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2日目 木曜日
雛祭さんは解かりたい 2
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みくりの家。かなり久しぶりに来たな。
たぶん、最後に遊びに来たのは、小学三年生のときだったような気がする。四年生になってからは、どうしてか女の子の家に遊びに行くのが恥ずかしくなってしまって、みくりに遊びに誘われても、そっけなく断ってしまっていた。
誘いを断られて、さみしそうにしているみくりの顔を見たくなくて、おれ以外と遊んでいるみくりを見たくなくて、おれはだんだんと下は下へと、うつむいていったような気がする。もともと陰キャな性格だったのが、自分の情けなさをまのあたりにして、よけいに欝々としていった。みくりのほうは、まったく変わらない。いや、陰キャと陽キャというよりも、おれがだだ、ふてくされてるだけなのかもしれない。
さて。みくりの家は小学校三年のころ以来だが、あの頃に見たまんまだ。築何十年といった感じのぬくもりあるほっとする外観に、ていねいに手入れされた庭。ガーデニング好きのみくりの母親が毎日手入れしているのだったけか。みくりが好きな紫陽花は、この時期は葉っぱのみになっている。梅雨の時期になると、玄関に紫陽花が飾ってあって、遊びに行くとそれを見るのがおれのひそかな楽しみだったんだよな。
なんてうだうだ思い出を思い出しているのも、インターホンを押すのをうじうじ戸惑っているからだ。指を出しては引っこめて、ここに立って何分たったんだろうか。
あーもう。女子の家のピンポンなんて、どうやって押せばいいんだよ。あまり指紋はつけないほうがいいか。手首の表側で、グッとやるべきか。いや、みくりにラインして玄関まで来てもらうのが自然だろ。でもそれはなんだか、かっこわるいような気もする。
「あら、鯉幟くん。早いですね」
ビクッとして振り返ると、雛祭さんが秋風にのってふわりと現れた。黄金色の太陽光に照らされ、しゅるんとなびく黒髪は、シャンプーのCMのモデルのようだ。同じ高校生とは思えない。
ひざ丈の黒いプリーツスカートに、白のブラウス、ニットのアウターを着て、足元はこのあいだ見たローファー。今日も、雛祭さんはおれとは違う空間の光のなかにいるんじゃないかと思うほどに、きれいで可愛いかった。
「こんなところで、鯉幟くんは何してるんですか? みくりさんのお宅は、こちらですよね」
「いや、今インターホン押そうとしてたんだよ」
「そうですか。じゃあ、わたしが開けましょうか」
「あ、ああ。じゃあ、お願いしようかな」
しどろもどろにそういうと、雛祭さんはニコッとほほ笑み、インターホンの前に進み出た。しかし、いっこうにボタンを押すようすがなく、おれはひとり、汗を飛ばしていた。
どうしたんだ、雛祭さん。じっとして、動かないんだが。
声をかけようと、手を伸ばした、その時。
雛祭さんが、人差し指で、天を指さした。そのまま、空中になにかを描いている。な、なんだ―――?
そして、ゆっくりと指先をインターホンの前に移動させ、すう、と息を吸いこんだ。
「アホラオㇴンカ!」
透きとおった耳ざわりのいい声で叫ぶ、不可思議な言葉。おれは呆気にとられ、雛祭さんの横顔を見る。雛祭さんは満足げな表情で胸をはり、「ふふん」と鼻を鳴らした。
今の、呪文みたいなやつ。これって、まさか……あれか?
