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聖女誕生の神託
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「父上、母上。戻りました」
お兄様と一緒に食堂へ向かった。お兄様は騎士団で売っているおにぎりをマイルに頼んで、特別に取り置きをしてもらっていたが、先輩たちに見つかり取り置きできなくなった。今は先輩や後輩にもまれながら、毎日おにぎり戦争に参加している。
「世間の厳しさを知ったよ」と寂しそうに微笑んだお兄様は、またひとつ大人の階段を登ったように凛々しかった。でも、宰相のお父様は部下たちに「出資者が得して何が悪い」と言い切り、マイルに毎日できたてのおにぎりを届けさせていることは黙っておく。
お兄様は屋敷に帰ると、調理長のミゲルたちの作る料理を楽しみにしている。ミゲルたちもお兄様のために、少し豪華な料理を準備しているだろう。
カイルはふたりの口元が緩んでいるのをみて、やっぱり兄弟だなと笑いを堪えた。
食堂に着くとお父様とお母様がすでに椅子に座っていた。お互い元気な姿に安心して、食事が始まった。
「ところで、父上今日は重要な話があるとか」
「ああ・・・エレーナもよく聞きなさい。聖都教会から神託が下りた。突拍子もない話だが、この国の15歳から16歳の貴族の令嬢に聖女の力が発現すると言う」
お母様も初めて聞いたのだろう、ぽかんとしている。お兄様と私もお互いの顔を見てしまった。聖女と言えばこの国を建国したのが、異世界から現れた勇者と聖女だ。協会でも遺物を大切に保管している。
教科書でも必ず習うし、この国でふたりを知らないものはいないだろう。
「それは・・・どういうことです」
「古の時代魔獣や魔王がいた時代の名残で、今でも500~1000年に一度のサイクルで聖女がこの国の国民から現れるのは知っているね。それが神託によると今日現在で15・16歳の貴族の令嬢だというのだ。魔王は完全に消滅、わずかに残っている魔獣は我々でも倒せる。しかし、聖女の治癒魔法は今でも病気や怪我をした人からすれば大変貴重だ。見つかればこの国で大切に保護されるだろう」
「まさかエレーナも連れて行くと?」
「今までエレーナの安全を考え外出を控えてたが、今回ばかりは王命だ。15歳から16歳の貴族の娘は全員王宮に呼ばれている。宰相である私だけが断ることはできない。すまないが、アレンは仕事なのでカイルと私が王宮へ付き添う」
「王女の子守りですか・・・」
「そうだ。アリフォンヌ王女がアレンを自分の護衛に引き抜こうと躍起なのが気に入らないが、聖女の選出に王女を引き離せるのは好都合だ」
とんでもなく我儘で思いやりのかけらもないアリフォンヌ王女が、エレーナを見れば辛辣な言葉を吐き出すことは目に見えていた。
「あの王女の世話ですよね。普段はお断りしていますが、今回だけはしょうがありませんね」
「ねえ、私王宮に行けるの?」
エレーナは賢い娘だ。行けばどんな嫌な思いをするか理解しているが、好奇心の方が勝っているのだろう。目を輝かせお父様を見つめている。お父様は自分が言っておきながらも嫌そうに『そうだな』と答えた。
「そうだわ。エレーナが一番お気に入りの薄紫のドレスで行きましょうね」
「お母様、あれを着ていいの?」
「ええ、いいわ。成人を祝うパーティーには違うドレスを作ればいいわ」
この国の令嬢は成人にあたる16歳になると、王宮で成人パーティーに出席するのが習わしだ。エレーナは参加できないが、母が家族で成人パーティーを楽しみましょうとドレスを作ってくれたのだ。
試着で着た豪華なドレスは、胸元がすっきりするようカットされ大人っぽいデザインになっている。くるくると周るとドレスの裾が何重もの花びらのように広がってとても美しかった。そして、ハーフアップした髪形は、お母様とお揃いでエレーナはとても嬉しそに笑っていた。
「ああ、太い腕と足がもう少し細くなればいいのに」と鏡を見て普通に感想をいっただけだが、母やリズの顔が一瞬曇った。不味いと思い「でも、家でドレスを着るのもいいものね。ふっふっふ」と笑えば、ふたりの安心したように微笑んでくれた。
『もっと言葉に気を付けなくちゃ。危なかったわ』
この家では私が中心に家が回っているのではないかと思うことすらある。
少し暇そうにしているだけでも執事のベンが、突然何もないポケットから鳩を出した。カイルは目を見開き「今のは、魔術か?」と聞くものだから笑ってしまった。みんなが私を気にかけてくれている。
昔を知らないカイルだけは平気で私を「子豚ちゃん」と呼んでくる。
昔の私を知らない使用人の方が楽かもしれないと思う時がある。
