星の衝動

Tachibana

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社会人になって5回目の春だ。
かわいい後輩は入ってくるだろうか、
なんてもう期待する気もない。
なぜなら来年の今頃、俺は異動だからだ。

結婚を考えた彼女と遠距離になって別れたのが、去年。
俺が名古屋で相手が福岡。
はじめはやっていけると思ったが、
遠距離になって1年経つと
俺の気持ちも変わっていくのに気づいた。
「俺たち、終わりにしよう。」
最後に会った時の自分の言葉と
「わかった。」と俯く彼女の姿が
未だに頭から離れない。

それからも彼女にしたいと思う人は見つからなくて
その辺にいる女の子で欲望を満たしていた。
でも遊ぶことにももう飽きて
恋人がほしいと心底思うが、
今からうまく恋人ができたとして、同期ならまだしも、
後輩とは最低1年以上の遠距離になる。
さすがに異動してから相手を探したほうがいい。

こんなことを打算的に考えるなんて
つまらない大人になってしまった。
俺より下のやつらがはしゃぐ様子を見て羨ましくなる。
どうも魅力的な後輩が入ってきたらしい。



「葉山さん、昨日の新入社員歓迎会来たほうがよかったですよ。椿美香(つばき・みか)ちゃんって子がかわいい。部署違うのが惜しいです。」
2年目の堺が隣の席で独り言のように話しかけてきた。
1年目と2年目なら、さぞ気も合うことだろうな。
「よかったな。連絡先でも交換したのか?」
「いやいや。さすがにそこまではがっつきませんよ。まだまだこれから長いですし。それに他の先輩方にも人気で俺が話す暇なんてほとんどなくって。」

堺によると、見た目が良いだけではなく性格も申し分ないらしい。
まだ1年目の春なんだから、そんなに評価を上げてやらないほうがいいだろうに。
老婆心ながら、俺のいる部署に入った新人を見て、
会ったこともない彼女を気の毒に思う。

「松本と言います。よろしくお願いします。」
顔はその辺のモデルよりもかっこいいのだが、
声が小さくて、猫背で、無表情だ。
恐らく椿さんとは違って評価は低めだろう。
しかし、初めのうちはこのくらいのほうが楽でいい。
最初のころ、俺と堺と松本は3人でよく飲んだ。
 
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