「さあ、これで天野川家の門が開きました。入りましょう」
「いや、インターホン押そう!?」
「日本での開錠呪文は、インターホンというのですね。エーデルリリィの開錠呪文は、アホラオㇴンカというんですよ。意味はですねえ……」
「ちょっと、ちょっとー。うちの前でなに騒いでんのー」
エーデルリリィの開錠呪文で門は開かず、みくりが召喚されたようだ。おれは、引きつった顔のまま、「何も……」と蚊の鳴くような声量で答えた。
けっきょく、インターホンが押されることはなかった。
「えーと。雛祭さんって、魔法も使えるのか」
天野川家の玄関で靴をそろえつつ、たずねる。すると、雛祭さんは顔をカアッと真っ赤にさせた。
玄関マットにふわふわのスリッパを並べているみくりが、なんだなんだ、とおれと雛祭さんを交互に見やる。
「実は、わたし……魔法がへたっぴで」
「そ、そうなのか……」
「家で何度もこっそり練習してるんですけど、エーデルリリィではできてたはずの魔法も、スランプなのかできなくなってるんです」
目にじんわりと涙を浮かべる、雛祭さん。
雛祭さんが、失くした記憶にどんな記憶を上書きしてるのか、だんだんわかってきた。
雛祭さんは『マシュかわ』の主人公の設定を、自分のものにしているようだ。
マシュかわの主人公も、魔法がへただった。深窓の令嬢に可愛がられすぎて、スランプにおちいり、魔法がまったく使えなくなった時期もあった。
なんとか令嬢といっしょにもう特訓し、少しずつ魔法が使えるようになっていく。クライマックスで深窓の令嬢を外に出すために、屋敷の門を開錠呪文『アホラオㇴンカ』で開けたときは、読んでいて胸が熱くなった。
でも、たぶん雛祭さんは練習しても魔法は使えない……よな。
「たくさん練習すれば、また魔法が使えるようになりますよね?」
大きな瞳から、今にも涙をこぼしそうにしながら、雛祭さんはおれの手を両手で包みこんだ。
無理なんだ、雛祭さん。日本では、魔法は使えない。いや、イギリスでも、イングランドでも、スコットランドに行ったとしても、雛祭さんに魔法は使えない。
だけど———おれが今いうべきなのは、こんな言葉じゃないよな。
「なるよ」
「本当ですか?」
「だって、今まで使えてたんだろ。なら、大丈夫だ」
「……はい! わたし、スランプを乗り越えてみせます」
真っ赤な顔を笑顔でいっぱいにして、雛祭さんは、ますます俺の手を握りしめた。気合が入りすぎてて、じゃっかん痛いんだが。
雛祭さんに見つめられている時間が数十秒続いたかと思うと、みくりがおれと雛祭さんのあいだに、ぐいっと割って入ってきた。
「ちょっとお! 大知!」
「な、なんだよ。おれ、何かしたかよ」
「スリッパ用意してあげたんだから、ちゃんとはいてよね」
雛祭さんもみくりも、いつのまにかふわふわのスリッパをはいていた。よく見ると、シロクマのようなキャラクターもののスリッパのようだ。
こんなん、高校生男子がはいていいのか、と思いつつも、よじよじとシロクマのなかに足をふみいれた。足の裏に、シロクマのぬくもりを感じて、居心地が悪い。
みくりの両親は、共働きなので、十八時以降にしか帰ってこない。二階にある、みくりの部屋に案内される。
久しぶりのみくりの部屋だが、やはり小学生のころから、あまり変わったようすは見受けられない。もちろん、物は増えているし、雑貨の雰囲気も変わったが、みくりの部屋だなあ、という感じで、あんなに家の門の前で緊張することはなかったようだ。あいかわらず、サン〇オとポケ〇ンが好きなんだな、安心する。
みくりがお茶とお菓子を用意してくれる。丸いローテーブルに、おれ、雛祭さん、みくりと座り、いよいよ異世界言語教室のはじまりだ。
国語の教科書や図書館で借りてきた本を広げて、雛祭さんにわからない単語の読み方や、文章の意味を教える。
雛祭さんは、エーデルリリィの言葉や、魔法の呪文、妖精たちのことなどを教えてくれる。まあ、『マシュかわ』はおれも読んでいるので、ギアルやアホラオㇴンカといった言葉はなんとなく覚えている。一回しか読んでいないから、あいまいな言葉もあるが。
しかし雛祭さんは、自分以外はエーデルリリィのことを知らないと思っている。これがややこしい設定だよな。どこまで話をあわせるべきなのか、悩む。
いっそ、みくりにも『マシュかわ』を読ませるべきか?