***
それから1カ月が経ち、準備に追われあっという間に謁見の日が来た。今日は朝からお母様とリズが身体を磨きあげ、髪の毛を結ってくれた。
仕上がりを見て満足そうにお母様が私を抱きしめた。
「貴方はどこに出してもおかしくないぐらい立派にマナーも覚えたわ。堂々としていなさい」
階段の下で待っていたお父様は、目にうっすら涙を浮かべ「小さかったエレーナが、すっかり大人になったな」と褒めてくださった。カイルも「とても美しいよ」言ってくれたのはお世辞でも嬉しかった。
屋敷にいるみんなが玄関に集まり見送りをしてくれた。ミゲルやヨハンまでいるから、ほぼ全員ここにいるのだろう。馬車に乗り込むと「カイル、私は本当に呪いがかかっているのかしらと思う時があるわ。だってこんなに幸せだもの」と呟いた。
お母様も屋敷のみんなも馬車が見えなくなるまで手を振ってくれた。私も必死に手を振った。カイルは心の中で『エレーナはありのままの姿が美しい』と囁いた。
***
王宮に着くと、お父様が昔一緒に来たことがあると言っていた。
幼すぎて記憶がないので、初めて見る王宮の大きさに気後れしながら広間に向かって歩き出す。
宰相を務めるお父様は顔が広い。廊下で出会った騎士やメイドたちがすぐさま端により頭を下げる。そして私を見て『誰だ?』という顔をするのだ。気づいたお父様が「娘のエレーナだ」と答えると、口をあんぐり開けて驚いていた。
(いいのよ。両親を知っていれば、どんな遺伝子だよと思うわよね普通)
晩餐会でも使用される1番広く豪華な広間に着くと、奥に祭壇が置かれていた。
お母様やお兄様から聞いていた、晩餐会の光景を一度は見たいと思っていた。今日は飾りつけもないけど着飾った多くの人だかりに、晩餐会の光景を想像して楽しむ。
(ああ、ここでみんながダンスを優雅に踊って、食事を楽しむのね)
今は椅子だけが並べられた空間になっている。奥には白い制服の聖騎士たちと教皇や王宮の黒い制服の護衛達が並んでいた。
(気が重いけど、何を言われても堂々としていよう)
周りを見れば年の近い可愛らしい令嬢たちが両親に付き添われ並んでいた。
普段から磨かれ、美を追求している令嬢たちだ。
髪は艶があり、肌もきめ細かい。
化粧も自分に似合っているものを心得ている。
普段から着なれているドレスも様になっている。
貴族の令嬢にとって、男性に見初められることは人生を左右するほど重要なことだ。
絶食をしてまで体型を維持しているのに、私のように太っている令嬢は皆無だ。
(私は食事を制限しても運動をしても呪いで痩せないのよね。太っている令嬢なんて珍しいわよね)
みんなが私を見ると一応に驚いた顔をする。
「まさか、ブラウン侯爵家の深窓の令嬢ってあの方なの?」
「深窓の令嬢というか、ただ恥ずかしくって家から出せなかっただけじゃない」
「あの美しいアレンと全然似ていないわ。あの方は養女なの?」
興味津々な目線が、エレーナに突き刺さる。
「私だったら人前に出るのは遠慮するわ」
エレーナが着ているドレスは胸の開いたデザインで少しでもエレーナが痩せて見えるように工夫されている。でも、太った身体は隠せない。この醜い顔も化粧ぐらいではごまかせない。
(自分でも分かっているけど、直接笑われると心が折れそうになるわね)
屋敷ではそんな私を可愛いと言ってくれる両親やお兄様たちがいたおかげで、自分の醜さは忘れがちだ。厳しい現実に歩みが遅くなると、お父様が私の手を強く握った。
「愛する娘のエスコートができて嬉しいよ」
お父様が私に優しく微笑むと、婦人たちがうっとりしてため息をついていた。
後ろを振り返りカイルを確認すると、いつものふざけた笑顔で「躓いて転ぶなよ」と言ってきた。
そうすると、カイルの笑顔を見た令嬢たちも何故か顔を赤くして、のぼせたようになっている。
「ねえ、あの方も貴族かしら」
「素敵だわ。婚約者はいらっしゃるのかしら」
そして、私を交互に見て「なんであんな醜い女に」と言い出した。
「可哀そうに、絶対無理やりお金で雇われたのよ」
「宰相陛下のお力があれば、嫌とは言えないでしょ」
「何か断れない理由があるのよ」
悪徳令嬢を見るような蔑んだ、冷たい視線に変わっていた。
エレーナも『分かっているわよ。貴方たちに言われなくてもカイルが仕事で付き合ってくれていることぐらい』と言葉に出そうになって、ぐっと堪えた。
指定された位置に着くと、私の隣にカイルが立った気配がしたがカイルを見ることはできなかった。
そうするとカイルは膝を少し曲げ、私の耳元で「エレーナ、君が好きだよ。他人の言葉は毒だ。気にするな」それだけ言って元の姿勢に戻った。驚いて隣を見ると、カイルの逞しい喉仏と整った横顔が見えた。
(はあ・・・今なんて)
カイルの「くっくっ・・・」と笑いを殺した声が聞こえる。
(からかわれた?)
