、どこか薄気味悪く感じる。

「……あの人影……もう、かなり離れてしまったか」

 障害物に邪魔をされながら、アイテールは慎重に路地を進んでいく。足音を立てないように、どこから襲い掛かられても撃退できるようにと意識を割いているからか、手のひらの光はゆらゆらと消えたりついたりを繰り返していた。
 ……集中が切れてきた。
 路地はまだ続いているが、戻ったほうがいいだろうか。安定しない光を見ながら、ふうと息をついたその時。

「……、」

 微かだが、話し声が聞こえた。
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