「ちょっと、鯉幟くん! 聞いてます?」
雛祭さんが、ぐいっとおれの鼻先まで近づいてくる。おわっ、なんだ、怒ってるぞ。
そうか、考えに夢中で、雛祭さんの話、あまり聞いてなかったのかもしれん。
「えーと。聞いてる、聞いてる」
「あら、そうですか。じゃあ、わたしが今いったエーデルリリィの言葉、くりかえしていってみてくださいよ」
真剣な顔の雛祭さん。
みくりは頬杖をついて、焦るおれをあきれたようすでながめている。
「えーと、くりかえすの?」
「はい、『告白するときに使う、エーデルリリィの言葉』ですよ。お願いします」
「うわ、あえ、あ……まじ?」
それは、『マシュかわ』のラストで、深窓の令嬢が主人公にいった、愛の言葉ってやつじゃないのか!?
いや、むり、いえん。異世界の『告白するときの言葉』なんで、女子ふたりの前でいえるわけないだろ。恥ずかしすぎる。陰キャ、なめんなよ。
「いえないんですか? やっぱり、わたしの話、聞いてくれてなかったんですね」
「い、いや、聞いてたって!」
「じゃあ、いってください」
「うあ、え、あー。えーと」
「大知ってば、さいてー。雛祭さん、かわいそー」
「みくり! そういうふうにいうの、やめろ。ガチでやめろ」
「ほんとは知ってるんでしょ? だって、読んだんだもんね」
みくりが、こっそりと耳打ちしてくる。すると、ベッドの上できれいに畳まれた布団のあいだへと、そっと手を伸ばした。ゆっくりと、ひっぱり出してきたもの。
『マシュかわ』だ。
くそ、こいつ、『マシュかわ』読んでたのかよ。
「いいなよ、ほら。異世界の、愛の告白」
「うう、うう……」
女子ふたりににらまれるのは、かなりこたえる。精神的に。
おれは、恥ずかしいほどに熱をもった顔をうつむかせ、羞恥でたえられないメンタルを、握りこぶしを作ってなんとか持ちこたえる。
異世界の愛の告白だと?
日本語でも、まだいったことないのに。
くそ!
「マ、マシュマロマシマシ……」
「あら、ちゃんと聞いてたようですね。そうです。エーデルリリィでは、そうやっていうんですよ」
「すごいじゃん、大知。さすが、ラノベ博士」
おい、『マシュかわ』の作者。
おれの人生初の愛の告白、どう責任とってくれんだよ。
たぶん、最後に遊びに来たのは、小学三年生のときだったような気がする。四年生になってからは、どうしてか女の子の家に遊びに行くのが恥ずかしくなってしまって、みくりに遊びに誘われても、そっけなく断ってしまっていた。
誘いを断られて、さみしそうにしているみくりの顔を見たくなくて、おれ以外と遊んでいるみくりを見たくなくて、おれはだんだんと下は下へと、うつむいていったような気がする。もともと陰キャな性格だったのが、自分の情けなさをまのあたりにして、よけいに欝々としていった。みくりのほうは、まったく変わらない。いや、陰キャと陽キャというよりも、おれがだだ、ふてくされてるだけなのかもしれない。
さて。みくりの家は小学校三年のころ以来だが、あの頃に見たまんまだ。築何十年といった感じのぬくもりあるほっとする外観に、ていねいに手入れされた庭。ガーデニング好きのみくりの母親が毎日手入れしているのだったけか。みくりが好きな紫陽花は、この時期は葉っぱのみになっている。梅雨の時期になると、玄関に紫陽花が飾ってあって、遊びに行くとそれを見るのがおれのひそかな楽しみだったんだよな。
なんてうだうだ思い出を思い出しているのも、インターホンを押すのをうじうじ戸惑っているからだ。指を出しては引っこめて、ここに立って何分たったんだろうか。
あーもう。女子の家のピンポンなんて、どうやって押せばいいんだよ。あまり指紋はつけないほうがいいか。手首の表側で、グッとやるべきか。いや、みくりにラインして玄関まで来てもらうのが自然だろ。でもそれはなんだか、かっこわるいような気もする。
「あら、鯉幟くん。早いですね」
ビクッとして振り返ると、雛祭さんが秋風にのってふわりと現れた。黄金色の太陽光に照らされ、しゅるんとなびく黒髪は、シャンプーのCMのモデルのようだ。同じ高校生とは思えない。
ひざ丈の黒いプリーツスカートに、白のブラウス、ニットのアウターを着て、足元はこのあいだ見たローファー。今日も、雛祭さんはおれとは違う空間の光のなかにいるんじゃないかと思うほどに、きれいで可愛いかった。
「こんなところで、鯉幟くんは何してるんですか? みくりさんのお宅は、こちらですよね」
「いや、今インターホン押そうとしてたんだよ」
「そうですか。じゃあ、わたしが開けましょうか」
「あ、ああ。じゃあ、お願いしようかな」
しどろもどろにそういうと、雛祭さんはニコッとほほ笑み、インターホンの前に進み出た。しかし、いっこうにボタンを押すようすがなく、おれはひとり、汗を飛ばしていた。
どうしたんだ、雛祭さん。じっとして、動かないんだが。
声をかけようと、手を伸ばした、その時。
雛祭さんが、人差し指で、天を指さした。そのまま、空中になにかを描いている。な、なんだ―――?