頭が真っ白になっていると最後に王族たちがこちらに歩いてくるのが見えた。
最初に歩くのは、この国の第一王子のオーエン王子だ。
噂では気高く美しい王子と聞いてアレンお兄様より美しい人って、どんな方かしらと乙女心でどきどきしたものだ。歩いて来る王子は確かに金髪で背も高く、そこそこ顔も良かった。
(私の周りにはイケメン度が高いのよね。無駄に目だけが肥えていけないわね)
オーエン王子の登場で「キャー」という黄色い声があがることに理解ができない。
自信過剰なのか、王子は手を振って歩いている。
「オーエン王子様!」
「私を見たわ」
お母様も時代によってマナーに多少変化があるかもしれないと言っていた。私の知らない最近のマナーだろうか。私も「キャー」と言って騒がないと不敬罪になるのだろうかと悩んでいると、王子がピタっと私の前で止まった。
「宰相、隣の令嬢は・・・」
「ひとり娘のエレーナです。身体が弱く普段は屋敷を出ることができないので紹介が遅れました」
「そうか、そういうことか。何度も紹介しろと言っていたが、この顔であれば王宮に連れて来れないわけだ」
父の握る手に一瞬力が入った。
「オーエン様、女性に笑うなど失礼ですわよ・・・ふふ」
娼婦のように胸がバックり開いたドレスの令嬢が私を蔑むような顔で王子の横に立った。まだ胸を強調したいのか、年齢に似つかわしくない大ぶりのダイヤのネックレスが胸元で輝いていた。
「さあ、行きましょう。あなたが歩かないと国王陛下が入場できないでしょ」そう言って、王子の腕に絡みつき、胸を押し付けるように王子を連れて歩き出した。
「すまん。余りにも面白い余興だったものでな」
「もう、王子は他の女性より私だけを見てくださいませ」
「あんな女も数に数えるのか・・・」
父の腕が怒りのせいか、ぷるぷる震えている。
「耐えてくださいクロード殿。計画通りに」
次に向かって来るのはこの国の国王陛下と王妃様である。
国王陛下は王族らしいオーラが纏い貫禄があるが、その瞳は優しそうなのが印象的だった。
隣で歩く王妃様は確かに綺麗な人だったが、ツンと顎を上げ王族の威厳を示すためか高級な生地を無駄に使ったドレスに、やはり重そうな宝石をいくつも身に着けている。その姿に国民を労わる国母という印象はなかった。
そして、通り過ぎる時横目で私を見て鼻で笑うように王座に向かった。
国王陛下がこの度の聖女誕生を迎えた経緯を話し「聖女にはぜひわが国で幸せになってもらう準備がある」と締めくくった。
そして次にオーエン王子が話し出した。
「誰もが聖女になる可能性がある。誰が聖女になってもその者を愛しみ大切にすると誓う・・・若干1名を除いて」と口元をゆがました。
一斉に私に視線が集まると、今まで笑いをこらえていた令嬢や貴族たちが許しを得たと言わんばかりにくすくすと笑い出した。壁際に立っている騎士達もつられて笑うのをこらえている。
ジョークのつもりなのだろうか、センスがないなと見つめているとオーエン王子は真紅のドレスを着た令嬢の腰に手を回し、耳元で何かを話すと令嬢も扇子で口元隠し笑っているようだ。
「おふたりとも絶世の美男美女よね」と周りからふたりを褒める声が聞こえる。
エレーナからすれば父上ほど渋くないし、兄上ほど美しくない。それに、カイルみたいに野性的で男らしく魅力があるわけでもない。
(初めて屋敷を出たけど、これほど美醜の感覚が違うとは驚きと言うか衝撃ね)
笑いが止まっても私をじろじろ見つめている視線が痛いが、しっかり立てているだけで褒めて欲しい。心の中では『帰りたい』と何度も叫んだが。
すると、騒がしくなった場を戒めるように教皇の声が響いた。
「ごほん。今から聖女の儀式を始める」
説明によると、今からこの水晶に手を当てると聖女にだけ変化が起きると言う。
どのような変化が起きるかはわからないが、聖騎士たちに促され令嬢たちが順番に並ぶと指示通り両手で水晶に触れた。広間にいる誰もがかたずをのんで変化を待つ。
何も起こらないことを確認し「次」と言われると、令嬢は元の場所戻るよう促される。なぜか悔しそうな令嬢もいるし、涙を流し親に慰められている令嬢もいる。
父に何故悲しそうなのかと聞くと『聖女になれば王族より立場は上になる。それに王族との結婚も約束されるから、出世願望の強い貴族たちが必死なのさ』と説明してくれた。
(はあ、愛おしみ大切にするって結婚することだったのね。益々聖女になんかなりたくないわ。さっさと終わらせて帰りたい)
どんどん令嬢たちが入れかわり、列が短じかくなると王子の隣に立っていたナタリー様が歩き出した。
取り巻きの令嬢たちが、神経質なぐらい気を使っている。後ろに続く使用人たちも頭を下げつつ、ナタリー様の後に続いた。ナタリー様が明らかに年上の使用人にもきびしい口調で命令している姿が堂に入っている。
「やっぱりナタリー様が聖女候補だという噂は本当なのかしら」
「そうね。王子様の口づけを夢見ていたのに残念だわ」という声が聞こえた。
「口づけ?」
不思議そうにカイルを見ると「聖女は口づけで覚醒する。そして口づけをするのは太古の昔にさかのぼると勇者の血縁者と決まっている。つまり勇者の子孫である王族だ」と言われた。
「うわ、なにそれ最悪・・・」
「ああ同感だ。聖女だと後が邪魔くさいしな」
***
ナタリー様が水晶に触れると、誰もが息を止めたように広間は静かになった。
今か今かと待ちわびるが、数分経っても何も起こらない。
不思議そうに首を傾げだした貴族たちを見て、ナタリー様も焦ったようだ。
「では、次」
無情な声が響いた。
「待ちなさいよ!ありえないわ、この水晶壊れているのよ。もう一度試させて」
ナタリー様は顔が引きつっている。
他の令嬢たちは1分程度だったのでナタリー様の約3分は、王族に気を使った方だと思う。
「いえ、水晶は壊れていません。次」
「ま、待ちなさいよ。私が誰だかわかっているの?この国の王妃になるのよ。あなたをクビにすることもできるんだから」
教皇は眉をしかめ「そのような脅迫には屈しません。次」とジェスチャーで合図する。
「お願いです!ナタリー様はこの国の第一王子であるオーエン王子の婚約者です。我々のためにももう一度。一度でいいのでお願いします」
この後のお咎めを心配するメイド達を見て、ため息をつくと「何度やっても変わりはありませんよ」と再度ナタリー様に水晶に手をかざすよう促した。ナタリー様も気合を入れて水晶を手で包み込む。
やはり、何分待っても変化が起こらない。
会場はざわざわと騒がしくなり、彼女の周りを取り巻く人たちもなんだか顔が真っ白になっている。
広間には、異様な空気が取り巻いていた。
「あり得ないわ!」
ガシャン
「ひぃ、ナタリーお嬢様・・・」
怒ったナタリー様が、祭壇の上に置かれた水晶を持ち上げ床にたたきつけたのだ。ガラスが割れる嫌な音とともに、水晶の破片が床中に散らばった。
「な、な、な、何と言うことを!」
教皇が、今にも泡を吹いて倒れるんじゃないかと思うほど真っ青な顔だ。
異常事態に聖騎士団が一斉に剣を抜くと、陛下を守っていた騎士達も慌てて剣を抜いた。
教会は4つの国境にまたがる土地にあり、どの国にも属さず独立した機関になる。4つの国に多くの信者を持つ教会の影響力も王族に匹敵するほど絶大だ。教会と問題を起こせば、この国の運営も厳しくなるだろう。広間にいる王族や貴族たちも王宮での抜刀に緊張が走った。
それを見ていた私は『もう帰えれるのね』とほっとしていた。
お兄様と一緒に食堂へ向かった。お兄様は騎士団で売っているおにぎりをマイルに頼んで、特別に取り置きをしてもらっていたが、先輩たちに見つかり取り置きできなくなった。今は先輩や後輩にもまれながら、毎日おにぎり戦争に参加している。
「世間の厳しさを知ったよ」と寂しそうに微笑んだお兄様は、またひとつ大人の階段を登ったように凛々しかった。でも、宰相のお父様は部下たちに「出資者が得して何が悪い」と言い切り、マイルに毎日できたてのおにぎりを届けさせていることは黙っておく。
お兄様は屋敷に帰ると、調理長のミゲルたちの作る料理を楽しみにしている。ミゲルたちもお兄様のために、少し豪華な料理を準備しているだろう。
カイルはふたりの口元が緩んでいるのをみて、やっぱり兄弟だなと笑いを堪えた。
食堂に着くとお父様とお母様がすでに椅子に座っていた。お互い元気な姿に安心して、食事が始まった。