そして、ゆっくりと指先をインターホンの前に移動させ、すう、と息を吸いこんだ。
「アホラオㇴンカ!」
透きとおった耳ざわりのいい声で叫ぶ、不可思議な言葉。おれは呆気にとられ、雛祭さんの横顔を見る。雛祭さんは満足げな表情で胸をはり、「ふふん」と鼻を鳴らした。
今の、呪文みたいなやつ。これって、まさか……あれか?
「さあ、これで天野川家の門が開きました。入りましょう」
「いや、インターホン押そう!?」
「日本での開錠呪文は、インターホンというのですね。エーデルリリィの開錠呪文は、アホラオㇴンカというんですよ。意味はですねえ……」
「ちょっと、ちょっとー。うちの前でなに騒いでんのー」
エーデルリリィの開錠呪文で門は開かず、みくりが召喚されたようだ。おれは、引きつった顔のまま、「何も……」と蚊の鳴くような声量で答えた。
けっきょく、インターホンが押されることはなかった。
「えーと。雛祭さんって、魔法も使えるのか」
天野川家の玄関で靴をそろえつつ、たずねる。すると、雛祭さんは顔をカアッと真っ赤にさせた。
玄関マットにふわふわのスリッパを並べているみくりが、なんだなんだ、とおれと雛祭さんを交互に見やる。
「実は、わたし……魔法がへたっぴで」
「そ、そうなのか……」
「家で何度もこっそり練習してるんですけど、エーデルリリィではできてたはずの魔法も、スランプなのかできなくなってるんです」
目にじんわりと涙を浮かべる、雛祭さん。
雛祭さんが、失くした記憶にどんな記憶を上書きしてるのか、だんだんわかってきた。
雛祭さんは『マシュかわ』の主人公の設定を、自分のものにしているようだ。
マシュかわの主人公も、魔法がへただった。深窓の令嬢に可愛がられすぎて、スランプにおちいり、魔法がまったく使えなくなった時期もあった。
なんとか令嬢といっしょにもう特訓し、少しずつ魔法が使えるようになっていく。クライマックスで深窓の令嬢を外に出すために、屋敷の門を開錠呪文『アホラオㇴンカ』で開けたときは、読んでいて胸が熱くなった。
でも、たぶん雛祭さんは練習しても魔法は使えない……よな。
「たくさん練習すれば、また魔法が使えるようになりますよね?」
大きな瞳から、今にも涙をこぼしそうにしながら、雛祭さんはおれの手を両手で包みこんだ。
無理なんだ、雛祭さん。日本では、魔法は使えない。いや、イギリスでも、イングランドでも、スコットランドに行ったとしても、雛祭さんに魔法は使えない。
だけど———おれが今いうべきなのは、こんな言葉じゃないよな。
「なるよ」
「本当ですか?」
「だって、今まで使えてたんだろ。なら、大丈夫だ」
「……はい! わたし、スランプを乗り越えてみせます」
真っ赤な顔を笑顔でいっぱいにして、雛祭さんは、ますます俺の手を握りしめた。気合が入りすぎてて、じゃっかん痛いんだが。
雛祭さんに見つめられている時間が数十秒続いたかと思うと、みくりがおれと雛祭さんのあいだに、ぐいっと割って入ってきた。
「ちょっとお! 大知!」
「な、なんだよ。おれ、何かしたかよ」
「スリッパ用意してあげたんだから、ちゃんとはいてよね」
雛祭さんもみくりも、いつのまにかふわふわのスリッパをはいていた。よく見ると、シロクマのようなキャラクターもののスリッパのようだ。
こんなん、高校生男子がはいていいのか、と思いつつも、よじよじとシロクマのなかに足をふみいれた。足の裏に、シロクマのぬくもりを感じて、居心地が悪い。
みくりの両親は、共働きなので、十八時以降にしか帰ってこない。二階にある、みくりの部屋に案内される。