「ところで、父上今日は重要な話があるとか」
「ああ・・・エレーナもよく聞きなさい。聖都教会から神託が下りた。突拍子もない話だが、この国の15歳から16歳の貴族の令嬢に聖女の力が発現すると言う」
お母様も初めて聞いたのだろう、ぽかんとしている。お兄様と私もお互いの顔を見てしまった。聖女と言えばこの国を建国したのが、異世界から現れた勇者と聖女だ。協会でも遺物を大切に保管している。
教科書でも必ず習うし、この国でふたりを知らないものはいないだろう。
「それは・・・どういうことです」
「古の時代魔獣や魔王がいた時代の名残で、今でも500~1000年に一度のサイクルで聖女がこの国の国民から現れるのは知っているね。それが神託によると今日現在で15・16歳の貴族の令嬢だというのだ。魔王は完全に消滅、わずかに残っている魔獣は我々でも倒せる。しかし、聖女の治癒魔法は今でも病気や怪我をした人からすれば大変貴重だ。見つかればこの国で大切に保護されるだろう」
「まさかエレーナも連れて行くと?」
「今までエレーナの安全を考え外出を控えてたが、今回ばかりは王命だ。15歳から16歳の貴族の娘は全員王宮に呼ばれている。宰相である私だけが断ることはできない。すまないが、アレンは仕事なのでカイルと私が王宮へ付き添う」
「王女の子守りですか・・・」
「そうだ。アリフォンヌ王女がアレンを自分の護衛に引き抜こうと躍起なのが気に入らないが、聖女の選出に王女を引き離せるのは好都合だ」
とんでもなく我儘で思いやりのかけらもないアリフォンヌ王女が、エレーナを見れば辛辣な言葉を吐き出すことは目に見えていた。
「あの王女の世話ですよね。普段はお断りしていますが、今回だけはしょうがありませんね」
「ねえ、私王宮に行けるの?」
エレーナは賢い娘だ。行けばどんな嫌な思いをするか理解しているが、好奇心の方が勝っているのだろう。目を輝かせお父様を見つめている。お父様は自分が言っておきながらも嫌そうに『そうだな』と答えた。
「そうだわ。エレーナが一番お気に入りの薄紫のドレスで行きましょうね」
「お母様、あれを着ていいの?」
「ええ、いいわ。成人を祝うパーティーには違うドレスを作ればいいわ」
この国の令嬢は成人にあたる16歳になると、王宮で成人パーティーに出席するのが習わしだ。エレーナは参加できないが、母が家族で成人パーティーを楽しみましょうとドレスを作ってくれたのだ。
試着で着た豪華なドレスは、胸元がすっきりするようカットされ大人っぽいデザインになっている。くるくると周るとドレスの裾が何重もの花びらのように広がってとても美しかった。そして、ハーフアップした髪形は、お母様とお揃いでエレーナはとても嬉しそに笑っていた。
「ああ、太い腕と足がもう少し細くなればいいのに」と鏡を見て普通に感想をいっただけだが、母やリズの顔が一瞬曇った。不味いと思い「でも、家でドレスを着るのもいいものね。ふっふっふ」と笑えば、ふたりの安心したように微笑んでくれた。
『もっと言葉に気を付けなくちゃ。危なかったわ』
この家では私が中心に家が回っているのではないかと思うことすらある。
少し暇そうにしているだけでも執事のベンが、突然何もないポケットから鳩を出した。カイルは目を見開き「今のは、魔術か?」と聞くものだから笑ってしまった。みんなが私を気にかけてくれている。
昔を知らないカイルだけは平気で私を「子豚ちゃん」と呼んでくる。
昔の私を知らない使用人の方が楽かもしれないと思う時がある。
***
それから1カ月が経ち、準備に追われあっという間に謁見の日が来た。今日は朝からお母様とリズが身体を磨きあげ、髪の毛を結ってくれた。
仕上がりを見て満足そうにお母様が私を抱きしめた。
「貴方はどこに出してもおかしくないぐらい立派にマナーも覚えたわ。堂々としていなさい」
階段の下で待っていたお父様は、目にうっすら涙を浮かべ「小さかったエレーナが、すっかり大人になったな」と褒めてくださった。カイルも「とても美しいよ」言ってくれたのはお世辞でも嬉しかった。
屋敷にいるみんなが玄関に集まり見送りをしてくれた。ミゲルやヨハンまでいるから、ほぼ全員ここにいるのだろう。馬車に乗り込むと「カイル、私は本当に呪いがかかっているのかしらと思う時があるわ。だってこんなに幸せだもの」と呟いた。
お母様も屋敷のみんなも馬車が見えなくなるまで手を振ってくれた。私も必死に手を振った。カイルは心の中で『エレーナはありのままの姿が美しい』と囁いた。
***
王宮に着くと、お父様が昔一緒に来たことがあると言っていた。
幼すぎて記憶がないので、初めて見る王宮の大きさに気後れしながら広間に向かって歩き出す。
宰相を務めるお父様は顔が広い。廊下で出会った騎士やメイドたちがすぐさま端により頭を下げる。そして私を見て『誰だ?』という顔をするのだ。気づいたお父様が「娘のエレーナだ」と答えると、口をあんぐり開けて驚いていた。
(いいのよ。両親を知っていれば、どんな遺伝子だよと思うわよね普通)
晩餐会でも使用される1番広く豪華な広間に着くと、奥に祭壇が置かれていた。
お母様やお兄様から聞いていた、晩餐会の光景を一度は見たいと思っていた。今日は飾りつけもないけど着飾った多くの人だかりに、晩餐会の光景を想像して楽しむ。
(ああ、ここでみんながダンスを優雅に踊って、食事を楽しむのね)
今は椅子だけが並べられた空間になっている。奥には白い制服の聖騎士たちと教皇や王宮の黒い制服の護衛達が並んでいた。
(気が重いけど、何を言われても堂々としていよう)
周りを見れば年の近い可愛らしい令嬢たちが両親に付き添われ並んでいた。
普段から磨かれ、美を追求している令嬢たちだ。
髪は艶があり、肌もきめ細かい。
化粧も自分に似合っているものを心得ている。
普段から着なれているドレスも様になっている。
貴族の令嬢にとって、男性に見初められることは人生を左右するほど重要なことだ。
絶食をしてまで体型を維持しているのに、私のように太っている令嬢は皆無だ。
(私は食事を制限しても運動をしても呪いで痩せないのよね。太っている令嬢なんて珍しいわよね)
みんなが私を見ると一応に驚いた顔をする。
「まさか、ブラウン侯爵家の深窓の令嬢ってあの方なの?」
「深窓の令嬢というか、ただ恥ずかしくって家から出せなかっただけじゃない」
「あの美しいアレンと全然似ていないわ。あの方は養女なの?」
興味津々な目線が、エレーナに突き刺さる。
「私だったら人前に出るのは遠慮するわ」
エレーナが着ているドレスは胸の開いたデザインで少しでもエレーナが痩せて見えるように工夫されている。でも、太った身体は隠せない。この醜い顔も化粧ぐらいではごまかせない。
(自分でも分かっているけど、直接笑われると心が折れそうになるわね)
屋敷ではそんな私を可愛いと言ってくれる両親やお兄様たちがいたおかげで、自分の醜さは忘れがちだ。厳しい現実に歩みが遅くなると、お父様が私の手を強く握った。
「愛する娘のエスコートができて嬉しいよ」
お父様が私に優しく微笑むと、婦人たちがうっとりしてため息をついていた。
後ろを振り返りカイルを確認すると、いつものふざけた笑顔で「躓いて転ぶなよ」と言ってきた。
そうすると、カイルの笑顔を見た令嬢たちも何故か顔を赤くして、のぼせたようになっている。
「ねえ、あの方も貴族かしら」
「素敵だわ。婚約者はいらっしゃるのかしら」
そして、私を交互に見て「なんであんな醜い女に」と言い出した。
「可哀そうに、絶対無理やりお金で雇われたのよ」
「宰相陛下のお力があれば、嫌とは言えないでしょ」
「何か断れない理由があるのよ」
悪徳令嬢を見るような蔑んだ、冷たい視線に変わっていた。
エレーナも『分かっているわよ。貴方たちに言われなくてもカイルが仕事で付き合ってくれていることぐらい』と言葉に出そうになって、ぐっと堪えた。
指定された位置に着くと、私の隣にカイルが立った気配がしたがカイルを見ることはできなかった。
そうするとカイルは膝を少し曲げ、私の耳元で「エレーナ、君が好きだよ。他人の言葉は毒だ。気にするな」それだけ言って元の姿勢に戻った。驚いて隣を見ると、カイルの逞しい喉仏と整った横顔が見えた。
(はあ・・・今なんて)
カイルの「くっくっ・・・」と笑いを殺した声が聞こえる。
(からかわれた?)