久しぶりのみくりの部屋だが、やはり小学生のころから、あまり変わったようすは見受けられない。もちろん、物は増えているし、雑貨の雰囲気も変わったが、みくりの部屋だなあ、という感じで、あんなに家の門の前で緊張することはなかったようだ。あいかわらず、サン〇オとポケ〇ンが好きなんだな、安心する。
みくりがお茶とお菓子を用意してくれる。丸いローテーブルに、おれ、雛祭さん、みくりと座り、いよいよ異世界言語教室のはじまりだ。
国語の教科書や図書館で借りてきた本を広げて、雛祭さんにわからない単語の読み方や、文章の意味を教える。
雛祭さんは、エーデルリリィの言葉や、魔法の呪文、妖精たちのことなどを教えてくれる。まあ、『マシュかわ』はおれも読んでいるので、ギアルやアホラオㇴンカといった言葉はなんとなく覚えている。一回しか読んでいないから、あいまいな言葉もあるが。
しかし雛祭さんは、自分以外はエーデルリリィのことを知らないと思っている。これがややこしい設定だよな。どこまで話をあわせるべきなのか、悩む。
いっそ、みくりにも『マシュかわ』を読ませるべきか?
「ちょっと、鯉幟くん! 聞いてます?」
雛祭さんが、ぐいっとおれの鼻先まで近づいてくる。おわっ、なんだ、怒ってるぞ。
そうか、考えに夢中で、雛祭さんの話、あまり聞いてなかったのかもしれん。
「えーと。聞いてる、聞いてる」
「あら、そうですか。じゃあ、わたしが今いったエーデルリリィの言葉、くりかえしていってみてくださいよ」
真剣な顔の雛祭さん。
みくりは頬杖をついて、焦るおれをあきれたようすでながめている。
「えーと、くりかえすの?」
「はい、『告白するときに使う、エーデルリリィの言葉』ですよ。お願いします」
「うわ、あえ、あ……まじ?」
それは、『マシュかわ』のラストで、深窓の令嬢が主人公にいった、愛の言葉ってやつじゃないのか!?
いや、むり、いえん。異世界の『告白するときの言葉』なんで、女子ふたりの前でいえるわけないだろ。恥ずかしすぎる。陰キャ、なめんなよ。
「いえないんですか? やっぱり、わたしの話、聞いてくれてなかったんですね」
「い、いや、聞いてたって!」
「じゃあ、いってください」
「うあ、え、あー。えーと」
「大知ってば、さいてー。雛祭さん、かわいそー」
「みくり! そういうふうにいうの、やめろ。ガチでやめろ」
「ほんとは知ってるんでしょ? だって、読んだんだもんね」
みくりが、こっそりと耳打ちしてくる。すると、ベッドの上できれいに畳まれた布団のあいだへと、そっと手を伸ばした。ゆっくりと、ひっぱり出してきたもの。
『マシュかわ』だ。
くそ、こいつ、『マシュかわ』読んでたのかよ。
「いいなよ、ほら。異世界の、愛の告白」
「うう、うう……」
女子ふたりににらまれるのは、かなりこたえる。精神的に。
おれは、恥ずかしいほどに熱をもった顔をうつむかせ、羞恥でたえられないメンタルを、握りこぶしを作ってなんとか持ちこたえる。
異世界の愛の告白だと?
日本語でも、まだいったことないのに。
くそ!
「マ、マシュマロマシマシ……」
「あら、ちゃんと聞いてたようですね。そうです。エーデルリリィでは、そうやっていうんですよ」
「すごいじゃん、大知。さすが、ラノベ博士」
おい、『マシュかわ』の作者。
おれの人生初の愛の告白、どう責任とってくれんだよ。
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