頭が真っ白になっていると最後に王族たちがこちらに歩いてくるのが見えた。
最初に歩くのは、この国の第一王子のオーエン王子だ。
噂では気高く美しい王子と聞いてアレンお兄様より美しい人って、どんな方かしらと乙女心でどきどきしたものだ。歩いて来る王子は確かに金髪で背も高く、そこそこ顔も良かった。
(私の周りにはイケメン度が高いのよね。無駄に目だけが肥えていけないわね)
オーエン王子の登場で「キャー」という黄色い声があがることに理解ができない。
自信過剰なのか、王子は手を振って歩いている。
「オーエン王子様!」
「私を見たわ」
お母様も時代によってマナーに多少変化があるかもしれないと言っていた。私の知らない最近のマナーだろうか。私も「キャー」と言って騒がないと不敬罪になるのだろうかと悩んでいると、王子がピタっと私の前で止まった。
「宰相、隣の令嬢は・・・」
「ひとり娘のエレーナです。身体が弱く普段は屋敷を出ることができないので紹介が遅れました」
「そうか、そういうことか。何度も紹介しろと言っていたが、この顔であれば王宮に連れて来れないわけだ」
父の握る手に一瞬力が入った。
「オーエン様、女性に笑うなど失礼ですわよ・・・ふふ」
娼婦のように胸がバックり開いたドレスの令嬢が私を蔑むような顔で王子の横に立った。まだ胸を強調したいのか、年齢に似つかわしくない大ぶりのダイヤのネックレスが胸元で輝いていた。
「さあ、行きましょう。あなたが歩かないと国王陛下が入場できないでしょ」そう言って、王子の腕に絡みつき、胸を押し付けるように王子を連れて歩き出した。
「すまん。余りにも面白い余興だったものでな」
「もう、王子は他の女性より私だけを見てくださいませ」
「あんな女も数に数えるのか・・・」
父の腕が怒りのせいか、ぷるぷる震えている。
「耐えてくださいクロード殿。計画通りに」
次に向かって来るのはこの国の国王陛下と王妃様である。
国王陛下は王族らしいオーラが纏い貫禄があるが、その瞳は優しそうなのが印象的だった。
隣で歩く王妃様は確かに綺麗な人だったが、ツンと顎を上げ王族の威厳を示すためか高級な生地を無駄に使ったドレスに、やはり重そうな宝石をいくつも身に着けている。その姿に国民を労わる国母という印象はなかった。
そして、通り過ぎる時横目で私を見て鼻で笑うように王座に向かった。
国王陛下がこの度の聖女誕生を迎えた経緯を話し「聖女にはぜひわが国で幸せになってもらう準備がある」と締めくくった。
そして次にオーエン王子が話し出した。
「誰もが聖女になる可能性がある。誰が聖女になってもその者を愛しみ大切にすると誓う・・・若干1名を除いて」と口元をゆがました。
一斉に私に視線が集まると、今まで笑いをこらえていた令嬢や貴族たちが許しを得たと言わんばかりにくすくすと笑い出した。壁際に立っている騎士達もつられて笑うのをこらえている。
ジョークのつもりなのだろうか、センスがないなと見つめているとオーエン王子は真紅のドレスを着た令嬢の腰に手を回し、耳元で何かを話すと令嬢も扇子で口元隠し笑っているようだ。
「おふたりとも絶世の美男美女よね」と周りからふたりを褒める声が聞こえる。
エレーナからすれば父上ほど渋くないし、兄上ほど美しくない。それに、カイルみたいに野性的で男らしく魅力があるわけでもない。
(初めて屋敷を出たけど、これほど美醜の感覚が違うとは驚きと言うか衝撃ね)
笑いが止まっても私をじろじろ見つめている視線が痛いが、しっかり立てているだけで褒めて欲しい。心の中では『帰りたい』と何度も叫んだが。
すると、騒がしくなった場を戒めるように教皇の声が響いた。
「ごほん。今から聖女の儀式を始める」
説明によると、今からこの水晶に手を当てると聖女にだけ変化が起きると言う。
どのような変化が起きるかはわからないが、聖騎士たちに促され令嬢たちが順番に並ぶと指示通り両手で水晶に触れた。広間にいる誰もがかたずをのんで変化を待つ。
何も起こらないことを確認し「次」と言われると、令嬢は元の場所戻るよう促される。なぜか悔しそうな令嬢もいるし、涙を流し親に慰められている令嬢もいる。
父に何故悲しそうなのかと聞くと『聖女になれば王族より立場は上になる。それに王族との結婚も約束されるから、出世願望の強い貴族たちが必死なのさ』と説明してくれた。
(はあ、愛おしみ大切にするって結婚することだったのね。益々聖女になんかなりたくないわ。さっさと終わらせて帰りたい)
どんどん令嬢たちが入れかわり、列が短じかくなると王子の隣に立っていたナタリー様が歩き出した。
取り巻きの令嬢たちが、神経質なぐらい気を使っている。後ろに続く使用人たちも頭を下げつつ、ナタリー様の後に続いた。ナタリー様が明らかに年上の使用人にもきびしい口調で命令している姿が堂に入っている。
「やっぱりナタリー様が聖女候補だという噂は本当なのかしら」
「そうね。王子様の口づけを夢見ていたのに残念だわ」という声が聞こえた。
「口づけ?」
不思議そうにカイルを見ると「聖女は口づけで覚醒する。そして口づけをするのは太古の昔にさかのぼると勇者の血縁者と決まっている。つまり勇者の子孫である王族だ」と言われた。
「うわ、なにそれ最悪・・・」
「ああ同感だ。聖女だと後が邪魔くさいしな」
***
ナタリー様が水晶に触れると、誰もが息を止めたように広間は静かになった。
今か今かと待ちわびるが、数分経っても何も起こらない。
不思議そうに首を傾げだした貴族たちを見て、ナタリー様も焦ったようだ。
「では、次」
無情な声が響いた。
「待ちなさいよ!ありえないわ、この水晶壊れているのよ。もう一度試させて」
ナタリー様は顔が引きつっている。
他の令嬢たちは1分程度だったのでナタリー様の約3分は、王族に気を使った方だと思う。
「いえ、水晶は壊れていません。次」
「ま、待ちなさいよ。私が誰だかわかっているの?この国の王妃になるのよ。あなたをクビにすることもできるんだから」
教皇は眉をしかめ「そのような脅迫には屈しません。次」とジェスチャーで合図する。
「お願いです!ナタリー様はこの国の第一王子であるオーエン王子の婚約者です。我々のためにももう一度。一度でいいのでお願いします」
この後のお咎めを心配するメイド達を見て、ため息をつくと「何度やっても変わりはありませんよ」と再度ナタリー様に水晶に手をかざすよう促した。ナタリー様も気合を入れて水晶を手で包み込む。
やはり、何分待っても変化が起こらない。
会場はざわざわと騒がしくなり、彼女の周りを取り巻く人たちもなんだか顔が真っ白になっている。
広間には、異様な空気が取り巻いていた。
「あり得ないわ!」
ガシャン
「ひぃ、ナタリーお嬢様・・・」
怒ったナタリー様が、祭壇の上に置かれた水晶を持ち上げ床にたたきつけたのだ。ガラスが割れる嫌な音とともに、水晶の破片が床中に散らばった。
「な、な、な、何と言うことを!」
教皇が、今にも泡を吹いて倒れるんじゃないかと思うほど真っ青な顔だ。
異常事態に聖騎士団が一斉に剣を抜くと、陛下を守っていた騎士達も慌てて剣を抜いた。
教会は4つの国境にまたがる土地にあり、どの国にも属さず独立した機関になる。4つの国に多くの信者を持つ教会の影響力も王族に匹敵するほど絶大だ。教会と問題を起こせば、この国の運営も厳しくなるだろう。広間にいる王族や貴族たちも王宮での抜刀に緊張が走った。
それを見ていた私は『もう帰えれるのね』とほっとしていた。
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